ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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本作ですが響鬼編が初夏なので、現在は夏休みぐらいの時期だと思います(今決めた)


第82話 episode・RYUKI 脈絡もなく出現しないでくれませんかねぇ……。

 富士山がだいぶ大きくなり、すそ野まで見えるようになってきた。

 すれ違う自動車の多くが親子連れなのは、学校が夏休みに入ったからだ。おそらくはキャンプか何かに行くつもりなのだろう。

 バイクの後部にキャンプ用品を積んでいる俺も、そんな夏休みを利用したキャンプ客に見えるかもしれない。

 

 無論、俺の目的はキャンプでは無い。

 いや、結果的にキャンプをする羽目になるとは思うが。

 

 俺の目的地は富士樹海に存在していたショッカー日本支部の富士樹海本拠地跡地だ。

 もう一年とちょっと前になるか。仮面ライダーによるショッカー壊滅作戦時に破壊され、現在は完全に放棄された施設である。

 

 子供たちが地獄の日々を送っていた忌わしき土地であり俺が改造された場所なのだが、当時の支部長が相当クソッタレな性格であり管理が行き届いていた場所では無かった。

 次世代のエリートモデル……大幹部の遺伝子データまで使用して生み出された子供たちまでいるというのに、本部に断りもなく商品として売り飛ばされていたと言えばどのくらい駄目な環境だかわかってもらえるだろうか?

 ショッカーなんてそんなものだと言われればそれまでだが、他と比べても当時の日本支部の統制は取れているとは言い難かった。実際、俺が暴れまわり本件が発覚した結果、日本支部の幹部が複数人粛清されている。

 

 二重の意味で俺を利用した陰謀の証拠が残っているなら旧本拠地だろうと思って調べに移動しているわけだが、ここで大きな問題があった。

 

 文字通り壊滅しているのだ。スーパー1が大暴れをした結果、基地そのものが地中に埋もれている。掘り起こすのが手間な上に組織分裂で縮小したので、残党ショッカーは本拠地を現在の場所に移したのだ。

 いや、赤心少林拳のはぐれ外道拳士がいたのでスーパー1が大ハッスルしたのはわかるけど、クソ支部長はともかく基地にはもうちょっと手心を加えて欲しかった。威力無限大のキックでメイン動力炉ごと崩壊させるのはやりすぎです。気象庁の記録で地震扱いになっていたぞ。

 まぁ、ショッカーの基地なんて残しておく意味はないだろうけど。

 

 そんな訳で、樹海での泊まり込みを覚悟して、キャンプ用品を準備してきたわけだ。

 まぁ、暫くは町を拠点に、無事な出入り口が無いかの調査からだが。

 

 

 

 そんなこんなで車の通りが少なくなり、ついには周囲が森となってきたあたりで、ふと前方に停まっている初心者マークの付いた白の軽バンとバイクが視界に入る。

 一瞬、事故かなと思ったがどうもそうではないらしい。

 

 いや、事故と言えば事故だが。衝突じゃないだけだ。

 

 側道から出る際に軽バンの後輪が溝に落ちたらしく、タイヤがハマって出られないようだ。

 バイクの運転手らしき男性が軽バンを後ろから必死に押しているが、車はびくともしない。ありゃ余程キレイにハマったのかな? 

 

「大丈夫ですか?」

 

 放置して先に行っても良かったのだが、今晩泊まる宿はすぐそこだ。

 急いでも仕方がないし、無視するのも目覚めが悪い。何よりよくよく見てみれば車の横には今晩泊まる予定の宿の名前が書いてある。

 まぁ、大した手間じゃない。少し手伝っていこう。

 

「いや、タイヤがハマっちゃってね、押しているんだけどなかなか抜け出せなくて」

 

 俺の呼びかけに、車を押していた男性がこちらを振り向く。

 この時、驚きで叫ばなかった俺を褒めて欲しい。

 

 夏にふさわしい軽装の男性だ。髪はかつてよりだいぶ短くまとめている。身長は今の俺と同じくらいか、少し低いかな?

 顔はまぁ、男前だろう。ただ、なんというか振り向いた表情からは人懐っこさというか、底抜けの能天気さがこれでもかというぐらいあふれ出している。いや、顔だけじゃなくて全身からか?

