ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第6話 episode・W 間話・求めるS/風都生まれの錬金術師

 

「あの人らの紹介か……」

 

 左翔太郎からの説明を受けた黒鋼スパナは指で額を抑える。何か頭痛を抑えているようにも見える仕草だ。

 

 いや、実際に精神的な頭痛に襲われているのだろう。

 

 ほんの少し前にあった、ケミー強奪に端を発する大事件。その事件のさ中、特に脈絡もなく風のように現れて、嵐のごとく大暴れし、返しきれない恩だけを積み上げて風のごとく去って行った仮面の男たちがいた。

 スパナとしても感謝をしてはいるのだが、あの昭和独特の暑苦しいノリと、平成特有の突っ走る勢いに散々振り回された事だけは間違いない。誰とは言わないが一名ほど連中のノリに完全に同化していたが、もう一人の女錬金術師は主にツッコミ担当だった。なお、仲間たちに言わせるとスパナも彼らの同類という事になるのだが、彼はその事実を頑なに認めない。

 それはともかく、ヒーロー過多による悲喜劇が繰り広げられていた末に黄金錬成に至ったグリオンが世界を静寂に沈めようと画策するものの、何故か黄金錬成は遅々として進まず狼狽え怒りを露わにしていたのは敵ながら哀れに思うほどであった。

 

 なお、他人事のように『あの人らの事だから大暴れしたんだろうなー』と呑気に考えている翔太郎も、風都に飛来したドレットルーパーの集団を仲間たちと共に撃退しており、グリオンの怒りの原因の一つだったりもする。

 

「ああ。錬金術の事に詳しい人間を探していたら、あんたの事を教えられてな」

 

 これは本当に運が良かった。

 基本的に仮面ライダーなんかを現役でやっている人間は連絡が取れない風来坊が多い。一つの街に拠点を定め、商売がら必ず連絡を取れるようにしている翔太郎が珍しいのだ。

 これから東京に向かい錬金術師を探さなきゃな……と考えてた矢先にある仮面ライダーから連絡があり、話の流れで何となく聞いてみたらこの町のいる錬金術師の一人を紹介されたのだ。

 

「で、俺に聞きたい事とは?」

 

 とりあえず自己紹介は終わった。別に暇ではないのでさっさと本題に進める事とする。

 

「言っておくが、錬金術に関することは……」

「ああ、錬金術師の秘密を暴く気は無いし、失礼を働く気も無い。ただ、ちょっと錬金術の世界に詳しい人間にこの人らに心当たりがないかを聞きたくてな」

 

 そういうと翔太郎は男女が写った写真を取り出しスパナに見せる。

 男に関しては、スパナの知らない顔だ。

 だが、その男と一緒に写っていた女の顔を確認したとたん、スパナの表情が険しい物へと変わった。

 

「おい、この女をどこで見た?」

 

 当たって欲しくない予想ばかり当たるものだ。翔太郎は内心で溜息をついた。

 

 

 

 

 

 姉ヶ崎峰子の元に探偵から連絡があったのは事件から数日後のことであった。重要な話がある、そう言われた峰子は指定された場所に向かう。

 海の見える公園には、左翔太郎が一人で待っていた。

 

「すいません、急に呼び出して……」

「いえ、一人で家にいても気が滅入るだけですから……」

 

 恋人の死にショックを受けた峰子は、数日前から勤めていた薬局を欠勤していた。

 このまま仕事を辞めるのでは無いか。同僚たちはそう噂をしている。

 そんな彼女に、翔太郎は本題を切り出す。

 

「少し、確認したいことがあって……」

「依頼料の……」

「いえ、そっちでは無いんですよ……、姉ヶ崎さん」

 

 そこまで言うと、翔太郎は一回言葉を切る。

 

「なぜ、恋人の憲太さんに、アマゾン細胞を注入したんだ?」

 

 二人が学生時代からの付き合いだったのは本当だった。

 風都でも二人でいる姿が何度も目撃されている。

 

「た、探偵さん、何を?」

 

 動揺して、声が震える峰子であった。一見すると演技には見えない。

 だが、公園の茂みに隠れていた別の男が声を上げた。

 

