ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
「申し訳ありません……。力及ばずに……」
結果だけ見れば、依頼は失敗だった。
探し求めていた茂木憲太は正体不明の怪人により心臓を一突きで殺害され、無言の帰宅……すら出来なかった。
超常現象がらみの被害者……さらに、溶原性細胞の症状がみられる死体だ。
遺体は厳重な管理下の元で処分となるか、または遺体の一部は特殊犯罪のサンプルとして保管される……。
彼は遺体すら帰れないのだ。
被害者のご両親および恋人の姉ヶ崎峰子の絶望はどれほどのものだろうか。
「納得いかないって表情だね」
事務所に戻った翔太郎を出迎えたのは、相棒のこんな言葉であった。
「まあな……」
その言葉を流しながら、翔太郎は自らの椅子に深く腰を掛け、帽子を顔の上に乗せる。今は誰にも表情を見られたくはない。
公的には怪人等の特殊犯罪に巻き込まれて死亡……という事になる。
実際は本人もガイアメモリを使用しており、純粋な被害者とは言えない。だが、どうやらあの黒い仮面ライダー1号は殺害の際にガイアメモリの挿入スロットも破壊していたらしく、茂木憲太がガイアメモリを使用していた証拠は何も残らない結果となっていた。
「何考えてたんだ、あのブラックライダー」
帽子の端から見える翔太郎の目が鋭くなる。
あれは噂に聞く仮面ライダーの偽物、ショッカーライダーだろう。
素直に考えれば証拠隠滅だ。実際、黒服やコックローチドーパントは連れ去られた。
『愛するものを貪り喰らう化け物だ……。ここで死なせてやるのが……慈悲だ……』
思い出すのはあの時戦った黒いライダー。
奴の瞳は赤い作り物の異形の目だ。表情などわかるはずのない。だが……。
「止めを刺した時あいつの目は、泣いていた……」
相棒であるフィリップにすら聞こえないような小さな声でつぶやく。
それは左翔太郎の気のせいかもしれない。いや、ショッカーの無情さを考えれば、そう考えた方が合理的だ。
『どうやら貴様は嵌められたようだな』
奴は何を知っていた……。
このまま事件を終わらせるには、あまりにも謎が多すぎる……。
決めるのは一瞬だ。翔太郎は立ち上がると相棒に決意を告げようと声をかける。
「フィリップ! 亜樹子!」
「調査を続けるんでしょ。いつもの事じゃん」
「僕としても彼の言葉は気になるところだ」
最初から分かっていたよ。そんな表情を浮かべている探偵事務所の面々に翔太郎が若干ばつが悪そうに眼元を隠す。
窓際で眠りながら人間たちの会話を聞いていた猫のミックが、何をこの若造はかっこつけているんだとの視線を向ける。
「しかし、錬金術か……石ころを金に変える秘術、他にも不老不死の薬を作ったりもする……と、一般では言われている。ただ、現在は否定されている学問だね」
「魔法があるんだ。実は錬金術が存在していても不思議じゃねえな」
彼らの脳裏に浮かんだのはかつて共闘した指輪の魔法使いだ。
「あんたたちの会話を聞いていると、自分の常識が崩れていくわ……」
そんな二人の会話に、亜樹子がなんとも言えない微妙な表情を浮かべる。
ガイアメモリだけでもお腹がいっぱいなのに、この世にはどれだけ不思議があるというのだ。
「そうは言うけどな……。外でライダーやっていると、鬼だ妖怪だゴーストだ吸血鬼だとかとんでもない代物には大抵出会っているからなぁ……」
「今更その列に錬金術が加わっても驚くほどではないね」
「一度じっくりとライダー活動で何と出会ったかを聞きたいわ……」
口ではそういうものの、聞いたら聞いたで後悔しそうだなと亜樹子は考える。
まぁ、そんな亜樹子をよそに翔太郎とフィリップの二人はあの黒いライダーの言葉を考察する。
「錬金術か……。やはりあるんだろうな」
あの何もかも見透かしたかのような黒いライダーは、わざわざ偽りのキーワードを伝えたりはしないだろう。根拠はないが、妙な確信とともに二人は話を進める。
「ああ。だがこれだけではキーワードが足りない」
「わかってるさ。足を使うのは俺の役目だ」
まず翔太郎が最初に確認を行ったのは情報の再確認だ。
あのライダーの言葉を信じるなら、真に狙われていたのは自分たち……もしくは自分たちと、あの黒い仮面ライダーだ。
