ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第69話 episode・KABUTO 奇行も多いけど、人格者だなって思います

 仮面ライダーカブト。

 

 ワームから人類を守るために結成された秘密武装組織ZECTが開発したアンチワームシステム、マスクドライダーの一つ。

 マスクドフォームと呼ばれる重装甲形態と、クロックアップを駆使する機動性に優れたライダーフォームの二つの姿を持つ。

 

 その二つの形態の一つ、マスクドフォーム状態の仮面ライダーカブトの大きな背中が俺たちを守る。

 

「誠太郎」

 

 一方、唐突に現れた二体の怪物と、一人の謎の人物に凜が怯えながら服の裾をぎゅっと引っ張る。

 普通の人が見ても恐ろしい状況なのに、凜は勝気なように見えて昔から怖がりだからなぁ……。

 小さなころ、部屋に飛び込んで来た虫に大泣きをした凜を思い出しつつも、俺は彼女の前に立つ。

 

「大丈夫だ」

 

 まぁ、安心させるためでさほど危機感は感じていない。

 あのカブトの資格者である天道が俺を止めて自分から変身したのだ。凜への接近すら許さないだろう。

 

「行くぞ」

 

 マスクドフォームのカブトが動く。専用武器であるカブトクナイガンを構える、ワームたちに向かいゆっくりと歩みながら発砲を開始した。

 ハンドガンとは思えない連射速度の弾丸は、正確にワームたちに着弾し火花を飛び散らせる。

 

 えぐい……。

 

 一見すればただの乱射。だが、その実カブトの弾丸は正確にワームの動きの初動を潰していた。

 腕を上げようとすれば腕の稼働の起点を、足を動かそうとすれば脚の可動部の起点を正確に撃ち抜き、動きを阻害している。

 ワームも生物である以上、動作の起点を阻害されれば動く事はかなわない。あれではワームは弾丸の雨から逃げる事は出来ず一方的になぶられるだけだ。

 事実ワームたちは一歩も動けぬまま、カブトの接近を許してしまう。

 

 いつの間にかアックスモードに切り替わっていたカブトクナイガンが振るわれ、光の軌跡を残しつつワームの胴体を斬り裂く。

 その一撃で両断とはいかなかったが、それでもワームの強固な体表を大きく切り裂く。

 体液を滴らせながら、斬られたワームが後退する中、もう一体のワームがカブトに向かい鋭いかぎ爪を振るう。

 

「遅い」

 

 だが、先ほどまで一歩も動けなかったワームの雑な攻撃で捉えられるカブトではない。

 あっさりと左腕でガードをするとカブトクナイガンを振るいワームの腹を切り裂く。

 

 その衝撃にワームは倒れ転がりながら後退を余儀なくされる。

 

「あれがカブト……。強い」

 

 目の前で繰り広げられる戦いに、俺は思わず呟く。

 

 あのワームたちが弱い訳では無い。カブトが圧倒的なのだ。

 動きの一つ一つが洗練されており無駄がない。

 自分が戦ったとして、あの正確な攻撃をどう凌ぐか。正直思いつかない。

 

 そう、ワームたちが弱い訳では無い。

 並の相手なら行動不能になっただろうダメージを負いながら、二体のワームは立ち上がる。

 その姿は赤く灼熱して……。

 

 あっ!?

 

「え? 姿が変わる!?」

 

 凜が驚きの声を上げる。

 あまりにも巨大な頭部のためずんぐりむっくりとした印象を受ける体形のワームだが、表面が溶けるような変化を起こし人と同じ等身の化け物へと変わった。

 イメージとしては、骸骨を思わせる細身の蜘蛛人間と言ったところだろうか。うちのクモ男よりも生物的かつ攻撃的な佇まいである。

 

 ワームが成虫となり、真の力を発揮できる姿へと変化したのだ。

 理論上可能というだけで大変に難しい行為ではあるが、成虫前のワームなら常人でも重火器で武装すれば対抗できない事もない。

 だが、成虫化したワームは成虫前とは比較にならない戦闘能力を誇る。個体固有の特殊能力もさることながら、停止した時の中を動くクロックアップ能力を種として保有しているからだ。

