ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第63話 episode・GAVV 幕間・問題だらけのクリームサンド

 こんにちは。俺、ショウマ。

 

 公園で落ち込んでいた人は仮面ライダーアインロールドだった。

 

 彼と協力してグラニュートと戦っていたんだけど、グラニュートはアナザーガヴという知らない怪物になった。

 

 さらに、アインロールドも突然暴走を始め、俺は大ピンチに!

 

 やって来た絆斗やラキアと共にアインロールドを取り押さえたんだけど、取り押さえた仮面ライダーはアインロールドではなく、仮面ライダーアンウォンテッドだった!?

 

 アンウォンテッドは暴れまわる危ない奴だったけど、俺に投げて渡しただけでヒトプレスを壊したりはしなかった。

 

 そして、あいつが最後に漏らした苦悩の言葉と『ごめん』の一言。

 

 ほんの少しだけ、あいつの気持ちが分かる気がした。

 

 だから、俺だけでもアンウォンテッドがいた事を覚えておこう。そう思った。

 

 

 

 ※※※※※

 

 

「うわああああああ!?」

「どわああああああ!?」

 

 起き抜けにドアップでみるクジラとカエルを足して2で割ったような怪人の顔は中々パンチが利きすぎだと思う。

 びっくりして思わず叫んでしまった俺に、覗き込んでいた怪人も声に驚いて叫び声を上げる。

 その叫び声に驚いてお互い叫び声が大きくなったのは不毛過ぎた。

 

 目の前にいる怪人は、驚きすぎて手足をバタバタさせながらその場で横にぐるっと回ったぞ?

 

 一通り叫び終えて、お互い息を切らしながらどちらからともなく頭を下げる。

 

「す、すいません。起き抜けに人の顔があったもので驚いて大声を上げてしまって」

「いや、ワシこそ無遠慮じゃったわい」

 

 ちなみに驚いたのはパンチの効いた顔があった事だけで、顔の造詣自体はさほどでもない。

 この手の顔はうんざりするほど見慣れている。

 むしろこのクジラっぽいようなカエルっぽいような濃い紺色と黄色いラインの怪人は、ショッカーの連中に比べれば愛嬌がある顔とも言えるだろう。

 

 腹の口持ちという事は、グラニュートか。

 

 ショウマさんの知識量から、彼にグラニュートの協力者がいる事は容易に推測できたので驚く程の事ではない。

 洞窟かトンネルを使った住まいだろう。生活感があり、雑多ではあるがインテリアに気を使っている様子が見て取れる。机の上にあるのは何かの工作機械だ。

 恐らくこの人物の住処兼研究施設と言ったところか。

 

「あの、ここは?」

「ああ、ここは儂の家じゃよ。ショウマたちがお前さんを担ぎこんできてな」

「そうですか。助けていただいてありがとうございます」

 

 まぁ、これもわかってはいた事だが、ショウマさんたちは俺にとどめを刺さずここに連れてきたようだ。

 

 暴走モードの野郎……やりやがって。今回は本当に好き勝手に暴れやがった。

 しかもあいつ、最後はあんな悲壮感たっぷりだった癖に消えてないのかよ。いや、あの存在なりの苦悩があったのはわかるけど、自分で俺とは違う名前を定義したからか俺とは別存在になって俺の中に残っている。

 いや、それどころか分離しかかってない、これ? 別存在と認識できる上にアクセスが不能になっているぞ?

 

 当座は出てきそうにないし、こっちで封印制御をできそうではあるが……。どうするかな、これ?

 

「礼儀正しい子じゃなぁ。ワシはベッドを貸しただけじゃよ。診察する前に身体は治っていたようじゃしな。おぬし、普通の人間では無いな?」

「ええ、改造人間ですので」

「ほう……グラニュートを上回る回復能力とは、人間の技術も大したもんじゃわい」

 

 マッドかな、この人? なんか人体の改造技術に感心しているぞ?

 えっと、そういやこの人の名前なんて言うんだ?

