ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第77話 episode・KABUTO 溺れし者

 ヴァレンにとって、その戦いはあまり経験の無い戦いであった。

 無理もない。

 彼がこれまで戦ってきたグラニュートの目的は人間をヒトプレスに加工し誘拐する事だ。そして手に入れたヒトプレスの量と質により報酬が出る歩合制のハンターでもある。

 それゆえに狩りのライバル同士であるグラニュートが群れる事はまずない。

 ごく稀にヒトプレスを回収しに来たストマック社のエージェントがいる事などはあるが、基本的に少数同士の戦闘経験しかヴァレンにはないのだ。

 

「きゃあ!」

「てめえ、離れやがれ!」

 

 渡世一家の乗るパトカーに、強化ワームの一体が張り付く。

 その事に気が付いたヴァレンが慌てて強化ワームを引きはがすと、後方に投げ飛ばす。

 頭から地面に叩きつけられたワームが苦痛のうめきを上げる。

 

「この野郎!」

 

 追撃を掛けるべく倒れた強化ワームにヴァレンバスターの銃口を突き付けた。

 その瞬間、ワームの頭部が人間の、まだ若い髪を赤く染めた男の顔に戻る。

 その表情は銃口を目前に、恐怖に歪んでいた。

 

「くっ!」

 

 その表情を前に、ヴァレンは思わず腕を引いてしまう。

 そんなヴァレンに横から別の強化ワームが体当たりを仕掛けてきた。

 

「しまった!? うわっ!?」

 

 まともに体当たりを食らい、ヴァレンは横に転がる。

 そんなヴァレンにとどめを刺そうと別の強化ワームたちが次々に襲い掛かってきた。

 咄嗟に地面を転がり回避し、起き上がりながらの射撃で牽制を入れる。

 

 そんな抜き撃ちでまともに当たる道理など無かった。

 数発は強化ワームの強靭な表皮を削るものの、致命的ダメージは疎か牽制にすらならない。

 さらなるワームが迫りくる、そう思った瞬間であった。

 

「させん!ライダースローイング!」

 

 強化ワームとヴァレンの間を何かが一直線で横切る。

 それがアインロールドにより投げ飛ばされた別のワームであるとヴァレンが気が付いた時、さらに別のライダーが踏み込んでくる。

 

「はっ!」

 

 咄嗟に割って入ったのはカブトであった。

 改造サソードと斬りあっていた彼は、ヴァレンの窮地を見るや否や咄嗟に下がると、カブトクナイガンの短剣で強化ワームたちを背中から切り裂く。

 深く切り裂かれた数体の強化ワームが爆散し、火の塊となって消えて行く。

 

「すまない!」

「辛木田、無理はするな」

 

 カブトは短くそう言い放つと、再びサソードと切り結ぶ。

 激しい斬撃の応酬を横目に、絆斗は自問自答をする。

 

 確かに自分の戦歴はグラニュート相手がメインであり、人間とまともに戦ったのはダークショウマと酸賀くらいだ。

 多数と戦った経験も少ない。だが、自分が思わず手を止めてしまった、その理由は……。

 

 動きを止めたヴァレンを見て好機と思った強化ワームが迫りくる。

 だが、止まっているように見えて、止まっていたわけでは無い。そもそも、絆斗はそこまで考えて動く性格でも無いのだ。

 ほぼ自然な動作で襲い掛かってきた強化ワームを、ヴァレンバスターを鈍器にして逆に殴り飛ばしながら、大きな声でこう叫ぶ。

 

「お前ら、何やっているんだ! 今なら人間に戻れるんだぞ! 今すぐこんな馬鹿な真似をやめるんだ!」

 

 そう、絆斗が手を止めてしまったのは彼らが人間だからではない。

 力を求め人間をやめた彼らを見て、かつての自分を重ね合わせたからだ。

 だから、戦いをやめさせる事が出来るなら説得したい、そう考え叫び声を上げた。

 

 そんな絆斗の想いに強化ワームたちが返したのは、嘲笑交じりの言葉であった。

 

「はははっ! 何言ってやがるこいつ!?」

「とんだ甘ちゃんだ。これだけの力があれば、金も、酒も、女も自由にできる!」

「せっかくだ、こいつの銃を奪おうぜ。そうすりゃリョーマさんにヘコヘコしないで済む」

 

