ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第57話 episode・ZI-O それぞれの決意

「ぜひとも、常磐さんにお願いしたいと。特に古い時計のメンテナンスの相談が出来る人が少なくて……」

「いやー、そこまで言われちゃうと困っちゃうなー」

 

 営業マンの調子の良い勧誘に、常磐順一郎は照れた様子を隠しきれていない。

 うだつの上がらないサラリーマンの山代は、部下と順一朗のやり取りを聞きながら、なんでこんな事になったのかを思い出す。

 

 所加亜商事が主催するアンティーク時計の展示販売会。

 その会場で時計のメンテナンスおよび相談を担当する専門家が怪我で来れなくなるというアクシデントが発生した。その代理として専門家から紹介を受けたのがクジゴジ堂の店主である順一朗であった。

 山代自身はジオウの拠点に行く気などさらさら無く、部下のみを行かせる気であったのだが、そんな裏の事情など知らない上司の命令で仕方なく付き添いを行う羽目になってしまった。

 

 会社を辞めても困るわけではないが、社会への浸透の為に続けているサラリーマン生活にもそれなりに愛着はあるのだ。

 

 半ばやけくそに考えながら部下と順一朗の話を見守っていると、部屋の入り口で何者かが手招きをしている。

 この店の住民のソウゴと、住民ではないが実質住民のようなもののウォズであった。

 

「すいません、ちょっと失礼いたします」

「あれ? あ、ソウゴくんとウォズくんも話があるのか」

 

 山代の視線の先には甥っ子とウォズの姿があった。

 そういえばソウゴは先日働いていたという話なので、まだ何か話したい事があるのだろう。

 

「なんか話があるみたいだし、ちょっとソウゴ君の話を聞いてくれるかな?」

「すいません。田中、話を進めておいてくれ」

「はい、課長」

 

 順一朗が快く許可をくれたので、山代は商談を離れ二人の下に向かう。

 

 ソウゴは普段とさほど様子が変わりは無いが、ウォズの目には明らかに警戒の色が浮かんでいる。

 王と従者の役割分担だろうが、無理もないと山代……ショッカーの改造人間クモ男は内心で溜息をつく。

 

「久しぶりというにはあまり時間がたっていないが、久しぶりだな。あらかじめ言っておくが、今回は表の商談だ。担当者は俺たちとは何ら関わりの無い一般人で、他意は一切無いぞ」

 

 所加亜商事は名前こそ組織を連想させるが、表向きの身分や真っ当なルートが必要になった際に使う企業の一つであった。

 後ろ暗いビジネスは一切行っていない真っ当な商社であり、役員や社員の一部に改造人間や戦闘員が混ざっているだけで大部分はショッカーの事など全く知らない一般人で構成されている。

 

 このような普通の企業の他にも、名義だけのペーパーカンパニーや舎弟企業などショッカーは多数の企業をひそかに保有している。

 

「うん。わかってる」

 

 クモ男の言葉に答えたのはソウゴであった。

 実際、順一朗を推薦した専門家は長年付き合いがある人物であり、ソウゴ自身も何度か面識がある人物だ。

 ウォズの調査でも会社はともかくイベントにおかしなところは無い。

 

「聞きたいのはアインの事だ」

 

 

※※※※※

 

 

「撤収するぞ」

 

 ミク達3人が消えた場所を呆然と見つめるしかなかった俺だが、指揮官としての訓練の賜物かぐちゃぐちゃの感情とは裏腹にすぐに取り繕い行動に移せた。

 俺の命令に、緊張と弛緩、そして安堵が漂っていた部下たちが背筋を正す。

 まだ掴まれていたジオウの手を振りほどくと、踵を返す。

 

「え、ちょっと、アイン!?」

「なれ合いは終わりだ、ジオウ。ハンドレッドこそ撃退したが複数の問題が確認された以上、この場にとどまっている意味は無い」

 

