ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
その日のカグヤの一日はいつも通りの筈だった。
朝起きるとゴージャスな沐浴を行い、ゴージャスな朝食後、ゴージャスな職務を行う。
ゴージャスなティータイムを途中で挟み、ゴージャスな午前の職務を終了。ゴージャスな昼食後は、ゴージャスなエステに通い自分を磨き、ゴージャスな装束を仕立てるべくゴージャスな仕立屋に向かう。
何もなければ、その筈であった。
「カグヤ様」
沐浴を終えたカグヤに、執事であるバトラーが声をかける。
何事かと振り向くカグヤがみたのは、いつもにこやかな表情を崩さないバトラーにしては珍しく困惑した表情であった。
「どうした、バトラー?」
「タワーに侵入者が現れました」
妙な言い回しだ。
鳳桜タワーへの侵入者自体は珍しくない。ゴージャスな輝きに惹かれ、ハンドレッドが侵入してくることなど日常茶飯事だ。
だが、彼の奥歯にものが挟まったかのような言い回しから察するに、ハンドレッドでは無いのだろう。
バトラーはカグヤの視線を受けながら少しだけ考え、こう答えた。
「申し訳ございません、カグヤ様。少々私の口からは説明しにくい状況でして、こちらを見ていただく方が早いかと」
そう言うと、バトラーは手に持った端末を開き、タワーの一角で繰り広げられている現在の状況を映し出した。
そこにいたのは、奇妙な二人の人物だ。
身長はカグヤの腰ほどだろうか。
服装としては、中世ドイツの庶民の服装が近いだろうか。皮で出来たチェニックとズボン。それに麻と思しきシャツ。
もう一人のさらに小さな人影も同じような服装だが、こちらが身に着けているのはスカートだ。
それだけなら、変わってはいるだろうが驚くほどではない。
だが、その恰好をしている者たちの見た目が異質だった。
全身をふかふかの毛が覆っており、頭からはウサギのような耳が生えている。
どう見ても人間ではない。
そんな二人だが、男と思しき個体が半ばから折れた槍を突き出し、スカートをはいた個体を庇うよう前に出て困惑するタワーの職員を威嚇していた。
「近づくな、つるっぺらの化け物!」
「お兄ちゃん……」
職員たちは困惑していた。
それはそうだろう。明らかに人間ではないが言葉の通じる謎の生き物が唐突に出現したのだ。
ハンドレッドの襲撃ならマニュアルに沿って避難するだけだが、今回はどうも様子が違う。
明らかにおびえた様子。さらに、彼らの声の調子からしてみて……たぶん子供、しかも兄妹だ。
カグヤ様の輝きに惹かれ、この地で働くことを誇りに思う職員たちに、この異種族に害を与える気は無い。
とはいえ、こうも怯え威嚇されては手が出せないでいたのだ。
長く続いたこの状況だが、動く時は一瞬だ。
なぜなら、報告を受けたカグヤがタワーにやって来たからだ。
「こ、こいつらの親玉か!」
明らかに職員たちとは格の違うカグヤの出現に、ウサギの少年が少女を奥に押し込めながら威嚇するように槍をさらに突き出す。
「近づくな、近づくんじゃないぞ!」
「それは無理だな。カグヤ様の輝きはあまねく世界を照らし出す。カグヤ様が近づかなくとも、お前たちはカグヤ様の輝きに引き寄せられずにはいられない」
「いや、お前何言っているんだ?」
言葉は通じているはずなのに、今ひとつ意味は通じない。
ただ、彼が槍など気にせずこちらに歩みを進めている事だけは分かる
「ち、近づくんじゃない! さ、刺すぞ、刺すぞ!」
「試してみるがいい。カグヤ様はそんな槍では死にはしない」
さらに近づくカグヤに、恐怖に駆られた少年は槍を突き出す。
その槍は、受け止めるために開いていたカグヤの掌を貫いた。
掌から、赤い血がしたたり落ちる。
「えっ?」
「君が妹を守ろうとするゴージャスな気持ちがこのカグヤ様に届いたのさ」
「どういう? いや、それより手の傷!?」
意味は分からない。だが、このつるっぺらの怪物は、自分たちの世界を襲った姿を変える仮面の怪物たちとは違うのでは?
