ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
アナザーリュウガ攻略の手段はいくつか思いついていた。
そう、やりようはあった。だが、これは敵がアナザーリュウガのみだった場合だ。
だが、リュウガやオーディンがいるとなると話は違う。
中身が鏡像の城戸真司のリュウガ。城戸さんの……なんなのだろうな、あいつ? 実体を持つことにハングリーな挑戦者であったり、城戸さんが持つ負の潜在意識の代弁者であったり、世界の破滅を願う破綻者であったりと、世界が切り替わるごとに目的が微妙に違う。
共通するのは現実世界での実体を持つ為に城戸さんを誑かす事や、ミラーワールド系ライダーの中では最上位の力を持つことぐらいだ。
そしてそのリュウガ以上に厄介なのがオーディンだ。
ライダーバトルオリジンを生み出した神崎士郎の切り札とも言える存在。
全ライダーを凌駕するスペックを誇り、様々な特殊能力を駆使する。ナイトや王蛇を易々と退けるその圧倒的力は、物理的な破壊のみならず時の逆行にまで及ぶという。
ぶっちゃけるとラスボスラッシュ、最悪なんてレベルじゃない状況である。
普段ならけつをまくって逃げたいところだが、今回の俺の目的はあくまでも陽動だ。
リュウガのみならずオーディンがいた事は驚きだが、逆に考えればミラーワールドで城戸さん救出に当たっている秋山さんに対する障害が一つ減った事になる。
「飛び込んできた羽虫がよく吠える」
「城戸真司を乗っ取らなければ実体を持たない寄生虫に言われる筋合いはないな」
ショッカーの怪人バッタ男である俺が焼かれる羽虫に過ぎない事は否定しないが、寄生虫である鏡像ごときに言われる筋合いはない。
俺の嘲りの言葉が癇に障ったのか、リュウガの雰囲気が変わる。
軽い足音を立てて地面に降り立つと、ゆっくりと俺に向かい近づいて来た。
「よほど苦しんで死にたいらしいな、貴様」
「複製品の陰に隠れた臆病者が、出来ぬ事を口にするな」
夜の闇の中、漆黒の化け物とネガライダーが対峙する。
仮面の奥の視線が交差し、ほぼ同時に動く。
徒手空拳の俺の動きは速い。
大地を蹴りリュウガの懐に飛び込むとパンチを繰り出す。
もっとも、いくら素早い先制攻撃と言えども、それを易々と食らう男ではない。片手でパンチを受け流すと、そのままの流れるような動作でバックルから引き抜いたカードを召喚機に投入した。
『Sword Vent』
虚空より龍の尾を模した曲刀が姿を現すと、回転をしながらリュウガの手に収まる。
そのまま落下の勢いを利用し、勢いある斬撃を真正面から繰り出してくる。
「食らうか!」
真正面から受け止められる速度ではない。
俺は手の甲をむけ、剣の腹を滑らせその一撃を避けると、空いた腕を裏拳で叩き込む。
もっとも、その一撃はリュウガも予測していたのだろう。俺の動きに合わせ膝蹴りを繰り出す。条件反射で俺も膝を上げブロック。とはいえ、不安定な体勢では裏拳の威力などたかが知れている。
俺の拳はリュウガのマスクの表皮を軽く削るだけに終わった。
そして不安定な体勢で攻撃を終えた俺は狙いどころだ。
リュウガは振り下ろした剣を大地に叩きつけると、その反発を利用し今度は剣を振り上げてくる。
普通なら体勢が崩れたこの状況では、剣の一撃を回避する事など不可能だったろう。
だが、この状況からでも繰りだす事の出来る攻撃を俺は持っていた。
「ライダースパーク!」
ベルトから抽出した電気エネルギーを周囲に無造作に発する。
指向性の無い電気を垂れ流すだけの技とも呼べぬ芸当ではあるが、味方のいないこの状況なら使ったところで何ら問題はない。