 

「えっと、すいません。お名前を窺ってよろしいですか? 私はアインロールドと申しますが」

「おお、そういえば自己紹介がまだじゃったな。ワシはデンテ・ストマック。まぁ……、ショウマの協力者みたいなもんじゃ」

 

 ストマック、ストマックねぇ……闇菓子とやらを作っている会社がストマック社だっけ。

 

 それにデンテさんの自己紹介は歯に物が詰まったような言い方だが、ショウマさんの腹に直接ベルトのバックルがくっついているあたり、碌な関係では無いのだろう。

 文字通り出会ったばかり、しかも通りすがりの悪の組織の幹部(元)の俺が突っ込んで聞くような話でもない。

 気が付かないふりをして話を続けようとするが、その会話は部屋にやってきた人たちにより中断を余儀なくされた。

 

「アイン! 目が覚めたの!?」

 

 やってきたのは当然ショウマさんだ。

 外にまで叫び声が聞こえたのだろう。笑みを浮かべ慌てて駆けこんで来た。

 

「すいません。どうやら俺じゃない俺が御迷惑をおかけしました」

「ううん。大丈夫だから、無事でよかった」

 

 さらに、ショウマさんに続き二人の男性が部屋に入ってくる。

 もっとも、笑みを浮かべるショウマさんに対して、当然だが二人の反応はかなり渋い。

 

 その内、背が高い染めた髪にロングベストの男は一目でわかるレベルで俺を警戒していた。

 得物こそ持っていないが、いつでも動けるよう俺から一番離れた位置に陣取っている。

 暴走モードの俺と戦ったのだから、彼の反応は当然だ。

 

 一方、柄シャツに濃い茶髪の男だが、こっちは何とも妙な反応である。

 俺を警戒してはいるのだが、その割には俺の顔をチラ見しては何かを考えこむ様子だ。

 見覚えのある顔ではないが……。

 

 茶髪の男の妙な仕草やそれを見て首をかしげる俺を察したのか、ショウマさんが慌てて一緒に飛び込んで来た二人を紹介してくる。

 

「あっ、えっと、こっちが絆斗で、こっちの背が高いのがラキア。俺の仲間なんだ」

「ああ、よろしく」

 

 茶発の男、絆斗さんは釈然としない様子ではあるがこちらに挨拶をしてきた。

 声の様子から、こちらがヴァレンか。となると、背が高いラキアさんがヴラムという事になる。

 

「すいません。暴走中の俺が御迷惑をおかけしたようで。本当に申し訳ありませんでした」

 

 まぁ、とりあえずこれに関しては謝罪一択だ。止めを刺されていても文句は言えない。

 そんな俺に対し、絆斗さんは一瞬だけだが表情を緩めるが、不信感を隠さぬまま問い掛けて来たのはラキアさんであった。

 

「暴走と言ったな。グラニュートと戦えるお前は何者なんだ?」

「えっと、アインは仮面ライダーで。ラキアもこっちで仮面ライダーのうわさ位は聞いているでしょ」

「ショウマ、俺はこいつに聞いているんだ」

 

 何とか場をとりなそうとするショウマさんに対し、ラキアさんの声は厳しい。

 一歩間違えれば殺されていたのだから当然だろう。

 

「すいません。隠していた訳では無いんですが、俺は仮面ライダーではありません。ショッカーの改造人間、ショッカーライダーです」

「ショッカー……アインはショッカーなの!?」

 

 俺の告白に、この場にいた者たちが一斉に凍り付く。

 当然だ。ショッカーを名乗るという事はこの業界ではとてつもなく重い。

 ショウマさんは俺の言葉を受けて、ラキアさんに向かいこう尋ねた。

 

「ねえ、ラキア……。ショッカーって何?」

 

 おい、まてや。

 

「知らん」

「ワシも知らんのぉ。新しいお菓子か何かの名前か?」

 

 こら、マテや。

 仮面ライダーとその関係者なのにショッカーの名前を知らんのか、この人ら?

