ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
1日にスケジュール詰め込みすぎました。
実のところ、介入プランを考えつつもやる事が無いのが実情だ。
さすがに筑波さんの目を盗んで暗躍するのは難しいし、純粋に心配している相手を前に強引に抜け出すのもアレだ。
いや、それを言うならショッカーライダーが何で仮面ライダーの保護下にいるんだよという話になるが、もう成り行きというかなんだ。こういう時に強引に突破できるアクの強さは俺には無い。
結局の所、もめ事を起こす気が無い以上は流れに身を任せるしかないのが実情だ。
そんな中、サイクロンヘルの苦情に屈した……もとい、不用心なので積みっぱなしだった荷物を降ろすために駐輪場に向かう。
それなりに大荷物なので積降は最低限に済ませたいのだが……。ここは奥だし、駄目?
駄目かぁ……。
渋々と荷物を降ろしていると、宿の駐車道の入り口から一台の車が入ってくる。
何とはなしに手を休めて顔を上げてみると、入ってきたのは県警のパトカーだ。
そういやミラーモンスターに襲われたし、葵さんのご家族が通報したのかな?
そんな事を考え見ているとパトカーから制服姿の警察官と、私服の警官が降りてくる。
その私服警官と視線が合う。
そしてその瞬間、その警官は思わず視線を逸らす。
視線は明後日をさまよい、遠目でもわかるほど冷や汗がだらだら流れている。
人を見ただけでその態度とは失礼な奴だな、蟹。
「須藤刑事、どうかいたしましたか? あの少年がなにか?」
「あ、いや、その、なんでもない!」
「はぁ?」
いや、その小鹿のように震える足で何でもないは無理でしょう。
黙って捕まってりゃよかったものの、抵抗してきたから半殺しにしたうえで装甲が砕けるか砕けないかのギリギリのラインで延々と殴り続けたのがよほどトラウマなのか?
まったく、人殺しや人食いはさせていなかった上に一応は巻き込まれて反逆の機会を伺っていたって事で、温情与えてあげただろう。
だいたい、そんな事ならスリルを求めてせこい小遣い稼ぎをやらなきゃよかったろうに。
ああ、そうそう。パトカーから降りて来た私服刑事は須藤雅史という男だ。
またの名を蟹、もとい、仮面ライダーシザース。
こいつもライダーバトルオリジンの参加者で、消えた歴史では殺人も辞さない悪徳警官という奴だった。
紆余曲折の末にライダーバトルに破れ、自らの契約モンスターに食われて死んだはずだ。
だが、おそらくはあった世界書き換えの末生き返り、記憶と人格は矯正され長らく殺しはやらないけど、それはそれとしてやる事はやっている不良刑事として生きてきた。
だから、そこまでやるなら真人間にしておけよ……。
ところがどっこい、この不良警官。何の因果かデッキに触れ、オリジンの頃の記憶と人格、そしてライダーとしての力と契約を取り戻してしまう。
とはいえ、前述したとおりこいつの末路は契約モンスターに生きたまま食われるという凄惨極まりない物であった。
記憶と力を取り戻したとはいえ、死因がトラウマとなり殺人上等の悪徳警官に戻る気も湧かず、ライダーの力も使う気は無かったようだ。
しかし、ミラーワールド系ライダーは契約モンスターに餌を食わせ続けなければ自分が喰われる。
泣く泣く鏡の世界に潜り、雑魚狩りをしてはボルキャンサーに餌を与え続けていた。
そんな中、運悪くパチモンライダーが率いる犯罪者組織に目を付けられ、色々あって協力する事を余儀なくされる。
とはいえ、性根は腐っていても優秀な刑事。
何とか反撃の機会を伺い、全員を一網打尽にする目途がついたところで……うん、俺が来たんだ。
うちのシマでミラーワールドを使い好き勝手に悪事を働いていた連中はボコって出荷したのだが、こいつに関しては巻き込まれただけなので見逃す事にしたのだ。
ちょっと抵抗してきたのでボルキャンサー共々ボコってトラウマを植え付けてしまったのは、尊い犠牲だった。
蟹なのが悪い、蟹なのが。
詫びという訳では無いが、超常事件の情報を流してこいつの功績になるよう手を回したり、餌のミラーモンスターを提供したり、警察の情報を買い取ったりと一時期ギブアンドテイクな関係を持っていた。
