ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第83話 episode・RYUKI あの人の行く先はいつも何か起きるんです!(自分の事は棚上げ

 仮面ライダー龍騎。ドラグレッダーという強力なミラーモンスターと契約し、ライダーバトルを戦い抜いた強豪ライダー。

 スカイライダー。B26暗黒星雲の先兵、人類の大規模抹殺を企んだネオショッカーに立ち向かった大空の勇者。

 両名とも伝説の仮面ライダーだ。

 

 巨大な蜘蛛型のミラーモンスター、ディスパイダーの群れを前にしても二人とも一切の動揺は見せない。

 それどころか、巨大な怪物を前にしても軽口を叩けるほどの余裕がある。

 

「しゃああ! 筑波さんがいるなら百人力だ!」

「ミラーモンスターの相手は君ほど慣れていないけどね」

 

 龍騎は剣を構え、スカイライダーは拳を握る。

 先に動いたのはディスパイダーたちだ。獲物を食らう為には目の前の二人を排除しなければならないと本能で悟ったのだろう。牙をむき出しに二人のライダーに躍りかかる。

 サイズだけならSUV車並み。脚を考えればそれ以上に見える重量級の突進だ。まともに食らえば自動車でもスクラップだろう。

 

 だが、歴戦のライダー二人にそんな本能任せの突進は通用しない。

 

 龍騎はその突進を身をひるがえし躱すと、無防備になった脚の一本に剣での斬撃を叩き込む。

 

「でやああああ!」

 

 気合の籠った叫びと共に振り下ろされた剣は装甲の薄い関節部にめり込む。

 とはいえそこは流石のミラーモンスター。装甲が薄いとはいえ強固な外殻を有する事に変わりが無い。斬撃は関節の表層で食い止められ、刀身が深く食い込むだけで終わる。

 それを待っていたのだろう。ディスパイダーが龍騎を弾き飛ばそうと残った脚を振り上げた。

 

「そうはいくか!」

 

 だが、その程度の事は龍騎もわかってはいた。

 彼は再び叫び声をあげると、事も有ろうか食い込んだ剣を強引にひねり脚に出来た傷を広げる。

 本来ならそのような使い方をすれば剣が持たない。良くて刃が欠け、最悪は刀身がねじ曲がり折れてしまう。

 だが、同じミラーモンスター由来、それもドラグレッダーという強力なミラーモンスターの力を宿した剣は折れ曲がるどころか、そのままディスパイダーの傷を広げてしまう。

 

 強固な装甲ゆえに、一度ほころびが広がればその強度は加速度的に劣化する。

 

『GYAAAAA!』

 

 一瞬であった。振り上げた脚が動くより先に、龍騎はディスパイダーの足をもぎ取ってしまう。

 その痛みに叫び動きを乱すディスパイダーから余裕を持って離れると龍騎は剣を左手に持ち直し、バックルから新たなカードを取り出し左腕のドラグバイザーに装填する。

 

『STRIKE VENT』

 

 龍の頭部を模した手甲から機械音が響くと同時に、右腕にやはり龍の頭部を模したグローブが装着される。

 龍騎は腰を下げ踏ん張ると、グローブを装着した右腕を大きく後ろに構える。

 

「くらえ!」

 

 龍騎の気合の叫びと共に、空間が裂けそこから一匹の龍が姿を現す。

 鋼の装甲に身を包み、いわゆる東洋式の長大な胴体を持つ深紅の龍。その龍の名はドラグレッダー。龍騎の契約モンスターであり、最強格のミラーモンスターの一体だ。

 ドラグレッダーは龍騎の動作に呼応してその胴体をくねらせると、拳を突き出す動作に合わせ、周囲に響く雄たけびと共に5000度にも及ぶ灼熱の吐息をディスパイダーに向かい解き放つ。

 

 脚を砕かれ装甲に隙間が出来たディスパイダーではその高熱に耐える事などできなかった。

 装甲の外殻を炙られ、隙間から入り込んだ熱に内部構造も無残に焼き払われる。

 

 そして、ついに耐え切れなくなったディスパイダーは小爆発を繰り返しながらその身を崩壊させていった。

 

 

「はぁ!」

 

