ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
令和生まれの神を押さえて、平成を統べる時の王者の勝利。
そういうわけで、ジオウ編始まります。
「この本によれば普通の高校生、常盤ソウゴ。彼には魔王にして時の王者“オーマジオウ”となる未来が待っていた」
そこにいたのは不思議な男であった。
アシンメトリーのロングコートにロングショールという出で立ちのロングヘアの男。
その手に握られるのは一冊の本。
「彼は時を乱し世界を統べようとするタイムジャッカーの野望を阻止し」
語るのは消えてしまった歴史の果ての世界の命運をかけた戦いであり。
「さらには醜き平成を亡き者にしようと企むもう一人のSOUGOの暴虐をも打ち砕いた」
語るのは歴史を次に繋いだ偉大なる戦い。
「されど偉大な魔王の戦いは終わらず。この、うち捨てられた全ての可能性を宿した土地において、偉大なる魔王は戦い続ける。これはその物語の一節、断片と化した自らをかき集め、それでも戦い続ける優しき戦士との出会いのお話」
※※※※※
もう夜も遅いというのに、この新宿という街から人の流れが消える事は無い。
人々の欲望と闇を飲み込む日本有数の街の消えぬ明かりを眼下に眺めながら、部下たちの報告を静かに待つ。
時折吹く強風に深紅のマフラーが大きく棚引き音を立てるが、その音に気が付くものなどいない。
「目標を発見しました」
「そうか」
マスクに備え付けられた通信機より、部下の声が聞こえる。
まったく、ここ数日は毎晩新宿通いだ。
しかも変身前の俺の姿はどう見ても高校生であり、夜中に徘徊すれば警察に呼び止められること間違いなしの為、毎晩ビルの屋上で待機を余儀なくされる。
「やれやれ、頭がいかれているのにちょこまかと逃げやがって……。俺が行くまでそいつを見張っていろ。それと、周囲への警戒を怠るな。奴らが来るぞ」
「了解です」
3回奴を捕捉して、その3回とも妨害者……いや、同じ目標を狙う競合者に阻まれ取り逃がし、ついに俺が直々に出張る事になったわけだ。
まったくもってめんどくさい。今晩でこの仕事は終わりにしたいものだ。
俺はビルから跳躍すると通りを飛び越し隣のビルに飛び移る。
俺の姿を捉えられるものなど、この地には存在しない。
さて、今回の任務は拉致と監禁という事になるだろうか。
実にショッカーらしい任務であろう。
正直消してしまった方が後腐れは無いと思うのだが、いくつか消せない理由が存在していた。
すたりと、街の喧騒から離れた公園に降り立つ。
公園の周辺は、一般人に偽装した戦闘員が包囲しており、誰も入れないように手配が完了している。
「どうなっている?」
「この先の遊具に隠れております」
「そうか」
仕事帰りのサラリーマンや学生にしか見えない服装の男たちが俺の問いかけに答える。
無論サラリーマンではない。うちの改造人間の一人だ。今時町を探索させるのに、黒スーツに黒サングラスなんて怪しい服装はさせない。
他にも公園の出入り口には改造人間に守らせた特製のバンを待機させてある。
「さて、ご対面と行くか」
乾いた足音を立て、俺は部下の指さした遊具に向かう。
いわゆる複合遊具だ。コンクリートの小山に、トンネルや滑り台が併設されたよく見る遊具のトンネルの中にそいつはいた。
震えているのか、奥で縮こまり出てくる様子が無い。
「引っ張り出せ」
「了解です」
俺の命令に、若いサラリーマン風の男が文字通りに腕を伸ばす。
そう、文字通りにだ。普通の人間ではありえぬ長さまで伸びた腕をトンネルの中に突っ込む。
「ひっ、ひいい!!」
その人ならざる動きに気が付いたのだろう。トンネルの中にいた男が悲鳴を上げて反対側から這って逃げようとするが、その動きは緩慢そのものだ。