「つまらない猿芝居はやめておけ。元錬金術師、姉ヶ崎峰子」

 

 予想もしていなかった黒鋼スパナの出現に峰子は目を丸くする。

 顔なじみ……というほどでもないが、知っている顔だった。とはいえ、基本的に排他的な組織である錬金連合が風都の探偵に協力するとは……。

 

「あちゃー、黒鋼くんがいるって事は、錬金連合まで辿り着いた上に協力まで取り付けたんですか……。隙だらけに見えてすっごく優秀だとは聞いていたんですけれど、本当だったんですね」

 

 先程までと変わらぬほがらかな抑揚の、まるでテストで百点を取った時のような素直な賞賛。気味が悪いと翔太郎は思った。

 そんな翔太郎の感想に気が付いているのかいないのか、様子を全く変えずに言葉を続ける。

 

「えっと、憲太くんにアマゾン細胞を注入した理由でしたね。簡単ですよ、あのままじゃ彼が負けそうだったから、手助けしただけですよ」

「人食いの化け物にしておいてか?」

 

 言葉に悪意や嘲りがあったなら、怒りを燃やせたかもしれない。

 だが、峰子の口から出た言葉は『雨が降ったら傘を差します』程度の響きしか存在しなかった。

 

「え? それに何の問題が? 人を超える代償としては人肉食なんて安い部類じゃないですか」

「なっ……!?」

「ほら、黒い仮面ライダーがいたでしょ。あれアインロールドって言うんですけど、かなり強いんですよね。本当は探偵さんがショッカーと戦って倒してくれたら都合がよかったんですけど、彼ってば先走っちゃうから……。ほんと、せっかくのお膳立てがおじゃんになって気が滅入りますよ」

 

 話しながら小さくため息をつく峰子の姿は、ちょっとした失敗程度のニュアンスしか含まれていない。

 

「それだけじゃねえだろ……。共倒れを狙ったな」

「うーん、能力的には探偵さんが勝つと思っていたので、そうなったらいいなーって考えた程度ですね。複合超人に関しては1対1なら探偵さん相手でも勝てたとは思いますけど不安定で、目的はあくまでもショッカーの排除でしたから……。あ、怒ってます? ごめんなさいね」

 

 手を合わせぺこりと可愛らしい仕草で頭を下げる峰子に、さすがの翔太郎も二の句が続かない。

 さすがに見かねたのか、ここまで黙っていたスパナが翔太郎に待ったをかけた。

 

「だから止めておけと言ったんだ……。そのイカレ女に人間の言葉は通じないぞ」

「相変わらず口が悪いですね、黒鋼くん」

 

 スパナの言葉に峰子が抗議を上げるが、スパナは彼女を無視して翔太郎に彼女の罪状を話す。

 

「超人になると称して非道な人体実験を繰り返したあげく、姿をくらませるために錬金アカデミーを襲撃するような女だ。相手をするだけ時間の無駄だ」

 

 姉ヶ崎峰子は優秀な成績で錬金アカデミーを卒業した、将来を嘱望されていた錬金術師だった。また、錬金術師をする傍ら表の大学にも通い、その美貌とおっとりとした角を立てない性格から同世代の人気も高かったという。

 そんな彼女がなぜ非道な人体実験に手を染めだしたのかは定かではない。

 当初はホームレスなど消えても騒ぎにならない人間を選び期間を空けて誘拐していたが、大学卒業間際には頻繁に人体実験を繰り返すために美人局のような手段を取っていた。

 

 彼女の凶行が発覚したのは、大学卒業後の事だ。

 彼女が作り出した怪物が錬金アカデミーを襲ったのだ。別に狙って襲わせたわけではなく、失敗作を閉じ込めておいた檻が壊れ勝手に出てきたのだ。

 その時には峰子は錬金連合を離れており、行方は杳として知れなかった。

 

 もっとも、峰子からしてみればかなり心外な物言いだったようだ。

 

「そんな、別に母校を襲わせたりなんてしてませんよ。ちょっと忘れていた実験体が逃げただけです」

 

