ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
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最初のゼロワンは輪郭がぼやけた出来の悪い偽物だった。
セイバーやリバイとバイスは、明らかに造形を醜悪にしたアナザーライダーもどきだった。
そして、続いて出てきたギーツの偽物。いやぁ、これは無いだろう。
というか、あれを偽物と言って良いのだろうか? 割と判断に悩む。
「何、あれ?」
「さあ?」
俺の隣で同じものを見上げていた常磐さんがポツリとボヤく。ジオウとして多くの妙なものを見てきただろうこの人でも、今回現れた存在のインパクトに呆れた表情を隠せないでいる。
多分俺も同じ表情をしているだろう。それくらい出てきた存在のインパクトがでかすぎた。
遠めに見た限り、大きさは全てを合わせた全長が100m程度だろう。全長の内7割程度は9本生えている尻尾となっている。
そう、宙を舞う純白の九尾の狐が無人の街を破壊しながら大暴れしているのだ。
しかも暴れまわっているのは九尾の狐一匹ではない。同じサイズの紫のバッファローや緑の狸と街を盛大に破壊しながら戦っているのだ。
口から火の玉を吐き、尻尾でビルをなぎ倒し、牛は角から雷を放ち、狸はなんかすごいビームを目から放っている。もう、元が何だったかわからないレベルでやりたい放題だ。
おそらくはあれがギーツもどき、タイクーンもどき、バッファもどきなのだろう。破壊音は別の場所からも聞こえてくるので、多分見えない場所でも巨大な化け物同士が争っている。
ギーツと言えばデザイアグランプリでありライダーバトルだ。それを模しているつもりなのかもしれないが、はっきりと言ってあれはライダーバトルではなく怪獣大戦争であった。
「で、君は何やっているの?」
「にゃぁ?」
ちなみに常磐さんが話しかけたのは俺たちの足元に居る猫なのだが、こんなところにいるので当然だが尋常な猫ではない。
耳などに金色の縁取りがあり、目は真っ赤な複眼。ナーゴケミーによく似ている。
というか、この加古川世界のナーゴもどきなのだろうが、怪獣大戦争に関わる気がないのかのんびりと日なたぼっことしゃれこんでいた。
「これまでとは趣が違うエリアだね」
「悪夢的なのは変わらないけどな……」
そう、悪夢的なのは変わりがない。
なにせ、このような事態が唐突に起こるのだから。
最初に気が付いたのは俺であった。
改造人間の強化された耳に届いたのは巨大な羽ばたきの音であった。
何事か? 叫ぶより先に身体が自然と反応する。
「常磐さん! 危ない!」
咄嗟に常磐さんにナーゴもどきを押し付けながら茂みに向かって突き飛ばす。
次の瞬間やって来たのはスズメだった。とはいえ、羽を広げれば人一人を抱えられるほど巨大な怪物をスズメと言って良いのならばの話だが。
スズメの化け物は俺の腕を掴むと一気に上昇し、宙高く舞い上がる。
「舐めるなよ、怪物! 変身!」
流石に巨大な雀の餌になる気は無い。
俺は吊り上げられるポーズのままベルトにエネルギーを集中させる。
全身のナノマシンが活性化、さらに身を覆う強化戦闘スーツが空中に生成され俺の身体を覆っていく。
黒いヘルメットが頭部に装着され赤い複眼が輝く。最後に赤いマフラーが風になびき、俺はショッカーライダーアインロールドの姿へと変わる……。
エネルギーはおよそ半分と言ったところ。相変わらずあのウォッチにエネルギーを奪われ続けているようだ。
とはいえ……問題は無い。
「行くぞ!」
掴まれている腕とは逆の方の腕で巨大雀の脚を掴むと、強引に奴の拘束を引き離す。
って? あれ?