 加古川飛流捕縛は失敗。世界隔離を利用したジオウ抹殺計画を阻止した以上、もう新宿を張っている意味は無いだろう。

 アナザーオーマジオウ一体だけでも厄介なのに、灰ウォズに光の創生者なる組織まで出てきた。

 早々に自分の世界に戻り今後の対策を協議する必要がある。

 

 しかし、光の創生者か。

 以前の事件で名前だけは聞き及んでおり、調査はさせてはいたのだが何も出てこなかったんだよな。

 規模が小さいのか、隠れる事に秀でているのか、あるいはその両方か。あのウォズニセイバーの性能だけでも、相当な脅威となる組織なのは間違いない。

 

 3人は生きていてくれた……。

 

 今はそれだけでいい。生きていてくれた、それだけで良い……。

 取り戻す。見つかったのだ。一歩前進したのだ。

 

「この世界はよろしいので?」

 

 何とか感情の整理をつけつつある俺にクモ男が小声で訪ねてくる。

 

「この世界の座標は覚えた。ショッカーの物とするが、急いでがっつくのも風情があるまい」

 

 あえて周囲にも聞こえるように大きな声で返す。

 

 俺の反応に、ライダーたちの反応は三つに分かれる。

 

 警戒を見せ始めたのはゲイツとツクヨミだ。変身も解いていないし、こいつらの反応が普通である。

 逆に変身を解いて妙にのほほんとしたニコニコとした表情でこっちを見ているのが常磐さんだ。

 そして、同じく変身を解いて肩をすくめやれやれと呆れているのがカグヤさんとウォズさんである。

 

 常磐さんはちょっとどう考えているのか分かりにくいが、この二人に関しては俺たちが聞こえるように話した意図を正確に読み取った上で呆れているのだろう。

 

 封鎖されていた世界がジオウとレジェンドの手によって解放された。こうなるとハンドレッドか大ショッカー、他多数のクソ野郎どもが覗き見している可能性が高い。

 だから言外にこう宣言したのだ。『この世界はショッカーが唾つけたからな。手を出すなら俺らも相手をするぞ』と。

 

 レジェンドとジオウが関わっている以上は余計な気遣いかもしれないが、今回は借りが多いのでこの程度は仕方あるまい。

 俺は小芝居に小さくため息をつくと、そう仕向けたクモ男に若干の嫌味も込めてこう尋ねる。

 

「この世界が欲しかったか?」

「いえ、これ以上の残業が無くて安心したところです。表の仕事もありますから」

「そうか」

 

 クモ男は極力社会にダメージを与えたくない穏健派の一人であり、表の身分を持っている身だ。

 現行の作戦だけでも手一杯なのに、別に命じられたわけでもない異世界侵略など手間とコストがかかる真似はしたく無いのだろう。

 

 これは現在のショッカーでは珍しくない考え方だ。組織の分割の際に、穏健派や存続派を中心にショッカーは再編された。

 過激派や血に飢えているような連中はゲルショッカー、ゲドン、ガランダーに大部分が流れている。そういう連中を自分で集めたんだから、会うたびに部下が制御できないと愚痴るのは勘弁してほしい。

 

 俺たちの会話を呆れながらに聞いてたカグヤさんが訪ねてくる。

 

「馴れ合わないのは良いが、カグヤ様が作った門を通らずどうやって帰る気だ?」

 

 まぁ、彼の疑問は当然と言えば当然の疑問だ。

 ここは異世界であり、通常なら帰る手段は無い。

 

「そんな事か。問題ない、迎えが来た」

 

 俺の言葉を待っていたかのように、ではなく、俺の言葉を合図に俺のすぐ側にオーロラカーテンが出現する。

 実は先ほどから世界越しにミカの声が俺に届いていて、扉を開くタイミングを待っていてもらっていたのだ。

 

「まさか、ショッカーもその技術を持っていたのか?」

「ハンドレッドや大ショッカーどもが持っているんだ。ショッカーが持っていないはずは無いだろう?」

 