 

「問題ない」

 

 悲鳴を上げる凜を慮ってか、カブトは首だけで軽くこちらを振り向きながら言葉をかけてくる。

 そして声を掛けながらもカブトの動きは止まらない。

 俺たちのいる位置からは背中しか見えない。だが、腰のベルトに装着されたカブトゼクター、カブトムシなら角に当たる部分のレバーを操作しているのだろう。

 

「キャスト・オフ」

 

『CAST OFF!』

 

 次の瞬間、カブトが纏っていた白銀の装甲が部位ごとに分割され、勢い良く弾き飛ばされる。

 本来ならパージされた装甲は無差別に飛び交うのだが、天道さんの巧みな位置取りかそれとも操作か、こちらには一片も飛んでこない。

 もっとも、飛んでこないのはこちらだけだ。二体の成虫ワームには無数のパーツが襲い掛かる。

 

 成虫前のワームならこのパージしたパーツの勢いだけで倒す事も可能な速度だ。

 成虫化したばかりで動作を開始する前のワームでは回避する事など叶わず、強かに打ち据えられ防御を余儀なくされる。

 

『CHANGE BEETLE!』

 

 黒い下地に、深紅のボディーアーマー。先ほどまでの重厚感は消え、スマートで洗練された姿を現す。

 顎を起点にしたパーツがせりあがり、天を突く角となる。それと同時に、青い一つ目の複眼が青い双眼へと変わる。

 

 重い装甲を脱ぎ捨てた仮面ライダーカブトが、ついに真の姿を現す。

 

「クロックアップ」

 

『Clock Up!』

 

 カブトがベルトの腰の部分を軽くたたく。

 それと同時に、カブトゼクターの電子音が響く。

 光より早く動くタキオン粒子を利用した超高速機動。ゼクト系のライダーシステム最大の特徴にして最大の武器であるクロックアップが発動したのだ。

 

 そして、終わっていた。

 

 少し離れた駐車場の入り口付近のアスファルトが燃え、背後のパトカーは天井が押しつぶされ、ガラスが四方に飛散している。タイヤが一つ脱輪しており、街路樹にぶつかり倒れていた。

 一方俺たちの前方にいたはずのカブトは俺たちの右側におり、その背後では全身から火花を飛び散らせながらワームが崩れ落ち、爆散していた。

 

「えっ!? えっ!? えっ!?」

 

 凜が唐突に変わった風景に混乱し、あたりをきょろきょろ見回している。

 停止した時の中を動くクロックアップだ。一般人からしてみれば、何かが始まったと思った瞬間には終わっているのだ。混乱するのも無理はない。

 前提知識があり変身すればタキオン粒子を観測できる俺でも、変身前の肉眼では追う事などできない。

 クロックアップ、対抗手段を持たなければ何もできず一方的に葬られるシステム。改めて恐ろしい能力だ。

 

「助かりました、天道さん」

 

 ワームを完全に倒したことを確認したカブトは変身を解除する。

 カブトの装甲が剥がれ落ちていき、中から息一つ切らしていない天道さんが姿を現した。

 彼の言う通りここで変身をしていたらややこしい事になっていただろう。ここは礼を述べておくのが筋だ。

 

「なに、ついでだ」

 

 気負いなく礼の言葉を言う俺を凜が気味悪そうに見つめる。

 

「誠太郎、この人?」

「仮面ライダーだろう」

「仮面ライダーって……都市伝説の? 誠太郎が好きだった?」

 

 凜が言っているのは誘拐前にインターネットで調べまくっていた事を思い出しているのだろう。

 あの頃はワクワクしながら、いつか会いたいと思って調べていた物だ。一号の画像とかを見つけた時はワクワクが止まらなかった。

 よくよく考えてみれば、実に不謹慎な話だ。

 今は正直会いたくない。合わせる顔が無い。

 

「昔の話だ」

「昔って……」

 

 そんな俺たちの様子をどこか面白そうに見つめていた天道さんだが、不意にこう話しかけてくる。

 

「それより、家族の事は良いのか?」

「あっ、しまった!」

 