部下はそいつの襟首をがっしり掴むと、俺たちの目の前に引きずり出す。
まず感じたのは漂う悪臭だ。何日も風呂に入っていない、垢だらけの体。典型的な浮浪者の体臭だ。
ぼさぼさに伸びっぱなしの髪に表情は隠れ、垢や泥で汚れた冬服はもうボロボロだ。
肌の張りから辛うじて若い男だとわかる。
「く、くるな! くるな!」
その男は俺達を前に恐怖でへたり込み後退りをしながらも、手に持ったそれをこちらに向けると、カチカチとボタンを押して見せる。
もっとも、それだけだ。
かつては恐るべき力を秘めていたそれも、今では単なるガラクタだった。カチカチとボタンを押す音だけが虚しく響くのみだ。
「貴様のような男に同情する気など一片も無いが、こうなると哀れだな加古川飛流」
俺の目の前にいる浮浪者であり、今回のターゲットがこの加古川飛流だ。
俺の知る仮面ライダージオウの物語においての悪役であり道化。逆恨みと肥大化したエゴ、そして劣等感からジオウをつけ狙い、大きな被害を出した悪党。最後はタイムジャッカーに使い捨てられた道化。
もっとも、おそらくはこの世界もジオウが歴史改変を行っているためか、過去にジオウとどんな因縁があったかは知る事はできない。
それでは何でショッカーがこいつを拉致しようとしているかというと、腕試しかなんだかは知らないが、仮面ライダーバールクスに変身して数年前にショッカー基地を襲っているためだ。さらに俺の知る限り財団Xやゴルゴム残党、さらには政府の研究施設も同じ時期に襲っている。
うちらの業界では生死問わずの賞金首だがジオウに喧嘩を売ったあげく敗北、ここ数年は気がふれた状態で病院に収容されていた。
そんな加古川が病院を脱走したのが数カ月前、新宿でうちの構成員が発見したのは先週の話だ。
「連れていけ。ここ数カ月の出来事を吐かせなければならないからな」
「イッー!」
消してしまえば後腐れが無いのだが、如何せんこいつはアナザーオーマジオウという桁外れの力を持つ化け物に変身した過去がある上に、気がふれた状態で脱走、数カ月の潜伏などをやってのけた以上は何らかの協力者がいる可能性が高い。
消す前に情報を吐かせる必要がある上に、アナザーオーマジオウの力を宿した奴を下手に消すと何が起こるかわからない。ゴーストアナザーオーマジオウなんて出てきたら泣くぞ、俺。
マスクをしていないので顔をしかめている事がわかる戦闘員たちが加古川を左右からがっしり抱える。
普通ならこのまま入口に待機させてある車に放り込んで、アジトまで連れて行って終わりだ。
そう、普通ならば……だ。
「やはり来たか」
俺は小さくため息をつくと、身構える。
それと同時に、横で控えていた男たちもその姿を怪物へと変化させていく。
変化は唐突だった。
公園の一角、雑木林に面した一面が唐突に揺らぐ。四角く切り取られたかのような空間の揺らめきは次第に大きくなり、まるで歪んだ鏡のような姿となる。
「申し訳ございません、アインロールド様」
「気にするな。奴らの出現だけはどうやっても防げん。貴様の落ち度ではない」
謝罪してくる改造人間をあっさりと許す。
実際、異世界から唐突にやってくる連中をどう止めるのか。こうも正確に現れるって事はどこかに目はあるんだろうが、それを察する手段を見つけるのは俺たちの仕事じゃない。
回廊の奥より現れる複数の男女と機械仕掛けの兵士、カッシーンたちに内心うんざりしながらも、俺は突然やってきた異世界からの侵略者を睨みつける。
「何の用だ、ハンドレッド」
「我らの用など分かっているだろう。その男を渡してもらおう、ショッカー」
そう、連中の名前はハンドレッド。その驚異的な技術力で複数の世界に侵略を繰り返す集団である。