手のひらを貫かれたのだ。痛くないわけないだろう。
それでも片膝をつき、自分たちと同じ視線の高さにまで腰を落とし笑顔を崩さない青年を見て少年はそう考える。
「カグヤ様にとって、この程度はかすり傷さ。我が名は鳳桜・カグヤ・クォーツ。少年、君の名前を教えてくれないか?」
「お、俺の名前? お、俺はハルト……」
傷つけた相手が焦るでもいたがるでもなく、真摯な態度で名前を聞こうとしてくる。
その状況に困惑しながら、異種族の少年は自らの名前を告げた。
これが、ハンドレッドに襲われたラビリアンの世界の少年との出会いであり、カグヤがこの事件に関わっていく切っ掛けであった。
※※※※※
カッシーンやアナザーライダーたちをゲイツやうちの連中が抑えている中、俺、ジオウ、レジェンドの3人は大した抵抗も受けずアナザーオーマジオウの下にたどり着く。
いや、厳密には違うか。
元々そんなに距離が離れていなかったのだが、加古川がうちの戦闘員がゲートからワラワラ出てきたのを見て対抗の為、カッシーンやアナザーライダーを大量召喚。
その結果、戦闘員とカッシーンの大混戦が発生。
うちの連中は戦闘バギーや銃火器、携帯ミサイルを持ち出し、カッシーンはその杖からエネルギー弾で応戦。大混戦となる。
そして俺たちは互いに相手の場所を見失い、ほぼ同じタイミングで発見したのだ。
「追い詰めたぞ、飛流」
「追い詰めただと? 有象無象をいくら揃えたところで、昭和平成令和を取り込んだ俺に勝てるものか」
まぁ、アナザーオーマジオウの言っている事は間違いない。
オーマジオウと同等の力を持っているとするのなら、数を頼っての攻撃など単騎で一蹴できるだろう。対抗できるのはオーマジオウの時間操作にある程度の抵抗能力を持つ者だけだ。
うちの戦闘員はおろか改造人間ですら対抗するのは難しい。タキオンの観測が可能な俺ならギリギリってところだ。
「そう、最初から俺一人でよかったんだ。俺が出ていれば……」
たしかに、こいつが俺の偽物を引き連れて挑んできた方が厳しかったかもしれない。
なんであんな大量召還をしたのかは当人は理解していないだろう。
今更善人ぶる気の無い俺は冷めた目でオーマジオウを眺めていたが、王の資質を持つ男はそうではなかったようだ。
「一人じゃダメだって、分かっているんだろう。だからアナザーライダーやカッシーンを呼び出してしまった」
「毎度毎度数を揃えてくるお前が言うか!」
その言葉がよほど癪に障ったのか、張りぼての王は舌戦を早々に切り上げると早々にジオウに殴りかかってくる。
ジオウはその拳を受け止めながら、至近距離で声をかける。
「飛流。最後のチャンスだ。俺たちの世界に帰ってその力を捨てるんだ! これ以上は本当に取り返しのつかない事になるぞ」
「数を揃えて、貧弱な鎧を纏って俺に勝った気か、常磐ソウゴ!」
奴の素質は本物だろう。明らかに心が揺れ動揺している状態にもかかわらず、ジオウと互角の戦いを演じている。
王になるための素質、類稀なる天賦の才。周囲を圧倒する力。
そんなものを持って生まれてしまったために、加古川飛流という男は自身が変わる事を知らずここまで来れてしまったのだろう。
「俺に屈辱を味わわせた貴様が、俺に指図をするな!」
ジオウにとって、常磐ソウゴにとっては加古川飛流という男は、何の落ち度が無いとはいえ自身の被害者でもある。
だからこそ、この事態になっても声を掛ける。
だが、この場にいる他の者はそんな感傷は無い。
「ジオウの警告も、ゴージャスが無いものには通じないか」
ジオウとアナザーオーマジオウの戦いが始まった途端に、それまで様子をうかがっていたアナザーライダーやカッシーンが俺達に向かい襲い掛かってくる。
アナザーオーズとアナザーキバ、そして無数のカッシーンたち。
レジェンドはカッシーンたちを体術だけで軽くあしらうと、向かってくる二体の王のまがい物に向けてレジェンドライドマグナムの引き金を引く。
