ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
『久しぶりだな、秋山蓮』
唐突に鳴り響いた携帯電話を取ってみれば、そこから響いたのは低い響きの、おそらくは壮年男性の声であった。
「何の用だ、ショッカー?」
城戸真司を名乗る者の表向きの職業はフリーターだ。
これはある意味間違ってはいないが正しくない。正確に言えばライダーの力を使ったフリーの何でも屋、もしくは傭兵と言ったところだろう。
『我々の存在に気が付いていたか。流石は仮面ライダーナイトだ』
感嘆の声、もしくは小馬鹿にしたかのような声を上げる男に城戸真司を名乗る者の不快感は増す。
彼が工業地帯に流れてきたミラーモンスター退治の仕事をブローカーから請け負ったのはおよそ数か月前の出来事である。
そしてその時、代理人を名乗る女が持ってきた通信機越しに話した真の依頼人がこの男であった。
報酬自体は間違いなく支払われ、工業地帯にいた大半の人間はショッカーの事など知らぬ一般人であった。ミラーモンスター自体も近隣で発生したライダーバトルから偶然流れて来ただけで事件性はほぼ無い。
ただ、この事件の裏ではショッカーによる兵器密造の計画が進んでいた。
その主導をしたとされているのが、『名を失った黒衣の処刑人』と呼ばれる存在だ。
処刑人の噂が流れ始めたのは、およそ3年前。
ライダーに似た姿を持つと言われる処刑人は、わずか数カ月の間にショッカーに逆らう者を次々と処刑していったという。
その後は暗殺の一線を退き大幹部の側近を務め、現在はショッカーの支配的な立場にいると目されている。
冷酷無比であり狡猾。兵器密売も処刑人の手による作戦と言われ、途上国を中心とした不安定な地域に強力なライダー兵器がばらまかれたという。
城戸真司を名乗る者は他の仮面ライダーたちが事件を嗅ぎつけやってこないよう先手を打つために、都合の良いライダーとして体よく使われたわけだ。
今思い出しても不快な一件である。
おそらくはこの電話口の男は処刑人の手の者、あるいは本人かもしれない。
不快感を隠さない城戸真司を名乗る者の事などお構いなしに、ショッカーの男は一方的に用件を切り出す。
『君に仕事を依頼したい』
「他を当たれ」
にべもなく断る城戸真司を名乗る男だが、電話の向こうの男は話を続ける。
『依頼内容はライダーバトルの早期終結及び被害軽減。場所は山梨県……』
そして、ショッカーの男が口にした地名に、城戸真司を名乗る者は目を見開く。
なにせ、そこはすでに自分がいる土地であり、自分が介入しようとしているライダーバトルだ。
確かにライダーバトルなどそう多く発生する事件ではない。とはいえ、自分に連絡を入れて来たのは偶然ではあるまい。
「まて、貴様は何を企んでいる!?」
聞いてもどうせ答えないだろう。
そう考えつつも城戸真司を名乗る者はショッカーの男に問いかける。
だが、意外な事にショッカーの男は素直に問いかけに対して素直に答えた。
『私はライダーバトルによる被害を望まない。そして、ルートは不明だが王蛇……浅倉威がライダーバトルの開催を嗅ぎつけた』
「なっ!?」
『奴がいる以上、被害拡大は必至。そこで現地にいる君に早期終結を依頼したい』
浅倉威。その名前を聞き城戸真司を名乗る者は絶句をする。
仮面ライダー王蛇に変身する殺人鬼とは、因縁浅からぬ仲だ。神崎士郎のライダーバトルオリジンで敵として戦い、その後に起きた幾多の世界改変を潜り抜けた現在でも敵対関係にある。
あの危険で無秩序な男がこの町にいる。
なるほど、ショッカーにとっても危険極まりない男を自分に排除をさせようというのか。
『そして、その地には城戸真司も滞在をしている』
さらに、とどめとばかりに追加情報をショッカーの男は出してくる。
仮面ライダー龍騎の変身者。やはりライダーバトルオリジンからの長い付き合いの戦友、もしくは腐れ縁の男だ。
なんだってあの馬鹿が此処にいるんだ!?