 ゲイツが驚きの声をあげるが、実ははったりである。

 侵略してきた連中から奪った技術だけど、実はまだ解析が中途半端で思うように使えない。転移能力者が面倒を見ないといけない上に、一回開くごとに割とシャレにならない金が飛んでいくのでおいそれと使用できなかった。

 とはいえ、ゲイツの反応を見れば見せ札としては十分だろう。

 なのでゲイツさんを生温かい目で見るのは止めてあげてください、常磐さん。

 

「さらばだ、仮面ライダーどもよ」

 

 その言葉と共に、俺は先頭に立ちオーロラカーテンをくぐる。

 その先はショッカーの極秘研究所の一つであり、当然のようにミカの姿がそこにあった。

 

 やがて、異世界に行っていた人員が全て帰還したことを確認し、オーロラカーテンは閉じる。

 ライダーの追撃は無し。まぁ、ジオウやレジェンドなら味方をした直後に追撃をするなんて野暮な真似はしないだろうから当然だ。

 

 俺は全員の帰還を確認した後にミカの傍まで近づくと、片膝をつき首を垂れる。

 

「加古川飛流を取り逃がした上に、このような迎えの御手間まで取らせ申しございません、ウェスト博士。この不始末の処分、ご随意に」

 

 加古川飛流の下らない野望は阻止できたものの、結果的に逃げられ作戦は完全に失敗だった。

 あくまでも俺の主はミカ・ウェスト博士だ。人前ではけじめを付けなければならない。

 

「そうね。まずは何があったか聞きたいわ、アインロールド」

 

 俺の言葉に、ミカは自分に付いてくるよう促す。それと同時に、ミカがワームホールを作り出す。

 別に異論はない。話さなきゃいけない事はいくらでもあった。

 ミカが作り出したワームホールを抜けると、そこはショッカーのミカの執務室だ。

 

「なんか様子がおかしいけど、何があったの?」

 

 そう尋ねてくるミカに何も答えず、俺はヘルメットの留め……厳密にはナノマシンに命じて脱げるように命じる。

 ライダーとしての姿のままヘルメットを脱ぐ。基本的にやらない俺の行動に、ミカは驚きの表情を浮かべる。

 そんな彼女を無視して机の上にあったモニターへとヘルメットを繋げた。

 

「見つけたよ」

 

 まず伝えなきゃならなかったのはこれだった。

 俺の操作が終わると同時に、ヘルメットの戦闘記録が再生される。

 そこには青いフードの少女が、赤いマントの少女が、黒衣の少女が生きて退いていた。

 

「え? アニータ……、キャロル……、ミク?」

「3人を見つけたよ……」

 

 一瞬だけ呆然とし、彼女たちの名前を呟き泣き崩れそうになったミカを俺は後ろから支える。

 

「生きていて……くれた……。3人だけだけど、生きててくれた子がいた……」

 

 映像の彼女たちの動きを一つも見逃さないよう見つめながら、嗚咽を抑えるように口に手を当て、ミカは涙を流し続ける。

 正直に言おう。俺もミカも半ばあきらめていた。連れ去られた子が無事な可能性は低い。海に転落した子供たちが生きている可能性は低い。

 せめて仇を討つ。今日までその一心だった。

 

 そう思っていた。

 

 でも、生き残っている子がいた。

 

「助けよう、必ず……」

「うん……」

 

 俺はミカを支えながら、そう決意を新たにするのだった。

 

 

※※※※※

 

 

「ま、元気だよ。あの方は」

 

 クモ男は異世界での最後を思い出しながら、そう答える。

 もっとも、ソウゴの聞きたいことはそれでは無いだろうとも当たりを付けていた。

 

「それ以外は、次に会った時にでも聞いてくれ。なんの関係無しに俺からは話せん」

 

 ライダー殺しのアインロールド。

 彼が保護をしていた子供たちがショッカー壊滅のどさくさにまぎれ何者かに全て殺害された事件は、ショッカー系列組織ではそれなりに有名な話だ。

 アインロールドを惰弱と笑う者もいたが、ショッカー復帰後に鬼神の如く戦い成果を叩き出していくアインロールドを前に笑う者などいなくなった。

 