 祭りを取材に行ったら自分で神輿を担いでいると評される人物だ。面構えが違う。

 

 うん、城戸真司さんなんだわ。仮面ライダー龍騎の変身者。

 そう、仮面ライダー龍騎の物語の主人公。

 

 かつて神崎士郎がある目的の為に企てた一連のライダーバトルは、最後の世界改変の末に泡沫の夢と消えてしまった。

 だが、それは決してミラーワールドの消滅を意味していた訳ではない。

 そもそもの話、ミラーワールドの原形となった鏡の世界や向こうの世界の怪物たちは神話の時代からこの世界では存在していた。

 どこで泡沫の彼方の話を嗅ぎつけたのか、財団Xがミラーワールドを復元してしまった。それだけならまだ良いのだが、止せばいいのに願望機であるライダーバトルを復活させた上にライダーバトルのラスボスであるオーディンを量産、ばらまく暴挙に出たからたまらない。

 

 逆説的で概念的な話になるがライダーバトルのフィナーレに出現するオーディンが存在する以上、出現条件であるライダーバトルは発生する。

 ばらまかれたオーディンはかつての神崎士郎の行いをなぞるかのように、誰かの強い願いにより具現化しライダーバトルを発生させる舞台装置と化した。

 いつ何時、世界のどこでライダ-バトルが開催されるかわからないという、実に迷惑な状況になっているのである。

 

 そしてこの城戸真司さんは失われたライダーバトルのオリジン、神崎士郎のライダーバトルの参加者だった人だ。

 歴史改変と共に失われた世界の記憶は消えていたのだが、紆余曲折有り記憶は復活。その後もライダーバトルに首を突っ込んだり、巻き込まれたり、首を突っ込んだり、首を突っ込んだりしているこっちの業界の有名人だった。

 

 何で唐突に何の脈略も無くエンカウントしてくるのよ、この人?

 おかしくない? おかしいだろう、絶対。

 

「もしかして、手伝ってくれるか?」

「もちろん、そのつもりですよ」

 

 内心の驚きはともかくとして、当然だが俺は車の移動を手伝う為に来たのだ。

 唐突に予想外の顔があったからといって、はいさようならとはいかない。ちょっとカッコ悪すぎる。

 俺の返答に城戸さんは破顔すると、軽の運転席に向かい大声を上げる。

 

「葵ちゃん! 手伝ってくれる人が来たヨ!」

「別に叫ばなくても聞こえていますよ。あと城戸さん、いい加減に子供じゃないんですから葵ちゃんはやめてください」

 

 ドアが開き、二十前後だろう若い女性が降りてくる。すらりとした体形にショートにまとめた髪。見た感じは大学生か新社会人という雰囲気だ。

 二人の気安い話し方からすると、どうも城戸さんはこの葵という女性を子供の頃から知っているようである。

 

「ああ、ごめんごめん、葵ちゃん」

 

 謝りながらも、呼称は全く変わっていない。

 そんな城戸さんに呆れたような、諦めたような何とも微妙な表情を浮かべると、今度は俺に向かい話しかけてくる

 

「すいません、お願いしてよろしいですか?」

「困った時はお互い様ですよ。それに、今晩俺もそちらにお世話になりますし」

「え? あ、もしかして予約の?」

「はい、渉世です」

 

 堂々と偽名を使う事になれたなーと思いつつ、俺は軽の後ろに向かう。

 改造人間のパワーなら軽バンなら押し出すどころか持ち上げる事も出来る。ハマったタイヤを持ち上げるなど容易だ。

 実際、城戸さんが必死に押しても動かなかった自動車は俺が手伝った途端、何のドラマも無くあっさりと溝から押し出す事が出来た。

 

「いやー、助かったよ」

 

 そう言いながら、自販機で買ってきたコーラを手渡してくれたのは城戸さんだ。

 まぁ、バイト代だと思い有難く頂戴する事にする。弾ける炭酸と甘みが実に心地が良い。

 

「ははは、しかしすごいな。なんかやっているのか?」

「まぁ、少しだけ野球を」

 

 改造人間をやってますとは言えないので、そこは適当にぼかす。

 城戸さんもそれ以上は突っ込まずに懐から名刺を取り出して俺に手渡す。

 

「あ、俺はNEO・OREジャーナルの記者で城戸っていうんだ」

「へえ、あの有名な!?」

 

 近年復活したインターネットニュースサイトの名前に、知ってはいたが驚いたふりをする。

 OREジャーナルは割と有名どころではあったが、SNS時代の到来とともに過去の遺物となり消えて行ったニュースサイトだ。

 それが近年NEOの名を冠して復活した。新たな顧客層を掴み勢いを伸ばしているらしい……と、NEO・OREジャーナル、通称ネオレの熱心なフォロワーから聞いた事がある。

 

「君は学生さん?」

「ええ、夏休みを利用してツーリング中なんです」

 

 名刺をしまいながら、これまた大ウソをついて誤魔化す。俺の舌は多分閻魔様でも抜ききれない。

 まぁ、せっかくの機会だ。情報収集がてらに少し話を聞くべきだろう。

 この先で俺の知らない事件が起きていてはたまらない。

 

「えっと、城戸さんは取材ですか?」

「ああ、そう。秋からの観光施設の取材にね」

「へえ。まだ夏の始まりなのに?」

「秋の記事は今のうちに原稿は入れないと駄目なんだ」

 

 まるでベテラン記者のような顔で城戸さんは言う。

 いや、実際もう見習いから中堅以上の立ち位置なのかな?

