ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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 番外編1話除いて50話達成です。
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第50話 episode・ZI-O 幕間・2025:リペア・ウォッチ・マイスター

 その日、クジゴジ堂の前は異様な状況となっていた。

 

 閑静な住宅地の一角にあり、修理の依頼でもない限り近所の人が通りすがる程度の人通りしかない立地のクジゴジ堂だ。

 だが、この日は唐突に黒塗りの高級車と複数台のバンが乗り付けてきたのだ。まるで何か荒事でも起きたかのような状況だったが、混乱させたのはそのバンから降りてきた人々だった。

 まず降りてきたのは、顔なじみというか入り浸っているゲイツだ。

 乗りなれない高級車を万が一でも傷つけないようおっかなびっくり降りてくるゲイツに続いたのは髪を後ろで縛った謎の若い執事である。

 そして最後に降りてきたのは、量販店で購入したと思しきくたびれたスーツを身に纏った男だった。

 何の統一感も無い面子に続き、複数台のバンから結構な人数の男たちが降りてくる。

 彼らは店を守るように包囲する。一部黒マスクを脱ぎ忘れて上司に怒られているのはご愛敬だ。

 

 はっきり言って営業妨害に等しい仕打ちだが、近所の人たちは動じていない。

 怪しげな祝福男を含め、店主の修理の腕を頼って妙な人物が寄り付くことの多いクジゴジ堂だ。『あら、またソウゴ君のお友達かしら?』程度である。

 

 むしろ気にしていたのは、店から飛び出してきた少女とロングコートの怪しげな男の方だった。

 唐突な事態に、見慣れた顔に食って掛かるように問いただす。

 

「ちょ、ちょっと!? 何事なのよ、これ!?」

 

 彼女の名は月読有日菜、もしくはツクヨミ。常磐ソウゴの学友の一人であり、偉大なる魔王の家臣の一人である女性だ。

 一度洗脳された事もあり、今回は加古川飛流捜索に関してはウォズと共にクジゴジ堂の警護兼留守番役となっていた。

 

 普通なら警戒する必要のある人数だが、ゲイツと共にやって来た事もあり警戒の度合いは一段低い。

 

「いや、ちょっとな……」

「ちょっとで済まされる人数ではないと思うが?」

 

 一方、警戒を解いていないのはアシンメトリなロングコートを身に纏った偉大なる魔王の従者であるウォズだ。

 ゲイツに連れ立ってきた男たちの消えない血の匂いを嗅ぎ取り、あるいは姿の見えない我が魔王の事を考え鋭い目でやって来た人間たちを見つめる。

 

「あれ、いらっしゃい。ソウゴくんは?」

 

 そんな中、遅れて出てきたのはこの店の店主、常磐順一郎だ。

 朝になっても帰ってこないソウゴの身を案じてはいても、開店早々唐突にやって来た集団を見ても一切動じる事は無い。

 まぁ、イマジンの集団に比べれば常識的な見た目なのだからさもありなん。慣れというのは怖いものだ。

 

「ソウゴは……」

「貴方が修理の達人として名高い常磐さんですか!?」

 

 ばつが悪そうに答えようとするゲイツの声にかぶせるように、スーツ姿の男が大きな声を上げる。

 気を使ったのはショッカーの改造人間であるクモ男である。今回アインロールドと共に派遣された4人の改造人間の一人だ。全員連れだって動くのも無駄なので、今回の折衝役を任されたのだ。

 なお、ミカへの報告を任されたくじ運の悪い男はコウモリ男である。

 

「え、えっと、あなたは?」

「ああ、申し遅れました。私は所加亜商事の営業部課長を務めております山代と申します。この度はうちの上司がソウゴ君に大変お世話になりまして」

 

 その言葉と共に、スーツの内ポケットから名刺を取り出し順一郎に手渡す。

 名刺には都内に本社を構えるそれなりに有名な商社の名前と住所が記されている。この企業は実在しており真っ当な経済活動も行っているが、その正体はショッカーの隠れ蓑の一つである。

 

「ああっ、これはご丁寧に。え? ソウゴくんが?」

「ええ、今は上司と共に少々手が離せない案件を手伝っていただいておりまして……。ご家族に連絡が遅れまして大変申し訳ございません」

「ああ、いえ。ソウゴくんがお仕事を……」

 