 話すだけ無駄と言いつつも、予想外の言葉にさすがのスパナも反応する。

 死傷者まで出した事件の原因を「忘れていた」の一言ですまされてはたまったものではない。

 

「あの怪物を忘れていただと!? 笑えないジョークだ」

「そう言われても……。結局ケミーは私の作りたいものとはちょこっと違いましたし、錬金連合にいる意味はもうありませんでしたから。河岸を変える準備に忙しくて、養父母の処分なんてすっかり忘れていて……」

 

 流れからしてみて、錬金アカデミーを襲ったのは養父母の成れの果てだったのだろう。

 話を打ち切りたい。その欲求を抑えながら、翔太郎は最後のピースを問いかけた。

 

「あんたはいったい何が目的で、こんな事をしているんだ?」

「私の目的ですか? ん~」

 

 翔太郎の問いを答える義理は峰子にはないが、問われた事を無視するのは学者気質の彼女には耐えがたい事であった。

 

「探偵さんは多分知っていると思うんですけど私が小さいころ、この町で連続爆破事件が起こったんです」

 

 無論、知っている。左翔太郎の原点とも言える事件だ。

 

「私の両親もね、その時に私の前で爆発しました……」

 

 思い出す。公園で遊んでいた自分を迎えに来た両親を……。優しく微笑み遠くで手を振る父と母の最期の姿を……。

 

「その時、こう思ったんですよ……。ああ、超常の力はなんて奇麗だって、私も欲しいって……」

 

 恍惚とした表情を浮かべる峰子に、翔太郎の中最後のピースがはまる。

 会話の時間は、これで終わりだ……。

 

「そうか……わかったぜ」

 

 この言葉を聞いた瞬間、峰子の表情がパッと明るくなる。

 

 錬金術という道を教えてくれた養父母は自分の行いを拒絶した。

 超常の力を扱う錬金アカデミーも錬金連合も、自分の考えは誰にも理解されなかった。

 今の同僚は力だけで誰も自分にはついてこれない。

 

 理解者という意味では恋人の憲太だけだったのに……。

 

「嘘!? わかってくれますか、探偵さん?」

「ああ、あんたの原点がな。姉ヶ崎さん、あんたは罪を知った上で償わなきゃならねぇ!」

「意味が分かりませんね」

 

 まるでビデオの逆回転を見ているかのように、笑みすら浮かべていた峰子の表情がすっと冷たい物となる。

 まるで害虫を見るかのような目で翔太郎を見ると、胸元から一本のガイアメモリを取り出す。

 

「まぁ、黒鋼くんがいた時点でこうなることは予想していましたけど」

 

【SAVE!】

 

 そのまま彼女は胸の間にガイアメモリを突き刺した。

 女のシルエットが光に包まれぐにゃりと変わり、配線と電子回路が複雑に絡み合った化け物が姿を現す。

 

「黒鋼さん」

「ああ、わかっている」

 

 スパナが腰に白金の意匠を施したベルト……ヴァルバラドライバー黒鋼を装着する。

 飛び出した二体の相棒……メタルケミーマッハウィールとメタルケミーダイオーニがカードとなってスパナのもとに駆け付ける。

 

「オニオーニ!」

「ウィール!」

 

 二体のケミーカードをベルトのスロットに差し込む。

 

【MACHWHEEL! ガキン!】

【DAIOHNI! ゴキン!】

 

 ベルトの内より、ケミーが唸りを上げる。

 

「変身!」

【ガッチャーンコ!バースト!】

 

 次の瞬間、黒鋼スパナの内より白銀の炎が吹き上がり、現れた黒き甲冑を輝く色に染め上げていく。

 紫に輝く瞳が、邪悪なる存在を見つけ出し視線で射貫く。

 

【オーバートップギア!】

 

 錬成された彼の専用武器……2本のヴァルバラッシャーが宙に出現し、複雑な軌道を描き彼の背中に収まる。

 

 白銀の仮面ライダー……その名も仮面ライダーヴァルバラド黒鋼。錬金術の新たなる可能性を示す仮面ライダーの一人……。

 

 

 同じ瞬間、風都の探偵もその姿を変える。

 

【CYCLONE!】

【JOKER!】

 