 徒手空拳のスカイライダーだが、その動きは華麗以外の評価が難しいものであった。

 ディスパイダーの無数の足が次々に大地を抉り、そのたびにアスファルト舗装の道路が砕け散り破片を飛び散らせる。

 その攻撃の全てをスカイライダーは身のこなしだけで避けていく。

 

 魔獣の攻撃は緑色の身体にかすりもしない。

 

「とりゃあ!」

 

 振り抜かれた脚に対してスカイライダーの拳がめり込む。

 その一撃で重量とパワーのある筈の蜘蛛の脚はあらぬ方向に弾き飛ばされる。

 

『GYANYARA!?!?』

 

 余りにも理不尽な威力にディスパイダーが困惑の悲鳴を上げるが、傍から見ている俺には何が起きたのか一目瞭然だった。

 スカイライダーは、ディスパイダーが脚をアスファルトから引き抜く瞬間を狙い、その動きのベクトルをパンチ一発で変えてしまったのだ。

 強力なパンチの一撃に加え、自身の力も利用され、蜘蛛の脚はあっさりと捻じ曲げられはじけ飛ぶ。

 

 そしてスカイライダーの攻撃はそれで終わりではない。

 体勢が崩れたその瞬間、スカイライダーは予備動作無しの跳躍を行うと、拳を握り大きく振りかぶる。

 

「スカイパンチ!!」

 

 体勢を崩すためではない、全力の拳がディスパイダーの本体にめり込んだ。

 轟音があたり一帯に響きわたり、強固な装甲で覆われている筈の胴体がクレーター状に抉れるようへこむ。

 それだけではない。今の一撃で内部に重大な損傷が生じたのか、装甲の隙間から体液が噴き出し始めた。

 

 どんなパワーだよ……。ショッカーで見た以前の戦闘記録より威力が上がっているだろう、あれ……。

 

 本郷さんやスーパー1、クソジジイに勝るとも劣らない強さに俺が絶句をしている間にもスカイライダーの猛攻は止まらない。

 パンチの一撃でふらついているディスパイダーの上にひらりと飛び乗ると、先ほどのパンチで歪んだ装甲の隙間に指を入れてしっかりとホールドをする。

 

「いくぞ! セイリングジャンプ!」

 

 掛け声とともに、ディスパイダーを掴んだままスカイライダーは天高く駆け登っていく。

 無論、あれは通常のジャンプなどではない。

 スカイライダーの代名詞ともいえる飛行能力、セイリングジャンプによりディスパイダーの巨体を持ち上げ飛んでいるのだ。

 

 スカイライダーははるか上空でその身をひるがえし、ディスパイダーを抱えたまま今度は地面に向かい急降下を開始する。

 

「スカイバックドロップ!」

 

 ディスパイダーは何とか抵抗しようとその長大な脚を出鱈目に動かすが、その動きも落下の速度が拘束となり動きを鈍らせる。

 そして、ついにはミラーモンスターの頭部はアスファルトの地面に叩きつけられた。

 アスファルトの強度には耐えられても、高度と速度、そして自重による衝撃はダメージを負ったディスパイダーに耐えられるものでは無かった。全身の装甲をひしゃげさせ、ついには爆発をして巨大な蜘蛛の怪物は消えるのであった。

 

 

 強い……。

 知ってはいたが、この目で見る二人は桁外れに強い。

 他の本物の仮面ライダーたちもそうであったが、自分が彼らと相対するとして勝利のビジョンがまったく浮かばなかった。

 

 

 まぁ、そんな戦力分析はともかくとして、俺はというと先ほどディスパイダーから食らった糸を剥がすのに四苦八苦していた。

 鋼並みに硬質な上に、粘着力が強い。下手な取り方をすると切り傷を作りそうなのだ。

 残る敵は頭から人型の上半身を生やしたディスパイダー・リボーンただ1体。

 

 最悪は変身した際のエネルギーで吹き飛ばし参戦しようかと思っていたが、瞬く間にディスパイダー2体を龍騎とスカイライダーが倒してしまったので、ショッカーライダーがでしゃばる必要は無さそうだ。

 というか、最近仮面ライダーと共闘してばかりで忘れそうだが、追放されたとはいえ俺はショッカーライダーである。顔を知られて良い存在では無く、知られれば互いに不幸にしかならない関係なのだ。