ちょっとやりすぎてライダーである事がバレて超常犯罪捜査課にドナドナされてしまったのは、正直すまないと思っている。
まぁ、あの最前線部署だとせこい小遣い稼ぎは二度と出来ないだろう。ライダーの力で悪さをしたら絶望がゴールになるかクロックアップからのライダーキックで倒される事は間違いなしだ。
今後は心を入れ替えて真面目に生きるんだよと笑顔で放流したものだ。
不良警官に更生の機会を与えたのだから、俺は間違っていない。
「あれ? 須藤さんじゃないですか?」
俺は人畜無害な少年のふりをして、須藤に話しかける。
その目がこっちに来るなと主張しているが、そんなの知った事じゃない。
いやー、丁度良かった。スカイライダーと龍騎がいるのでどうやって動こうかと考えていたところだ。俺が自由になるまで働いてもらおう。
こいつの一番好きな所は、いくらこき使っても良心が一切痛まない所だ。たぶん、ショッカーの連中より気安く使える。
だって、反逆する気満々なんだもの。
まぁ、俺に何かしたら不正の証拠がわんさか出てくるようになっているんだけどな。
「い、いやー、星太郎君。ひさしぶり」
流石に逃げられないと悟ったのか挨拶に答えるものの、表情が『またお前が関わっているのか!?』と言っている。
失礼な、俺だってなんだかよくわからないが巻き込まれただけだ。
「お久しぶりです。どうしたんですか、こんな所で?」
「いや、怪物出現の通報を受けてね」
ん? おかしくないか。
ミラーモンスターに襲われたのは昨日の話だ。通報したにしても、一晩で飛んでくるというのはちょいとおかしかった。
こいつの所属は超常犯罪捜査一課。警視庁所属で県警の人間ではない。いくらなんでも早すぎる。
この地で何かあって、既にこっちにいたって事か。
そういや筑波さんがいた理由も不明だったな。
まぁ、今の俺はいたいけな一般人だ。
目に『後で聞きに行くからな』という意思を籠め、逆に須藤は『来るんじゃねえ!』と表情が物語っている。
お前の意思なんぞ知らんがな。
「あの、お客さん? そっちの警察の人と知り合いなんですか?」
俺たちが心温まる会話をしていると、宿の方から従業員の青年、たしか集夢さんが出てきて、俺に聞いてくる。
振り向いてみると、葵さんとそのお母さん、それに筑波さんも中から出てきていた。
葵さん、意識を取り戻したんだ。
「ええ、以前変な連中に絡まれている時に東京で助けてもらったことがありまして」
『嘘つくんじゃねえ』と念を飛ばしてくる須藤をガン無視し、俺は説明する。
なお、嘘は言っていない。
こいつが捜査一課に移動になったその後も、処分が面倒な悪党を警察に出荷する際の窓口として、何度も助けられている。
別に対価を払っているわけでも、払われているわけでも無いので善意の市民による通報の範疇だ。
ちょっと量が多いので上から怪しまれているらしいが、その程度自分で何とかするだろう。
「ああ、すいません。私は警視庁超常犯罪捜査一課の須藤と申します。昨日昼頃怪物に襲われたと聞き話を伺いに来た次第なのですが」
一緒に来た警官共々身分証を見せる。
とりあえず俺の相手をするよりはましだと考えたのだろう。
「あ、はい。すいません。立ち話も何なので中へ」
身分証を確認したお母さんが須藤を家の中に案内しようとする。
まぁ、話は後にでも聞けばいい。
俺はバイクの荷物を降ろし立ち去ろうと。
「星太郎君? どこに行くの?」
去ろうとした俺を呼び止めたのは葵さんであった。
「え? いや、俺には関係が無さそうでしたし……」
「君も襲われた一人だろう。状況の説明に立ち会ってくれないかな?」
「いや、でも……」
葵さんの言葉に、筑波さんも頷く。
やべ、確かに客観的に見ればその通りだ。
しかし、俺がいるのもなんだしなぁ……。何とか逃れて状況の整理を。
「ああ、彼も襲われたんですか。なら話を聞かないと!」
あ、須藤、てめぇ!
俺が嫌がっているのを見て、嫌がらせが出来ると考えたな!
その微妙な笑みが内心を物語っている。
あとで覚えていろよ。
キーン……キーン……キーン……
俺と須藤が心温まるやり取りをしていると、不意に周囲に響くのは不吉なる金属音。
ちょっとまて、昨日に襲撃されたばかりだぞ!?
なんでこんな頻繁に襲撃が起こる?
