ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
「ふ、ふざけるなぁ!」
ベルゼブワームが口を開き、火球を連射してくる。
火球を前に俺は回避をしない。ただ、装甲の厚い部分で受け止めた。
多少爆発の衝撃は響くが、流石は防御力に優れるマスクドフォームだ。何ともない。
爆発を物ともせず近づいてくる俺に、ベルゼブワームは背中の羽根を忘れたかのように火球を吐き続ける。
もっとも、その全ては装甲の前に砕け散るだけだ。
そしてついに、一足で殴れる距離にまで近づく。
「う……うわああああああ!」
ワームにも恐怖の感情はあるのだろう。
奴は悲鳴を上げ、背中の羽根を広げ宙に飛び立つ。だが、もう遅いんだよ。
「キャストオフ!」
『CAST OFF』
『CHANGE WASP』
ザビーの本体を隠していた甲冑をパージする。
弾け飛び宙を舞う装甲をブラインドに、俺は跳躍する。
さらには空中で装甲を足場に蹴り、俺自身の加速を増す。
飛行を開始したベルゼブワームに追いつくと、奴の巨大な頭を蹴り飛ばす。
「がぁつ!?」
ザビーの必殺技は左腕から繰り出されるとはいえ、それ以外の身体能力もシンプルに高い。
俺の蹴りをまともに受けたベルゼブワームは姿勢の安定を失い落下する。
「ショッカー! よくもリョーマを!」
怒りの叫びを上げ跳躍してきたのはホッパーワームだ。拳を振りかざし迫りくる。
空中でその拳を受け流す。奴と俺は、抱き合う程の距離まで接近する。
「奪い続けてきた貴様らが言うか!?」
「ショッカーであるお前が言うか!?」
まぁ、俺に言う資格は無い。
俺も理不尽に奪っている側の人間だ。なので、これは悪と悪の戦い。
悪である以上、負ければ堕ちるのみだ。
「奪っていた自覚はあるようだな。ならば、弱者に堕ちれば奪われる覚悟くらいはあっただろう。清算の時だ!」
初動は俺が早かった。
ホッパーワームの肩口を掴むと、腕の力のみで奴の上に逆立ちをする。
腕の力だけで25tもの重量を支えるザビーだからこそ出来る荒業だ。
そのまま奴の背後に回り込み蹴りを叩きこむ。
背後からの攻撃に対応できなかったホッパーワームは勢いよく警察車両の一台にぶつかり爆発の中に消える。
「渡世ぇぇぇ!」
回避の出来ない空中。
そこに狙いを付けたベルゼブワームの火球が俺に迫りくる。
「プットオン」
『Put On』
炎に包まれる直前、ザビーゼクターを操作し、弾け飛んだ鎧を呼び集める。
ほぼ同時に着弾し視界が炎につつまれた。
「やったか!?」
今の攻撃が通じたと思ったのであろう。ベルゼブワームが歓声の声を上げる。
空中にいた程度でチャンスだと思うのは甘い限りだ。ある程度の実力者なら簡単に防ぐぞ。
暴力の経験はあっても、強者との戦闘経験がほとんど無いのが良くわかる。
「誰をやっただと?」
マスクドフォームに戻った俺が、炎の中から姿を現し着地した。
当然傷らしい傷など無い。
「ば、バカな」
「く、くそっ!」
慌ててベルゼブワームが再び飛び上がろうとするが、いい加減に何度も飛ばれては面倒だ。
飛び道具欲しいよなぁ、ほんと。
「キャストオフ!」
『CAST OFF』
『CHANGE WASP』
再び装甲を脱ぎ捨てた俺は、装甲の一つに目を付ける。
これから見せるのは、生身では無理だろう改造人間だからできる裏技だ。
「ライダースティング!」
『RIDER STING!』
飛び交う装甲の一つ、ベルゼブワームの方向に飛んでいく装甲の一つに目星を付けると、その装甲に対してライダースティングを叩きこむ。
幼体ワームを一撃で葬り去るそれが、ライダースティングの破壊エネルギーに押し出され、通常の数倍の速度でその装甲は飛んでいく。
音すら置き去りにして、ベルゼブワームの羽根のみならず肩口すらも貫いた。