 一瞬だけ強化ワームたちは人間の顔を取り戻す。

 赤、青、黄色。髪を染めた男たちの表情は一様に欲望で歪んでおり、人外への変化に対する悲しみは欠片も見えない。

 それどころか、彼らの強烈な欲望はワームの身体に変化をもたらしていた。

 

 ワームの身が白熱していく。

 サナギを思わせるずんぐりむっくりとした肉体が溶けるように姿を変化させ、右腕の鉤爪はより巨大で強靭に、全身は白い色に変色しスマートな四肢へと成長する。

 成長化。ワームが爆発的に力を増大化させる現象だ。

 

 その最大の特徴は、クロックアップと呼ばれる超高速移動。

 3体のワームがヴァレンの視界から消える。

 

「そんな事の為に人間をやめて……。こんな騒ぎを起こして……」

 

 救えない人間はいる。

 どうしょうも無い人間はいる。

 ただそれだけだ。ヴァレンは怒りよりも悲しみを込めて、ヴァレンバスターを地面に叩きつけた。

 

 

※※※※※

 

 

 カブトとサソードの戦いは一進一退の様相を見せていた。

 警察署に薬を盛るような男ではあるが、警察署の署長になれる器の持ち主でもある。柔剣道ももちろん体得しており、剣に関して言えば若かりし頃は全国大会で優勝を勝ち取ったほどの腕を持つ。

 さらに、時折強化ワームたちがカブトに襲い掛かってくるのだ。

 

 カブトと言えども油断できる相手ではない。

 

 カブトクナイガンのイオン刃とサソードヤイバーが空中で激突する。

 長さとパワーで圧倒するサソードの力を、カブトはその技と経験で受け流す。

 何合打ち合っただろうか、本人たちにダメージは無い。むしろ巻き込まれた警察署の備品や強化ワームが無残な姿をさらす結果となっていた。

 

 息切れか、仕切り直しか、どちらかともなく距離を取るとカブトが口を開く。

 

「警察署署長のお前がなぜこんな事を?」

 

 天道の潜入調査で、この男がGSLを署員たちに盛って警察署を汚染させたことは分かっている。

 いや、それどころかワームたちが作った薬の販売ルートの大元締めがこいつだ。警察署の署長という社会的身分がある男の所業とは思えなかった。

 そんな天道の問いかけに署長はつまらなさそうにこう返す。

 

「私はね人間に飽き飽きしてたところなんですよ!」

 

 弱く醜く愚か、そして欲深い。それが彼の見てきた人間の本性だ。

 だが、この身も人間ゆえに人間社会でしか生きられない。すさまじいストレスだ。

 幸い、快適に過ごすために警察官という立場は大いに役に立った。そこまで大きな物などは求めていない、あくまで自身がつつましくも快適に過ごすためのささやかな小遣い稼ぎ程度しかしなかった。

 

 その程度であったのに、時折与しやすいと誤認した塵屑が寄ってきた。

 

「でもね、結局愚かな人間は私に寄ってくる!」

 

 自身の言葉に激昂しながら、サソードは鋭い斬撃を繰り返してくる。

 カブトはその斬撃を受け流しながら、後退を余儀なくされる。

 

 寄ってきた連中を、脅してきたチンピラを消す事など難しくない。だが、その証拠を消すのは案外骨だ。

 そんな問題を抱えていた彼に、入れ替わる為に襲い掛かってきたのがワームの一団だ。

 

「都合が良かった! 人を超える力を得るのにね!」

 

 最初は隙を見て逃げ出すために会話を試みたに過ぎなかった。だが、会話を続けているうちに、この愚かな異星人たちには使い道がある事に気が付く。

 なにより、彼らが持っていた薬が良い。人間を辞め、ワームという強力な種族に変異する事が出来るというではないか。

 彼は自分から、彼らが持っていた薬を貪りワームへと進化をしたのだ。

 

「この進化、素晴らしい! 私ほどの強靭な意思があれば、他のワームすらも従えて見せる!」

 

 上位ワームとなり、全ての人間をワームに変えて、自らの帝国を築き上げる。

 それが彼の目的であった。

 

「そのために貴様は邪魔だ! 私のために死ねぇ!」

 

 サソードを纏った野心の男は、必殺の斬撃を繰り出すべくサソードヤイバーを大きく振りかぶった。

 

 

※※※※※

 

 

 クロックアップはきわめて強力な能力だ。

 光より早いタキオン粒子を利用し、時を逆行する事により疑似的な時間停止状態を作り出しその中で動く究極の高速機動術だ。

 時間干渉能力、もしくは観測能力が無い限り、どれだけ速度が有ろうと対抗は不可能。

 