 あとショッカーなんて名前のお菓子を売り出した日には、即日回収騒ぎになるぞ、絶対。

 

「うわさ位は。ほら、聞いた事あるでしょう?」

「いや、全然」

「まったく」

「聞き覚えは無いのぉ」

 

 嘘やろ……。

 なったばかりならまだしも、ショッカーの名前を知らない仮面ライダーがいるだと!?

 

「ほら、財団Xとかゴルゴムとかクライシスとかハンドレッドとか……」

「どれも知らんのぉ?」

 

 マジかよ……。

 こっちの業界で有名どころの名前を適当に並べてみたが、どれも知らないらしい。

 おのれディケイド! どうしろって言うんだよ、これ!

 

 どう続けて良いか困っている俺に対して、助け舟を出してくれたのは絆斗さんだった。

 

「ショッカー……。世界征服を企む悪の秘密結社だっけ?」

 

 おお、知っている人がいた。

 良くは無いけど良かった。

 

「知っているの、絆斗!?」

「ああ、師匠と酸賀の野郎から聞いた事がある。アイン、お前はそこの改造人間なのか?」

「その通りです」

 

 鋭い目で問いかけてくる絆斗さんに、俺は誠実に答える。

 ショッカーを噂程度でも知る者からすると、俺がどれだけ危険かはわかるだろう。

 暴走モード抜きでも、俺はそういう存在なのだ。

 

「お前はこれまで……」

 

 恐らくは絆斗さんは俺が働いてきた悪事を聞きだそうとしたのだろう。

 

 命じられるままに手にかけた人間は二桁を超えている。ショッカーのトップはミカだが、現場の指揮官は俺だ。

 最近は政治経済への浸透作戦を進めている為に自衛以外で暴れる事はほぼ無いが、それでも世界征服を進めている以上は悪事を働いていることに変わりはない。

 さらに、系列組織の暴虐を見逃している以上は俺だって同罪である。

 

 今この場で退治をされても文句が言えない所業を俺はやっている。

 絆斗さんがどのような立場なのかは知らないが、そういったことを問い質したかったのだろう。

 返答次第では……。そんな気迫すら感じる。

 

 俺は果たしてどう答えるべきだったのだろう。

 

「あれ? でも昨日クビになったって言ってなかったっけ?」

 

 そんな俺と絆斗さんの間の緊張を粉微塵に打ち砕いたのは、ショウマさんのこの言葉だった。

 そういえば、昨日言ったっけっか?

 天然なのか狙ってやったのか、恐ろしい人である。

 

「え、いや、はい、そうですが……」

「お、おおう。下っ端は大変だな……、あ、いや、そうじゃなくて」

 

 緊張感を吹き飛ばされた絆斗さんが慌てて何かを言おうとするが、彼が何かを言うより早くデンテさんの無遠慮な一言がさく裂した。

 あと、下っ端じゃなくて割と幹部でした。

 

「うむ、つまり今のおぬしは、無職ライダーアインロールドというわけか」

 

 何よそれ?

 いや、もうショッカーライダーじゃないし、仮面ライダー扱いよりは無職ライダーはマシなのか?

 マシじゃないよなぁ……。

 

「それよりも、先に聞きたい事がある。あのグラニュートが変身した怪物の事だ。アインはアレの事を何か知っているの?」

「変身? それって、まさかまたビターガヴが?」

「ううん。ビターガヴとは全然違う。そうか、絆斗たちは見ていないんだ」

 

 そう言うと、ショウマさんはポケットから赤い携帯電話のような機械を取り出すと、一匹のゴチゾウがぴょんぴょんとショウマさんの肩を駆け登り端末にその身を滑り込ませる。

 すると、携帯の上に小さな画面が浮かび上がり、俺たちとアナザーガウの戦いの動画が映し出された。どうやらこのゴチゾウが見ていたものが再生されているらしい。

 

 記録装置まで備えているのか。

 ゴチゾウはガヴの能力拡張だけでなく自立行動や映像記録までできるとはなかなか多芸な上に素直な良い子のようだ。人を買い物にこき使うどこぞのバイクに爪の垢でも煎じて飲ませたい気分である。

 

 それはともかくとして、アナザーガヴは何とかしなきゃいけない以上、アナザーライダーについて少し話しておかないといけないよなぁ。

 あれ、どう説明したものだろうか?