「変身!」

 

 ドライバーに差し込まれたメモリがうなりを上げる。

 邪悪を吹き飛ばす風と、黒き最後の切り札が目覚め、硬質の装甲を生み出す。

 

「さあ、お前の罪を数えろ!」

「さあ、お前の罪を数えろ!」

 

 

 仮面ライダーWと仮面ライダーヴァルバラド黒鋼・二人の仮面ライダーに挟まれる形となったセーブドーパントだが、余裕の態度を崩すことは無かった。

 

「困ったな、わたしってば荒事は正直苦手なんですよね……」

 

 その言葉と共に、彼女の指先から赤い血が零れ落ちる。

 

「なので、頼れる彼氏にお願いしますね」

 

 地面に落ちた何かはそのまま膨れ上がり、男性の姿を取った。

 

「頼れる彼氏?」

 

 その姿にヴァルバラドが何か引っかかりを覚えるが、喉元まで出てきているようで出てこない。

 だが、その疑問はすぐに解消される。

 

「茂木……憲太さん?」

 

 そうか、あのイカレ女の被害者男性の名前……。だが、死んだはずでは?

 いや、あれは……。

 

「そうか、茂木を基にしたホムンクルスか……」

「ホムンクルス?」

「錬金術で作成される人工生命体の事だね。実に不思議だ。こういう場面でなければ調べてみたいのだが……」

 

 Wから翔太郎と別の声が聞こえてくる。変身時に一体化する相棒のフィリップだろう。Wの存在の方がよっぽど不思議だとヴァルバラドは思ったが、それを言い出さない分別がスパナにはあった。

 第一、そんな場面ではなかった。

 ホムンクルスと思われる茂木はその口から人とは思えぬ咆哮を上げると、その姿を大きく変じる。

 一回り大きく、炎を纏った怪物に……。

 

「なっ、マグマドーパントになっただと!?」

「まさか、ガイアメモリを刺してもいないのに!?」

 

 ガイアメモリに詳しいWの二人が驚きの声を上げる。

 

「それだけじゃありませんよー」

 

 マグマドーパントはさらに変化する。その身はさらに巨大に。力強く。

 肩より突き出した突起には炎を纏う……。

 

「アマゾン細胞を注入した時の姿にまで……」

「でたらめな……」

 

 どのようなカラクリを働かせているのか、目まぐるしく姿を変える炎の魔獣にWが呆れる。

 

「だが、所詮は一体だ」

「一体じゃありませんよ」

 

 さらにセーブドーパントの指から血が滴る。

 

「おいおい……」

 

 翔太郎が驚愕の声を上げる。

 それはそうだ、滴り落ちた血は、複数の茂木健太を生み出し……さらには、男の姿を経由し、巨大な炎の魔獣に姿を変じたのだ。予想外というのもあるが、十を超える燃える魔獣というのは視覚的な圧だけでかなりのものがある。

 

「ふふふふふ……、一度負けた憲太さん(モルモット)をそのままになんてしておきませんし、探偵さんだけではなく黒鋼くんもいるのに、一体で勝てると思うほど呑気でもありませんわ。憲太さん、お願いね」

 

「GYAAAAAAAA!」

 

 セーブドーパントの命令に、10体近くの魔獣が襲い掛かってくる。

 

「翔太郎!」

「わかってる!」

 

 次々に放たれる炎の弾幕を回避しながら、わずかな隙を見逃さずWがメモリチェンジを行う。

 

【HEAT!】

【METAL!】

 

 選んだのは業火と鋼の闘士の姿。炎同士では攻撃は通じにくい物の、それはこちらも同じこと。敵の数が数なので防御力と、一発当たりのパワーを優先したのだ。

 多少の炎の被弾を気にせず近づいてきた魔獣の爪をメタルシャフトで受け止める。

 

「GURAAAAAAA!」

 

「前より……動きが早い……。改良されているのか!?」

「だが!」

 

 確かに動きが鋭くなってはいるが、十分対抗可能な範囲だ。

 隙だらけの胴体に重い蹴りを一発入れて体勢を崩すと、炎の推進力を追加したメタルシャフトを脳天にくれてやる。

 頭をかち割られた魔獣が、大地に倒れ伏した。

 

