ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第84話 episode・RYUKI 幕間 騎士の参戦

「NEO・OREジャーナルの城戸真司さん? ああ、あのニュースサイトの? 息子が良く見ているよ」

「それはありがとうございます」

 

 その人物から名刺を受け取ったアパートのオーナーは、有名なニュースサイトの名前を思い出す。

 目の前にいるのは長身の男だった。身長は180程度だろうか。黒を基調とした上着とズボンを身に着け髪を短くまとめた、優しさとどこか危険な匂いのする男であった。

 

 なるほど。有名ニュースサイトの一流記者ともなれば、このように鋭い古強者の雰囲気を醸し出しているのか。 

 アパートのオーナーは妙なところで納得をしたところで、城戸真司を名乗る男の用件を確認する。

 

「行方不明人を追っているんだって?」

「はい、こちらのアパートの男性が行方不明と聞きましたので、お話をお伺いしたいと。差し支えなければ部屋の中も見せていただければ……」

 

 これが都会であればコンプライアンス違反であり、今時ならオーナーも易々と他人を招き入れなかっただろう。

 だが、有名ニュースサイトの名前と、地方ゆえの緩さからオーナーはあっさりと城戸真司を名乗る男の頼みを受け入れる。

 

「ああ、いいよ。近所から気味悪がられてね。家賃も滞納しているっていうのに、警察は全然取り合ってくれないしさ」

 

 オーナーに案内されたその部屋は、確かに異様と言う他ない部屋であった。

 まだ昼間だというのに、その部屋は一切の光が差し込んでいない。窓という窓には新聞紙が貼られ、一切の光が差し込まないようになっている。

 しかもそれだけではない。部屋に備え付けられた鏡や戸棚、電灯、テレビ、その他のガラスが使われている製品の全てが念入りに新聞で覆われていた。

 さらには、部屋の調度品も新聞紙で包まれ、ご丁寧にガムテープで硬く縛られている。

 

「窓ガラス全部これだろう、気味が悪いったらありゃしない」

「いつからこのような様子で?」

「一ヶ月くらい前かな? 急に新聞を貼り始めてね」

 

 オーナーは気味悪そうに語る。

 近所でもこの奇行は有名なのだが、法律の関係で追い出そうにも追い出せないのが実情らしい。

 

「普通の勤め人だって聞いていたんだけどね。家賃も滞納していたし、ずっと帰っていないみたいだしどうしようかと」

「確かに気味が悪いですね」

 

 オーナーと話を合わせ情報を引き出しながら、城戸真司を名乗る男は考える。

 見慣れた状況だ。ミラーワールドに、ライダーバトルに巻き込まれた人間が行う対策だろう。

 だとすれば、行方をくらませたこの部屋の主がどうなったのかも予測がつく。

 

「少し見てもよろしいでしょうか?」

 

 丁寧に訪ねてくる記者を名乗る男に、オーナーは快く了承の言葉を述べる。

 

「ああ、構わないよ。私は下の部屋にいるから終わったら声をかけてくれ」

「はい。ありがとうございます」

 

 そう言ってオーナーが立ち去った事を確認した城戸真司を名乗る男は先ほどまで浮かべていた人のよさそうな顔を一変し、彼本来の鋭いまなざしで部屋を見渡す。

 

「最低でも一か月前、おそらくはそれ以上前からライダーバトルが開催されていたか……」

 

 そう一人で呟きながら、テーブルの上に置いてあった新聞紙でくるまれた手帳大の包を持ち上げると、乱暴に包を引きちぎる。

 中から現れたのは、黒いカードフォルダーであった。フォルダーの中央には何か金のレリーフがあったのだろうが、今は鋭い何かに切り裂かれ原形をとどめていない。

 

 予想はしていたが、やはりこのカードデッキは完全に破壊されている。

 その事実に小さくため息を漏らす。

 

「隠したところで、逃げ場なんて無いのにな」

 

 この部屋の主はライダーバトルに参加し、おそらくは1ヶ月前にデッキを破壊されたのだ。本来ならその時点で契約の切れたミラーモンスターの餌食となる筈だが、食べられる前に運よくミラーワールドから脱出が出来た。

 とはいえ、ミラーモンスターは一度獲物と見定めた相手を執拗に狙う性質がある。

 鏡面から出現するミラーモンスターから逃げるために、この部屋の主は光が差し込まない部屋を作り上げたのだ。ライダーバトルが終わり、ミラーモンスターが諦める事を期待して……。

 だが、ミラーモンスターの多くは執念深く狡猾だ。一瞬の隙をつき、こちらの世界に侵入しこの部屋の主を連れ去り捕食した。

 

 大筋ではこんなところだろう。

 

「だが、そうするとこの町のミラーモンスターの被害が少ない事が気になるな」

 