火花をまき散らしながら吹き飛ぶアナザーライダーたち。流石にそれだけで何とかなるほど軟な連中では無いが、レジェンドが次の行動を起こすには十分な時間が稼げた。
「さあ、ゴージャスタイムだ」
【KIVA RIDER!】
【000 RIDER!】
【555 RIDER!】
【BLACK RIDER!】
取り出した4枚のカードをレジェンドライドマグナムに次々とセットを行い、おもむろに引き金を引く。
バイクを模したエネルギーの奔流が走り、次の瞬間4人の仮面ライダーがその場に現れる。
キバの鎧を纏いし仮面ライダーキバ。
欲望のメダルを力に変える仮面ライダーオーズ。
オルフェノクの王を守護するべく生み出された仮面ライダーファイズ。
そして黒き太陽を宿す世紀王、仮面ライダーブラック
現れた四人の仮面ライダーはある者は腰を落とし、またある者は両腕に力を籠めカッシーンやアナザーライダーに向かい駆けていく。
その実力は、本物の仮面ライダーと遜色ない。
カッシーンやアナザーライダーに挑みかかり、蹴散らしていく。
ジオウもだが召喚能力は無法すぎる。たった一人で一騎当千の強者を率いる軍勢となるなんて、敵対する身からしてみると一瞬で数の有利を崩されるなんてふざけるなと言いたい。
といはいえ、愚痴っても仕方がない。今は味方である以上は利用させてもらう事にする。
ジオウとアナザーオーマジオウの戦いは、アナザーオーマジオウの有利で進んでいた。
当然と言えば当然だ。まがい物とはいえ時の王者に対して、ジオウが纏っているのは俺の力を宿した鎧だ。
【スピードアップ!】
妙にコミカルな音声を発しながら、ジオウのアーマーが一瞬赤く輝く。
超高速状態に入り、アナザーオーマジオウの前から掻き消える。
「この程度で!」
超高速で動き回り隙をつく気だろう。だが、俺の速度ならアナザーオーマジオウでも対応可能な範疇だ。
瞬時にジオウの動きを見切るとジオウの軌道上に拳を振るう。
【パワーアップ!】
アナザージオウの拳を、ジオウは真っ赤に燃える拳で迎撃する。
もっとも、それで終わりではなく即座に速度を上げると距離を取る。
やはり俺の能力を宿したアーマーではきついか。
客観的に見て俺は本物の仮面ライダーには一段劣るとしても、かなり強い改造人間である事は間違いない。ただ、その強さは強靭なフィジカルと、力と速さという二種類の強化というシンプルな物理的な強さだ。
良くも悪くも俺の特性に、相手を嵌めるような搦手は無い。
正直、アナザーオーマジオウ相手には厳しいと言わざるを得ないだろう。
出来る事なら助けに行きたいところだが、俺は俺で面倒な奴の相手が待っていた。
アナザーアインロールドの両腕の鎌。その付け根が開いたかと思うと弾丸が雨あられのように俺に向かってくる。
あの両腕、鎌だけでは無くマシンガンも装備しているようだ。
「まったく、本当に全身火器の塊だな!」
都市部の障害物を利用して躱しながら俺はぼやく。
こっちは飛び道具も何も無いっていうのに!
ビルの壁を足場に駆け抜けながら、奴の放つ弾幕を躱し続ける。
当たらない事によほど頭に来たのか、奴の下半身が再び開きミサイルがこちらに向かい飛んでくる。
「虫並みか……。ブースト!」
ちょうどいい。逃げるのにも飽き飽きしていたところだ。
俺は高速機動を発動させるとミサイルの中に突っ込む。ミサイルの射線に身体を縦に。更に高速化による弾丸機動。
ついでとばかりに、至近弾を一発お見舞いする。
「そら、くれてやるぞ!」
そのまま体を空中で一回転させながら、ミサイルを投擲する。
狙いは一点。ジオウと戦っているアナザーオーマジオウだ。
「なっ!?」
ジオウとの戦いに集中していたのだろう。
死角となる上空から、一直線に飛んでくるミサイルにアナザーオーマジオウの動きが一瞬固まる。