 

「あ、城戸さん車は平気でした。渉世さんもすいません、ほんとうにありがとうございます。道路サービスを呼ぼうかって話していたところなんです」

「いえいえ。何も無くて良かったですよ」

 

 話を聞く限り、どうもこの先で何か事件が起きているとかいう話ではないようだ。やれ、今の季節ならどこがいい、見どころは何処だ、あの店が安い。そんな話しか出てこない。

 城戸さんの顔を見た時は警戒してしまったが、事件が無いのなら少し話しをして終わりだろう。

 これが普通なのだ。自分から首を突っ込んでいた訳でもないのに、ここ最近は事件に巻き込まれ過ぎだったのだ。

 

 キーン……キーン……

 

 そんな事を考えていると、不意にこんな不気味な音が耳につく。

 おいおいおいおいおい……。まだ昼間だぞ? いや、関係ないのか?

 

 周囲を見てみれば、先ほどまで朗らかな表情だった城戸さんの表情が急に険しくなり、葵さんが不思議そうに彼の変化を見つめていた。

 葵さんの背後、軽のフロントガラスに映った彼女の背中から、そこにはいないはずの何かの頭がうつる。それは彼女に狙いを定めると、彼女の背中に向かって何かを吹き付けてくる。

 

「危ない!」

「きゃあああっ!?」

 

 咄嗟に彼女を突き飛ばすと、俺は身代わりとなった。

 腕に、胴に、足に吹き付けられた糸が絡まり、鏡の向こうに引きずり込もうと力が加わる。

 何とか外そうと藻掻くが、皮膚や服に張り付いてなかなか取れない。

 

「くそっ!」

 

 取れないならと何とか踏ん張ってはみたが、思った以上に力が強い。改造人間であるはずの俺でも、踏ん張り続ける事は厳しかった。

 こりゃ変身しなきゃこれ以上の抵抗は無理だな。

 

「待ちやがれ!」

 

 そんな事を考えていると、いつの間にか腰にVバックルを装着した城戸さんが叫びを上げる。

 彼は右腕を大きく振り上げ降ろすと同時に、その反動を利用し左手に持ったカードデッキをVバックルに装着した。

 

「変身!」

 

 次の瞬間、周囲にいくつもの鎧姿の鏡像が出現し城戸さんに向かい収束していく。

 そして出現する、赤いボディースーツと黒と銀の鎧。そして格子のついた複眼があるヘルメットの額に輝くのはドラゴンの紋章。そう、そこには新たなる仮面の戦士が出現していた。

 彼の名は仮面ライダー龍騎。ミラーワールドを舞台に戦う仮面ライダーの一人である。

 

「っしゃぁっ!」

 

 龍騎は気合の雄たけびを上げると、こちらに駆け寄りながら左腕の龍の頭部を模したガントレット、ドラグバイザーに滑らかな動作でカードを装填する。

 

『SWORD VENT』

 

 周囲に機械的な音声が響き渡り、空中から龍の尾を模した柳葉刀が出現すると龍騎の手の中に納まる。

 そのまま勢いよく駆け込み、龍騎は剣を素早く振るう。

 

 硬度と粘性を持つはずの糸は、龍騎が振るう刃の前にさした抵抗もできずバラバラに切り裂かれる。

 

「き、城戸さん!?」

 

 葵さんが何やら混乱のあまり悲鳴を上げているが、事態はそれどころではない。

 俺は糸にかかる力が無くなり、数歩だけよろけると呼吸を整えながら残った糸を外していく。

 くそ、ベタベタしていてなかなか取れないな。

 

 一方鏡の向こうにいるだろう怪物を追撃に行こうする龍騎だが、彼があちらの世界に行くより早く鏡の向こうの怪物が動いていた。

 こちらの世界に自身を妨害できる存在がいると悟った怪物たちは、あろうことか鏡を通り抜け現実世界にその身を躍らせて来たのだ。

 一体、二体、三体。蜘蛛の足を持つ巨大な怪物たちが、現実の世界に出現する。

 

 ちょっとまてや!?

 ミラーモンスターが現実世界に契約者もなしにやってくるのか?