 神崎士郎のライダーバトルが行われていた時分ならまだしも、今の警察は超常の犯罪には敏感だ。

 G3部隊は警視庁及び各県警に配備されており、また一般には周知されていないがライダーバトルも超常犯罪捜査課などは認識している。

 だが、この部屋の主の行方不明事件に警察は動いていない。

 

 地方の所轄ゆえの鈍さもあるだろうが、行方不明人が頻発していれば流石に警察が気が付く。

 つまり、ライダーバトルは行われているがミラーモンスターはミラーワールドから外に出られない状況という事だろう。

 

「主催者のルールがどうなっているのか……」

 

 ライダーバトルの厄介な点の一つは主催者によりルールがまちまちな点である。共通点はライダーがミラーモンスターと契約を結ぶ事と、戦いの舞台がミラーワールドくらいだ。

 オーソドックスなライダーバトルはバトルロワイヤル形式で勝者の願いが叶うというものだが、中には参加者に何の得も無く生き残った者のみがミラーワールドから出られるというものや、期限内に生き残ったライダーすべてに平等に願いが叶うと言ったものまである。

 

 そして、その全てが最悪の代物である事は言うまでもない。

 

 部屋を探すと、この部屋の主の手帳や電源切れのスマホが見つかる。

 千差万別なライダーバトルを制するには、ルールを把握する事は重要だ。特に城戸真司を名乗る者のようにライダーバトルを止めようと考えているのなら、その重要性は増す。

 彼は見つけた遺留物を鞄にしまい込み、他にめぼしい物が無い事を確認すると部屋を後にする。

 

「あれ、記者さん。もういいのかい?」

 

 真夏で暑い日が続いている為、アパートの植え込みに水をやっていたのだろう。

 麦わら帽子姿のオーナーの老夫妻に礼の言葉を述べる。

 

「ええ、ありがとうございます」

「いつ頃記事にするんだい?」

「他にも調べて、会社に持って帰ってからなのでまだ未定ですね」

 

 城戸真司を名乗る者が記事を書く事など無いので、本来なら永遠に記事など出ない。

 まぁ、後で本物の城戸に資料を投げておけば何とかするだろうと、城戸真司を名乗る者は無責任に考えてはいた。

 

 二人に挨拶と礼を済ませ、その場を後にしようとする。

 ふと、日差しに目を細めると、アパートの窓に老夫妻と自分の姿が映っていた。そして三人を狙う巨大な鋼の黒い虎のようなモンスターの姿が映っていた。

 

 次の瞬間、城戸真司を名乗る者が老夫妻に覆いかぶさるように跳躍をする。

 

「危ない!」

 

 一瞬前まで老夫妻がいた場所を、虎の怪物の咢が通り過ぎる。

 鏡の世界から飛び出した怪物が獲物を取り損ねた恨みと怒りに低いうなり声を上げる。

 

『GURURURUR……』

 

 だが、それも僅かな時。

 襲撃に失敗をした怪物はすぐさま踵を返すと窓ガラスを通じ鏡の世界へと帰っていく。

 

「ひっ!? ひいいいいい!?」

「な、なんだ!? い、今のは何だ!?」

 

 老夫妻の悲鳴を聞きながら、城戸真司を名乗る者は立ち上がる。

 その手の中にはいつの間にか蝙蝠の紋章が刻まれたカードデッキと、腰にはVバックルと呼ばれる特殊なベルトが巻かれていた。

 

「大丈夫か? あんたたちは安全な場所に逃げるんだ。あれは俺がやる」

 

 彼は腰を抜かして立ち上がれない老夫妻に振り向く事無くそう叫ぶと腕をくの字に振り上げ、手に持ったカードデッキを腰のバックルに装填する。

 

「変身!」

 

 次の瞬間、男の周囲に影法師が舞い踊り、男の姿が一変する。

 全身を覆うボディースーツは闇夜のような黒に近い紺をしている。頭には蝙蝠が翼を広げたかのようなバイザーが装着された銀色の兜が装着されている。

 身を守るブレストプレートは兜と同じ銀に輝き、腰に吊るされているのは剣型の召喚機であるダークバイザーだ。

 

 彼の名は仮面ライダーナイト。騎士の名を冠する、失われた世界で行われた神崎士郎のライダーバトルで覇者となった仮面ライダーだ。

 ナイトとなった男は正面を見据えると、真っ直ぐに窓ガラスに向かい駆けていく。

 

「き、記者さん!?」

 

 本来ならライダーの突撃を食らえば、ガラスなど容易に砕けるだろう。

 だが、ガラスは砕ける事は無く、それどころか彼の姿はガラスに触れた途端その姿が鏡の向こうに飲み込まれ消えて行く。

 

 後に残ったのは、呆然と腰を抜かす老夫婦のみであった。

 

 

 

『SWORD VENT』

 