どこかに見落としは無いか、そう考えたのだ。
八伊木製薬……。永州市に本社を構える世界的な製薬会社。先進的な薬品開発で知られているものの、翔太郎の調べられる範囲で特段後ろ暗い企業活動はしていない。
照井の言うショッカーのフロント企業とは思えぬクリーンさだ。
だが……。
「八伊木か……。俺が若いころ……、まだ昭和の頃だ。あの会社で治験のバイトをした奴がいたな」
「へえ、帰ってこなかったとか?」
かつては口利き屋をやっていたという老人は語る。
「どこのホラーだよ。アル中一歩手前だったのに、ビシッと手を挙げて挨拶をする真面目な奴になってたな……。よっぽど良い薬を飲まされたんだって仲間内で話題になったぜ」
「その人は?」
「しばらくして姿を見なくなったな。風の噂じゃ田舎に帰ったとか……」
それ、絶対に何かされたんだろう。翔太郎はそう思ったが、あえて口にはしなかった。
茂木憲太に関する表向きの経歴はすぐに分かった。
永州市出身。高校までは地元で過ごし、八伊木製薬の出資する奨学金を利用して東京の大学に進学。卒業後は八伊木製薬に就職する。
本社の研究チームを経由し、風都に新設された研究所の所長に就任。
普通に考えれば、華々しくはあっても普通の経歴だ。だが、八伊木製薬がショッカーのフロント企業という情報、そして彼の最後を考えると別の可能性が浮かび上がる。
かなり早い段階から、ショッカーについて気が付いていた?
最後に依頼人の姉ヶ崎峰子……。こちらは風都出身。幼少期に起きた悲惨な大規模爆破事件により両親を失う。その後は東京の親族に引き取られ大学卒業まで東京で過ごす。
大学卒業後は故郷の風都に戻り薬剤師となる。
幼少期の事件こそ悲惨だが、そこを除けば珍しい経歴ではない……だが……。
「検索を始めよう」
鳴海探偵事務所のガレージ。実質的にはフィリップの根城となっている一室で、彼は厳かに宣言する。
その瞬間、フィリップの意識はどこまでも広がり、やがては此処ではない何処か……どこまでも広がる白い書庫へと誘われる。
これがフィリップの能力。『地球の本棚』と呼ばれる認識の空間にダイブして、地球に刻まれたありとあらゆる知識を閲覧できるのだ。
ただ、そこにあるのは地球の全ての知識だ。その数は人の身からしてみればまさしく無限に等しい。一つずつ知識の本を読んでいれば、一生を費やしても必要な知識にたどり着くのは不可能だ。
必要なのは、その知識に至るキーワード。
強力無比な力ゆえに、使う者の知性が試される。そんな力である。
「知りたい項目は……現在に生きる錬金術。一つ目のキーワードは当然……『錬金術』」
フィリップの意識下の本棚が音を立てて動き出し、一気に整理がなされる。
だが、その数はまだ膨大。当たり前だ、神秘の意味での錬金術の他、財テクにも錬金術という単語は用いられる。
「次は、金融等の一般的な財テクの意味での錬金術を候補より除外……」
書庫の書物が一気に減る。だが、さらに省かなければならない情報は多い。
「続いて創作および、近代以前の記録を候補より除外……」
知りたいのは、現代の錬金術だ。まだ現在の科学技術が確立する前の記録や創作はノイズになってしまう。
さらに書庫の書物が減る。それでも膨大な数の書物が書庫に残る。
これにより、フィリップは一つの仮説が正しかったと確信をした。
「これは……。少なくとも錬金術は単なる空想の産物ではなく、現在にも社会の裏で息づいているようだ……」
「マジかよ……」
あっても不思議ではないと考えてはいても、やはり錬金術が実在しているとわかると驚きが勝る。
とはいえ、驚きをかみしめるより先にやる事はあった。
ある程度、今回の事件に関する目星はついている。今調べることは証拠固めと……攻略法だ。
「八伊木製薬……、風都……。どちらも錬金術では絞り込めない」
そして、絞り込めないという事象からでもわかる事はある。
翔太郎は苦虫をかみつぶしたかの表情を一瞬だけ浮かべると、次のキーワードを指示する。
「フィリップ。キーワードは……東京都砧区襟草だ」
「東京?」
「ああ、依頼人と被害者が出会った町だ」
なるほど……。合点の行ったフィリップは素直にそのキーワードを検索する。
驚くほどの速度で書庫の本が整理され消えていく。