 その速度をもってして、3体の白い成虫化ワームはヴァレンに迫る。

 ヴァレンはその武器を地面に叩きつけたままだ。まぁ、仮に銃口をこちらに向けていたとしても、クロックアップを発動中は引き金が引かれる事は無い。

 安心して近づき、この鉤爪でヴァレンの肉体を切り裂けばいい。

 

 そう考え、3体のワームはその領域へ無造作に足を踏み入れた。

 

 彼らの敗因はただ2つ。暴力には慣れていても、戦闘の素人だったこと。そしてワームの強大な力におぼれ、警戒を怠っていた事だ。

 

 超常の存在との戦闘経験が豊富なら、何らかの予備動作を行ったライダーに対して無造作に近づくような真似はしなかっただろう。

 

 だが、彼らはあらゆる面で未熟であり、ゆえにヴァレンが放ったチョコレートの沼に、自ら足を踏み入れてしまった。

 

「な、なんだこりゅあ!?」

「あ、足が動かねぇ!?」

「こ、これは!? チョコ!?」

 

 クロックアップは疑似的な時間停止状態を作り出す能力だ。だが、それはあくまで疑似的な時間停止だ。

 本当に時間が停止しているわけでは無く、そもそも本当に全てが止まっているのなら空気や光なども停止しており、彼らは何も見えず動けなくなる。

 そう、クロックアップ中であっても世界は完全に停止しているわけでは無く、特に彼らが触れたものはある程度動きを得てしまう。

 

 彼らが踏んだのは粘性のチョコレートの沼だ。ワームの脚を拘束し動きを止めるのに十分な拘束能力を持っていた。

 

 それでも彼らがワームとして熟練していたり、戦闘経験が豊富ならば口から酸を吐き出しヴァレンにダメージを与える事に成功したかもしれない。

 だが、暴力に慣れていても戦闘経験などまるでないチンピラだ。足が拘束されたことに焦り、何とか動こうと藻掻き、クロックアップの貴重な時間を無駄に消費してしまった。

 

 そして時は動き出す。

 

「変身!」

「フラッペカスタム! シャリシャリ!」

 

 時が動き出した瞬間、彼らが見たのはフラッペいずゴチゾウをヴラスタムギアにセットし、フラッペカスタムへとフォームチェンジを遂げたヴァレンの姿であった。

 ヴァレンの戦闘経験は1年にも満たない短いものだ。だが、多種多様な特殊能力を駆使するグラニュートとの戦闘経験は豊富だ。

 それゆえに、クロックアップを使われた際の対策は既に思いついている。

 

 チョコの沼による拘束もその一つ。また、唐突に居場所を変える敵もそういう物があると覚悟は済んでいる。

 

 ゆえに、一切の躊躇もなく次の行動に移していたのだ。

 

「この……馬鹿野郎どもがぁ!」

「フリージング!」

 

 怒りと悲しみの雄たけびを上げながら、ヴァレンは拳を振るう。

 赤と茶色、そして金色のボディーアーマーに身を包んだヴァレンの右腕に氷の塊が出現する。

 氷ごと拳は叩き込まれ、動きを止めていたワームたちを強かに打ち据える。

 

 さらには、ワームの生体装甲を破壊し、内部の生体組織を凍らせ機能停止に追い込んでいく。

 

 彼らの限界はすぐそこであった。

 生存に不可欠な臓器が凍り付き砕け、ついには3体のワームは同時に爆発音を立てて残り火のみが地面に残る。

 

「本当に、こんなものの為に……」

 

 絆斗の苦い呟きが、力に溺れワームに成り下がった男たちに対する手向けの言葉であった。

 

 

※※※※※

 

 

「そうか……」

 

 実のところ、署長の考えに興味があったわけでは無い。

 聞くだけ腹が立つだろうことは、十分予測できていた。

 とはいえ、他に背景が無いかそれを確認するために会話を続ける必要があったのだ。その時間を稼ぐために互角の戦闘を演じていたにすぎない。

 

 もうGSLについてはこれ以上の背景は無い。汚染やばら撒きは署長独自のルートだろう。

 これ以上の捜査は警察が人数を使い行う仕事だ。

 そう判断したカブトの動きは素早かった。

 サソードが剣を大きく振りかぶった瞬間、鋭い動きで懐に入り込むとその頭に拳を叩きこむ。

 

「がっ!?」

 