 ウイングランサーを呼び出したナイトは果敢に虎型のミラーモンスターに斬りかかる。

 虎の鋭い爪とウイングランサーの刃がぶつかり合い、火花を散らす。

 数合の打ち合いの末、一歩下がったのはナイトであった。

 

「強い? いや、強化されている!?」

 

 過去に戦った同型のミラーモンスターと比べても、一発一発の攻撃が力強い。

 もともとこのタイプのミラーモンスターはかなりの強敵だが、それにしてもここまで力強いとはかなり育てていたと考えて間違いないだろう。

 

「相当餌を食わせていたか? だが、人間の失踪事件がほとんど無い以上、ミラーモンスターを狩っていたのか」

 

 ミラーワールド系の仮面ライダーはミラーモンスターと契約を結ぶことによりその真価を発揮する。

 無論、契約ゆえに一方的な関係ではない。

 仮面ライダーたちがミラーモンスターの力を行使する代価として、契約者はミラーモンスターの食料を世話する義務を生じさせる。

 

 ミラーモンスターの餌は二つ。すなわち、人間か同種のミラーモンスターかだ。

 そしてその多くは、人間を狩ることを選択する。 なにせ、高い戦闘能力を持つミラーモンスターを狩るより、その辺の人間を連れ去り食わせた方が楽だからだ。

 

 それゆえに、ライダーバトルが発生した土地ではライダーがミラーモンスターの餌を得るため、あるいは血の匂いに引き寄せられたミラーモンスターによる一般人の失踪事件が相次ぐ。

 

「元の主を追ってきた人間を襲う為に潜んでいたか」

 

 オーナー夫婦は物のついで。下手をすれば視界に入っていない。

 おそらくは先ほど手に入れた破損したカードデッキの持主、それの縁者を狙い潜んでいたのだろう。

 すなわち、カードデッキを持ち出した自分が狙いなのだ。

 

 ナイトの槍と虎の爪が何度も交差する。

 このままでは埒が明かない。そう考えたのだろう虎の怪物が一歩後ろに下がるとその膂力の限り駆け出す。

 その体格と膂力、脚力から繰り出される突進は鉤爪に勝るとも劣らない武器だ。

 

 大地を蹴り砕き障害物を打ち砕きながら迫る虎の怪物に、ナイトも一歩下がると新たなカードをデッキから引き抜き召喚機にセットする。

 

「そう来るなら」

 

『TRICK VENT』

 

 神秘のカードがその力を発揮すると同時に、ナイトの姿が突如3人に増える。

 実体を持つ分身を呼び出すナイトの技の一つ、ナイトイリュージョンだ。

 

 一人目のナイトがトラの怪物に迫る。

 ダークバイザーを真正面に構え追撃を掛ける。剣の切っ先がミラーモンスターの胴体に傷をつける。

 だが、虎の怪物の装甲を貫くには至らない。

 分身のナイトは瞬時に砕かれ、割れた鏡のような粒子となり消えて行く。

 

 だが、そんな消えた自分の事などお構いなしに二体目のナイトが突き進む。

 先ほどと違いマントを纏ったナイトはダークバイザーを片手に迫る。突進をいなし、剣による斬撃を繰り出す。

 マントの防御力を活かした、纏わりつくようなギリギリの接近。胴体に向かい連続で斬撃を叩きこむ。

 だが、パワーは圧倒的に虎の怪物が上だった。

 振り回した拳がついにはナイトを捉え、その鉤爪にマントごと切り裂かれナイトの分身は砕けて消える。

 

 残るナイトは本体の一人だけ。

 槍を持ったナイトに虎のミラーモンスターが迫る。

 まるで重機関車の様な突撃を前に、ナイトは余裕をもってこう呟く。

 

「十分だ、はぁっ!」

 

 衝突する直前、刹那の瞬間にナイトは虎の突進の進路からその身を逸らす。

 ただ、その手に持ったウイングランサーを残して。

 

『GYAAAAAAA!』

 

 二体のナイトが傷つけたミラーモンスターの装甲。その傷の最も深い場所に、ウイングランサーが深々と突き刺さり虎の胴体を串刺しにする。

 自らの突進の高い威力故に、傷ついた装甲では槍の刺突を止める事が出来なかったのだ。

 

 虎のミラーモンスターは腹を抑え数歩だけよろめくと、ついにはその動きを止め爆発四散する。

 その身から飛び出したエネルギーの塊を、ナイトの契約モンスターであるダークウイングがどこからともなく現れ、捕食する。

 

「やれやれ、今回も楽では無さそうだ」

 

 そう呟くナイトの声は、どこかうんざりとしたものが混じっていた。

 




城戸真司を名乗る男はいったいどこのダ蓮なんだー?

Q.なんで名刺を持っているの?
A.本物が酔い潰れた隙に懐からちょろまかした。

Q.気が付いていないの?
A.多分また落としたと思っている。
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