 秘密にしておかなければならない理由がある訳では無いのだが、いかんせんジオウのウォッチはそのまま話すとこの界隈でもトップクラスに理解に苦しむ不思議アイテムだ。

 

「俺も専門ではないので簡単に説明すると、他の仮面ライダーの力を使うアイテムです」

 

 結局の所、まずは実際に対面する機能的な事だけを話す事にした。

 

「え、つまりあれって俺の力って事?」

「あれは多分アナザーウォッチ、悪意に歪められた力になるみたいです。俺のアナザーは重火器の塊になってましたね」

「アインのアナザーもいるの?」

「ええ、不本意ながら……。あれは仮面ライダーという存在を悪意を持って解釈したらこうなる。そういう存在です」

 

 一瞬だけショウマさんがすごい深刻な顔をしたので、俺のアナザーも居たことをアピールしてフォローしておく。

 ゴチゾウの力を借りて人を守るために戦うガヴに対して、ビッグサイズゴチゾウに人を襲わせるアナザーガヴ。間違いなく悪意に歪められた存在だ。俺のアナザーは兵器として作られた俺を、ストレートに表現したってところだろう。

 あれはショウマさんの力を元にしていても、ショウマさんの力というわけではない。

 

「ふむ、おぬしの説明を聞くとそのアナザーウォッチ、『別の』ではなく純正のウォッチもあるという事かのぉ?」

 

 俺の説明を興味深そうに聞いていたデンテさんが俺に尋ねてくる。

 鋭いぞ、この爺さん!

 

「それだけじゃないだろう。お前、何を隠している?」

 

 そして鋭い目で詰問基調なのがラキアさんだ。まぁ、一番重要な部分を端折って、アナザーの性能のみに焦点を絞り説明したから気が付く人は気が付くか。

 しかし、どうするかなぁ……。

 

「知っている事を全部話せ。判断はこちらでする」

 

 まぁ、信用されていない以上は仕方が無いか。

 俺は気を取り直そうと一回だけ溜息をついてから、前置きを置いて説明を開始する。

 

「俺は専門家じゃありませんから、伝え聞いた事だけってことは理解してください。まずライドウォッチとアナザーウォッチというものがありまして、どちらも機能としては仮面ライダーの歴史を継承する能力が……」

「いや、まて。お前いきなり何を言っているんだ?」

「気持ちはわかりますけど、まだ前置きです。歴史を継承されたライダーはその力を奪われ……」

「えっ? 奪われるの、俺!?」

「あ、でも俺もショウマさんも力を奪われてないな?」

 

 そういや以前アナザーアインロールドが出た時や、今回のアナザーガヴが出た時もライダーとしての力は失っていない。

 パチモンの中にはタイムジャッカーに力を奪われたって噂の奴もいるんだけど。

 いや、歴史を継承済みである筈のWやオーズ、響鬼がそのままだったことを考えると、もうこの世界は継承で力を失う事は無いのかもしれない。まぁ、今度会ったら常磐さんにでも聞いてみよう。

 

「多分常磐さん、ジオウが歴史を開放した影響でしょう」

「いや、だから歴史とか継承とかお前は何を言っているんだ?」

 

 絆斗さんが一々ツッコミを入れるくらいぶっ飛んだ、タイムジャッカーという存在やジオウという仮面ライダーや歴史を継承する、あるいは奪い去るライドウォッチの事を話していく。

 流石にオーマジオウの事は話さなくても良いだろう。ちょっと理解が及ぶ範囲じゃない。

 しかし、歴史を継承するとか何なんだろうね。あんな手のひらサイズのアイテムで歴史を書き換える事が可能とか、力の規模が大きすぎるだろう。

 アレに比べりゃ各ライダーの不思議アイテムはまだ……いや、他も大概か。

 

 俺のざっくばらんな説明を聞いた4人の反応は三者三様というか四者四様であった。

 