放出された高圧の電気が大気を切り裂き四方へと飛び散る。
その矛先の一つが当然リュウガだ。光の速さで動く電撃を回避するのは不可能。そのはずであった。
「リュウガ様、ここは私が!」
だが、リュウガを突き飛ばし割って入ってきたのはアナザーリュウガだ。
電撃に巻き込まれると同時に、奴の前にひび割れた鏡が出現する。その鏡は俺のみならず電撃をも映し出し、事もあろうか物理的にはじき返す。
俺が放ったはずの電撃が、俺に襲い掛かってきたのだ。
「面倒な!」
ストロンガーやスーパー1なら電撃を吸収しエネルギーに変えるだろうが、流石にそこまで器用な真似は出来ない。
体内に残っていた電気を足元から地面に放出し、避雷針代わりとなる流れを作りやり過ごす。とはいえ、完璧な受け流しは無理だ。
強化戦闘服の表面を電撃が焼き、電気に晒されたセンサー類が悲鳴を上げる。
だが、ピンチはそこで終わりでは無かった。
センサー類が反応するよりも先に、俺は勘で体をひねる。
視界に金色のカブトが映る。はるか上空にいたはずのオーディンは、空間を跳躍し俺の背後に回ってた。
瞬間移動能力持ちはこれだから厄介だ!
「死ね」
オーディンは短く呟くと、いつの間にか握っていた二本の剣、ゴルトセイバーを十字に振るう。
不安定な姿勢に加え、電撃を受け流した直後だ。まともな回避も出来ず、刃が肩口を掠め、肩口から赤い鮮血が噴き出す。
腕を斬り飛ばされなかったのは、単に運が良かっただけだ。
このままではまずい。俺はそのまま倒れると、転がりその場から距離を取ろうとする。
「逃がすか!」
そんな俺を追撃するべく、アナザーリュウガが火炎弾を解き放つ。
黒い炎が視界を覆う。まともに食らえばただでは済まない。
「くっ! ライダーパンチ!」
膝立ちの姿勢でライダーパンチを繰り出す。
赤い輝きを秘めた拳が黒い炎を吹き飛ばし、粉微塵に消し飛ばす。
だが、その炎の奥より飛び掛かってきたのは仮面ライダーリュウガ!
「先ほどの大口の報い、受けてもらうぞ!」
ドラグセイバーを振りかぶったリュウガの姿が迫りくる。
咄嗟に左腕でガードをするが、そのガードを弾き飛ばし、胸部装甲に一文字の傷が刻まれた。
強化装甲が火花を散らし、後方に吹き飛ばされる。
「ぐあああああっ!」
弾かれたとはいえガードは出来ていたので勢いは殺せた。傷も致命傷というほどではない。
だが、確実に身体能力を低下させるダメージに、苦痛の呻きが漏れる。
そして、吹き飛ばされた俺の後方に展開されていたのは、金色の羽根であった。
受け身も取れず羽根の結界に突っ込み、幾多の爆発が俺を襲う。
視界が赤く染まり、危険域を知らせるシグナルが脳内に鳴り響く。
赤い複眼の一部にひびが入り、装甲の一部が破損する。
「ふん、口ほどにもないな、名も知れぬ仮面ライダー」
何とか立ち上がろうと膝立ちになった俺を、リュウガは見下し嘲りの言葉を叩きつけてくる。
「3人がかりで1人を仕留めきれないで何を言う……」
かなりきつい状況にもかかわらず、俺の口から洩れたのはこんな憎まれ口であった。
ナノマシンによる再生は働いている。エネルギーシステムも正常作動している。
ダメージは決して小さくないが、戦闘能力を喪失させるようなものではない。
まだ、いける。
立ち上がり構えを取る俺を、リュウガは鼻で笑いながらこう返してきた。
「そうか、ならばもう少し楽しませてもらおう」
防戦一方であった。
機動力に優れたリュウガが正面に立ち、サポートのアナザーリュウガが危険な攻撃を反射する。瞬間移動と羽根の爆破による範囲攻撃を持つオーディンが遊撃だ。