 まともな神経を残している山代にとっては笑えるような話でも、勝手に吹聴できる話でも無い。

 

「そっか。わかった、そうする事にするよ」

 

 これ以上聞いても何も答えないだろうとソウゴは早々に話題をこの切り上げる。

 少なくとも元気なら、そう遠くない時期に再会する予感があるので問題ない。

 

「それにしても、君たちは本当にショッカーなの?」

「ゲイツくんの話をショッカーまで流しに来たお前が言うか? 俺達をどう思っているかは知らんが、そんなもんは人次第だ」

 

 7人のライダー相手ならいざ知らず、それ以降に生まれた特に因縁も無い相手に任務でもない状況で一々気を張っていたら身が持たない。

 少なくとも、クモ男はそう考えていた。

 

「話が終わりなら俺は戻るぞ。一応は部下の付き添いだからな」

「あ、まって。もう一つ聞きたい事があるんだ」

「なんだ?」

 

 アインロールドの事以外に聞きたい事とは何なのか。

 首をかしげるクモ男に、ソウゴは後ろのポケットから通帳を取り出しクモ男に見せる。

 そこには、最近の入金の記録が記載されていた。

 

「なんか、入金されているんだけど?」

「ん? バイト代。お前さん、例の事件の時はうちで仕事をしているって話になってたからな」

 

 順一郎にそう説明した手前、気を使って入金しておいたのだ。

 こんな事で恨みを買うのは馬鹿らしい。

 そう考えたクモ男だが、ソウゴの懸念を一つ思いつき一応は話しておくことにした。

 

「ああ、そうか。それは後ろ暗い金じゃないから大丈夫だ」

「いや、そうじゃなくて額が……」

 

 0が6つほど並んだ入金額に、金銭感覚は庶民のソウゴが恐る恐る尋ねる。

 

「安かったか? バイト扱いだったのであまり出せなかったが」

「えっ?」

「えっ?」

 

 ショッカーと仮面ライダーの意識の隔たりは、ずいぶんと大きいようであった。 

  

 

※※※※※

 

 

「いつまで俺を閉じ込めておくつもりだ」

 

 溶剤に満たされた円柱形のシリンダーに閉じ込められた加古川飛流が不機嫌を隠さない声を上げる。

 もう何度も繰り返しているやり取りだが、灰ウォズは飽きもせずに律儀にこう答える。 

 

「傷が治るまでだよ、最低最悪の魔王殿。時間逆行でダメージを軽減したとはいえ、ジオウの必殺技を受けたのだから相応の回復時間は必要さ」

 

 実際、灰ウォズの見立てでは加古川飛流の肉体の状況は酷いものだ。

 今回の戦闘でのダメージだけではない。度重なるアナザージオウへの変身と、幾度となく受けてきたダメージの蓄積は並の人間なら死んでいてもおかしくない物であった。

 いや、オーマジオウやオーマフォームの必殺技を複数回受けていると考えれば生きているだけで奇跡かもしれない。

 

「まぁ、退屈だろうがしばらくは堪えておいてくれ。常磐ソウゴが屈辱に沈む姿を見たいのだろう」

「当然だ」

「なら今は我慢の時さ。そろそろ睡眠の時間だ、おやすみ最低最悪の魔王殿」

 

 その言葉と共に、灰ウォズは手元のコンソールを操作し溶剤の濃度を上げる。

 加古川飛流は一瞬だけ抵抗するそぶりを見せるものの、すぐにその意識を手放す事になる。

 

「やれやれ、我慢が足りないな。最低最悪の魔王殿は」

 

 少々回復しただけで飛び出したがるのだからたまらない。

 もっとも、もう肉体が完全に回復するまでは目が覚める事は無いだろう。

 それまでに、加古川飛流がジオウと再び戦う舞台をお膳立てしておく必要がある。

 