巨大雀の脚をよじ登り、奴の背中にマウントしながら、俺の意識の半分はある事に困惑をする。
なんせ、変身時の暴走モードが発生していないのだ。
ミカの影響下など特定条件下なら暴走モードが発生しない事はあるのだが、当然傍にいない。
エネルギーを吸収されすぎて血の気が抜けたか……。なんか嫌な予感がするが、今は好都合と思っておこう。
俺は巨大雀の上によじ登ると、奴の頭部をめがけてパンチを繰り返す。
分厚い羽毛に覆われているのか手ごたえに乏しいが、羽毛による防御力にも限度はある。
俺のパンチを連続で食らい、巨大雀は脳震盪でも起こしているのかどんどんとバランスを崩していく。
「これでとどめだ! ライダーパンチ!」
頃合いを見計らい、赤いエネルギーを収束させたパンチを雀の頭部に叩き込む。
最後に放ったパンチに巨大雀の頭部は砕け、更にその身は赤い粒子となって消えていく。
とはいえ、その巨体が巨体だ。制御を失った巨大雀はその勢いのままビルの外壁に一直線へ突っ込んでいく。このまま巨大雀と心中する気も無い俺は、適当な所で跳躍すると下に向かって飛び降りる。
俺が地面に着陸すると同時に遥か頭上で衝突音と同時に、巨大な閃光とともに爆発が起こった。
「アイン、大丈夫か!?」
「ニャア!」
俺の元に常磐さんとナーゴもどきが駆けつけてくる。
まぁ、俺でもなんとかなるレベルならジオウである常磐さんも無事で当然か。
「あの程度の敵は問題ない」
俺の言葉に、常磐さんがほっとした表情をする。
あの程度でショッカーライダーが何とかなるはずは無いのだが、それはそれとして目の前で宙に連れていかれたインパクトはあるので当然の反応かもしれない。
「助けてくれてありがとう、アイン」
「何度も言うがジオウ、俺の名はアインロールドだ。勝手に略すな」
ショッカーライダーである俺は『規格外品』であって『1』ではない。名前の意味が変わる略し方は勘弁してもらいたいものだ。
そんな抗議の言葉を聞いているのかいないのか、常磐さんは抱えていたナーゴもどきを地面に降ろしつつこう聞いてきた。
「ねぇ、アイン……」
「だから……」
「無理をしてない?」
いきなり何を言い出すのだ、この人は?
一瞬茶化しそうになったが、冗談で言っているようには見えない真剣な表情の常磐さんに俺は言葉を引っ込める。
「さっき、俺を突き飛ばした時の喋り方。あれが君の素なんでしょ?」
「さてな。言い間違える事もあるさ」
やべ。言われて気が付いたが、咄嗟にそういう対応してしまったか?
多少長くいて、気が緩んでいたかもしれない。
「ここで行動を共にしているのは状況が状況だからだ。元に戻れば敵同士、仲良くする気は無い」
俺の言葉に、常磐さんがため息を一つつく。
まるで諦めたかのような、あるいは呆れたかのような顔をこちらに向ける。
「君は昔のゲイツにそっくりだ」
いや、あんな男のツンデレ免許皆伝と同じにされるのは心外だ。
ジオウを倒すのは俺だ、なんて言って助けたりはしませんよ、俺。
純粋に状況的に一番助かる確率が高い手段を取っているのに過ぎないのだ。
「何を馬鹿な事を」
説明をするのも面倒なので、適当に流す。
そんな俺の足元に近づいてきたナーゴもどきは、ぽんとブーツに前足を置く。
「ニャー」
なんか猫もどきにまで呆れられたような気がするのは気のせいか?