 必殺の一撃を放とうとしていたサソードだったが、不意の攻撃でバランスを崩す。

 何とか態勢を立て直して剣を振るおうとするが、それ以上にカブトの動きは素早く体勢を立て直す前にカブトの拳がサソードの腹に突き刺さる。

 

「ぐあっ!?」

「聞きたい事は確認した。そのゼクターは貴様如きが持っていて良い物ではない」

 

 腹を抑えくの字の姿勢で苦しむサソードにカブトが冷たく言い放つ。

 その傲慢な言いぐさに、サソードがさらなる激昂を以て剣を振るおうとした。

 

「ふざけるなぁ!」

「大真面目だ」

 

 だが、その斬撃が繰り出されるより早くカブトの姿はサソードの背後に回り込んでおり、回し蹴りをサソードに叩き込む。

 

「なっ!?」

 

 一方的であった。

 先ほどまで繰り広げられていた互角の戦いは何だったのか。そう思わせるほどカブトの動きは素早かった。

 サソードが体勢を立て直し、斬撃を放とうとするより早くその軌道から身を逸らし、きつい一撃を叩きこむ。

 そのあまりにも素早い動きに、紫のライダーは一方的に嬲られるだけであった。

 

「なっ!? クロックアップ!? だが、見えない!?」

「貴様如きに使う必要も無い」

 

 純粋な体捌きと先読みのみでカブトはサソードを追い詰めていく。

 剣を振るう事すらできないのだ。サソードに出来る事など何もない。

 

 どれだけ一方的な打撃が続いただろうか。ついにはカブトがサソードの腕を捕え、捻り上げる。

 カブトの青い複眼が見つめるのは、異常に大きく改造されたサソードゼクターの頭部だ。

 そういえば、サソードだけではない。ドレイクも、ザビーも似たような改造を施されていた。

 

「そういう事か」

 

 カブトはそう呟くと、サソードゼクターの頭部に腕を伸ばし握りつぶす。

 カブトの手の中で金属がひしゃげる音が響き、開いた手の隙間から機械部品が零れ落ちる。

 これで大丈夫だろう。カブトは大きく跳躍すると、サソードから離れた。

 

「な、何を!?」

 

 拘束から解き放たれたサソード、いや、署長が何が起こったのか理解できない。そんな呟きを漏らす。

 だが、何が起きたのか、それをすぐさま知る事になる。

 

「こ、これはっ!?」

 

 署長の身を覆っていたサソードのボディーアーマーが音を立てて剥がれ落ち始める。

 紫の甲冑は光のヘクスへと戻り、空中に散らばっていく。

 甲冑の下から困惑のあまり狼狽える緑の幼体ワームが姿を現す。

 

「マスクドライダーシステムが!? さ、サソード!?」

 

 それだけではない。サソードヤイバーに収まっていたはずのサソードゼクターは独りでに外れると地面に降り立つ。

 それどころか、降り立った瞬間に再び飛び跳ねると、サソードヤイバーを握っていた署長ワームの右腕にその鋭いはさみを突き立てた。

 

「ぐわぁぁ!? な、何故!? ば、バカな!?」

 

 あまりの激痛にサソードヤイバーを取り落とす。サソードゼクターは鋏で剣を抱えると、そのまま地面に潜り消えて行く。

 一連の流れを見届けたカブト、いや天道は冷たい声でこう言い放った。

 

「貴様のような誇りも何もない男をサソードが認めるわけないだろう。制御装置を破壊すれば見捨てられる、自明の理だ」

 

 そう、天道が握りつぶしたのはサソードの頭部に増設されていた制御装置だ。

 有資格者以外には使用できない、離反すら平然とするゼクターを好きなように使うためにネイティブの科学者が増設したシステムだ。

 それを破壊し、自由意識を取り戻せばゼクターはこのワームたちの歪んだ精神性を認めない。

 

 ただ、それだけの事であった。

 




士「どうでもいいがあの小僧、俺と天道の扱いが違いすぎやしないか?」


Q.ヴァレン弱くね?
A.まだ彼は原作終了前、マスター/オーバーすら出ていない時間軸だから

Q.スペックは大丈夫なの?
A.モモタロス「戦いってのはなぁ……ノリのいい方が勝つんだよ!」
  ライダーのスペックデータは飾りです(マテ

さて、次は誰と出会うかな?

  • バカ「っしゃぁっ!!」
  • 「さぁ、ここからがハイライトだ」
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