「普通にやればジオウが勝つだろう。それ相応の準備が必要か……」

 

 戦闘の経験値が違いすぎる。恐らくジオウと加古川の差はこの先開く一方だ。

 今回のような異世界に封印する手はもう通用しない。

 加古川飛流を勝たせ本物のオーマジオウとして覚醒させるためには、何らかの手を講じなければならないだろう。

 

「何とも骨が折れる事だ」

 

 そこまで呟くと、灰ウォズは自らの腕を見つめる。

 アインロールドの攻撃を受け流した腕だ。ウォズニセイバーの装甲越しだったにもかかわらず、本体にまでダメージが通っている。

 空間差異を利用した装甲すら貫通する攻撃。ただの改造人間ではあるまい。

 

「アインロールドか、危険だな……」

 

 あのショッカーライダー、いや、ショッカーの仮面ライダーは明らかなイレギュラー要素だ。

 不俱戴天の敵であるはずの仮面ライダーとショッカーを繋ぐ存在など、創世救済暦には記されていない。あったとしても個人レベルの話であり、あのような大部隊が仮面ライダーに協力するなどありえない。

 それを成し遂げたのがアインロールドだとすると、このまま放置しておくのはあまりにも危険な存在であった。

 

 ショッカーは悪をなし世界を破壊してもらわねば困るのだ。

 

「最低最悪の魔王殿の目覚めは数カ月先。ならば、まずは彼から対処するとするか」

 

 同僚たちは働こうとしない以上、自分が動くしかない。本当にやる事が多すぎる。

 もっとも、大神官としての業務の一つだ。

 世界救済が完了するまで、灰ウォズに休む暇など無い。

 

 

※※※※※

 

 

「まずい、灰ウォズの奴が兄さんに目を付けたよ」

 

 青いフードの少女、アニータ・ノースが目を開くと姉妹たちに告げる。

 アニータの持つ巫女としての能力は千里眼。姉妹たちの目となり状況を告げるのが彼女の役割だ。

 

 彼女の報告に、同じ部屋に待機をしていたキャロルが苦々しげな表情を浮かべた。

 

「あいつは甘くねえぞ。ミク、どうするんだ?」

 

 一番年齢が上のミクはこの3人のリーダー格だ。

 彼女は自らの黄金色の髪の先端をいじりながら手元の本を眺めている。

 その態度が癇に障ったのか、赤いマントの少女、キャロル・サウスが椅子を蹴飛ばし大声を上げた。

 

「髪をいじっている場合かよ!」

 

 その一撃で粗末な椅子は粉々に砕ける。

 その様子にアニータが呆れ半分、恐れ半分で止めに入る。

 

「落ち着きなよ、キャロル。ミク姉さんが考えている時の癖でしょう」

 

 確かに、ミクは昔から考えこむと髪をいじる癖がある。

 その事を思い出し、ばつの悪さを感じながらも大声でごまかす。

 

「わかってるよ! でも、ほんとどうするんだ。もう一回介入……いや、灰ウォズの奴をやるか?」

「だ、だめだよ、キャロル! 今回だってぎりぎりだったのに! 他の連中にバレるよ!」

「そう言っても、兄ちゃんが死んだらどうするんだ!」

 

 元々、彼女たちは異世界での戦いに介入する気など無かった。

 

 だが、ウォズニセイバーとアインロールドが戦えば、間違いなくアインロールドが敗北する。

 ジオウやレジェンドと共闘しても、アインロールドの死は免れない。それがミクの目には見えてしまった。

 だから、無理をして3人は灰ウォズの撤退支援という形で前の戦いに介入したのだ。

 

 

「つまり、お前たちはその兄貴……アインロールドという奴を助けたいわけか?」

 

 

 少女たちの会話に唐突に口をはさんで来たのは、一人の男性だった。

 身長は180センチを超えるだろう。薄い金色に染めた髪に、どこで手に入れたのか黒いバケットハットに同色のコートという出で立ちだ。

 窓際の席に腰を掛け少女たちの会話を無言で聞いていたその男は、テーブルに置いてあった私物の2眼トイカメラを首に掛けると勢いをつけて立ち上がる。

 