「え? 何!?」
「まさか!?」
そのあまりにも唐突な音に葵さんとそのお母さんは狼狽え、男性陣は周囲を警戒し始める。
いや、須藤が連れてきた警官も狼狽えてはいるが、こればかりは仕方がない。
しかし、どこからくる?
くそ、街中では反射するものが多くてどこから来るのかを見極めるのは、改造人間である筑波さんや俺でも難しい。
というか、これはもう運の次元だ。
俺たちが緊張する中、唐突にパトカーのフロントガラスが波打つ。
次の瞬間、白い影が鏡の向こうから飛び出し、警官に組み付く。
「うわああああああああっ!?」
『ブ ペブ』
警官も恐怖の悲鳴を上げながらもなんとか引きはがそうと藻掻くが、大の男が暴れてもミラーモンスターはびくともしない。
元々パワーが違うのだ。捕まった状態から素人が暴れたところで同にもならない。
組み付かれた警官がじりじりとフロントガラスに引きずり込まれていく。
「させるかっ! たぁっ!」
そうはさせないと筑波さんが跳躍し、白いミラーモンスターに蹴りかかる。
勢いをつけたキックは、人間の体重であってもミラーモンスターの体勢を崩すのに十分な威力がある。
白いミラーモンスターはよろめき、警官を取りこぼす。
「こっちだ!」
その隙を見逃さず、須藤が警官を引っ張り出す。
這う這うの体で白いミラーモンスターの舌から警官は抜け出す。
この状況に安堵する二人だが、それを見ていた俺はそれどころでは無かった。
「すぐそこから離れるんだ! 筑波さん! 須藤!」
俺の叫びは、少しだけ遅かった。
別の鏡面から出現した複数の白いミラーモンスターが筑波さんと須藤の背後から襲い掛かる。
勢いをつけて飛びついたミラーモンスターたちは、そのまま鏡の向こうに二人を引きずり込む。
「しまった!?」
「そ、そんな! くそっ!?」
慌てる二人だが、多勢に無勢。さらに言えば、警官を助けてすぐであった為に体勢が崩れている。
そのまま彼らの姿は鏡の向こうへと消えて行く。
「つ、筑波さん!?」
集夢さんが叫ぶが、もう彼らの姿は見えない。
あの程度で何とかなるようなタマではないだろうが、この状況に俺はぞっとする。
分断された。だが、これはまだ何とかなる。
不意を突かれたとはいえ筑波さんが、スカイライダーがあの程度で何とかなるとは考えられない。
須藤もついでに連れていかれたが、大丈夫だろう、多分。
しかし、どこの馬鹿があの現れてはいけないミラーモンスターを操っているんだ?
あれはそこまで知性は高くない。仲間を囮に不意打ちぐらいはするだろうが、ピンポイントに筑波さんを狙って攫うなどの知恵は回らないだろう。
背後に人間がいると見て間違いない。
だが、前述したとおりあれは出現してはいけないミラーモンスターだ。
あの白いミラーモンスターが最終形態に成長した時、世界が終わる。
いや、この世界は割とご無体な王様とか神様とか大首領もいるので何とかなるかもしれないが、天文学的な被害が出る事は間違いがない。
「きゃあああああっ!」
俺が一瞬呆然とした瞬間にも、事態は進んでいく。
窓ガラスやカーブミラーを通って白いミラーモンスター、シアゴーストが次々にこちらの世界に姿を現す。
奴らの狙いは、葵さん?
一斉に口に力がこもり、何かを吐き出す姿勢となる。
「葵さん、危ない!」
集夢さんが葵さんをかばう為、その身を投げ出し彼女たちに覆いかぶさる。
とはいえ数が数だ。彼が盾になったとてどうにもなるまい。
変身している暇はない。
俺は着ていたサマージャケットを引きちぎると、間に立つとぼろ雑巾となった服を全力で振り回す。
飛んで来た粘着性の糸を、服の残骸で叩き落していく。
くそ、割と高かったんだぞ、これ!