「え?」
ベルゼブワームが間抜けな声を上げる。
だが、次の瞬間奴の腕は引き千切られ、羽根は粉々に砕け散った。
月明りを反射しながら、奴の羽根の残骸が宙を舞う。
「ぎゃああああああ!?」
一瞬遅れてベルゼブワームは悲鳴を上げる。
奴の認識からしてみれば、気が付いたら羽が砕け散っていたのだろう。
改造人間ゆえの演算能力を駆使した、飛び交う装甲の撃ち出しだ。
生身の人間ではまず無理な技だろう、多分。
天道さんとかは普通にやりそうな気がしないでもない。
それはともかく、これが当たれば耐えられるものではない。
「リョーマ!? なんでだよ! なんでショッカーライダーがそんなに強いんだよ!」
殴りかかってくるホッパーワームの泣き言に対し、俺は冷たくこう返す。
「カブトやヴァレンと違い、俺とお前たちはショッカーとワームの抗争だ。ただお前らが弱いだけだ」
正義など無い戦い。ならば強い者が勝つだけだ。
奴の胴体に左の拳を当てる。
ザビーには、こういう使い方もある。
「ライダースティング!」
『RIDER STING!』
密着状態、ゼロ距離から解き放たれたライダースティングがホッパーワームの胴体を貫く。
その一撃で奴は胴体をくの字に曲げ、苦痛のうめきを漏らしながらよろめき、背後に下がって行く。
それを確認した俺は、ザビーゼクターをブレス毎取り外し後方に投げた。
協力させておいてぞんざいな扱いをされた事に怒ったのか、変身を解除した俺の周りをザビーゼクターが飛び回る。
「悪かったな。後は休んでな」
まぁ、システムは素晴らしい完成度だが、やはり俺に仮面ライダーは合わないな。
俺はザビーに一言だけ謝罪の言葉を入れると、再び命のベルトに火を入れる。
「ライダー変身!」
再び黒い強化戦闘服を身に纏う。全身のナノマシンが活性化し、人を超えた力がこの身に宿る。
深紅のマフラーが風にたなびき、ショッカーライダーアインロールドが再びこの地に姿を現す。
ふと辺りを見回せば、強化ワームは全滅していた。
残ったのはホッパーワーム、ベルゼブワーム、そして署長ワームが残るのみだ。
署長ワームと戦っていたカブトの傍に、俺とヴァレンが集う。
「くそっ! ショッカーめ」
「それしか言えないのか?」
ホッパーワームの怨嗟の声に、呆れ半分で呟く。
俺の記憶を読み込んでいるのだろうが、馬鹿の一つ覚えもここまで行くと感心する。
一方、ベルゼブワームと署長ワームは違った。
奴らはダメージの残る体を起こしつつも、こう語る。
「これで、これで勝った気か?」
「この状況で何を言っているんだ、お前ら!?」
奴らの言葉に反応したのはヴァレンだ。
まぁ、手下を壊滅させ残るは3人。しかも3人とも俺とカブトに叩きのめされたところだ。
これで勝ち誇れるのを見れば、こうも言いたくなるだろう。
もっとも、俺はと言うとこいつらが何を言っているのかを理解してしまった。
なまじっかセンサーが良いのも考え物だ。こいつらが何を企んでいたのか理解してしまった。
「こういう事だよ!!」
そう署長ワームが叫ぶと、警察署に向かう道路の路地から次々に人々が出現する。老若男女問わず、かなりの数だ。
そのひとたちは次々に姿を変え、赤いワームへと変化していく。
彼らは警察署に向かい黙々と進軍を続けていた。
「まだ伏兵がいたか!」
「ああ、使い捨ての兵隊はいくらもでもいるからな。この数なら……」
まぁ、ざっと見た限り100人以上はいる。
おそらくは薬漬けにして、変化させた人らだろう。
勝ち誇るワームたちの言葉に冷や水を浴びせたのは、カブトであった。
「数程度でどうにでもなると思っているのか?」
「元人間だぞ、殺すのか!」
なるほど、薬に手を出した奴らでも人間は人間。
ショッカーである俺はともかく、天道さんや辛木田さんは手を出しにくいだろう。
そう考えたのか?