まったくもって、俺はそんな人間ではない。
もっとも、そんな事を説明している時間はこの場には無かった。
俺は軽くため息をつくとこう会話を続ける。
「おしゃべりは此処までだ、ジオウ。構えておけ」
「わかっている」
ナーゴもどきの仕草に吹き出しそうになっていた常磐さんだが、すぐさま厳しい表情に切り替える。
先ほどの巨大雀の爆発。町中に響きわたる轟音に、先ほどまで怪獣大決戦を行っていたアナザーライダーもどきどもがこちらに注意を向けたのだ。
ビルの谷間から、巨大な足音と共に巨大な白熊がその姿を現す。
血走った赤い複眼に、金属質の装飾。その大きさはやはり40mはあろうか。喉を震わせ、その姿に相応しい地響きのような唸り声をあげる。
出現したのは巨大熊だけではない。
唐突に周囲に影が差したかと思うと、ビルの上をメタリックなカラーの巨大なコウモリが空を覆い、大通りに停車している無人の車両を蹴散らしながらこちらに近づいてくるのは、全身がパイプまみれの黒い巨大な猪の化け物であった。
この場所からは見えないが、おそらくはあのギーツもどきやバッファもどき、タイクーンもどきもこちらに向かってきている事であろう。
まったくもって、嬉しすぎて涙が出る。巨大な化け物はネオショッカー大首領やヨロイ元帥でお腹いっぱいだというのに。
「来るぞ!」
血走った目の巨大な化け物たちを前に、常磐さんが腰のジクウドライバーにウォッチをセットする。
ベルトが一回転をし、その名を高らかに謳う。
【ZI-O!】
「変身!」
ライダータイムという音声と共に、常磐さんの姿が銀の戦士へと変わる。
仮面ライダージオウ。時の王者が再び姿を現した。
※※※※※
チャンスの筈であった。
仮面ライダーレジェンドと仮面ライダーガッチャード、二人のライダーにハンドレッド四人衆が全て倒されるという、前代未聞の事態が発生した。
多くのハンドレッド構成員にとって目の上のたんこぶであった最強格の四人衆がまとめて消えた。これは自分たちが上に立つチャンスなのだ。
幾多の二線級どまりと目されていた者達が実績を求め動き出した。
彼らのグループが目を付けたのは、オーマジオウであった。
とはいえ、最低最悪の魔王であるオーマジオウに手を出すのは危険が大きすぎる。並行世界に幾多も存在するオーマジオウだが、その全てが常軌を逸した力を持つ。コピーをしようと近づいただけで発見され、制裁を受けるであろう。
故に利用しようと考えたのはアナザーオーマジオウと、そしてその残滓を宿す加古川飛流であった。
幸い、加古川飛流はコントロールしやすい人間であった。
尊大極まりない自己顕示欲、徹底的な他罰思考、他者を顧みない共感性の低さ、激情に支配されやすい短絡思考……。壊れかけていた自我を元に戻し、少々甘い言葉を囁き餌をチラつかせれば自在に操れる。
事実、ジオウとの敵対を囁けばいいように動いてくれた。
力を得る為にと言えば、民間人のみならず怪人や弱小ライダーすら捕え、力に変えてみせた。
後はアナザーオーマジオウの力を分析し、奪取もしくはコピーするだけだった。そのための戦力も整えて見せた……そのはずだったのに……。
用意していた戦力の半数は地元組織に打ち取られ、残りは加古川飛流の餌食となった。
「ぐあああああっ!」
アナザージオウⅡの剣がハンドレッド・バッファの胸を貫く。
致命傷だった。砕け散った胸甲を驚きの表情で眺め、そのまま数歩後退すると仰向けに倒れると同時に赤い粒子となり消えていく。
「残ったのは貴様だけだな」
ハンドレッド・バッファを葬り去ったアナザージオウⅡが嘲りを多分に含んだ声が響く。
すでに連れてきたハンドレッドライダーはエルド一人を残すのみだ。その全てが、アナザージオウⅡの手により倒されている。
「馬鹿な……。貴様にそこまでの力は無かったはず」
ジオウに敗北したことにより、アナザーライダーの力の大半を喪失していた。そのはずだ。
確かに回復の為に一般人や名もなきライダーの力を喰わせた。だが、その程度でここまで回復するはずがない。
恐れおののくハンドレッド・エルドにアナザージオウⅡが嘲笑を上げる。
「貴様らごときが俺を推しはかれると思ったのか? この空間を用意した事だけは感謝してやる」
かけらも感謝の念など感じない言葉を口にしながら、アナザージオウⅡがハンドレッド・エルドに迫る。
恐怖心を煽るよう、あえてゆっくりと、一歩ずつ進む。