悔しいが極めて優れた布陣であった。加速やパワーブーストで何とかしのぐが、それとて限界はある。
ナノマシンによる再生が追い付かないダメージが徐々に蓄積していく。
そして、ダメージ以上に俺を焦らせているのが、状況の変化の無さだ。
秋山さんが城戸さんの救出を終えていたのなら、何らかの変化があるはず。
ここまで長時間戦っていてそれが無いという事は、ミラーワールドで何らかのトラブルが発生したのだろう。一番ありそうなのが、浅倉の介入だ。
まずいな。このまま戦い続けるのは流石に困難だ。
せめて一体でも落とさないと、これ以上は耐えられそうにない。
かなり無茶な、強引な攻めをする必要がある。
俺は覚悟を決めると、肩で息をしながら立ち上がった。
「ほう、まだ抵抗するか」
「敵を倒してもいないのに勝ち誇るな、三下」
満身創痍で何を言っているんだと自分でも思うが、鏡像の城戸真司相手に後れを取るわけにはいかない。
仮面ライダー相手に討たれるなら自業自得とあきらめもつくが、ライダーを名乗るだけの化け物相手に負けるわけにはいかないのだ。
人類守護の言い訳程度は守らなければ、全てに対して顔向けできない。
「いくぞ、ネオショッカー! たぁっ!」
必要なのは覚悟だけだ。俺は天高く跳躍すると狙いをリュウガに定める。
空中でバク転、システムフル稼働。脚部にエネルギーを集中。俺の意思に従い、ベルトの風車がもう回転を始める。
この世界のありとあらゆる存在から汲み上げられたエネルギーは右足に集まり、漏れ出した深紅の輝きが周囲を眩く照らす。
「ライダァァァァァァ! キィィィィィィック!」
脚部が赤い輝きに覆われ、俺はキックの態勢でリュウガに迫る。
その威力は砲弾に等しい、俺の解き放てる最強の必殺技の一つだ。
だが、そんな俺の行為を嘲わらうかのように、アナザーリュウガが間に割って入った。
「その程度の攻撃を通すか!」
奴が作り出した鏡と、足の先端に収束させたエネルギーが衝突する。
破れない。そう悟った俺は鏡を蹴ると天高く跳躍した。
そんな俺を追いかけ、鏡から深紅のエネルギーの奔流が迸る。
キックの形をしたエネルギーの塊が俺に襲い掛かった。
空中にいる俺にそれを避ける術は無く脚部にエネルギーがぶつかり、回転しながらさらに高くに弾き飛ばされた。
「愚かな」
そうつぶやいたのはリュウガか、アナザーリュウガか。
まぁ、どっちでも構わない。繊細な制御と、ベクトル操作が必要な今の俺に奴らの戯言を気にしている余裕など無かった。
俺は弾き飛ばされるまま回転を続ける。
その回転エネルギーに乗って、手足を振るう。
反射されたキックのエネルギーに加え、俺自身の力を回転に加えていく。
回転を続ける俺は空中にてブーメランの如く方向を反転させ、再びアナザーリュウガに襲い掛かった。
「なっ!? なにぃ!?」
超高速の回転を乗せた回し蹴りを繰り出すものの、再びアナザーリュウガの生み出した鏡に阻まれ弾き飛ばされる。
だが、そのエネルギーすらも俺は回転ベクトルに加え、再び空中を旋回する。
「ば、馬鹿な!?」
「馬鹿で結構。俺の身が砕けるか、貴様の鏡が砕けるか、勝負だ!」
三度目の特攻。先ほど以上の速度と回転数で宙を旋回し、俺はアナザーリュウガに狙いを定める。
この馬鹿で印象の悪い技の負担は大きい。当たり前だ、本来なら投げ技に対する対空の返し技でしかなく、自身が放ったライダーキックのエネルギーをそのまま乗せる事など考えてはいない。
次で鏡を砕かなければ、逆に俺の身が砕ける。
だが、この技以外にこの状況を打破する術は思いつかなかった。
「させるか!」