 忘れていたわけでは無いが、ワーム撃破で若干気が緩んだのは事実だ。

 しかしどうする? サイクロンヘルはまだ到着していない以上、足となるのは公共交通機関しかない。

 そんな事を考えていると、凜が両親に連絡をしようとしたのか自分のスマホを取り出し、素っ頓狂な声を上げる。

 

「あれ? お母さんからラーインが来ている」

「えっ!?」

 

 横目で見ていれば、何度か着信もあった模様だ。

 俺を逃がさないために警察に通報以降はミュートにしていて気が付かなかったのか……。

 

「えっと……。誠太郎が警察に保護されたから、これから警察署に行ってきます。至急連絡をくださいって!? え、ちょっと、どういう事!? 誠太郎ここに居るよね!?」

 

 嫌な予想がついには現実のものとなる。

 俺が発見されたという連絡だけならともかく、保護されたので警察に行くというのは明らかに時系列がおかしい。

 凜の通報とは明らかに関係が無い。

 

「ちょ、ちょっと、誠太郎、どういう事?」

 

 凜の問いかけに応えようがない。

 分かるのは確実に俺に化けたワームがいる事ぐらいだ。これで別の怪物という事はありえないだろう。

 どうする? もうなりふり構っている暇は無い。警察に速攻で向かうべきだが……足が無い。

 サイクロンヘルは、まだこちらには到着していない。

 

 不意に、俺の視界の片隅に何かが飛んでくる。

 ほぼ条件反射でそれをキャッチすると、それはバイクのスマートキーであった。

 

「足が必要なのだろう。貸してやる。ヘルメットも丁度二つあるしな」

 

 キーを投げたのは、当然だが天道さんだ。

 自分のバイクを使えって事だろう。

 一瞬だけ躊躇するが、すぐにその躊躇を振り払う。

 

「ありがとうございます、天道さん。この御恩は必ずお返しします」

「気にする必要は無いが、期待して待っている」

 

 変な言い回しだが、いかにもこの人らしい。

 きっと、俺の本当の立場を分かっていて言っているんだろうな、天道さん。

 

 天道さんから受け取ったキーでバイクを起動させ、仕舞ってあったヘルメットを取り出すと女性用と思しきものを凜に向かって放り投げる

 

「ちょっと、誠太郎!? バイクなんて乗れるの!?」

 

 慌ててヘルメット受け止めながら、凜がこんな事を聞いてくる。

 3年間行方不明だった相手だ。当然の疑問だろう。

 

「プロレーサー並みには乗れるよ。ヘルメットの被り方は分かるな、急ぐぞ」

 

 かくして、俺と凜は天道さんに見送られながら両親がいるだろう場所に向かう。

 会うわけにはいかず放置していたとはいえ、人の家族に手を出そうとした以上は容赦はしない。そう心に誓うのだった。

 

 

 ※※※※※

 

 

 隕石により壊滅した渋谷ではあったが、それももう昔の話だ。

 近年の再開発により町は復興を遂げており、かつてと遜色のない繁華街が広がっている。

 それは同時に強い光の下、濃い影を生み出す事にもつながる。

 

 そんな眩い繁華街の裏側、路地裏でひっそりと事件は進行していた。

 

 ある半グレのたまり場となったバーで、人を殴打する鈍い音が響き渡る。

 赤青黄色、独特の色で染めた三人の男は床に正座を強いられ、彼らの前には革ジャンの男がその拳を振りぬいていた。

 身長は190を超え、身に纏った革ジャンの上からでも強靭な筋肉を持っている事が分かる。

 そんな革ジャンの男は、刈り上げた髪をぼりぼりと掻きながら、怒りの表情を隠す事無く男たちを睨みつけていた。

 

「てめーら、ほんと使えねーな。女一人連れて来いって言っただけなのに、何追い掛け回した挙句に逃げられているんだ!」

 

 その自分の言葉でさらに腹を立てたのか正座をしていた男たちの内、赤く髪を染めた男の腹を蹴り上げる。

 男のつま先は、正確に赤く髪を染めた男の鳩尾にめり込む。

 

「うごほ、げほっ、げほっ!」

 