最終的な目的などは不明だが、まあ碌な物ではあるまい。
そんな連中が現在ご執心なのが加古川である。
過去3回の内2回、ショッカーが加古川を取り逃がしたのもこいつらとブッキングしたためである。
戦いになりそのどさくさに紛れて逃げられてしまったのだ。
その際に改造人間や戦闘員も犠牲になっている。まぁ、俺が出張るのには十分な理由だった。
「渡す理由が何処にある? 貴様らこそ今すぐ消えれば命だけは見逃してやるぞ」
「たかだかショッカーの改造人間ごときが吠える。貴様ら、やるぞ」
リーダー格らしいガタイの良い男が何処からともなくベルトを取り出すと、腰に装着する。
背後にいた仲間たちも同じように各々のベルトを装着していった。
その数は5人。少々面倒くさい数ではある。
「変身!」
その言葉と共に、次々にそれぞれの音を響かせながら連中の姿が変わっていく。
そう、これが厄介なのだ。
ハンドレッドの連中、その技術力で様々なライダーシステムを解析しており、そのコピーを装備するいわゆる公式パチモン集団なのだ。
「うわぁ……」
連中の変身を見た俺は思わず声を上げる。
まず一人目。紫のボディスーツに黒い甲冑。黄色い複眼。滅亡迅雷.netで悪名をとどろかせた、その名も仮面ライダー滅。
で、二人目。銀と金の甲冑とマントを纏い、その手に握るのは大いなる剣カラドボルグ。職務を放棄したマスターロゴスが変身した悪名高き仮面ライダーソロモン。
後3人いるがもう面倒なので名前だけでいいか。仮面ライダーダークアギレラ、仮面ライダーバッファジャマトゾンビフォーム、仮面ライダーエルド。
節操なく令和ダークライダーの強豪パチモンを出してきたよ……。
驚きというよりドン引きである。
「先日は貴様に3人も倒されたからな。ここで出し惜しみなどはしない」
「そうか。では新たに5つ屍を積み重ねる事になるな」
リーダー格らしいパチモンエルドの言葉を俺は鼻で笑う。
先日倒したのはダークカブト、ダークドライブ、ネガ電王だったがガワだけのパチモンであり、あの程度の連中に後れを取る筈もない。
まとめて始末をしておいたわけだが、その隙に加古川が逃げたので結果的に任務は失敗であった。
「ぬかせ! やるぞ、お前たち!」
その掛け声と共に、俺を包囲しようとする5人のパチモンダークライダーが俺を囲うように動き出す。
本来なら強豪ライダー5人に囲まれるという大ピンチなのだが……。なんというか、Wやスーパー1、ブイス……クソジジイ。さらにはネオショッカー大首領と対峙していた時ほどの緊張感を感じない。
なにより、こいつらの塵屑並の人間性が良い。倒す事に一切の躊躇がいらない。
「やれやれ、こいつら相手は気が楽でいいな」
「ぬかせ!」
「死ね、アインロールド!」
別に侮辱をした気は無いのだが、どうやら俺の言葉を侮辱と受け取ったらしい。
まずは偽滅が大地を蹴ったかと思うと、俺の目の前に出現しその拳を振るう。
中々鋭い突きだが、俺を捉えるほどではない。体の軸をずらし、縦に伸ばした腕でその軌道を反らすと同時に、隙だらけになった奴の腹に膝をお見舞いする。
「くっ!」
流石にそれ一発で何とかなるほどやわな奴ではない。腹で俺の膝を抱え込むよう拘束しようと体を丸める。
さらに、背後から迫ってきた拘束された俺を打ち砕かんと偽ダークアギレラが飛び蹴りを、偽ソロモンが黄金の剣を振るう。
ボスラッシュの戦い方じゃないな。
妙に冷静な気持ちになりながらも、俺は拘束されていない側の足を起点に身体を回転させ、まずは偽滅を偽ソロモンに向けて蹴り飛ばす。
「なんだと!?」
流石にあの体勢から味方を蹴り飛ばされるとは思っていなかったのか、偽ソロモンが慌てて剣を下げて偽滅を受け止める。