「死ね」
リュウガがドラグクローから黒い炎を放ち、オーディンが金色の羽根を俺の進路上に設置した。
だが、赤い疾風と化した俺は炎を蹴散らし、羽根の爆発を置き去りにする。
狙うはアナザーリュウガただ一体。
「ひっ! ひいいいい!?」
その勢いにアナザーリュウガ……いや、カガミトカゲは情けない悲鳴を上げながら、反射の鏡を目の前に出現させる。
俺は一直線に鏡にぶち当たり、蹴りを繰り出す。
鏡と俺の間に、刹那の均衡が発生する。そして、鏡を砕いたのは、俺のキックであった。
「行くぞ! ライダァァァァァ! マッハキィィィィィィック!」
奴の反射能力の上限を超えた必殺の蹴りは鏡を打ち砕き、背後にあったアナザーリュウガの胴体を捉えた。
俺のキックは易々と奴の腹を消し飛ばし、俺は大地へと着地する。
片膝をついた姿勢で着地し、火花を飛び散らせ地面を滑っていく。そんな俺の背後では、アナザーリュウガがゆっくりと崩壊を始めていた。
上半身を失った脚部にはひびが入り、鏡に戻りながら澄んだ音を立てて粉々に砕けていく。下半身の支えを失った胴体は、弧を描きながら地面へと落下する。
そんな上半身に備え付けられた頭部はこちらに視線を向け、呆然とこうつぶやいた。
「ば、ばか……な」
その言葉が最後であった。
アナザーリュウガの上半身は閃光を放ち、赤い炎を上げて大爆発を起こす。
本体であるカガミトカゲは無事なのだろう。だが、奴らの言葉通りならアナザーリュウガは打ち止めの筈だ。
クソジジイの技にしては上出来である。
絶対にイマジナリー相手でも礼は言わないけどな。絶対嫌味で返してくるし、あのクソジジイ。
いや、クソジジイの事を考えている場合じゃない。
アナザーリュウガを倒した時に出来た一瞬の隙を見逃さず、俺は大地を蹴った。次の狙いはオーディンだ。
交戦経験は無いが、あのタイプの弱点は知っている。能力で言えば完璧とも言える存在のオーディンだが、依り代となる人間を乗っ取る形である為に経験の蓄積に難があるのだ。
それゆえに、予想外の事態が発生すると一瞬だけ動きが鈍る。
先ほどのマッハキックで足の筋肉の一部が断裂している。
一足踏み込むごとに耐えがたい苦痛が襲い掛かってくるが、その痛みを意思の力でねじ伏せる。
崩れそうになる体勢を意思の力で支え、腕を振り上げる。
「次は貴様だ! ライダーパンチ!」
アナザーリュウガが倒された事に気を取られていたオーディンをライダーパンチでとらえる。
赤いエネルギーを纏った拳で頭部を打ち抜く。
流石にミラーワールド系ライダーの頂点に立つ存在。この一撃で倒せるほど柔な存在では無い。
とはいえ、俺のパンチでのけ反り、体勢を崩した今こそこいつを倒すチャンスだ。
「ライダーバトル完遂など、ミラーモンスターの現実世界への進出などこの俺が許さん! 行くぞ!」
このチャンスにオーディンを葬るべく、天に向かい跳躍する。月光を背に空中に滞空すると、体勢を崩したオーディンに狙いを定めた。
ベルトの風車が再び激しく回転を始め、赤く輝くエネルギーが脚部に集中する。
その性質上、おそらく正体は主催者により力を押し付けられただけの一般人。
だが、状況が状況だ。ネオショッカーが企むライダーバトルの完遂だけは阻止しなければならない。躊躇している余裕はなかった。
また一つ、償えぬ罪を背負う。ただそれだけだ。
オーディンに狙いを定める。どうやらライダーパンチでヘルメットの一部が砕けたようだ。再生を開始しているようだが下の素顔が見えた。
オーディンの素顔は……
「えっ? 葵さん!?」