 この後確認で動くにせよ、人類の平和と自由の為に戦い続けている彼らとは極力関わらないほうが良いに決まっている。

 

 俺は慎重に首に巻き付いた糸を剥がしていく。

 本当に厄介な糸だ。簡単に窒息死や気絶できるような軟弱な体では無いが、首が絞められれば人並みに苦しい事には変わりがない。

 戦いの行方を見守りながら、何とか首の糸を剥がし一息つく。

 

「げほっ、げほっ!」

 

 咳き込む。

 ただし、俺じゃない。

 何が起きたか? そう思い振り向いてみれば、先ほどまで驚きの声を上げていた葵さんが胸を抑え膝立ちになり、ついには両手を地面につき崩れ落ちた。

 

「……!」

 

 明らかに喉を抑えているが、呼吸が出来ていない?

 

 毒ガス? 最初に疑ったのはそれだ。だが、サイクロンヘルから送られてくる大気の組成データに毒ガスは含まれていない。

 ディスパイダー・リボーンによるなんらかの精神攻撃でもなさそうだ。あいつらの注意は完全に龍騎とスカイライダーに向いている。

 

 そしてそれ以上に、彼女の症状には見覚えがあった。

 

 多分、恐怖によるストレスからくる過呼吸だ。

 様子見をしていてよかった。変身して戦っていたら対処が遅れていたかもしれない。

 

「葵さん! 大丈夫ですか!? まずはゆっくりと息を吐いてください」

 

 残った糸を剥がすのを後回しにして、俺は慌てて彼女の傍に駆け寄り抱えると背中をポンポンと叩く。

 しかし、これで状況が改善されるとは限らない。まずはストレスの発生源……、おそらくはミラーモンスターから引き離さないと。

 

 とはいえ車で逃げるのは論外。サイドミラーやバックミラー、さらにはガラスなど鏡の部分が多いためミラーモンスターから逃げられる保証はない。

 最低限、目の前のディスパイダー・リボーンの排除をしないと……。

 

「城戸さん! えっと、筑波さん! 葵さんの様子が!」

「葵ちゃん!?」

「くそっ!? そうか!」

 

 俺の行動と呼びかけに二人が反応する。

 今の反応からしてみると、ある程度事情は分かっているのか?

 まぁ、今は聞く暇などない。

 

 一方、状況の変化に焦っていたのは俺たちだけでは無くミラーモンスターも同じであった。

 何せ、引き連れていた手下のミラーモンスターが瞬く間に倒されてしまったのだ。本能だけの生き物でも群れを殺されれば怒りと焦りは当然感じる。

 この状況に、ディスパイダー・リボーンは真っ先に動く。

 

 人型の頭部の口を大きく開いたかと思うと、奴は息を大きく吸い込み始める。

 そして、吸ったのは空気では無かった。

 

 龍騎とスカイライダーに倒された2体のディスパイダーの残骸が塵となり粉々に砕ける。

 塵はディスパイダー・リボーンが吸い込んだ空気に乗ってその体に吸い込まれていく。

 それと同時に、ディスパイダー・リボーンの姿が大きく変わる。

 

 その巨大な胴と腹は一回り巨大に。人型の頭部フィギアが再び胴と一体化する代わりに、8つの複眼と牙の生えた口がより巨大に。

 増した重量を支えるべくその脚も一回り太く長大なものに姿を変え、なおかつ鋭い棘が生えそろっていく。

 

 現れたのは、あまりにも巨大な蜘蛛の怪物であった。2体のディスパイダーを吸収した、もしくはこちらが本来の姿なのかもしれない。

 その姿はディスパイダー・リボーンとは言えないだろう。あえて名付けるなら、ディスパイダー・ギガントといったところか。

 

「おいおい、そう来たか!?」

「大きいな。サイズだけなら大首領並みだ」

 

 スカイライダーの言う通り、サイズだけ見ればネオショッカー大首領にも匹敵する。

 小山ほどもあるそのサイズに、流石の両ライダーも緊張の色を隠せない。

 

 おそらくこの中で一番早く、安全に葵さんを運べるのはスカイライダーだろう。

 俺も変身して足止めするべきだ。

 

 そう考えたその瞬間であった。

 

 