とはいえ、俺のパワーで蹴り飛ばされた偽滅の勢いは半端なものでは無く、偽ソロモンは受け止め大きく後退を余儀なくされた。
あとは偽ダークアギレラか。
飛び蹴りを迎撃するのも面倒だな……。
「羽虫はお前たちに任せる!」
「はっ!」
「お任せを、アインロールド様!」
俺の命を受け、一般人に擬態していた二人の改造人間が正体を現すと宙に舞う。
コウモリ男とムササビビートルは宙に舞い上がり、不用意に飛び蹴りの体勢を取っていた偽ダークアギレラを側面から二体の飛行改造人間が迎え撃つ。
「そ、そんなっ!? 改造人間ごときが!?」
「我らをなめてもらっては困る!」
「貴様らとは年季が違うのだよ!」
かつて本郷さん……もとい、1号や2号と戦っていた頃の同型改造人間とは違うのだ。
バージョンアップした二体の改造人間は宙を自在に舞うと、ダークアギレラを大地に叩き落とし、上空からのヒットアンドアウェイを繰り返す。
「させるかっ!」
このままではまずいと考えたのか、バッファがジャマトの蔦を伸ばし飛行型改造人間たちの動きを妨害しようとする。
だが、その蔦はもう一人の改造人間が伸ばした腕に絡めとられる。
「なにっ!」
慌てて蔦を絡め取ってきた触手から引きはがそうとするが、そうは問屋が卸さない。
もう一人の改造人間。蜘蛛男が吐き出した糸が蔦と触手を接着してしまう。
「逃がすと思うか、侵略者!」
「よくやったぞ、クモ男! 食らえ、電撃!」
クラゲ型の改造人間の伸ばした触手から、5万ボルトもの電流が偽バッファに向けて流される。
夜の公園に火花が飛び散りバッファの蔦のみならず本体までも焼けただれ煙が立ち上る。
「後は貴様か!」
唯一攻撃に参加していなかったリーダー格の偽エルドを打倒せんと、俺は大地を蹴る。
赤いエネルギーを灯した拳を偽エルドの顔面に叩き込もうとする。
だが、偽エルドは俺の拳を腕の動きで何とかはじくと、逆にこちらにパンチを繰り出してくる。
当たるような攻撃ではない。
左手で受け流す。
互いの拳を抑え込む体勢となる。
「ほう、貴様は少しはマシなようだな」
「何!?」
「焦って最新型を出してきたのだろうが、練度が足りん!」
正直、実力は先日倒した3人が上だ。
俺から言わせれば本人の技と知恵、そして精神力こそがライダー同士の戦いの肝だ。よほど隔絶した能力差でもない限り、額面上のスペックなど飾りに過ぎない。
令和ライダーの模造品を作る技術力はすごいが、如何せん練度を高める時間は無かったのだろう。
俺の指摘に思うところがあったのか、偽エルドのマスクの下から歯ぎしりの音がする。
まぁ、そんな事でこちらが手加減をしてやる理由は無い。
俺は手首を組みなおすと、偽エルドを投げ飛ばす。
もっとも、これは仕切り直し以上の意味は無い。実際、偽エルドは空中で体勢を立て直すと、偽滅と偽ソロモンの傍に降り立つ。
カッシーンは、戦闘員たちが何とか対処している。
偽ダークアギレラと、偽バッファは改造人間たちに任せて良いだろう。
俺はこのまま残り三体を始末すればいい。
俺と同じような思考に到達したのか、フリーの部下どもに偽エルドが命じる。
「まずはあのショッカーライダーを仕留めるぞ。最新型を託されたのだ、無様は許されん!」
「わかっております!」
いや、3回も……。いや、こいつらは2回か。加古川を取り逃している段階でお互いに無様もへったくれも無いと思うのだが。
どうでもいいか。3体なら俺だけで十分だ。別に慢心でも何でもなく単なる事実として、俺はこいつらに負ける気がしない。
熟練していればスペックも特殊能力も強いんだろうけどね。
まぁ、良い。
邪魔が入る前に、こいつらを仕留めて仕事を終わらせよう。
そんな事を考えたのがいけなかったのだろう。
ショッカーが加古川の拉致に失敗したのは3回。