 ちょっと感極まって感動する順一郎だったが、そのような言葉に騙されない人物が二人。

 もちろん、ツクヨミとウォズだ。なにせ二人はソウゴが昨晩も加古川の捜索に出かけていた事を知っている。さらにウォズに至っては所加亜商事の正体も知っていた。

 当然、そんな連中を連れてきたゲイツに対する視線が自然と厳しいものとなる。

 

『ゲイツ君。これはどういう事かな?」

 

 青筋を立てながら視線に強い意志を込める。

 その様子に、とても居心地の悪そうなゲイツの弱々しい視線がこう答えた。

 

『まて、話せばわかる』

『先に説明してもらいたいのだが?』

『いや、その前に用事を済ませないと』

 

 精神感応能力など無いはずの二人の目と目だけで行われる会話に、ツクヨミが思わず呆れ顔を見せる。

 そして、3バカトリオの2名に付き合っていてもしょうがないと、この場に似つかわしくない最後の一人に話しかける事にした。

 見た目は髪を後ろで縛った若い執事だ。とはいえ、ゲイツやショッカーとともに現れたという事はただものではないだろう。

 

「それで、貴方は?」

 

 ツクヨミの問いかけに、広くあまねく世界を照らす生ける伝説であるマイロードに仕える執事は浮かべた笑みを崩す事無く、礼儀正しく一礼をする。

 それはそうだ。既に一般市民となってはいるが元は異世界の王族。

 

「お初にお目にかかります、ツクヨミ様。私、広くあまねく世界を照らす生ける伝説であるマイロードにお仕えする忠実な執事のバトラーと申します。以後お見知りおきを」

「は、はぁ……」

 

 バトラーと名乗った執事の名乗りに、ツクヨミの中で何か嫌な警報が鳴り響く。

 その嫌な予感はすぐさま現実のものとなる。

 

「まて、それは聞き捨てならない。世界を導く事は我が魔王の役目」

「無論、ジオウのお力はよく存じ上げております。しかし、カグヤ様はすでにその輝きにより我らが世界を照らしておられます。その点、すでにジオウよりマイロードは一歩先を歩んでおられます」

「だが、仮面ライダーレジェンドが世界を救うより前に我が魔王は幾度となく滅亡の危機より世界を救っている。実績は我が魔王が勝っているのではないだろうか?」

「マイロードの事を既にご存じでしたか、ウォズ様」

「ハンドレッドの事を調べれば君のロードである仮面ライダーレジェンドには自然とたどり着く」

 

 そのまま、二人の視線がぶつかり合い、互いに不敵な笑みを浮かべる。

 あ、こいつら同類だ。

 ツクヨミは絶望的な表情を浮かべ、精神衛生上の都合で早々にツッコミを放棄する事にする。

 

「マイロードはその輝きを維持するため、毎朝の宝石風呂による沐浴を欠かしておりません」

「くっ、確かに我が魔王は美容については無頓着。流石はゴージャスなレジェンド。だが、我が魔王も王になるため仕事にもつかず修業を欠かしていない」

「なっ、流石はジオウ。やはり一筋縄ではいきませんね」

 

 ツクヨミがツッコミを諦めている間にも二人の従者の会話が謎の主自慢に移行している。

 こいつらと付き合っていると精神汚染されそうだし、ショッカーを連れてきたゲイツはウォズの視線に耐えきれず小動物化している。

 しかたがないので、唯一まともな会話をしている順一郎とクモ男の会話に耳を傾ける事にした。

 

「ですので、このウォッチの修復をお願いしたいと思いまして、まずは見ていただきたいと」

「えっと、うちは時計屋なんですけど……って、ウォッチ!? 時計の修理!?」

「はい、これなのですが……」

 

 そう言ってクモ男がアタッシュケースから取り出したのは、加古川が直前まで持っていた謎のアナザーウォッチであった。

 

 

 

 

 

「つまり、あのウォッチはハンドレッドと加古川飛流の作り出した世界につながる鍵という事か?」

「その通りでございます」

 