「お任せして良いのですか?」

 

 もう一人黙っていた少女、ミク・イーストは動き出したその男に確認の声をかける。

 少女の問いかけに、2眼トイカメラの男は振り向きもせずに片手をひらひら上げながらこう返す。

 

「どうだろうな。ただ、ショッカーの仮面ライダーとやらに興味がわいてきたところだ」

 

 そう言うと2眼カメラの男の目の前に歪めた銀色の壁が唐突に出現する。

 オーロラカーテン。そう呼ばれる特殊な移動能力により発生する現象であった。

 

 男はそのカーテンに臆せず踏みこむと、部屋から姿を消す。

 そこには男がいた痕跡は、飲みかけのコーヒーカップが一つ残るのみであった。

 

「いいのか、ミク。あいつなんかに任せて」

 

 いつの間にか勝手に居ついていた男だ。

 出て行ってくれて清々するが、あれが動くとなると混乱はますます大きくなることは請け合いだ。世界の破壊者、その異名は伊達ではない。

 そんなキャロルの問いかけに、ミクはかぶりを振ってこう返す。

 

「お兄ちゃんの物語が本格的に始まってしまった以上、もう流れに任せるしかないわ。あれが興味を持ってしまった以上、もう止められない」

 

 彼女は自らが作り出した創世異伝歴に手を当てる。

 白紙の本が一瞬だけ輝き、開いていたページに異世界での事件の顛末が克明に書き記されていた。

 

「なら、灰ウォズとぶつかるタイミングで動いてくれた事を良しとしましょう」

 

 彼女の持つ未来予知でも、アインロールドと破壊者の接触で何が起きるかは予測が出来ない。

 そもそもアインロールドに関する未来予知自体が難しいのだ。

 

 兄の持つ特異性。その事に気が付いているのは、巫女として覚醒できた3人だけだろう。

 いや、大神官である灰ウォズも薄々違和感を感じているのかもしれない。

 

「とりあえず今回はあの男に任せて様子見。最悪の事態になりそうなら介入するから、準備だけはしておいて」

「わかったよ」

「それしかないのかよ。くそっ、せっかく兄ちゃんに会えたのに……」

 

 もっとちゃんと会いたい。会って話したい。抱きつきたい。彼の大きな手を、大きな背中を感じたい。

 3人の少女たちの共通の願いだ。

 ショッカーの基地で実験動物として製造され、気まぐれに兄弟姉妹たちは殺され、あるいは次こそは自分かと恐怖する日々。そこから救い出してくれたのが、彼だった。

 

 彼女たち兄弟姉妹たちにとって、彼だけが世界のすべてだった。

 

 だからこそ……。

 

「仕方ないわ。私たちの救済を成し遂げない限り、世界に居場所なんて無いんだから」

「わかっている」

 

 そう、光の創生者による救済という唾棄すべき思想に、彼女たちは一片たりとも共感をしていない。

 彼女たちが求めているのは、彼女たちによる救済だけなのだ。

 その為には……。

 

「今は教団に従うしかないわ。いつかはみんなで必ずお兄ちゃんの元に帰る。だから……」

 

 ミクの狂気ともいえる視線に、アニータとキャロルが息を飲む。

 それが必要だと彼女たちも分かってはいる。だが、それでもその事を考えると胸が張り裂けそうになる。

 そんな二人の妹の感情などをお構いなしに、ミクは決意の表情でこう呟いた。

 

「ミカ・ウェストは必ず殺す」

 




オリジナル設定ですぞ!

ショッカー系列組織の大雑把な派閥

穏健派:人類に大きなダメージを与えずに世界征服をしたい連中
過激派:いつもの昭和
存続派:人類の防衛、存続を優先したい連中

そして次回から、新章に突入です。
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