うち、ハンドレッドとのブッキングが2回。
では、残り1回は。
別の妨害者がいたのだ。
そう、その男も加古川を探していた。
「まて!」
そう叫んで公園に駆け込んできた二人の男の内の一人、黒髪の男は、加古川を連れ去ろうとしていた戦闘員を引きはがすと、瞬く間に叩きのめしてしまう。
少し遅れてやってきたのは茶髪の男。こちらは唐突に暴れる事は無いが、この場を見る目は鋭く厳しい。
くそ、やっぱり来やがった……。
俺たちショッカーが加古川を取り逃がしたのは3回。うち2回はハンドレッドとの遭遇戦のさ中に逃げられた。
でも残り一回は? そう、その答えは目の前にいる二人の男だ。
一人は黒いジャージのような、変わった服を着ている。腕に付けているベルトに付けているのは巨大なウォッチ。特に染めてもいない刈り込んだ髪を逆立ている。
一人はどこかダボっとはしている者の、ごく普通の格好の男だ。柔らかだけどどこか浮世離れをした雰囲気を漂わす茶色の髪の男。
黒髪の男の名前は明光院ゲイツ。
そして茶色の髪の男、彼の名は常磐ソウゴ。
「ハンドレッド、ショッカー! なぜ加古川飛流を狙うんだ!?」
常盤ソウゴの問いかけは実にもっともな問いかけであると同時に、なんともお人好しだ。そこの愚物による最大の被害者は常磐ソウゴ自身だろう。
純粋に助けに来た訳では無いだろうが、それでも助けてしまうのは嫌味抜きに王者の風格という奴なのかもしれない。
「そいつの所業を考えれば始末をしようとするのも不思議ではないと思うが? ハンドレッドは何を考えているのかは知らんがな」
「そ、それは……」
歴史改変前の事は知らないが、歴史改変後だけでも十分な所業を積み重ねている。
大人しく病院に収容されているのならともかく、抜け出したのならそれ相応の処置を取るのは当然だ。
一方、ハンドレッドはと言うと唐突に表れた二人に憎しみの視線を向ける。
「ゲイツにジオウ……。その男は、我らハンドレッドがもらい受ける! 邪魔をするな!」
偽エルドの声に、ショッカー戦闘員と戦っていたカッシーンの一部が新たな乱入者に向き直り、さらには偽滅と偽ソロモンが再び立ち上がり得物を構える。
「やっぱりこうなるか! ゲイツ、行くよ!」
「わかっている!」
その言葉と共に、二人の若者はどこからともなく取り出したベルトのバックル、ジクウドライバーを腰に装着する。
そして右手にそれぞれの象徴とも言うべきウォッチを握る。
常磐ソウゴが手に持つのは白いウォッチ。彼がダイヤルを回すと音声が夜の公園に響き渡る。
【ZI-O!】
明光院ゲイツが取り出したのは赤いウォッチだ。
その灼熱の輝きを持つウォッチを回すと、力ある言葉が空気を震わせる
【GEIZ!】
二人の背後に、それぞれ違う時計が出現する。
常磐ソウゴの背後にはどこかクラシックな意匠の時計が時を遡り、明光院ゲイツの背中にはデジタルウォッチが反時計周りに回転を始める。
「変身!」
「変身!」
二人がほぼ同時にウォッチをジクウドライバーに装着し、回転させる。
それと同時に、二人の背後の時計が正方向へと回転を始める。
【仮面ライダー ZI-O!】
【仮面ライダー GEIZ!】
次の瞬間、二人の姿が変わる。
銀のスーツにマゼンダのライン。あるいは赤いスーツに黒い甲冑。二人の顔に刻まれるライダーの文字。
そう、常磐ソウゴこそがすべての時を統べ、王者になる運命を背負いし仮面ライダー、その名もジオウ。白銀のライダーである。
そう、明光院ゲイツこそが最低最悪の魔王を倒し時の救世主になるだろう仮面ライダー、その名もゲイツ。深紅のライダーである。
二人の仮面ライダーの出現に辺りが強烈な緊張感に包まれる。
「やれ!」
偽エルドの号令の元、ハンドレッドが一斉に動き出す。