記者の仕事はどうした! フラフラするのにもほどがあるだろう!
叫びたい気持ちをぐっとこらえる城戸真司の名前を勝手に使っていた男、秋山蓮であった。
※※※※※
秋山蓮を見つけ出し連絡を入れてから一晩が経った。
この地で発生しているライダーバトルへの介入を決めた俺がまず最初にやった事は情報収集だ。
ショッカーでは諜報部が勝手にやってくれたのだが、今は自分でやるしかない。なんか頼めばすっ飛んできそうな奴が何人か思いつくが、流石に今の身分で呼ぶわけにはいかなかった。
もっとも、ショッカーが使えなくても都市部の情報収集に関しては俺には力強い相棒がいる。
サイクロンヘルに頼んで町の防犯カメラ等の情報を洗い出した。今は防犯カメラもネットワークを使う時代なものだから、都市部にいる限りサイクロンヘルの追跡から逃れる事は困難だ。
そんな中、真っ先に網に引っかかったのが町に入る浅倉威と秋山蓮の二人だった。
「ったく、なんだって面汚しが来るんだよ」
浅倉威、趣味の悪い蛇柄のジャケットが特徴的な、仮面ライダー王蛇の変身者だ。
ライダーバトルオリジンの参加者の一人、イライラすると言った余人には理解しがたい衝動で殺人を起こす危険な奴。もっとも、世界改変の影響で人格や衝動の一部を封じられたようで、この世界では長らくケチなチンピラに過ぎなかった。
……そこまでやるなら真人間に更生させとけよ。
それはともかく、ケチなチンピラだった浅倉だが財団Xがライダーバトルを復活させた結果、記憶を取り戻し元の殺人鬼に逆戻り。現在は各地で発生しているライダーバトルや超常の戦いに乱入しては敵味方善悪お構いなしに荒らしまわるという迷惑極まりない行為を繰り返している。
……なんでこう、余計な真似をするかな、財団X。
不幸中の幸いは、以前と違い一般人の被害がほぼ無い事だった。
別に更生した訳では無く、興味が無いだけなのだ。勝つ為なら躊躇なく巻き込む、そういう奴である。
実際あの面汚し、テオドラと一緒にいた子供を躊躇なく巻き込んだしな。
ちなみに、俺はテオドラ救出の際にこいつと戦っている。その時はミラーワールドが先に崩壊して、決着はつかずじまいだった。
「まぁ、秋山蓮もいたのは助かったがな」
仮面ライダーナイト、秋山蓮。こちらもライダーバトルオリジンの参加者であり、恋人を救うために命を賭してライダーバトルを戦い抜いた最終勝利者。
一見クールに見えるが、ミラーモンスターに襲われる人を見過ごせない熱血漢。城戸真司と奇妙な友情を築いていた。
歴史改変が行われたこの世界においては、こちらの業界でフリーの何でも屋と言った立ち位置だ。
京都の件で手が離せなかった時にブローカーを通してミラーモンスター退治の依頼をした事がある。うちの息がかかった工業地帯をミラーモンスターが狩場にしたのだ。
そして、この依頼は成功だった。
邪魔なミラーモンスターが早急に排除されたおかげで、途上国向けの海賊版G3ユニットは予定通りに量産が完了した。おかげで、しっかりと稼がせてもらった。
そんな経緯もあり依頼という形で連絡を取ってみたが、正直依頼は受けてもらえなくても良かった。
要は秋山蓮に城戸さんと浅倉の存在を伝える事が出来れば目的は達成なのだ。浅倉がいると知れば警戒は緩めないだろうし、城戸さんには向こうから接触を取るだろう。
悪党に関わったのが運の尽きと、今回俺の為にも利用させてもらう事にする。
「しかし、どうすっかなぁ……」
ただ、これはあくまで秋山さんと城戸さん、そして筑波さんに警戒を促すための苦肉の策に過ぎない。