「くっ! なめるな!」
その恐怖を振り払わんと、ハンドレッド・エルドがひと際大きく吠えると、腰のバックルのレバーを押し込む。
全身の赤い発光パーツがひと際強く輝き、その力を脚部に収束させる。
「面白い、付き合ってやろう。この最低最悪の魔王の力でな!」
その姿を見てアナザージオウⅡはひと際大きく嘲笑うと、その身に宿す力を開放した。
何処までも深い闇がその身から噴き出したかと思うと、金色のリングがアナザージオウⅡの周囲を回転する。
やがて、そのリングと闇が虚空に掻き消えると同時に、アナザージオウⅡの姿も変わる。
白を基調とした甲冑は、黒い下地に白い衣装をまとったかのような姿に。醜く歪んだ顔はそのままに乱れた髪が頭部に生える。
全身を覆う金色のベルトと、腰に占めるのも同色のベルト。
そう、その姿こそ最低最悪の魔王、アナザーオーマジオウそのものであった。
「所詮平成の遺物! 出来損ない!」
【エル・アブソリュート!】
金色のライダーが破れかぶれの叫びを上げ宙を舞う。
金色の矢となったハンドレッド・エルドがアナザーオーマジオウに向かい突き進む。
「その力を欲したのは貴様らだろう。それに……」
【終焉の時! 逢魔時王必殺撃!】
どす黒い金色の輝きを纏ったアナザーオーマジオウが飛ぶ。
時や空間を揺るがしながら、ハンドレッド・エルドに向かい襲い掛かった。
二つの金色の矢が空中で激突する。ありとあらゆるものを消し去るエネルギーがせめぎあう。
その衝突を制したのは、アナザーオーマジオウ、加古川飛流だった。
ハンドレッド・エルドの身を足から順に砕きながら、アナザーオーマジオウは突き進む。
「そ、そんな!?」
「力を抑える気でジオウの後に生まれたライダーをそろえたのだろうが、過去も未来も俺の前にひれ伏すだけだ!」
次の瞬間、爆音を立ててハンドレッド・エルドの身が砕け散った!
「そ、そんな、そんな!? ぎゃああああああああああ!」
玉座の間にハンドレッド・エルドの悲鳴が木霊する。
それが最後であった。
その身は粉々に砕け爆炎の中に消えていく。ハンドレッド・エルドだったものが残す物など何もない。ただただ、その全てが消失するだけであった。
「最低最悪の魔王よ、さび落としは済みましたかな?」
戦いが完全に終わった。
そのタイミングを見計らい、純白のスーツ姿の男が玉座の影から姿を現す。
「灰ウォズか……、この程度で錆落としになると思うか?」
「流石は最低最悪の魔王。ハンドレッドの有象無象程度では足しになりませんか」
灰ウォズ。そう呼ばれた男がにこやかに笑う。
確かに、彼の顔はジオウの従者を自称するウォズという男に瓜二つだ。違いと言えば服装と後ろで縛った髪、そして手に何も持たない点ぐらいだろう。
一方の加古川は変身を解くと、心底不快そうな表情を灰ウォズと呼んだ男に向けた。
「下らない事を聞くな。それより常磐ソウゴはどうなっている」
「リバイスのエリアをクリア、今はアナザーギーツ……いえ、巨獣どもとの戦闘に突入しているようです」
「そうか……」
本来であれば、ゼロワンやセイバーの核となっているデプライブウォッチにより常磐ソウゴよりジオウの力をはく奪する手はずであった。
だが、どこで誑し込んだのか殺し合わせるはずのショッカーライダーがジオウが負うダメージを肩代わりしている。
まったく余計な真似を。ショッカーらしく化け物として殺しあえばいいものを。
自分が招き入れ、面白そうだと同じ場所に落とした事など早々に忘れ、加古川飛流は内心で毒づく。
「俺もギーツのエリアに向かう」
「ガッチャードのエリアはよろしいので?」
「俺に意見をする気か?」
加古川飛流はギロリと灰ウォズを睨む。
ハンドレッドの奸計を覆し奴らが作った空間を奪う術を持ち込んだ男ではあるが、加古川飛流はこの男の事を信じてはいない。
当然だ。ジオウの従者と瓜二つの男の何を信じろというのだ。
そして、灰ウォズを名乗る男も、こちらを信用している訳では無いだろう。
ジオウを、常磐ソウゴを倒すという一点のみでの協力関係に過ぎない。
「いえいえ、確認を行ったまでですよ、最低最悪の魔王殿」
慇懃無礼な灰ウォズを縊り殺してやりたい衝動を抑えつつ、加古川飛流は空間の扉を開く。
今度こそ、常磐ソウゴを倒す。その一心のみを心に誓い、最低最悪の魔王は自らが選んで戦場へと向かうのだった。
ウォズは何人増やしてもいい。この逢魔降臨暦にもそう書かれている。