 その蹴りで肺が押しつぶされたのか、赤く髪を染めた男はうつぶせになり苦しそうに咳き込む。

 その様子に、仲間の髪を黄色に染めた男が思わず立ち上がろうとする。

 

「赤城!?」

「動いていいって誰が言ったよ!」

 

 その動作に、更に激昂した筋肉質の男が黄色に髪を染めた男の頬を平手で打ち据える。

 その威力はすさまじく、立ち上がろうと不安定な姿勢だった黄色く髪を染めた男は床に倒れ、さらには横にあったテーブルに頭をぶつけ苦悶のうめきを上げた。

 

「その辺にしておきなよ、リョーマ」

「しかしよう、セイ」

 

 怒り狂う筋肉質の男を止めたのは、セイと呼ばれる男だった。

 背後のソファで本を読んでいた男は相方の暴力を止めると、勢いをつけて立ち上がる。

 

 身長は170センチ代後半だろうか。ブランド物のジャケットを身に纏い、髪を後ろ手になでつけ、顔にはサングラスをかけており目元は分からない。

 ただ、口元の造形は良く顔の造形の良さがうかがい知れた。

 

「でも、ほんと困るよ。手が離せないから凜を招待してくれって言っただけなのに、何だって追い掛け回すかな?」

「せ、セイくん、でもよ……」

「でも?」

 

 声を荒げたわけではない。普通の抑揚だ。

 だが、その声を聞いただけで三人の背筋に冷たい汗が流れる。

 

 彼らのグループはリョーマと呼ばれる男が率いていたグループだった。

 もっとも、元はどこかの学校の格闘技特待生のリョーマに学は無く、暴力は出来ても金を稼ぐ頭が無い。ちまちまとした暴力を使った金稼ぎしかできない、そんな集団だった。

 そんなリョーマが古い友人だというセイを連れてきたのはおよそ1年前。良くも悪くも馬鹿しかいなかったグループにセイという頭脳が加わった事により、状況は大きく変わった。

 

 彼は瞬く間にクスリ等の資金源を手に入れ、グループは経済的に困窮する事は無くなった、そのはずだった……。

 

「あ、あの凜のアニキとかいう奴が現れて邪魔したんだ、そ、それで……」

 

 その言葉に、リョーマとセイが顔を見合わせる。

 まずは嫌そうな、そして困ったかのような表情の後に3人に対してこう問いかける。

 

「そのさ、凜の兄というのは……」

 

 セイと呼ばれた男は掛けていたサングラスを外し、更には撫でつけていた髪を片手で乱暴に乱す。

 

「こんな顔をしていたのかい?」

「え? ひ、え、えっと!? セイくん、どういう事!?」

 

 そう、セイと呼ばれた男の顔は、あの時凜を連れ去る時に邪魔をした男、誠太郎と同じ顔であった。

 良くも悪くも整った美形。違いと言えば、あの時の男の眼元はどこか柔らかくお日様のような印象だったのに対し、鋭い目つきのセイは冷たい北風のような印象を受ける。

 同じ顔でも目つきにより受ける印象がだいぶ違うと3人は気が付いた。

 

 3人の反応に知りたい事は知れた。

 それっきり三人への興味を失ったリョーマが腕を組む。

 あれが出てきた以上、今までのような楽な稼ぎは出来やしない。

 

「どうするんだ、セイ? あれと凜が接触したみたいだぜ」

「こうなる前にこっちに連れてきたかったのだけどね。まぁ、いいさ。1回警察に出頭して家に帰るよ」

「良いのか?」

 

 帰ろうとすれば幾らでも帰れたのに、ここまで引っ張っていたのにだ。

 そう問いかけるリョーマにセイは事も無しげにこう返す。

 

「ショッカーが出てきたんだ。そろそろ決着を付けなきゃ。リョーマも兵隊の準備を頼むよ」

「わかった、声をかけておく」

 

 そう言うとセイは片手を振りながら店の入り口に向かう。

 夜の闇に向かう中、1回だけ振り向くとリョーマに向かいこう宣言する。

 

「俺は仮面ライダーだからね」




二人の見分け方

 誠太郎の服装:量販店の安物
 セイの服装:ブランド物

クロックアップを通常目線だと訳が分からないな、これ……
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