 

 

 ヴァルバラド黒鋼は白銀の炎を纏う仮面ライダーだ。その耐火性能は冥黒王の放つ炎すら耐える事が出来る。

 そういった意味では、炎の魔獣は彼にとって相性の良い敵だ。

 

 多少の至近弾を物ともせずに突き進むと、見据えた炎の魔獣を両手のヴァルバラッシャーで十字に斬り裂く。

 

「GUGARAAAAAAA!」

 

「あのイカレ女の犠牲者か……。だが、容赦はしない!」

 

 一瞬の間に、何を思ったのか。

 だが、ヴァルバラドの動きには迷いなく、切り裂いた部分に掌のビームを撃ちこむ。

 体内に飛び込んだビームは魔獣の体内を容易に破壊しつくす。

 

 だが……。

 

「ちいっ!」

 

 魔獣の一体を容易く葬ったヴァルバラドだが、息をつく間もなくその場を大きく飛びのく。

 彼が一瞬前までいた場所に、複数の魔獣が躍りかかってきた。ヴァルバラドは飛びのき難を逃れた物の、先ほど倒された魔獣が他の魔獣の牙や爪でズタズタに引き裂かれた。

 

「同士討ち……いや、自分殺しも厭わないのか!?」

 

 無防備に背中を見せる一体の首を撥ねながら、理性を感じられない行動に驚く。

 命令に従い暴力を振りまく、理性無き獣の姿がそこにはあった。

 

「どれだけ出てくるんだよ!?」

 

 メタルシャフトで魔獣をいなし反撃をしながらWが横目でセーブドーパントを見る。

 

「ふふふふふ。まだまだ増やせますよー」

 

 魔獣の群れに守られたセーブドーパントは、余裕綽々の態度を崩さず魔獣を生み出し続ける。すでにその数は20を超える。

 一体一体は対処可能な強さでも、巨大な魔獣の爪はライダーの装甲を貫くだろうし、耐火性能が高いと言えども着弾の衝撃を完全に殺せるわけでもなく、マグマの炎を何回も喰らえばやがて限界が来る。

 さらに俊敏な巨体もやっかいだ。戦闘力もさることながら盾役としては申し分ない。生成を妨害するべく牽制の射撃を挟もうにも、あの巨体が盾となり容易に防がれる。

 

「くそっ! 錬金術ってのはでたらめだな」

 

 魔獣を叩きのめしながらの翔太朗のぼやきに、魔獣を斬り倒しながらヴァルバラドが答える。

 

「賢者の石があるわけでもあるまいし、あそこまででたらめな真似ができるはずないだろう」

 

 二人の会話を聞きながら、錬金術とドーパントの能力の複合だろうとフィリップはそう結論付けていた。

 能力の使い方も……言っては悪いが単純だ。

 問題は数だ。20を超える巨獣に包囲されていてはセーブドーパントにたどり着けず、どちらかがすべてを引き受けるようなそぶりを見せれば、おそらくは逃亡を選択するだろう。

 

「せめて、包囲を崩せる一手があれば……」

 

 あるカードのみで戦うしかない。それでもと漏れたフィリップの言葉に反応したのは、第三者の言葉であった。

 

「なんだ、包囲を崩せば良いのか……」

 

 Wの耳にしか届かない、そんな指向性を持たせた声が届く。

 

「えっ!?」

「どうした!?」

 

 Wの驚きの声に反応したヴァルハラドだったが、すぐに何が起きたのかを理解する……もしくは誤解する。

 それはセーブドーパントも同じだったようだ。それの到来に彼女も気が付いた。

 

「やれやれ、風都に到着したとたんこの騒動とはな……」

「貴様は?」

「ブラックライダー!?」

 

 近づいてくるのは、一人のライダーであった。

 黒い特殊強化服、同じ色のヘルメットには赤い目が輝き、赤いマフラーが風都の風に翻り、腰のベルトの赤い風車が回転をする。仮面ライダー1号に酷似していながら、どこかしら禍々しさを感じさせるその男の名は、アインロールド。

 少し前にWが戦ったショッカーライダーだ。

 

「あら、ショッカーの仮面ライダーさんも来ましたか。前の憲太さんの仇がこの町に自ら来てくれましたかー」

「ふん。ここは我らには難しい土地だと知って引き籠っていたのだろうが、また新しいお人形を随分と増やしたようだな。相変わらず独りよがりのお人形遊びを楽しそうにしていて何よりだ」

 

 以前と同じ高慢な物言いではあるが、先ほどの声……何を考えている?