「ほほう、人間界にはなんとも不思議なアイテムがあるものじゃ。一度見てみたいのぉ」

 

 知的好奇心をくすぐられたのか、デンテさんは楽しそうに感心をしている。

 とはいえ、ポジティブな反応はこの人ぐらいだ。

 

「歴史を継承する???」

 

 俺の言っている内容がいまいち理解できず、宇宙猫状態の絆斗さんだ。

 

 口頭で説明されても理解しがたいものがあるのだろう。実際に加古川飛流が引き起こした事件に立ち会った俺ですら、唐突に加古川飛流元年とか言いだされて理解が追い付かなかったぐらいだ。

 ラキアさんに至っては口にこそ出していないが、『こいつ、正気か?』という目で俺を見ていた。

 多分この人は常識人枠なのだ。彼の反応が多分一番普通である。

 

「一休みする? お菓子もあるし」

「あ、手伝います。お茶のセットお借りします」

「おお、すまんのぉ。そこの戸棚に置いてあるぞ」

 

 ショウマさんもジオウの話はちょっと突飛すぎて理解しがたかったのか、一服を入れたかったようだ。

 俺はデンテさんに言われた戸棚からティーセットを取り出すとお茶の準備を始める……って、見慣れたセットだな、これ。ミカが使っている最近女子の中で流行のおしゃれな奴じゃないか。

 まぁ、人の趣味にとやかくは言うまい。

 

 お茶とお菓子……昨日ショウマさんから貰ったのと同じ、パンケーキにクリームを挟んだ定番のお菓子だ。

 丁度話し疲れて喉も乾いていたところだ。俺とショウマさんは普通にお茶とお菓子を。宇宙猫絆斗さんとラキアさんはまだ俺の話が飲み込めないのかお茶にすら手を付けていない。 

 

「疲れているときは甘いお菓子だよね。ふわふわで噛むとクリームが出てきてパンケーキとクリームの味が合わさってたまらない」

「ほんとそうじゃのぉ」

 

 おいしそうにお菓子を食べるショウマさんとデンテさんだ。見ているこっちまでほっこりする。

 デンテさんはなんか包装袋まで食べているが、そこは流石異世界人といった所だ。お茶代わりにオイルを飲んでは食堂から叩き出されている連中に比べれば、匂いによる害がない分大人しい部類だろう。

 

 ん? あれ?

 

 ふと二人を見ていると、俺はショウマさんのお腹のあたりがもぞもぞ動いている事に気が付く。

 自身の腹部の動きに気が付いたのか、ショウマさんは唐突に服のジッパーを開ける。彼の腹と一体化したベルトのバックルの口、その奥が輝いたかと思うと光の中から飛び出してきたのは一体のゴチゾウであった。

 

「新しい子?」

 

 手のひらでぴょんぴょんと跳ねるゴチゾウに、ショウマさんが語り掛ける。

 デバイスを自力で生産できるのか、本当に独特なシステムだ。

 

 初めて見る俺には驚きのシステムだが、見慣れた面々にはいつもの光景なのだろう。

 特に注目を集める事なく、ラキアさんなどは先ほどからゴチゾウが再生するアナザーガウとの戦いを注視している。

 

「おい、お前」

「どうしました?」

「これをどうやったんだ?」

 

 ラキアさんが注目したのは、俺が爆発するビッグサイズゴチゾウからヒトプレスを抉りだした瞬間であった。

 俺としては爆発の衝撃と自身の耐久度を測り間違えて暴走を引き起こしたチョンボなのだが、ヒトを守る事を使命とする仮面ライダーにとっては重要な場面なのだろう。

 

「手の先にバリアを張ったんですよ。個々の爆発の規模そのものはさほど大きくありませんから、なんとかヒトプレスを保護できました」

「よくヒトプレスがあったのが分かったな?」

「ヒトプレスが入っている個体は口などの隙間から見れば入っているのが見えます」

 

 よくよく思い出してみれば、ビッグサイズゴチゾウは割と隙間が多かった。

 口の中に限らず注意して監視すれば発見する事は可能だろう。

 

