ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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実録・ライダー玉突き事故ケース2 仮面ライダーvs十二人の仮面ライダー (ダイジェスト版)

 息が苦しい。

 胸が張り裂けそうだ。

 でも、どれだけ苦しくても止まるわけにはいかない。

 止まってしまえば、他の人たちと同じように殺されてしまう!

 

 こんな左右あべこべの世界で殺されるなんて嫌だ!

 走る。両足がもげそうになっても走る。

 薄暗い路地の先から、明かりが漏れている。

 

 あれが出口だ。

 何の根拠もない。だが、直感がそう告げる。

 その直感を疑う事なく、彼女はそこに飛び込んだ。

 

 

 

 

「お前、日本人か?」

 

 街のハンバーガーショップで遅めの昼食をとっていると、唐突に流暢な日本語で話しかけられた。

 ちらりと顔を上げる。そこに居たのはもう老人といって……老人だよな?

 いや、顔は確かにもう老人だ。しわの刻まれた顔や白くなった頭は確かに老人の物だ。だが、その身は鍛え上げられており、歳による衰えを感じさせない。

 そして何よりの特徴は、日本人……いや、日系人かな?

 

 俺はハンバーガーの残りを飲み込むと、その老人に向かい首を縦に振る。

 

「そうですよ」

「あー、やっぱりか。頭を下げる動作なんかは日本人じゃないかと思ったんだ。こんなド田舎にって気になってな」

 

 カラカラと笑う老人に俺は苦笑いを浮かべる。

 まぁ、頭を良く下げるのは日本人の特徴だ。

 

「日本語が流暢ですが、日本にいらしたことがおありで?」

「おう。もうだいぶ前だけどな。仕事で長い事日本にいたんだよ。悪いな、こんな年寄りに付き合わせて」

「いや、別に良いですよ」

 

 まぁ、ちょいと古代遺跡に封じられていた謎の悪魔とされる存在を破壊してきた帰りだ。いや、本当は遺跡の視察だったんだが、案の定暴走してしまい俺が倒す事になってしまった。

 現地の支部に国際空港までの足を出すと言われたのだが、これに関しては丁重に断った。

 四六時中ショッカーの連中に囲まれているのも疲れるし、接待要員まで完備は精神的にきつい。もう身長は170を超えたけど、まだ中学生なんですよ自分……。

 

 そんなわけで、サイクロンヘルとともに、国際空港までの道をのんびりと移動していた。

 その道中、街のハンバーガーショップで昼飯を食べていたらこの爺さんに話しかけられた訳だ。

 

「そう言ってくれると助かるよ。懐かしくなってついね」

「そうなんですか」

 

 老人と話しながら、ふと気がつく。

 この爺さんと俺、周囲から浮いているなーと。

 

 いや、俺たちが東洋人、日本語を話しているからってわけじゃない。

 全体的に周囲の人間が何処か沈みがちなのに、この爺さんと俺だけはそんな空気が無い。

 浮かれている訳じゃないけど、沈んではいないだけで纏う空気は違うものだ。

 

「お爺さん、貴方も旅行者で?」

「おう、そうだよ。仕事を定年で辞めてからあちこちをフラフラとな」

「なるほど」

 

 そんなこんなで雑談をしつつ昼食を終わらせ、俺と爺さんは店を出る。

 最新のモデルに偽装したサイクロンヘルの横に停まっていたごついバイクが爺さんのバイクのようだ。

 ……中々パワフルでファンキーな爺さんである。

 

「お爺さんはこれからどちらに?」

「ああ、古い友人と落ち合う予定でね。NYに帰るつもりだ。お前さんは?」

「俺は空港がある町に。そろそろ日本に帰らなきゃならないんで」

「なるほど」

 

 そんな事を話していると、不意に路地の裏から何かが勢いよく転がり出てくる。

 何事かと振り向く俺と爺さん。転がってきたのが金属製のゴミ箱だと気が付いた直後に、今度は路地裏から女の子が転がり出てくる。

 いや、俺より若干年上か? ハイスクールに通っている、そんな年頃の少女だ。

 茶色い髪に若干茶色い肌……。服装からしてみるとラテン系かな?