「邪魔をするなぁ!」
もっとも、それで何とかなるやわな相手ではない。
腕を力任せに振るうとその拳圧だけでミサイルを叩き落す。
それは一瞬とはいえ、確かに隙であった。
数多くの激戦を潜り抜けてきたジオウは、その隙を見逃さない。
瞬時にアナザーオーマジオウの懐に入り込むと、その拳を振るう。
【パワーアップ!】
「くらえ、飛流!」
「その程度!」
咄嗟に身体を固め防御の姿勢を取るアナザーオーマジオウ。
もし、加古川飛流がより多くの死闘を潜り抜けていたら、あるいは結果は違ったかもしれない。
だが、彼には勝負勘を育む経験値が圧倒的に足りなかった。
身体を固め防御の姿勢を取るアナザーオーマジオウを、ジオウは全力で突き飛ばした。
「えっ?」
アナザーオーマジオウの口から間の抜けた声が漏れる。
ダメージに耐えようとしていた奴は、ほぼ無抵抗に俺と同等のパワーで突き飛ばされる。
方向は、アナザーアインロールドのいる場所。
「し、しまった!?」
そう、ジオウの狙いはアナザーオーマジオウを次の一撃で仕留めようとしたわけではない。
アナザーアインロールドと同じ場所にまとめたかったのだ。
突如飛んできたアナザーオーマジオウをアナザーアインロールドは受け止める。
とはいえ両腕が鎌である奴の事だ。自然と胴体を使い壁のように抑える事しかできない。
助けようした怪物のその動きは、アナザーオーマジオウに対する拘束となる。
「さあ、ゴージャスタイムだ!」
まず最初に動いたのはレジェンドだ。
彼が召喚した4人のライダーが一斉に跳躍する。狙いは一点、動きを止めたアナザーオーマジオウとアナザーアインロールド。
彼らは空中で反転すると、それぞれが必殺キックの態勢を取る。
【ゴ・ゴ・ゴ・ゴージャス!】
4筋の黄金の矢となったライダーたちが、輝石を舞い散らせながら次々にアナザーオーマジオウに突き刺さる。
「ぐおおおお!」
続いて飛ぶのは俺、ジオウ、レジェンドの3人だ。
それぞれが空中で反転するとアナザーオーマジオウに狙いを定める。
「ライダーキック!」
まず、俺の赤い輝きを宿したキックがアナザーオーマジオウの胴体を焼き、その背後にいるアナザーアインロールドの外骨格を砕く。
空中で反転、着陸した俺の次に必殺キックを放ったのはレジェンドだ。
「ゴージャスに……散れ!」
その言葉と共に、金色のカードの幻影が空中に浮かぶ。
そのゲートを通るたびに、レジェンドの力は増していく。
【GORGEOUS ATTACK RIDE LE-LE-LE LEGEND!】
ゴージャスなる輝きが、輝石の雨と共にアナザーオーマジオウを打ち抜く。
そして、最後に必殺キックを放つのはジオウだった。
【リボーン・タイムブレイク!】
赤い電撃の矢じりを纏ったジオウアインロールドアーマーが一直線にアナザーオーマジオウに向かい迫っていく。
俺とレジェンドの必殺キックの直後、流石のアナザーオーマジオウと言えども態勢を整える事など出来ず、そのままキックを食らってしまう。
アナザーアインロールドごと遠くのビルの一階のテナントに入り込んだアナザーオーマジオウだが、次の瞬間ビルの一階から巨大な爆発音とともに炎が噴き出した。
「やったか……」
思わず呟いてしまう。
いや、それぐらいしんどい敵だったのだから、思わずこの言葉を口にした俺は悪くない、たぶん。
だが、俺の呟きをよそにジオウは爆心地となったビルの一階を睨み続けていた。
そして……。
「残念だったな、常磐ソウゴ!」
炎の中から出現したのは、アナザーオーマジオウ……、加古川飛流だった。
流石に無傷とはいかなかった模様だが、それでも奴から発せられている力はそこまで落ちているとは思えない。
あれでも駄目か……。
そう思いながら見ていると、奴は片手に何かを持っていた。
って、あれは俺……というか、アナザーアインロールドの頭部か?