ショッカー、ハンドレッド、そしてジオウとゲイツの三つ巴の戦いが切って落とされる。
群れるカッシーンとショッカー戦闘員を蹴散らしながら、ゲイツが偽滅にぶつかる。
「何を企んでいるのか知らないが、貴様らの好きにはさせんぞ!」
「貴様こそ、消えて無くなれ!」
接近戦で拳で殴りあっていたゲイツと偽滅だったが、どちらからともなく距離を取ると互いに弓状の武器を取り出す。
横に駆け抜け木々や遊具を盾にしながら光の矢を互いに解き放つ。
時折カッシーンやうちの戦闘員が巻き込まれ吹き飛んでいく。
そんな均衡もすぐに崩れる。
身体が完全に隠れる遊具をゲイツが通り過ぎ、再び射線に出現する。
その瞬間を狙った偽滅の光の矢が出てきた存在を貫く。
「やったか!? なにっ!?」
歓喜の声を上げる偽滅だが、やったのはいつの間にかゲイツに倒されていたカッシーンの一体だった。
赤い粒子となり消えていくカッシーンを見て、偽滅がすぐさま驚きと警戒の姿勢を取る。
だが、それは遅すぎであった。
【疾風!】
偽滅の背後には、先ほどまで存在しなかった青いライダーの姿があった。
その名も仮面ライダーゲイツリバイブ疾風。
ゲイツの強化形態であり、速度を圧倒的なまでに強化した形態だ。
「悪いが、遅い!」
滅のスペックを最大限に活かしていれば、ゲイツの速さにも対応できただろう。
だが、スペックを活かしきれていない偽滅の緩慢な動きでは激戦を潜り抜けてきたゲイツの戦術の速さにはついていけなかった。
ゲイツが手にする専用の丸鋸型武器の前に、偽滅は火花を散らしながら吹き飛んだ。
俺に向かってきたのは偽ソロモンを中心とする一団だ。
巨大な剣を振りかざすと、禍々しい色の斬撃をこちらに向かい飛ばしてくる。
「大振りだな」
とはいえ、この手の技は見飽きている。
俺は射線上から身をそらす。俺のすぐ隣を斬撃が轟音と共に通り過ぎ、背後にあったジャングルジムを粉々に打ち砕いた。
「やれやれ、明日から子供は何で遊べと?」
「ぬかせ!」
飛び道具ではらちが明かないと悟ったのか、それとも勢いか。
偽ソロモンは剣を振りかぶり俺に向かって突進してくる。もっとも、振りが大きい上に遅い。
俺は奴の手首を押さえ剣を振るえなくする。
「ライダーとしてのスペック、完成度は素晴らしいがそこまでだ。技の冴えが無い」
たとえハンドレッドの生み出した模造品といえども、ソロモンほどのライダーなら通常は苦戦を免れない。
おそらくはあの偽エルド以外はルーキー。とあるライダーたちに幹部クラスが討ち取られて、ハンドレッドは戦力が激減している?
いや、再訓練中でこいつらは落第生なのか?
いくらなんでも弱すぎる。
「なるほど……」
「なんだ?」
「貴様らの目的が読めてきたぞ!」
俺は偽ソロモンの手首を返すと足を払い、そのままぶっこ抜きぶん投げる。
「なっ!?」
突然の事に対応できず天地を逆さまにして宙を舞う偽ソロモンを打倒するために、俺はエネルギーを拳に込める。
偽エルドとジオウの戦いは熾烈を極めていた。
いや、熾烈などとは呼べないか。
「屑鉄にしてくれる、ジオウ!」
偽エルドの背後の地面から、巨大な岩石が地面を突き破り出現する。
岩石は宙を舞うと、勢いをつけジオウに向かい飛んでいく。
だが、ジオウは慌てる事などしない。
取り出したウォッチをベルトに装着させると、アーマーを呼び出す。
【アーマータイム!】
唐突に出現したマゼンダの髪をもつそれは、バラバラになったかと思うとジオウの体を覆っていく。
最後に筒状のパーツが両腕に装着され、新たな姿へと変わる。
【LEVEL UP! EX-AID!】
高らかに謳い上げられるのはエグゼイドの名。
仮面ライダージオウエグゼイドアーマー。それが今の彼の名だ。
「よっと、おっと、それっと!」