 彼女は転がりながら路地から飛び出してくると、慌てて左右を確認し、今度はこちらに向かい駆けてくる。

 

「おいおい、穏やかじゃねえな」

「確かに」

 

 彼女がこちらに駆けてきた理由は明白だ。

 少女を挟んで俺たちの反対側。その向こうから黒づくめにサングラスという、どこの映画の宇宙人だと言いたくなるような男たちが走ってきている。

 さらに、路地からも若干薄汚れてはいるが同じ格好の男たちが出て来た。

 

 要するに、あれに追われているのだ。

 

「今時あんなこてこての格好をしている奴らがいるんですね」

「いや、SPとかはあんな感じだぞ」

 

 あれ、かえって目立つんじゃないのか?

 うちの連中は、ああいうテンプレな服装はさせないよう注意しておこう。

 そんな事を考えていると、黒づくめの一人が懐に手を忍ばせ……。

 

「街中で何を考えている!」

 

 俺はその男に向かって、手早く落ちていた石を拾い上げぶつけた。

 改造人間のパワーによる投石は、男の手に命中する。金属音を立てて、黒光りする拳銃が地面に転がり落ちた。

 

 周囲がざわつく。おそらくは街の住民たちだろう。

 地元のマフィアか何かか?

 逃げてきていた女の子が俺の行動に目を丸くし、続いてこう叫ぶ。

 

「な、何をしているんだよ!? あんたらも逃げるんだ! ノバの連中だよ!」

 

 ん? ノバ?

 うっすら聞き覚えのある名前に眉を顰めつつ、まさかなと思いつつ様子を見ていると、怒りの表情を浮かべた黒服たちがこちらに向かってくる。

 女の子というより、石をぶつけられた俺に対する怒りか?

 

 黒服たちの黒服が変化する。

 黒い色はそのままに、顔まで覆うマスクにろっ骨を思わせる金属製の装飾、左肩を覆う赤いショルダーアーマー……って、おい。

 俺が驚くやら呆れるやらして何かリアクションを起こすより早く、隣の爺さんの行動は早かった。

 

 爺さんはバイクからショットガンを引き抜くと、ワンアクションでためらうことなく発砲する。

 自分たちはいきなり拳銃を引き抜きながらも、撃たれるとはつゆとも思っていなかったのだろう。まともに銃撃を受けて戦闘員たちが吹き飛んで倒れる。

 

「じ、爺さん?」

「おい、お前ら逃げるぞ! こいつらショッカーだ!」

 

 この爺さんショッカー知っているぞ!? いや、知っていればいきなり発砲もわかるが、過激だな、おい。

 いったい何者だ、この爺さん?

 

「いや、ショッカーって何だよ!? ノバファミリーの連中だよ!?」

 

 あ、女の子も混乱している。

 まぁ、爺さんがいきなりショットガンをぶっ放せば驚くか。

 実際俺も驚いている。

 

「いや、ショッカーだろう?」

「ショッカーじゃないですよ、多分。ノバショッカーだ、こいつら」

 

 というか、ノバショッカーの戦闘員だ、こいつら。

 うわー、本郷さんと仮面ライダーゴーストに首領格を倒されて消えたって聞いていたが、まだ残党がいたんだ。

 

「おいおい、お前ショッカーを知っているのかよ」

「お爺さんこそ、何者なんですか?」

「あ、あんたらこの状況で何を余裕ぶっているんだよ!」

 

 お互いの正体を怪しみ互いをまじまじと見る俺と爺さん。

 そして逃げていたら妙な爺さんと俺と遭遇し、ついには逃げそびれてしまった女の子。

 そして正体を現したノバショッカー戦闘員が俺たちを包囲しようと動き始める。

 

「まあ、いい。こりゃ来そうだ。合図をしたらお前たちは逃げて隣町まで行け。そこに頼りになる奴がいるからな」

 

 爺さんが警戒心を上げて俺と女の子に囁く。

 戦闘員たちが包囲する動きには見覚えがある。この後来るのが本命だ。

 そう考えていると、案の定包囲網の一部が開き、だらしのない恰好と肩にタトゥーをした一目見てチンピラとわかる男が出現した。

 

「やっと追い詰めたぜ、小娘。まったく、ノルマっつーものがあるのに逃げやがって」

 

 何のノルマだろうか。聞いたところで腹が立つだけなのは確実だろう。

 いつの間にか周囲から群衆が消え、あたりには俺たちだけになっている。

 

 というか、こんな白昼堂々と警察は何をやっているの?