「まとめて始末する気だったようだが、最後の最後でこいつが役に立ったぞ」
そう言ってアナザーアインロールドの頭部を投げ捨てる。
一瞬だけアナザーアインロールドの視線が俺とぶつかり、次の瞬間、初めから何もなかったかのように風の中に消えて行った。
「時間操作の応用でダメージをアナザーアインロールドに肩代わりさせたか。あまりゴージャスとは言い難いな」
「ゴージャスゴージャス煩い! 道具をどう使おうが俺の勝手だ!」
レジェンドの評価をアナザーオーマジオウは吐き捨てる。
「先ほどの渾身の一撃も不発に終わった。もう貴様らに打つ手は無い!」
確かに、先ほどがアナザーオーマジオウを倒す最大のチャンスだった。
あれを耐えられた以上、打つ手は少ない。
「レジェンド、あんたの力でジオウの力を取り戻させることはできるか?」
俺は横に並ぶレジェンドに尋ねる。
ジオウが本来の力を取り戻した状況ならともかく、今の状況ではかなり厳しい。
ジオウすら召喚できる能力を持つレジェンドならもしかして。そう尋ねる俺に、レジェンドは首を横に振る。
「出来ない事は無いが、この場の歴史が隔離されている以上、ゴージャスなジオウにはならないな」
一応聞いただけで、レジェンドの回答は想定内の答えだった。
外界から隔離されたこの世界では、レジェンドが集めているライダーの力では一瞬だけ力は戻せても長続きはしないのだろう。
最悪は俺が殿になって、皆で逃げてもらって外部から何とかしてもらうしかないか……。
そんな事を話している俺たちに対して、ジオウの考えている事は少々違った。
「いや、一番厄介だったアナザーアインロールドを倒した以上、もう勝負はついた」
「何だと!? 気でも触れたか!」
「正気だよ、飛流。カグヤ、ちょっとだけここを見ていてくれる? 世界を救ってくる」
唐突に何を言い出すのか。
驚く俺に、レジェンドはと言うと何ともないとでも言いたげにこう答えた。
「カグヤ様にとってこの程度の奴を抑える事など造作も無い。だが、カグヤ様に事を頼む以上、ゴージャスに世界を救えるのか?」
「うん、ゴージャスに行ける気がする」
頼みを安請け合いするレジェンドと、自信満々に答えるジオウ。唯一何をする気なのかさっぱりと分からない俺だけが困惑する状況だ。
そして、俺と同じで状況の理解が追い付いていない男がもう一人。
その男は再度激昂し、怒りの声を上げる。
「まだ、まだ俺を侮るか、常磐ソウゴ!」
そう叫び、こちらに向かい駆けだす。
そんなアナザーオーマジオウを見て、ジオウはアーマーの左肩を右手で触れる。
【ショッカー!】
え?
唐突にアーマーから響いた音声に俺は一瞬固まる。
今、ショッカーって言ったよな、そのアーマー。
だが、俺の困惑はそれだけでは終わらなかった。
こちらに向かい駆けだすアナザーオーマジオウの首に、唐突に何かが巻き付く。
「なっ!?」
その巻き付いた何かの先を見ると、すごく見慣れた顔があった。
平成になって新調したとかいう黒い甲冑と、黒と白の三角の角のついた被り物。
何度注意しても治らなかったちょっと傾いたショッカーのエンブレム。
……まて。あんた、今は死んでいる筈だろう。
なんでこの場にいるんだよ、上司!
いや、上司だけではない。
アナザーオーマジオウを拘束するように、白い触手が奴の手足を縛っている。
その先に居るのはイカの怪人……。ミカの上司であり、当然今は死んでいる筈の男だ。
いや、なんでショッカーが誇る大幹部連中が?
も、もしかして……アインロールドアーマーの能力って、身体能力の上昇にプラスして、ショッカー関連の召喚能力!?
いや、よく考えてみたらうちの戦闘員、戦闘バギー乗り回していたよな。どうやって持ち込んだ、あいつら?
困惑の目でジオウを見ると、なんか俺の目を見て頷きこう言葉をかけてきた。
「付き合って、アイン。世界を救う!」
「世界を救うって、えっと、これって!?」
困惑から抜け出せないでいる俺をよそに、ジオウは再度肩のエンブレムに指を這わす。
【ショッカー……ライダーロボ!】
え?
ちょっとまて!?
音声に、状況についていけない俺を余所に、轟音を立てビルの向こうに50メートルはありそうな巨人が姿を現す。
黒を基調にしたブロック状のパーツを組み合わせた金属製のボディに、仮面ライダーを模した頭部。赤い複眼がギラリと輝きこちらを見下ろしていた。
直接かかわった事は無いが、こいつの事はよく知っている。
過去に世界征服寸前まで行ったショッカーの秘密兵器、その名もライダーロボ。
「行くよ、アイン! とぅ!」
「え、ちょっと、まって、常磐さん!? えーい、くそっ! 行けばいいんだろう、行けば!」
俺の困惑などお構いなしにライダーロボに向け跳躍し乗り込むジオウの後を俺も付いていく。
コックピット内部はジオウが使うタイムマジーンに近いか? ただ、二人乗りの様で後方にも操縦桿があった。
ジオウが前の席に潜り込み操縦桿を握ってしまったので、仕方なしに俺も後部座席の操縦桿を握る。
「どうするんだよ、常磐さん!?」
「大丈夫、いける気がする!」
「いや、そうじゃなくて!?」
何やらジオウは操作を始めているが、俺は一体何をしろと?