「いや、それ以前の問題だ。援軍が来るのがお前らだけだと思っていたのか?」
別に言葉が合図という訳では無いだろう。こちらに向かっていたワームの一団をめがけて、空中から何かが降り注ぐ。
その何かに絡めとられたワームはもがき暴れるものの、それを振りほどく事は出来ないようだ。
まぁ、あれは警察のG3が使う捕獲用ネットやトリモチランチャーだ。
ショッカーの改造人間ですら捕獲できる代物である。あれは簡単に振りほどけない。
まして薬の影響で洗脳状態、まともな思考が出来ていない状態なら逃げる事など不可能だろう。
「なっ!?」
署長ワームも警察は警察だ。あれが何なのか一目で見抜いたのだ。
絶句し、もう逃げ場がない事実にその動きを止める。
そんな中、俺の耳は警察無線を傍受し、何が起きていたのかを正確につかんでいた。
『山本隊は駅前の被害者の保護を優先してくれ! 木島隊は警察署周辺の被害者の保護をお願いします。泊さん、警察署内の被害者の保護をお願いします! 俺は指揮官のワームを叩きます!』
この事態に対処するべく警察を指揮する声が警察無線に響き渡る。
よくよく見てみれば、被害者たちをここまで連れて来ただろう成虫化したワームと、青い仮面ライダーが戦っているのが見えた。
天道さんが加賀美さんとワームのGSLプラントを攻略した以上、警察がここに来るのも時間の問題であったのだ。
天道さんより到着が遅れたのは、予想される多数の被害に対処する準備を整える為だろう。
「最初から終わっていたんだ。そして、ここで幕を下ろすぞ」
カブトがその腕を天に掲げる。
次の瞬間、彼の手に銀色のカブトムシを模した機械が握られていた。
彼はその機械を腰の横にセットしてレバーを下げる。
「ハイパーキャストオフ!」
『HYPER CAST OFF』
『CHANGE HYPER BEETLE!』
カブトの姿が変わる。
全身のエネルギーをスパークさせながら、頭部のカブトホーンが巨大化する。
胸や肩を守るボディーアーマーが発光し、銀色の甲冑へと姿を変える。
ハイパーカブト。仮面ライダーカブトの究極の姿である。
そして、変化はそれだけではない。
空間すら超越し、金色の刀身を持つ剣がカブトの手の中に出現する。
パーフェクトゼクター。対ワーム用の究極兵装。
かつての戦いでグリラスワームに破壊されたと聞いている。
だが、その時同時に失われたザビー、ドレイク、サソードを復活させた連中が、パーフェクトゼクターを果たして放置しておくだろうか?
答えは否だ。
悪意に塗れた者達が復活させた究極兵装は、今この瞬間をもって天の道を往き、総てを司る男の元に戻ってきたのだ。
大地を割りサソードゼクターが現れ、パーフェクトゼクターにその身を預ける。
空を切り裂き飛来したドレイクゼクターが、パーフェクトゼクターで羽を休めた。
辺りを飛び回っていたザビーゼクターが、パーフェクトゼクターに吸い込まれていく。
3つのゼクターがパーフェクトゼクターと一体となり、ついにはその真なる力を目覚めさせる。
「おばあちゃんが言っていた。人を踏みにじって作った道の先には何もない。人と共にあってこそ、真の道は開かれる」
剣を構え、カブトが、天道さんがワームたちを見据え高らかに語る。
『KABUTO POWER』
『THEBEE POWER』
『DRAKE POWER』
『SASWORD POWER』
『ALL ZECTOR COMBINE!』
カブトがパーフェクトゼクターの柄のスイッチを操作する。
ゼクターたちよりくみ上げられた力が金色の刀身に宿り、一回りも二回りも巨大なカブトホーンを模した刃を作り上げた。
「ひ、ひいいいいい!?」
「ふざけんな! 人間風情が! こんなところで死ねるかぁ!」
署長ワームが逃げようと藻掻き、片腕を失ったベルゼブワームの口が今まで以上に巨大に裂け、その内より炎が奔流となって流れだす。
先ほどまで俺に対して使っていた物とは違う、制御を捨て威力のみに特化した炎なのだろう。
だが、その炎もパーフェクトゼクターの前には涼風も同然であった。
『MAXIMUM HYPER TYPHOON!』
「うりゃあああ!」
深紅の輝きが灼熱の炎すら両断し吹き飛ばす。
その刀身は背中を見せて逃げ出そうとした署長ワームを一瞬で粉々に砕き、抵抗しようと死力を振り絞っていたベルゼブワームの身を消し飛ばしていく。