 

「あんたらが盛りの付いた犬畜生で、このスタイル抜群の嬢ちゃんを追いかけまわしていたって事で良いのかな?」

 

 自分に注目を集める為だろう、爺さんが嘲笑めいた言葉をチンピラに投げかける。

 そしてその言葉の効果は覿面だった。

 

「あんだ、ジジイ。てめぇ! ナめているのか!?」

「ナめようとしたのはお前らだろう。盛りの付いた犬みたいにかわいこちゃんをハァハァと。まったく、ショッカーも落ちたもんだ」

 

 風評被害である。

 どう罵られようとかまわないと思うが、こればかりはさすがにちょっと物を申したい。

 あとこいつらはノバショッカー。うちから出て行った連中の残党です。

 

「てめぇ、死んだぞ。半殺しにしてその上で生贄に使ってやるよ」

「生贄?」

 

 ピクリと、頬が動く。

 分かってはいたが碌な事は考えていないようだ。

 

「はっ、若造が吠える!」

「ほう、これを見ても同じことが言えるかな、ジジイ!」

 

 そう言うと、チンピラは懐から赤い手帳大のケースを取り出す。

 その表面には金色の何やら動物をかたどったレリーフが刻まれている。

 

「い、いけない! 爺さん、逃げるんだ!」

 

 その一見すれば人畜無害なケースを見て、女の子が血相を変える。

 それはそうだろう。あれはどんな近代兵器よりも危険な代物だ。

 

 女子の焦りをよそに男がデッキを取り出した瞬間、腰に機械仕掛けのバックルが装着された。

 男は腕を振り上げ、ベルトのバックルにカードデッキを装着する。

 

「変身!」

 

 影法師が男の周りを舞い、その身に吸い込まれていく。

 次の瞬間、赤い爬虫類を思わせる鎧の戦士へと男の姿は変わっていた。

 

「改造人間じゃない?」

 

 あ、ショッカーは知っていても最近の仮面ライダーは知らんのか、この爺さん?

 いや、ミラーライダーの出現は最近って程最近でもないけど。

 

「仮面ライダーですよ、一応」

 

 俺は爺さんと女の子をかばうために一歩前に踏み出しながら、あの存在が何かを口にする。

 まぁ、あれを仮面ライダーとは言いたくないパチモンだが、分類上、あるいはシステム上は仮面ライダーと呼ばれる存在なので仕方がない。

 名前を付けた奴は、もうこの世にいないだろうしね。

 

「仮面ライダーだぁ!? ふざけてんのか! 仮面ライダーってのはな、誰でも名乗っていい名前じゃねえだろう」

 

 爺さん、仮面ライダーを知っているのか。

 ほんと何者だ、この爺さん。

 

「全くですよ。ところで、そこの三下」

「なんだ、クソガキ。てめえもジジイと同じに半殺しに……」

「貴様の相手は俺がしてやる。痛い目にあいたくなければ、何を企んでいるかを素直に白状しろ」

 

 俺の腰に命のベルトが出現する。

 周囲からありとあらゆるエネルギーを吸収し、中央の風車が激しく回転を始めた。

 全身に駆け巡るナノマシンが俺の意思と膨大なエネルギーに反応し、肉体の強化を開始する。

 

「おい、お前。そ、そのベルトは?」

 

 爺さんが何かを言うが、そんな言葉を無視をして俺は腕を大きく振り上げる。

 そして、もう一つの姿を呼び起こすキーワードを叫ぶ。

 

「ライダー変身!」

 

 ナノマシンが反応し漆黒の強化戦闘服を空中に生み出す。強化戦闘服は意思を持つかのように、我が身を包んでいく。

 頭部を暗黒のヘルメットが覆い、その赤い複眼と二本のアンテナが鈍く輝く。

 大陸に吹き荒れる風を受け、首に巻かれた深紅のマフラーが大きくたなびいた。

 

 そして俺は俺となる。

 ショッカーライダーアインロールド。それが今の俺の名だ。

 

 

 

 俺は異国の闇で秘かに進行していた、ミラーワールドを舞台とする陰謀に立ち向かう事になる。

 敵は11人のミラーワールドライダー。

 そして、戦いの舞台はニューヨークの摩天楼に移っていく。

 

 

 

「ライダーキック!」

「なっ!? ぎゃああああああ!」

 

 ライダーキック勝負は俺の勝ちであった。

 右足を砕かれたパチモン龍騎が橋から転落、川面に落ちて行く。

 それを追いミラーモンスターが水面に向かうが……流石に助けてやる気も余裕もない。

 

「くくくくく、最後の邪魔者も消えたか。ありがとうよ、仮面ライダーよ」

「節穴が……。自分は助かると思っているのか?」

「この数を前に、良く吠えるわ!」

 