 順一郎がウォッチの修理に工房に入ってしまったことを良い事に、勝手知ったる人の家とリビングを占領した一行は状況の説明と作戦会議と相成った。

 皆がテーブルに腰を掛けてバトラーの話を静かに聞く中、一人直立不動の姿勢を貫いたバトラーが自分の知る情報を開示していく

 

「仮面ライダージオウが歴史と力を継承をしていない、数多くの後輩ライダーたち。その活躍をエミュレートしたアナザーオーマジオウの力を高めるための訓練……に見せかけた研究、力の奪取のための施設。そこへ通じる鍵でありました」

 

 加古川の脱走と訓練を手助けしていたハンドレッドではあったが、当然だが彼の事を信用していたわけではない。

 その力を解析、更には奪うための計画であり、それを察知した加古川にまんまと出し抜かれた形となったのだ。

 

 ゲイツとクモ男は車の中ですでに聞いていた話なのだが、ウォズとツクヨミにとっては初めて聞く話であった。

 

「鍵であった? 過去形なのか?」

「はい、既に加古川飛流とその協力者により施設は占拠、改造されており全く性質の違う空間となっております」

「どのような空間に?」

「一言で申し上げるならばアナザーオーマジオウを強化するための生贄の祭壇でしょう。すでに相当数の一般人と何人かの仮面ライダーが捕らえられていると聞き及んでおります」

 

 加古川の力を奪うための施設は、そのまま加古川に力を与えるための施設と作り替えられた。

 訓練などといった悠長な手段ではなく、手っ取り早く力を得る為に物語が語られる事の無いライダーや一般人を捕らえ力を奪っているという。

 そして、その最後の生贄として選ばれたのが……。

 

「ハンドレッドの5人。そしてジオウであるソウゴ様なのでしょう」

 

 アインロールドが弱いと評したハンドレッドの5人のライダーであったが、決して弱いわけではない。

 確かに彼らはルーキーではあったが、並のライダーなら苦戦を強いられる戦闘力を有している。

 元々ショッカーの大幹部級の戦闘力を持っていたアインロールドがここ数カ月の連戦で大きく力を増しており、さらには今の彼が戦力を比較する際の基準が伝説のライダーたちになっていただけの話だ。

 

「まて、そこまでは聞いた。だが、それならアインロールド様はなぜ捕らわれた!?」

「俺も聞きたい。仮面ライダーというのなら、何故俺だけ無事なんだ?」

 

 クモ男とゲイツがほぼ同時に質問をする。

 その質問にバトラーはあくまで推測であると前置きを入れながら答えた。

 

「ゲイツ様を捕えなかったのは、ジオウと同時に捕らえると手に負えなくなる、そう考えたのだろうと思われます」

 

 加古川飛流は過去に救世主の力を見せたゲイツに手痛い反撃を受けている。さらに言えばゲイツはジオウとの連携も熟達している。

 良くも悪くも狡猾な男の事だ。リスクを避ける為にゲイツを取り込むことを避けたのだろう。

 

「そしてアインロールド様が捕らえられたのは……、ついでではないでしょうか?」

 

 本来生贄に取り込む予定だったハンドレッドの八人の内三人は倒されていてもういない。

 力不足になるかもしれないという時に、たまたま都合よく力を持つライダーが一人いた。なのでついでとばかりに捕らえた。

 おそらくはそれだけだとバトラーは推論を述べる。

 

「そんな……。いや、あの方の運の悪さは確かに……」

 

 あまりといえばあまりにも酷い推論ではあったが、アインロールドのここ最近の運の悪さは組織内でも噂になるレベルだ。

 なんせダブルやネオショッカー大首領、V3などに遭遇しているのだから部下からも呆れられよう。

 もっとも、時にライダーたちを利用しながらもその危機を全て乗り越え実績を残しているのだから、彼の名声は留まる所を知らない。運の悪さも善し悪しだ。

 

「さて、そろそろ本題に入りましょう。アインロールド様と、ジオウ様の救出の件でございます」

 

 ひどい推論に皆があっけにとられている事を良い事に、バトラーは強引に話題を変える。

 

 

 

※※※※※

 

 

 

「がああああああっ!」

 