「つまり、口の中をよく見て爆発する前に取り出してやれば……」

 

 俺の回答に横で聞いていた絆斗さんが拳を掌に叩きつけながら気合の入った声を上げる。

 そんな彼の答えに、俺、ショウマさん、ラキアさんの回答は無情な物だった。

 

「動き回っている大きなゴチゾウの口を一々見分けるのは無理だよ、絆斗」

「現実的では無いですよ。とにかく数が多すぎる」

「戦闘中にどれが持っているのか分からないヒトプレスを見つけるなんて、少し考えれば無理だとわかるだろう」

 

 三者三様のダメ出しに、絆斗さんは言葉を失う。

 実際、数が少なかったり動いていなかったりなら可能だとは思うが、次々に繰り出されるビッグサイズゴチゾウの群れの中からヒトプレスを抱えている個体だけを見つけ出すのは困難だ。

 

「見つけるだけなら俺の相方が何とかできますが……」

「ほんと、アイン!?」

 

 俺の言葉にショウマさんが喜びの表情で振り向く。

 実際、あのアナザーガヴが色々と手の内を晒してくれたおかげで、データそのものはそろっている。

 乱戦状態の戦場で正確に敵のみを撃破するルートを割り出すサイクロンヘルのAIなら発見する事は可能だ。

 

「問題は取り出す手段が無い事と、あいつの居場所が分からない事ですね」

 

 俺が超高速で動いても、確実に回収しきれる保証はない。下手すりゃ俺の速度による衝撃で破損してしまう。

 事実上の時間停止に近いゼクト系ライダーのクロックアップならそんな事は無いんだろうが、残念ながら俺は超高速で動いているだけなので俺以外に対する衝撃防御性能は高くない。

 バリア抜きでの回収はあくまで緊急手段だ。エネルギーを集中させる関係上、あれは戦闘中に何度もできる手段ではない。

 

「ヒトプレス持ちを発見し次第、ショウマと絆斗がヒトプレス持ちを凍らせる。後は俺とアインロールドで回収していくしかないだろう」

 

 幸い、凍り付かせたビッグサイズゴチゾウは爆発はしなかった。

 それとて別のビッグサイズゴチゾウに破壊させればいいだけだが、現状ではラキアさんの言う手段以外に手は無いだろう。

 

「あとは居場所か……」

「大丈夫。そっちは何とかなったよ」

 

 作戦会議を聞いていたショウマさんが不意に洞窟の入り口に向かう。

 よく見てみれば、そこにはゴチゾウたちがえっちらよっちらとこちらに向かってきている最中であった。

 ショウマさんはそちらに向かうと、彼らをそっと拾い上げながらこちらに振り向く。

 

「大きなゴチゾウと組み合った時に、潜ませておいたんだ。奴のアジトはもう見つけた」

 

 ああ、あの兵隊を生み出して凍り付かせていた時か。

 ん? つまりあの時点で逃げられることも想定して、何重にも策を練っていたわけか。

 抜け目ないな、この人……。

 

 優し気な印象に騙されそうだが、間違っても敵に回したくないタイプだ。

 

「行こう。どうやらあの大きなゴチゾウたちを使って町中から人を攫っているみたいだ。急がないと大変な事になる」

 

 作戦は不十分。

 それでもやるしかないのが仮面ライダーの辛い所か。

 絆斗さんやラキアさんがショウマさんの言葉に頷く中、俺も同じように頷く。

 俺は仮面ライダーでは無いが、借りだけはちゃんと返しておかないと目覚めが悪いってものだ。

 

 かくして、俺たちはアナザーガウを追い、デンテさんの洞窟を後にする。

 




デンテおじさん出したかったんや!
主人公はショウマの事情に関しては突っ込んで聞いていません(踏み込んでいいとは思っていない)

なお、サイクロンヘルが主人公に買いに行かせたのはアイドルの会場限定グッズ。

ちょっと早いけど次のライダーは……。

  • 天の道を往き、総てを司る男
  • ひとっ走り付き合えよ
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