 パチモン龍騎と俺の戦いを上空から高みの見物をしていたパチモンナイト……いや、クルセイダーの余裕ぶった声が耳に障る。

 もっとも、奴が10人もの仲間を倒された直後だというのに余裕を崩さないのにも訳がある。

 

 なにせ、奴の背後から続々とニューヨークの街で破壊の限りを尽くしていた百を超える数の量産型ライダーどもが降りてきているのだ。

 いやさ、10人のライダーを倒したと思ったらこれは無いだろう。

 いや、もうまじで勘弁してくれ。ヘンリーのおっさんに頼み込んで出してもらったGOD機関の連中も市民の避難誘導に協力しているが、なしてうちらが街を守ってライダーが破壊の限りを尽くしているのよ?

 もう何が何だかよくわからないよ!

 

『お兄ちゃん聞こえる?』

『聞こえているよ、もうすぐ聞こえなくなりそうだけどな!』 

 

 ミカの可愛らしい声ですら、ほんとこの状況では慰めにもなりはしない。

 なにせ全身満身創痍。強化戦闘服はあちこちがほころび、複眼にもひびが入っている。

 いやぁ、ここまでダメージを負ったのはいつ以来だ?

 

『というか、お前何処にいるんだ? ヘリに乗っているのか!?』

 

 いや、この状況で出て来たのか、あいつ?

 戦闘能力皆無なんだからヘンリーのおっさんと一緒に奥にいろよ!

 

『仕方ないでしょ! 観測機器が動いていないんだから! 衛星写真もほぼ駄目なの。それよりも、あの奥、最後のコアミラーの解析データを送るわ!』

 

 ミカの分析データが視界の片隅に映る。

 え? ちょっとまって!?

 

『次元が歪んでいるからまっすぐ行っても駄目よ。あいつらの一番集まっている場所の奥、そこに移動用のミラーがあるからそこに突っ込んで!』

『うわー、最悪じゃねえか』

『大丈夫だ!』

 

 俺とミカの会話に割り込んできたのは滝の爺さんだ。

 バックレた指揮官に替わり、警察の指揮をしていたはずなのに。

 いや、通信用のインカムは渡していたけど、何が大丈夫なんだ?

 

『大丈夫だ、最高の援軍が間に合った!』

 

 え? 何言っているんだ? この爺さん。

 この状況で援軍って? ニューヨークの街はミラーワールドにより半ば封じられているんだぞ?

 ボケたか?

 

『お前、この数日で遠慮が無くなったな。それより、来るぞ!』

 

 その音は、戦いの喧騒を容易に切り裂き、俺の耳に届く。

 夜の闇を切り裂き、二台のマシンが大地を駆ける。

 

「行くぞ、一文字!」

「おう、本郷!」

 

 迫りくる、蜻蛉の羽根を生やした量産型ライダーたちも、伝説の二人を止める事は出来ない。

 ただ真っ直ぐ走っているだけのマシンに触れるや否や、その衝撃の前に吹き飛ばされていく。

 そして、二人の戦士がマシンから跳躍する。

 

「いくぞ! ライダー!」

「ダブルキイイイイイック!」

 

 閃光がブルックリン橋に煌めく。

 二人の通り道にいた量産型ライダーどもが弾き飛ばされ、爆散し、水の中に消えて行く。

 そして、二人は俺の少し前方に着陸をした。

 

「よく頑張ったな、誠太郎!」

「よっ、久しぶり」

 

 力強く、許せぬ悪を見据えながら二人のライダーが俺に声をかける。

 優しく、それでいて頼もしい本郷さん。

 どこか軽く、それでいてこちらを気遣う一文字さん。

 

「本郷さん……。一文字さん……。なんでここに」

 

 もう会ってはいけない。

 今度会えば敵になる。そう考えていた人たちの出現に、俺は呆然と呟く。

 

「決まっている。助けを求める声があれば、俺たちはどこにでもやってくる」

「ま、実際は滝と会うために近くにいたんだけどな。間に合って良かったよ」

 

 二人の頼もしすぎる声に、泣きそうになる。

 絶対負けない。そう確信する。

 そう、滝の爺さんが言う通り、この地獄の戦場に最強の援軍が到着したのであった。

 




たぶん量産型ミラーワールドライダーの契約モンスターはレイドラグーン
つまり、世界は滅亡する!(しませんでした)

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