こんなもん操縦した事ないぞ!?
一方、このロボの足元ではジオウが召喚したうちの大幹部連中とレジェンドが共に戦っている。
しかし、ジオウがアナザーアインロールドを一番厄介といった理由が分かった。ライダーロボ相手でも、あのアナザーライダーの火力なら十分対抗できた。
ジオウが何をする気にせよ、あれが排除されてない内にライダーロボを呼び出していたら、良い的になって容易く破壊されていたであろう。
「準備は出来た! いくよ、アイン!」
「まて、だから何をする気だと!?」
「こいつの力で世界を修復するんだ! いくぞ!」
世界修復って!? そう困惑している間にも、ジオウは何かのレバーを引く。
それと同時に、ロボから光線が大地に向かい降り注いだ。
そのビームを受けたビルが、まるで消しゴムで消されるかのように目の前からうっすらと消えてしまう。
ビルだけではない。ビームを受けた荒れ果てた大地は緑の草原に。赤い枯れ果てた渓谷は水をたたえた大河に。
ビームの光が広がるたびに、荒れ果てた世界が少しづつ書き変わっていく。
「こ、これは何が?」
ロボの足元で、アナザーオーマジオウが驚きの声を上げる。
それは俺も同じだったが、不意に俺は思い出す。
そう、このライダーロボには究極兵装、歴史改変ビームが備わっていたのだ。
今の力を封じられたジオウ単体では、世界の破壊と再生は出来ない。だが、歴史改変ビームを持つこのロボの力を使えばどうだ?
荒れ果てた世界が書き変わるたびに、俺の身体からエネルギーが消費されていく。
ジオウが俺をこれに乗せた理由はそれか! そういや、これの動力は仮面ライダー3号だったか!
俺は奴の代わりか?
まぁ、最新の俺なら、奴の代わりにエネルギーを賄う事もできるだろう。
「アイン、大丈夫!?」
「問題ない。全力でビームを放て。この程度で何とかなるほどヤワに出来てはいない!」
理由が分かれば、やる事をやるだけだ。
ありとあらゆるものからエネルギーを生成する俺の動力炉が唸りを上げる。
崩れた岩の塊は、山頂に万年雪を湛えた霊峰に戻り、枯れ果てた木が点在した荒野はうっそうと茂る森に。
木の燃えカスが転がる毒の沼地は小さな村に再建し、瓦礫しか残っていなかった大穴は立派な石造りの城と城下町に戻る。
それだけではない。
失われていた命すら、この世界に再び蘇ろうとしている。
木々だけではない。昆虫が、小動物が、魚が、鳥が、哺乳類が、そしてこの世界で文明を築いていた人々が滅びの悪夢から目覚めようとしていた。
そう、ジオウによる歴史改変によりハンドレッドの侵略自体が無かった事になり始めていた。
だが、世界を修復するだけでは終わりではない。元凶を叩かなければ……。
俺の意志に反応したわけでは無いだろうが、唐突にライダーロボの目の前に空間の穴が出現する。
その穴の奥には、軍勢ともいえる数の人影が……。
あれが元凶。この世界を侵略し破壊の限りを尽くそうとしていたハンドレッドの軍勢か……。
「ジオウ!」
「わかっている! 行くぞ!」
ジオウの操縦に従い、ライダーロボがその拳を振り上げる。
標的は、時の壁の向こう、この世界を滅ぼさんとしている悪しき軍勢!