「大丈夫ですか! 貴方たちは下がっていて! 俺が何とかします!」
「何を馬鹿な事を言っているんだ!」
「星太郎君!?」
内心で文句を言いつつも、腰のベルトに力を籠める。
もはや隠れている余裕はない。
「えっ!? それって!?」
俺の背後で、誰かの驚きの声が聞こえてくるが、それにこたえている余裕はない。
命のベルトが回転を始める。
周囲からありとあらゆるエネルギーを汲み上げ、全身のナノマシンが活性化を始めた。
「ライダー変身!」
腕を振り上げ、回転させ、自らを切り替える。
四肢に力がみなぎり、全身を膨大なエネルギーが駆け巡る。
空中に出現した黒い強化戦闘服が、俺の身体を包んでいく。
頭部を赤い複眼を備えたヘルメットが覆い、首に巻いた深紅のマフラーが風を受けたなびく。
「そんな……」
そして、アインロールドと呼ばれる存在に俺はなる。
「これ以上はさせん! いくぞ!」
そのまま跳躍し、シアゴーストの一体に狙いを定める。
拳に赤いエネルギーが収束し、輝き始める。
「ライダーパンチ!」
必殺のパンチがシアゴーストの頭部を砕く。
それなりの硬さはあったが、俺の破壊力に耐えるほどの物ではない。
ミラーモンスターの頭部はあっさりとはじけ飛び、頭を失った胴体が塵と消えながら仰向けに倒れる。
「あああああっ!?」
「あいつが……見つけた」
左右から二体のシアゴーストが腕を振り上げ襲い掛かってくる。
だが、その動きは緩慢で遅い。
俺はバックステップで連中の突撃を躱すと、脚部に力を籠める。
回し蹴りで二体まとめて弾き飛ばすと、地面を蹴り上げそのうちの一体に追いつく。
そのまま腕を掴むと、片足を地面にめり込ませながら回転し飛ぶ方向を調整する。
「ライダースイング!」
勢いを殺さず、シアゴ―スを群れの真ん中に投げつけた。
超高速で飛んで来た仲間を受け止める事も避ける事も出来ず、数体のシアゴーストがまとめて吹き飛んだ。
倒れたシアゴーストが何とか起き上がろうと藻掻くが、その隙を見逃す俺ではない。
腰を深く落とし、天高く跳躍する。
空中でバク転をすると、右足にエネルギーを集中させた。
「まとめて消し飛ばす! ライダーキック!」
赤い輝きと共に、俺は空中を突き進む。
その衝撃波とエネルギーの奔流に触れたシアゴーストたちが肉体を崩壊させながら再び吹き飛ぶ。
『ブ ペ!?』
最後に中心にいたひときわ大きな一体を蹴り砕き、俺は再度空中をバク転し、地面に降り立つ。
それと同時に、余波で吹き飛んだシアゴーストたちも次々と爆発し、粉々に砕け散って虚空に消えて行く。
よし、とりあえずはこれで……。
こちらに出てきたシアゴーストの全滅を確認した俺が安堵の息を吐こうとしたその瞬間だった。
センサーが反応し、背後からの攻撃を検知する。
咄嗟に振り返りながら、飛んで来た砲弾を腕でガード、空に向かい弾き飛ばす。
「なんだ!? って、従業員さん!?」
そう、俺を攻撃したのは眼鏡の従業員さんであった。
彼は手に銃のようなものを持ち、こちらを憎悪の籠った視線で睨みつけている。
「見つけたぞ、ようやく……」
「あ、集夢くん!? あ、貴方まで!?」
葵さんが困惑の声を上げる。
彼の腰にはいつの間にかベルトのバックルが出現した。
彼は銃のようなものから黒いデッキを取り出すと、腰のベルトに装填した。
「変身」
集夢さんの周囲に鏡像が出現する。
その鏡の像は周囲を舞い、彼の身体に収束する。
歯車がむき出しの巨大な頭部に、つぎはぎだらけの塗装もまばらな鋼のアーマー。
左右互い違いのアームと砲身が装着された腕。
それは昨日見た疑似ライダーであった。
「なっ!? 昨日の!? どうして!?」
「どうしてだと!? ふざけるな、黒いショッカーライダー!」
思わず驚き後ずさる俺に疑似ライダーは大地を蹴り、アームを振り上げ襲い掛かってくる。
そこまで速い動きではない。
俺は余裕をもってブロックをしてその攻撃を受け止める。
アームがじりじりと圧力を強める。
パワーはありそうだが、それでもミラーワールド系ライダーほどではない。
先ほどの動きと合わせれば、俺なら軽くあしらえる程度の能力しか無い。
互いの頭が触れるような距離。
そんな中、互いに被った仮面の奥の視線が交差した時、彼は俺に向かいこう言った。
「分木広夢、その名前を忘れたとは言わせんぞ!」
ああ、そういう事か。
償えるかもなんていい気になっていた。
家族に会えて浮かれていた。
でも、俺はショッカーライダーなのだ。
許されざる、地獄の悪鬼。
それが俺であった。
警察官を暴力で従わせるなんて、主人公はグレートな悪党ですよ!