それと同時に、書庫の姿が通常ではありえない乱れ方を繰り返し、謎のワードが浮かび上がっては消えていく。
「ケミー……? 黄金錬成……? な、なにが起きているんだ……!?」
通常ではありえない反応にフィリップが困惑する中、やがて一冊の書物が彼の手元に残った。
フィリップはその書物を慎重に手に取り、情報を吟味する。
やがて、彼はぽつりとその書物に記されていた組織の名を口にした。
「これは……錬金連合?」
その日、黒鋼スパナが街に出た理由は……単に食事に出ただけで深い意味はない。
もう少し詳しく説明をするならば、錬金アカデミーこそ新入生が増加しているとはいえ、大本の錬金連合に関しては幹部どもが逃げ出してからガタガタなのに変わりはない。立て直しの業務は多岐にわたり、スパナが書類を確認しているうちに昼をだいぶ過ぎた時間になってしまったというだけだ。
ある悪党が起こした世界の危機から数か月。あれほどの事件があったのにも拘らず町は全てを忘れたかのように日常を繰り返している。
良くも悪くも、世の中というのはそういうものなのだろう。
そんな日常の街をスパナは歩く。
とはいえ、まずは昼食だ。
さて、何を食べるべきか。一番手軽なのはコンビニかファーストフードだろうが、気分的にそういう店に入りたいとは思わない。
かといって時間が時間だ。すでに昼は過ぎまともな店は休憩時間に入りつつある。客商売と言えどもぎりぎりというのは気が引ける。
結局スパナが選んだのは、知り合いの切り盛りする店であった。
彼が入った時、客はすでにはけており、店はガラガラであった。
ようやく一息つけるかといった時間にやってきた客に、店主である夫人は嫌な顔を一つせず、むしろ喜んで迎えてくれた。
「いらっしゃい。あ、でもごめんなさい、宝太郎は今日は出かけていて……」
「いや、今日は食事に来ただけだ」
「あら、そうなの。なら好きな席に座って頂戴」
残念ながら戦友と呼べる少年は不在であったが別に大した問題ではない。
今日の目的はあくまで食事だ。
適当に注文をしてテーブル席に腰を掛ける。体力には自信があるが、それでも終わらない書類仕事は相応に疲れがたまっていたらしく、この男にしては珍しく気を抜き店内を何とはなしに眺める。
店に女将が料理をする音だけが響く中、不意に入り口が開いた。
自分と同じ遅い食事だろうか?
そんなことを考えながら視線の片隅に来店者を収めた瞬間、スパナから弛緩した気配が消し飛ぶ。
そこにいたのは見慣れぬ男だった。
黒いチョッキに同系列のスラックスとネクタイ。どこかクラシックめいた衣装ではあるが、奇抜というほどではない。
はねた茶髪に帽子をかぶった男は一見すればごく普通の長身の男だ。
だが、スパナの直感が最大限の警報を発する。その一挙手一投足が、視線の一つ一つが戦いを生業とする者のそれであった。
男は店の中を一瞥すると、まっすぐにスパナの座る席に向かう。
「すまない、相席は良いかい?」
男は帽子のツバの位置を指先で正しながら話しかけてくる。
「ああ、かまわないが」
戦えば……五分と五分……。負ける気などは無いが、この店が無事で済む保証はない。スパナは緊張しながらも静かに頷く。
その返答に、男が怪しげな笑みを浮かべ対面に座ろうとして、ふと何かに気が付く。
「おっと、挨拶がまだだったな。俺の名は左翔太郎。見ての通り、探偵だ」
もし、この場に鳴海探偵事務所の所長様がいた場合、怪しげな男……つまり左翔太郎の頭には全力のツッコミが入っていただろう。
スパナが警戒した笑みは、『あれ、これってハードボイルドじゃね? 今の俺イケてね?』などと考えたニヤケ面だったのだから……。
ライダー同士の交流は、有ったり無かったり……(話の都合)
所で、この話の主人公誰だっけ?
ところで、よく考えたらこれ、ライダー全部復習しないとキャラエミュ出来なくない!?
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お前の始めた物語だろう
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(見なくても)何か、行ける気がする!
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無理はしなくて良いのよ