 

「こっちにやってきたぁ!?」

 

 俺の驚きと同じ感想を叫んだのは龍騎だった。

 

 いや、そういう事例は過去にもあるにはある。おそらくはこの近辺で開催されているだろうライダーバトルの主催者の一存で設定変更は可能だろう。

 それにしても、ミラーモンスターをこちらの世界に招き入れるなんて、どんな破滅願望の持ち主だ、このライダーバトルの主催者!?

 

 余りにもおぞましい姿に葵さんが再び声にならない悲鳴を上げる。

 人の背丈を大きく超え、頭がある部分に人のような機械の体を持つ蜘蛛の怪物なんて、一般人にはきついだろう。

 

 驚く俺と龍騎。悲鳴を上げ、今にも気を失いそうな様子の葵さん。

 そんな中、事態をさらにややこしくするかのように状況が動く。

 

 不意に日の光が遮られ、俺たちが居る場所の上空を何かが横切る。

 空を飛ぶミラーモンスターは多い。新手が来たのかと上を見上げるが、飛来したのはミラーモンスターでは無かった。

 

 上空を横切ったのは人の手により作られた空飛ぶ道具、ハンググライダーであった。

 

 

 まてや?

 ちょっとまてや?

 

 

 混乱する俺をよそに、低空で飛び込んできたハンググライダーから何かが飛び降りてくる。ハンググライダーはそのまま森の木に突っ込み、何やら盛大な破壊音を立てている。

 あれ幾らぐらいするんだ?

 

 いや、状況的には仕方が無いのかもしれないが、二重の意味ですごい度胸だ。

 飛び降りてきた人物が、ゆっくりと立ち上がりながらこちらを振り向く。

 

 髪型はちょっと古めかしい長髪気味だが、なかなかベビーフェイスの精悍な顔立ちの男性である。

 彼は怪物に襲われている俺たちを見て、あるいは龍騎という異形の人物を見ても驚きもしない。

 

 それどころか、闘志を漲らせながら声をかけてきた。

 

「君たち大丈夫か? それと久しぶり、葵ちゃん、城戸さん」

 

 大丈夫ですけど、急に何の脈絡もなく出現しないでください。心臓に悪いったらありゃしない。

 内心で毒づく俺をよそに、龍騎……いや、城戸さんが素っ頓狂な声を上げる。

 

「筑波さんじゃないっすか? なんでここに!?」

 

 その人と知り合いかよ、城戸さん!?

 いや、仮面ライダーたちは独自のコミュニティがあるらしいし、二人とも戦歴は長い。

 確かに知り合いでも不思議じゃないけど、本当に脈絡が無さ過ぎる。

 

「え? え? え? 筑波おじさん!?」

 

 ほら、唐突に表れて葵さんも狼狽えているじゃないか!

 ん? この反応、もしかしてこっちとも知り合い?

 

「え、葵ちゃん、筑波さん知ってるの?」

「ええと、城戸さんが来るより前からごひいきにしてくれていて……」

 

 龍騎……いや、城戸さんが間抜けな声を上げる。

 知り合いの知り合いが知り合いだったらしい。どういう状況だよ。

 唯一無関係な俺は居心地が悪いので帰りたいのだが、そうは問屋が卸さなかった。

 

 唐突な乱入者に動きを一瞬だけ止めたクモの姿をしたミラーモンスターであったが、相手が人間と見て獲物が増えたと認識したのだろう。

 まるで笑みを浮かべているように口を歪め、こちらに向かい襲い掛かってくる。

 

「話している場合じゃないな、行くぞ!」

 

 唐突に現れた彼は左の掌を前に向けると、大きく円を描き動かす。

 左腕の動作が終わると同時に、今度は右腕を鋭く左上につき上げながら叫びをあげる。

 

「変身!」

 

 男の姿が変わる。

 鮮やかな緑色のボディースーツに銀色のベルト。胸を覆う装甲は赤褐色に輝く。

 頭部を覆うボディースーツと同じ色のヘルメットに赤い複眼が輝き、同じ色の赤いマフラーが風にたなびく。

 

 男の名は筑波洋、もう一つの名をスカイライダー。

 

 かつてネオショッカーとの死闘を潜り抜け、ネオショッカー大首領を宇宙のかなたに追放、撃破した偉大なる戦士。

 天を駆ける仮面ライダーが俺たちの目の前に姿を現したのであった。

 




龍騎編開幕! 今回はのっけから豪華ゲスト!

龍騎系の仮面ライダーはアフター仕様になっておりますので

・鏡の前に行かないでもVバックルは出現して、どこでも変身できる。
・現実世界でも活動可能

と、なっております。 
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