 突如、ディスパイダー・ギガントの8つの複眼から光が漏れる。

 何かの攻撃の前動作か? そう身構える俺たちであったが、そうでは無かった。

 

 目から洩れた輝きに押し出されるように、複眼が次々に破裂していく。

 装甲の隙間からも同色の光が漏れ、内側の機構から次々に破壊音が響き始める。

 脚の関節が砕け、胴体が巨大な音を立て地面に落下する。

 

「な、何が起こっているんだ?」

 

 呆然と呟いた俺の声に、答えたのはスカイライダーであった。

 彼はディスパイダー・ギガントの胴体の頂点を指さす。

 

 そこに存在していたのは、一人の怪人物であった。

 

 人型だ。

 身長も成人男子より少し大きい程度、ライダーたちと同じぐらいだろうか。

 

 特徴的なのはその姿だ。まず頭部は歯車などがむき出しの、機械仕掛けの大きなヘルメットを被っている。

 右腕は巨大な機械仕掛けのアーム、ディスパイダーギガントに突き刺された右腕の先は形状から砲身か何かだろう。

 胴体を覆うアーマーも、つぎはぎだらけの装甲の上に、内部の構造がところどころむき出しのままだ。

 

 ライダーというにはあまりにも不格好、怪人というわけでもない。

 疑似ライダーといったところか。

 

『ふぁィ……NAL VぇNT』

 

 乱れ、飛び飛びの電子音があたりに響く。

 それと同時に、怪人物が突き出した右腕がより一層強く輝くと同時に、膨大なエネルギーが放出される。

 次の瞬間、ディスパイダー・ギガントは装甲の隙間から眩いばかりの光を放出しながら爆発し、消滅していく。

 

 今の音声……?

 ミラーワールド系のライダーなのか? だが、あまりにも意匠が龍騎達とは違い過ぎる。

 

 爆発を繰り返し消滅をしていく巨大な蜘蛛から、件の怪人物がヒラリと降りて着地をした。

 そしてゆっくりと歩きながら、俺たちに近づき、ある程度の距離で歩みを止める。

 

「あんたは……。助けてくれたのか?」

 

 龍騎の言葉に、謎の怪人物は何も答えず俺たちを見回す。

 まずは最初に龍騎を、次にスカイライダーに視線を向ける。

 二人をじっと見つめ、首を軽く横に振ると次に俺と葵さんを見つめる。

 もっとも、雰囲気から察するに俺に関しては本当にチラ見したくらいだろう。

 彼が見つめたのは葵さんだ。俺の腕の中で意識を失ってこそいるが正常な呼吸に戻っている葵さんを少しだけ長く見ると、すぐに踵を返す。

 

『コノ先ノ町デらいだーばとるガ始マッタ。無関係ナオ前タチハ立チ去ルガイイ』

 

 明らかなくぐもった電子音が彼から響く。

 ボイスチェンジャーか何かだろう。聞こえにくいが、遠隔からの通信ではないようだ。

 

「まて、また始まったというのか!? ライダーバトルが!」

 

 その聞き捨てならない言葉に龍騎が彼を呼び止めようとするが、その怪人物の歩みは止まらなかった。

 そのまま燃え盛るミラーモンスターの残骸の中に入ると、いずこかへと消えて行く。

 

 おそらくは、彼が通ってきた鏡面があの先にあるのだろう。

 

 

 この時は知らなかった。

 恐るべきライダーバトルとそれにまつわる陰謀がすでに始まっていた事を。




ディスパイダー・ギガント「え? せっかくかっこよく登場した自分の活躍は? 無い!? そんなー!?」


ある日のショッカー

元上司「アインロールドよ、よく来たな」
元部下「はっ、何の御用で」
元上司「貴様の此度の働き、ライダーもどきたちのせん滅。大首領よりお褒めの言葉を頂いておる。そこで貴様に褒美を取らせよう」
元部下「身に余る光栄であります(もう被り物やかぎ爪はいらねえ……。押し入れ一杯だぞ)」
元上司「くっくっくっく、貴様のような闘志溢れる男にはこれをくれてやろう」
元部下「これは? データチップ!?」
元上司「(ワシが直々に厳選した)仮面ライダーどもの戦闘記録の数々よ。奴らの戦いを見てより一層の研鑽を積むと良い」
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