 

「人の運命の彼氏をなんだと……。前の時は黒こげになっていたのに余裕ですね」

「貴様こそそこの半端者どもを相手に随分と梃子摺っていたようだが? この町にいると知っていたなら早々に始末していたものを……。こそこそと手間をかけさせてくれる」

 

 そして何を知っている、ブラックライダー……。

 

「相変わらずのクソガキが……。あなたと話しているとIQが下がりそうで嫌ですね。行きなさい!」

 

 セーブドーパントの言葉に、新たに生み出された二体のマグマドーパントが躍りかかる。

 だが、アインロールドは焦らない。鉤爪で切りかかってきたドーパントの腕を伸び切る前にむんずと掴むと、そのまま捻りもう一体のいる場所へと投げ飛ばす。

 

「Gyayaa!?!?」

 

 自身の巨体を投げられたことに魔獣が悲鳴を上げるが、アインロールドは小さくつぶやく。

 

「Wですら投げられたのだ。俺に投げられないはずがあるまい」

 

 飛び上がったアインロールドの脚部が収束したエネルギーの赤い光に輝く。

 

「ライダー……キック!」

 

 そのまま二体の魔獣を蹴りで串刺しに貫く。爆散する魔獣を一瞥することなく、アインロールドはつまらなさそうに言い捨てる。

 

「この程度で俺がどうにかなると? セーブドーパントという割には随分と記憶容量が乏しいようだな」

「二体程度……。まだ居ますよ」

「さらに増やすか……。相変わらず駄作ばかりを作るな。資源の無駄も良いところだ。まあ良い……」

 

 さらに魔獣を生み出すセーブドーパントを嘲るアインロールドの視線が、一瞬だけこちらを見た。

 何かを仕掛ける。百戦錬磨の翔太郎とフィリップの勘がそう告げる。

 

「ならば、少々本気を出すとするか……」

 

 次の瞬間、アインロールドのベルトから膨大なエネルギーが解き放たれる。

 周囲の空気が震え、木々が揺れ、海がざわめく。

 そのあまりにも膨大なエネルギーに反応したのか、魔獣たちが一斉にアインロールドを向き敵意……いや、食欲をむき出しに襲い掛かる。

 

「な、なにがっ!?」

 

 唐突に制御を離れた魔獣にセーブドーパントが困惑の声を上げる。

 それは、一瞬の隙……。

 

「翔太郎!」

「わかってるって!」

 

【LUNA!】

【JOKER!】

 

 Wの動きは速かった。瞬時にメモリチェンジをしてルナジョーカーに姿を変える。

 柔軟でトリッキーな動きが可能なルナと、素早く身軽な動きのできるジョーカーが、魔獣の包囲を突破するのに最適の形態だった。

 

「ちいっ! でも、まだ憲太さんはいますよ!」

 

 Wやヴァルバラドと戦っていた魔獣の制御は離れていても、傍にいた連中はいまだ制御下だ。Wはともかくヴァルバラドはまだ魔獣の群れを突破できていない。

 こいつらを肉盾に使えば、十分に距離を保つことはできる。

 

 残った魔獣がWを足止めしようと襲い掛かる。

 その巨体さと数でWの足が止まる。

 

 余裕ぶっていたアインロールドは魔獣の群れに飲まれて身動きは出来ない。

 

 後は少しだけ距離を取ればいい。憲太さんはまだいくらでも作れる。

 数さえまた増やせば、圧殺が可能だ。

 

「いや、ここまで近づけば、もう充分さ」

 

 Wからフィリップの声が聞こえる。

 何が十分なものか……。

 

「ルナにはな……。こういう使い方もあるんだ」

 

 魔獣の群れを突破したWの右腕……金色の腕ははるか後方に伸びている!?