エグゼイドアーマーを装着したジオウは軽快な音と共に飛び上がると飛んでくる岩石の上に着地。さらにその岩を足場に再度跳躍、別の岩に飛び移る。
機動性に富みアクロバティックな動きを得意とするエグゼイドアーマーだからできる芸当だ。
八艘跳びならぬ八岩跳びといったところだろう。
「くらえっ!」
そのまま偽エルドの懐に飛び込むと、筒状のハンマーとなった拳を叩きこむ。
【HIT! HIT!】
幻夢系ライダー特有の文字が浮かぶ不思議なエフェクトが付く攻撃が偽エルドに突き刺さる。
見た目こそコミカルだが、その威力はコミカルなんてものではない。
偽エルドの装甲がひしゃげていく。
「うぉおおお!」
「お前たちの目的、白状してもらうぞ!」
「話すと思うか!」
攻撃と攻撃のわずかな隙間をつき、偽エルドの手から金色のビームが迸る。
おそらくはグリオンが使っていたという黄金錬成の輝きだろう。
だが、百戦錬磨の魔王は伊達ではない。瞬時にエグゼイドアーマーを脱ぎ捨てるとビームに対する盾とする。
エグゼイドアーマーが金色の塊と変わる瞬間、アーマーそのものが消える。
おそらくは力の塊に戻したことにより、黄金錬成をキャンセルしたのだろう。そもそもオリジナルですら金メッキに過ぎないビームが果たしてジオウに通用するかという問題もあるが……。
「はぁっ!」
消えたエグゼイドアーマーの背後から、剣を携えたジオウが踏み込む。
そのまま剣を横に一閃、偽エルドの胸に一文字の火花が飛び散った。
「ぐおおおおっ! おのれジオウ、またしても我らの邪魔をするのか!」
「お前たち、加古川を連れ出して一体何に使う気だ!」
またしてもって事は、俺らが知らない遭遇があったという事か……。いや、それ以前に脱走を手引きしたのがハンドレッド?
いや、俺の予想通りならハンドレッドの狙いは戦力増強。加古川の中に眠るアナザーオーマジオウの力の残滓、それが目的だろう。
だが、何度も加古川飛流は逃亡に成功しているだと。
……違和感なんてものじゃない。
俺の中で加古川に対する警戒度が一気に上がると同時に、この戦場にいるはずの加古川の姿を探し出す。
……いた、ジオウの背後!?
先ほどまで見せていた気がふれた弱者の姿はそこには無い。
明らかに目的を持つ者のみが見せる意志の輝きがそこにはあった。
今までのは演技!? もしくは何かのキーワードで意識が覚醒するように仕掛けていたか!?
まずい。
首筋がピリピリする、猛烈な嫌な予感が俺の意識を支配する。
そして、俺の動きはほぼそれと同時だった。
ライダーパンチを即座に中止。落ちてくる偽ソロモンの腕を掴むと全力でジオウとエルドに向かい投げ飛ばす。
「ジオウ、その場をどけ! 危ない!」
「えっ!? えええっ!?」
唐突な俺の声にジオウが困惑するが、俺はそれを無視して加速状態に入る。
ジオウに飛びつこうとする加古川の手に見えるのは……先ほどまでむなしくボタンの音が響くだけだったアナザーウォッチ!?
だが、今は明らかに何らかの力の放つ輝きを灯している!?
「ちいっ! ショッカーの犬め、気がつきやがったか! だが、もう遅い!」
飛んでくる偽ソロモンの体を避けながら、加古川はアナザーウォッチのボタンを強く押し込む
次の瞬間、ウォッチから莫大な闇が噴き出し辺りを包み込む。
くそ、間に合わない!?
その闇に、ジオウや偽エルドや偽ソロモンだけではなく、俺まで飲み込まれたのであった。
新章突入、ジオウ編です。
たぶん時系列はTV正史→令ジェネ→マジェス→7人→OQ→ファイナルステージと思われる(無理やり
ライダー玉突き事故でだいぶストーリーは変わっているかもしれないけど。
あと、エルドとゴルドの名前がややこしいんだよ! 蛮野ぉ!(八つ当たり