「この世界にお前たちを到着はさせない!」
「消し飛べ! ハンドレッド!」
俺とジオウの叫びに反応し、ライダーロボが次元のホールに向かい輝く拳を突き立てる。
機械越しでも分かる確かな手応え。時間を超え、過去のハンドレッドたちをライダーロボの拳が蹂躙する。
この世界を襲おうとしていたハンドレッドの尖兵は、次々と時間の彼方に吹き飛び消えていく。
自分達の身に何が起きたのかもわからず、虚数空間に飲み込まれ消えて行った事だろう。運が良ければ、いずこかの世界に出現できるかもしれないが、それこそ天文学的な確率だ。
遊園地が消える。
燃え盛る講堂とヘドロが満たされた銭湯が消える。
紙屑だらけの本屋と歪んだ街並みが消える。
廃墟の様な荒れ果てた学校が消える。
摩天楼だった場所は一面に広がる草原へと変わり、役目を終え消えつつあるライダーロボから俺とジオウが吐き出され大地に降り立った。
「流石ジオウ。悪しき存在すら光に変える、ゴージャスな世界救済だ」
降り立った俺たちに声をかけたのはレジェンドだった。
滅び去った無惨な荒野は、もうこの世界のどこにも無い。世界は修復されたのだ。
「そ、そんな馬鹿な!?」
きっと、こんな手を使われるなど思いつかなかったのだろう。
王と簒奪者、格の違いがはっきりとわかる。
「飛流、これで終わりだ」
ジオウはそう言うと、新たなるウォッチを取り出した、
黒字に金の縁取りのウォッチをジクウドライバーの右側にセットする。
それと同時に、ジオウの後方に巨大な彫像が何の前触れも無く出現した。
それは、時を統べる王の姿。
そう、この世界がハンドレッドに侵略される前の姿に戻った以上、もうこの世界を閉ざす壁は無い。
本来なら俺達とはかすりもしない世界。だが、もうこの場に俺たちはいる以上、世界は令和に繋がっている。
もう、時の王者を妨げる物は何も無い。
「変身」
ジクウドライバーが一回転をする。
【キングタイム!】
金色のボディースーツに白銀の肩掛け。
頭部に輝くジオウウォッチ。
そう、全ての時代を知ろしめす最終王者。絶対王者のオーマジオウですら夢を見た、時を未来へと繋ぐ希望のライダー。仮面ライダージオウオーマフォームがこの地に顕現したのだ。
「まだだ! まだだ! 昭和平成令和過去未来の全てを食らった俺なら!」
オーマフォームを見たアナザーオーマジオウの力が一気に膨れ上がる。
闇の疾風があたりに吹き荒れ、俺と言えども立っているのが厳しい、それほどの力の奔流が垂れ流しにされる。
「意地と憎しみだけで、力を上げたか」
俺の隣で闇の疾風に耐えていたレジェンドがぽつりと呟く。
まったく、本当に資質だけなら一流だ。
だが、悲しいかな、心だけが付いていっていない。どこまでも独り善がりで他罰的なエゴの為にしか力を振るえない。
力で圧倒している時はそれでも良い。
だが、同等の力を持つ存在を前にした時、鍍金は剥げてしまう。
彼に誰かを思いやる心か、あるいは世を変える大望や野心があれば話は違ったであろう。
だが、加古川飛流の世界にそれは無い。彼の世界にあるのは、きっと常磐ソウゴという眩い存在だけだ。
闇の疾風を涼しい顔で受け流したジオウが脚部に力を籠める。
それと同時に、俺たちに叩きつけられていた憎悪の力が急速に弱まっていく。
おそらくは、ジオウの闘志がアナザーオーマジオウの悪意を中和したのだ。
「いくぞ、飛流!」
ジオウが跳躍すると同時に、彼の脚部に金色のエネルギーが収束していく。
「お前に負けるものか!」
同時に、アナザーオーマジオウも跳躍する。
その足に収束するのは、憎しみの黒いエネルギーだ。
「うおおおおおおお!」
「であああああああ!」
そして、空中で二人の男が激突する。
周囲の時空すら歪める膨大なエネルギーがぶつかり合い、拮抗する。
長い時間の様で、一瞬の衝突。その戦いを制したのは、仮面ライダージオウオーマフォームであった。
【キングブレイク!】
当たり前だ。人から奪い取った記憶で再現した時代と、世界を解放して繋がった、あまねく世界の可能性。
どちらが勝つかなど子供でも分かる。
金色の光はアナザーオーマジオウを打ち抜き、巨大な爆発を引き起こす。
その際に発生した衝撃波に触れた加古川飛流が呼び出した怪物どもは、初めからこの世界に居なかったかのように溶けるように消えて行った。
主人公、ジオウやレジェンドの無法さに困惑するの巻
「おのれディケイド! ケモ世界もお前によって破壊された!!!」
「俺は出番すらまだ無いんだが?」