 

 セーブドーパントがその事実に気が付いた時は、もう手遅れだった。

 

 Wが伸びた腕を大きく振りかぶる。

 その腕の先には、仮面ライダーヴァルバラド黒鋼が。

 

「まさか、こんな作戦を瞬時に思いつくとはな……」

 

 そう、Wが単独で突破するように見せ一時的にヴァルバラドから注意を逸らし、そのすきにWの右腕で彼をつかむ。

 ある程度接近をしたのち、Wが彼を持ち上げセーブドーパントに向かい投げて見せたのだ。

 

 ヴァルバラドには飛行手段はある。だが、もしそのような手段を使っていれば射撃武器と同じで魔獣に迎撃され、セーブドーパントは逃亡を選んだであろう。

 ルナによるヴァルバラドの投擲という予測不能の奇策を前に、ついにはセーブドーパントの身に刃が届く。

 

「これで……チェックメイトだ!」

 

 落下の勢いを合わせた強烈な斬撃が、セーブドーパントの左手……。いや、指輪を切り落とす。

 砕かれた指輪が煙を上げ小爆発を繰り返し、中から倒れたまま動かない男が姿を現す。

 

「オリジナルの茂木健太を素材にした簡易ホムンクルスか……。本人を材料に使えば錬成も素早くできるか」

 

 おそらくは、Wが以前見たという茂木健太も姉ヶ崎峰子が作り出したホムンクルスだったのだろう。

 やはりこの女はイカレているな……。スパナは過去のアカデミー襲撃を思い出して苦々しく吐き捨てる。

 

「かえせえええええええ!! それはわたしのだあああああああ!!」

 

 一方、イカレ具合を再認識された女は手首から先を切り落とされたのにもかかわらず、茂木健太を取り返そうと半乱狂になってヴァルバラドに襲い掛かる。

 だが……ヴァルバラドは特に慌てない。迎撃する必要すら、もう無かった。

 

 なぜなら……。

 

「彼は彼自身のものだ。君のものではない。セーブメモリの力は記録の保存……茂木さんを基にした簡易ホムンクルスに怪物となった茂木さんの記録を上書きしていたわけだ」

 

 茂木健太を封じ込めていた指輪がホムンクルス維持のキーでもあったのだろう。包囲していた魔獣が消失していたため、Wがすぐそばまで接近していたのだ。

 

「あんたからの依頼内容は、……行方不明の茂木健太さんを見つける事だったな。依頼達成……させてもらうぜ」

 

 Wの左のスロットから引き抜かれた黒いメモリが腰の右のホルダーにセット。

 メモリブレイクの準備はもうできている。

 

【JOKER!……MAXIMUM・DRIVE!】

 

 ベルトから軽快な作動音声が響く。

 Wが体の中央から左右に分かれる。金色の身体が5つに姿を分身させた。

 

「ジョーカーストレンジ!」

「ジョーカーストレンジ!」

 

 5体のルナWが一斉に黄金の腕をしならせ、セーブドーパントを打ち据える。

 その勢いに跳ね飛ばされるセーブドーパントを、黒き切り札が追撃する。

 

「はあっ!」

 

 エネルギーを纏った拳がセーブドーパントの身体を打ち抜く。

 

「ぐえあああああ!」

 

 それで最後であった。

 

 セーブメモリは打ち砕かれ、怪物はその身をこの世界から消失させるのであった。

 




おばあちゃんが言っていた。悪役はなんか知っているムーブをさせておけば良いって

主人公、出番はちょこっと……。
翔ちゃんがほんと勝手に動く動く……。

ところで、原作エピソード終了後(原作通りとは言っていない)が基本だと、オリキャラ増やさなきゃダメじゃないか!? ←今更気が付いた。
まぁ、どうせ悪役勢は(映画のたびに)脈絡もなく何度も復活してきていますが……

ところで、よく考えたらこれ、ライダー全部復習しないとキャラエミュ出来なくない!?

  • お前の始めた物語だろう
  • (見なくても)何か、行ける気がする!
  • 無理はしなくて良いのよ
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