あの面汚しがいる上に、現実世界では長時間生存できないはずのミラーモンスターが積極的に出てきている状態だ。
通常、現実世界では長時間生きられないミラーモンスターは、基本的には獲物をミラーワールドに連れ込んでから捕食する。失敗した場合は一度ミラーワールドに戻り、次の機会をうかがう習性がある。
ところが今回出現したミラーモンスターは引き込みが失敗するや否や、こちらの世界に姿を現した。
実のところ同種である契約モンスターは戦闘補助の為にある程度はこちらの世界に滞在するので、主催者の調整によっては一戦闘分の時間程度は滞在可能なのだろう。
脳裏に以前の事件で見た摩天楼の間を飛び交うミラーモンスターがよぎるが、俺はその記憶を振り払う。
あの時は色々と幸運が重なって何とかなったが、同じ奇跡が起こるとは思っていない。なにより、あれはまだ最終段階じゃないしなぁ……。
そんな事を考えていると、不意に誰かが部屋の呼び鈴を鳴らす。
「はーい」
何事かなと思い入口に行ってみると、従業員らしい眼鏡の男性がそこにいた。
何やら書類のようなものを持っているが?
「どうかしましたか?」
「お休み中すいません。チェックインの時にカードを書いてもらうのを忘れてまして……」
「ああ、しかたありませんよ。そういえば、大丈夫でしたか?」
俺がチェックインをするときは、意識を失った葵さん関係のドタバタで大変であった。
書類の抜けがあっても仕方がない。
それよりも気になったのは葵さんが大丈夫であったかどうかだ。
「ええ、ありがとうございます。お医者さんが言うには心労が溜まっただけだと。今日は朝からぴんぴんしています。城戸さんから聞きました。改めてお礼はさせていただきますが、葵さんを助けていただいて本当にありがとうございました」
「いや、当然の事をしたまでですから……。このお仕事長いんですか?」
「あ、俺はバイトですよ。まぁ、死んだ祖父がこちらの厨房でお世話になっていた関係で長いと言えば長いんですけど」
色々と堂に入っていたから社員さんかと思っていたら、アルバイトの人だったか。
そして幼い頃から家族ぐるみの付き合いをしていたってところか。
「あれ? 学生ですか?」
「ええ、普段は東京の大学に。あなたは……」
「俺は高校生ですよ」
「えっ?」
「えっ?」
「ああ、すいません。あんなバイクに乗っていたからてっきり」
サイクロンヘルだが現在は高校生が乗り回すにしては割とお高いバイクに偽装している。
きっと大学生ぐらいだと考えてたのだろう。
「人から譲ってもらった廃車寸前だったのを自分で直したんです。あ、サインは書きました」
「ああ、なるほど。ありがとうございます」
人から譲ってもらったというのは嘘だが、廃車寸前だったのは事実だ。
廃棄物倉庫に転がっていた偽サイクロン号と破棄されていたロボットのAIから、サイクロンヘルをでっち上げたのだ。
書類のチェックを終えた彼と別れると、窓の外に一台のバイクが出て行く姿が見えた。
あれは城戸さんのバイクだ。となると、思ったより早く秋山蓮が動いたのかもしれない。
それを見届けつつ、俺は部屋に戻り今後のプランを改めて練る事にした。
【悲報】主人公、強力なライダー兵器を密造、格安でばらまいていた!【ショッカーライダーは悪党】
主人公は悪のショッカーライダーですぞ!
違法コピーをしたライダー兵器をばら撒く悪事をやってますぞ!
ちょっと販売相手は自力で対怪人用装備を揃えられない人々だってぐらいです!