圧倒的なエネルギーの奔流。そんな中、破壊のエネルギーから何かが天に飛び出していく。
まったく、往生際が悪い。
「逃がすか!」
その存在、ホッパーワームを追いかけ俺も跳躍する。
奴を逃がすわけにはいかない。
「お、俺は、死にたくない! 死ぬわけにはいかない! 俺は……」
追いすがる俺を見て、ホッパーワームが悲鳴を上げた。
そんな奴の泣き言など無視をして、奴の上空に位置を取る。
そして、ホッパーワームは、擬態誠太郎は俺の事など眼中にないかのようにこう叫んだ。
「俺はまだ父さんに野球を続けたい事を話していない! 母さんの料理をまた食べたい! なによりまだ、凜に謝っていないんだ!」
その叫びを聞いた瞬間、俺はこの事件で一つ分からなかった事を、最後のピースを理解した。
ああ、そうか。
こいつは純粋な誠太郎だった俺がショッカーに誘拐された時、最後に願った強い想いに支配されているのだ。家族ともう一度過ごしたい。そう強く願った時の俺が、あいつなのだ。
だから、父さんを殺して成り代わるのではなく、家族をワームに改造しようとした。
「すまないな、誠太郎……。俺はお前の願いを叶えられそうにない」
口の中で小さく、過去の俺に、もう俺ではない俺に謝る。
俺は家族の元に戻れそうにない。誠太郎の最後の願いをかなえる事も出来ないだろう。
戻るには罪を重ねすぎた。罪を償うために歩めるかどうかすら分からない。
そんな弱い男だ。
「そして誠太郎。お前はワームだ。どこまでも、ワームでしかない」
「ふざけるな、俺は、俺はショッカーに捕らわれた人間だ! ワームに変質した人間だ!」
「違うな。なら、何故薬をばら撒いた。人をワームにしようとした」
目の前の存在に、はっきりと告げる。
「家族を何故ワームにしようとした。それは帰るために必要な事か?」
帰るだけなら、家族をワームにする必要などない。化け物の身体を隠し、日常を過ごせば済む話だ。
だが、こいつは薬品をばら撒くという手段でワーム化を促すという、侵略を推し進めた。
増殖し、侵略し、先住生物を滅亡に追いやる。それこそがワームの行動原理だ。
俺の姿になり、俺の記憶を継承して、人であると誤認していても、こいつはワームでしかない。
ただそれだけが真実であった。
「お、俺は……」
「お前がワームである限り、存在を許すわけにはいかない。手向けをくれてやる!」
空中で反転をする。
足にエネルギーを収束させる。
俺に支配され、本能に支配された男に、最後をくれてやるのだ。
「ライダァァァーキック!」
深紅に輝くエネルギーを右足に込め、俺はホッパーワームに突き進む。
「く、くそう! ライダーキック!」
ホッパーワームも、その足に輝くエネルギーを込めキックの態勢を取る。
空中で俺とホッパーワームの姿が交錯する。
互いのキックが、エネルギーが空中でぶつかり合う。
一瞬の拮抗。だが、勝つのは俺だ。
俺の放った必殺のキックは奴のエネルギーを消し飛ばし、その足を砕いていく。
ワームの生体装甲にひびが入り、体液とエネルギーが噴き出し始める。
それでも、俺は手を緩めない。
哀れに思う事もある。だが、こいつはワームなのだ。生かしておくわけにはいかない。
「でやあああ!」
片足を打ち砕かれ、力を失った擬態誠太郎は人の姿に戻りながら静かに落下して、マキシマムハイパータイフーンの奔流に飲み込まれ消えていった。
最後の瞬間、奴の手は家族だと思った人たちに向かい伸び、その口が小さく動く。
奴が最後に何を呟いたのか、それは誰の耳にも届かない。
ただ、破壊のエネルギーが過ぎ去った後に、いくつかの炎が小さく残るのみであった。
ザビーゼクター「彼こそ真の有資格者……。私で変身して!」
サイクロンヘル「人の搭乗者に粉かけないで!(踏み潰し)」
カブト編は次回でエピローグ。
集計結果
558(63%)対359(37%)
何故か強い一般人記者の勝利です。
というわけで、龍騎編の開幕となります。
さて、次は誰と出会うかな?
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バカ「っしゃぁっ!!」
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「さぁ、ここからがハイライトだ」