 3つ目と4つ目の偽ウォッチ。偽リバイウォッチと偽バイスウォッチを入手した際の衝撃は文字通り倍の衝撃だった。

 苦痛と奪われるエネルギーの衝撃に苦痛のうめきが漏れ、冷や汗が滝のように流れ落ちる。

 視界はぐにゃりと歪み、足元がふらつく。

 

「アイン!」

「アインロールドだと何度言えば……」

 

 如月さんといい、常磐さんといい、何だって人の名前を略すんだろうね。

 ふらつく俺を支えようとする常磐さんを手で制しながら、俺は何とかナノマシンの回復機能を全開で回し自力で歩けるまでに回復させる。

 

「本当に大丈夫!? 顔色が真っ青だよ!」

「問題無いと言っただろう。このウォッチにはエネルギーを奪うシステムが組み込まれている。あんたが触れて戦闘不能になるほうがよほどまずい」

 

 パーカーを破って作った簡易リュックに偽ウォッチを放り込みながら、俺はさらに言葉を続ける。

 この偽ライダーラッシュがどこまで続くかわからないが、ジオウのコンディションが万全なほうが脱出できる可能性は高い。

 

「先ほども言ったが、俺のエネルギーは無限だ。一時的にエネルギーを奪われても回復が出来る」

 

 この言葉に嘘は無い。

 エネルギーを奪われる際のダメージは決して小さくないが、ナノマシンで回復できる許容範囲だ。そして俺のエネルギーシステムは加古川の世界でも順調にエネルギーを回復させている。

 今のところ、俺の苦痛を除けば十分に許容範囲内というのが俺の分析だ。

 

「わかった。でも、無理そうなら正直に言ってね」

「その時は言うさ。しかし、どんどん悪夢的になっていくな……」

「それは確かに」

 

 休憩がてらの軽口に、常磐さんも乗ってくる。

 まぁ、蠢くおどろおどろしい顔のある樹木や、骸骨のオブジェがある街並みを見れば自然と同じ感想に行きつくのも道理だ。

 

「偽セイバーはなんかムキムキマッチョで剣はぐにゃぐにゃに歪んでいるし、偽リバイと偽バイスに至ってはまるでぶちまけたインクみたいだった」

 

 常磐さんのボヤキには、多分にうんざりとした感情が含まれている。俺も全くの同感だ。

 偽ゼロワンは精々輪郭がぼやけている程度だったが、以降のライダーや敵はもうまともな姿をしていなかった。はっきり言うと、悪い夢の中に出てくる姿なき怪物、そんなイメージの連続だ。

 さらに言えば、偽セイバー以降は影法師にされた人は狙わず、直接常磐さんのみを狙ってきている。

 

「まったく、こちらを狙うだけなら影法師など用意しなければいいものを」

 

 幸い、狙いが分かっている以上は敵を移動して影法師のいない場所までの誘導は可能だ。

 面倒ではあるが、それだけだ。というか、何のために影法師を配置しているんだ、加古川は?

 

「捕らわれた人を守る事が楽になったと考えよう。今は脱出誘導する手段も無いし」

「思い切りが良いな」

「出来る事と出来ない事を見極めないとね」

 

 俺のボヤキに常磐さんはきっぱりと断言する。

 このあたりの思いっきりの良さ、判断できるのが王の資質の一つだろう。

 優柔不断なリーダーは部下を危機に陥らせる。

 

 そんな事を話していると、休憩時間もどうやら終わりの様だ。

 何も無い空間に門が生まれ、重厚な音を立て開いていく。

 

 門の向こうに見えるのは、瓦礫が散乱する破壊された町。

 俺の記憶が正しければ、仮面ライダーギーツの冒頭の舞台。

 

 次の敵は偽ギーツという事なのだろう。

 

「行こう、アイン」

「わかった」

 

 こうして、俺と常磐さんは次のエリアに歩みを進めるのだった。

 




偽セイバー、偽リバイスはキンクリ。期待していた人がいましたらごめんなさい。
流石に偽ライダーを5人書くのは厳しいです。

あとおじさん、イマジン4人組を前にソウゴ君の友達で済まし、デンライナーを大きな時計と言って修理可能な豪の者です(原作。
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