そう、砕けた仮面の下にあったのは、あの筑波さんや城戸さんの知り合いであり、俺の悪逆の被害者である女性であった。
彼女はどこか虚ろな雰囲気を漂わせてはいたが、目の奥底には憎悪の感情が籠っており俺から視線を外そうとしない。
あまりにも予想外の事態に、俺は思わず硬直する。
それは致命的な隙であった。
「隙ありだ!」
ドラグセイバーを振り上げたリュウガが跳躍し、俺に迫る。
振り降ろされた剣を回避する事などできず、背中が斜めに切り裂かれる。
「ぐわぁぁぁぁ!」
強化スーツが火花を散らし役目を放棄し、切り裂かれた背中から鮮血が噴き出す。
滞空を維持する事すら困難となり、俺は受け身も取れず地面に落下し数回バウンドして植木にぶつかり動きを止めた。
変身が解ける。危険域を超えたダメージに、ライダー状態を維持する体力が残っていない。
全身血だるまになりながら、木の幹にしがみつきなんとか上体を起こす。
「リュウガ、いや、鏡像の城戸真司。貴様、彼女に何をした?」
俺の問いかけに、鏡像の城戸真司は仮面越しであってもわかる程の愉快そうに肩を震わせこう答える。
「なあに、ちょっと囁いたのさ。『大切な人を生き返らせたくありませんか?』とな」
おそらくは相当前から仕込んでいたのだろう。
城戸真司の知り合いであり、恋人を無残に殺された被害者の一人。なるほど、鏡像の城戸真司が利用するには丁度良い条件の持ち主だ。
現実世界では活動できないとはいえ鏡を通し夢うつつの中で、城戸さんの姿と口八丁でたぶらかしたのだ。
「彼女とオーディンを巡り合わせ、ライダーバトルを開催した。まぁ、無意識にミラーモンスターを操り自殺を図られたのには驚いたがな」
接触の記憶を消したのは、彼女が思い直すのを恐れた為か。事実、彼女は無意識の内にミラーモンスターを操り自殺を図ろうとした。それがあの時の襲撃の真相か。
この分だとライダーバトルのルールを定めたのはこいつか。
「何を企んでいる」
「覚えているだろう、アメリカでの事件を、さ」
「まさか!?」
「そう、あの時の実験はお前に邪魔をされたが、今度は俺の勝ちさ。現実とミラーワールドの境界は破壊され、世界はモンスターで溢れかえる!」
芝居ががった仕草で、リュウガは腕を広げ計画の一端を語る。
いや、ミラーモンスターを現実に連れてこようとしていたのは気が付いていたが、ニューヨークの事件にも言及してくるか?
あの事件にも関わっていたのか?
実験……。多くの生贄を食わせるよりも、ライダーとの戦いが進化を促すと考えたか?
「そんな事、許すと思うの……ぐあああああっ!」
立ち上がり、再度の変身を行おうとして俺だったが、その行動は腕に突き刺さった剣により阻止される。
リュウガが投擲したドラグセイバーが、俺の右腕を背後の木に縫い付けた。
「許すも許さないも、計画は最終段階だ。もう誰にも止められん!」
そう言うと、リュウガは天を見上げ高らかに哄笑する。
耳障りな奴の笑い声が唐突に止まったかと思うと、腕からドラグセイバーが引き抜かれる。
身体が自由になった。そう思った次の瞬間強い衝撃が頭部を襲い、俺は地面を転がり壁にぶつかり倒れ伏す。
「それに、お前がそれを見る事は無い。この場で死んでもらおう、仮面ライダー1号と2号の愛弟子さん」
誰が弟子だ、誰が。本郷さんにはリハビリの手伝いはしてもらったが、それだけだ。一文字さんにいたっては時折顔を見せて人を連れまわしていただけだぞ。
いや、それはどうでも良い事だ。
ナノマシンは正常に作動しており、肉体の修復は行われている。だが、このダメージでは動く事すら困難だ。
だけど、何とか立ち上がって変身しなければ……。
腕に力を籠めるが、起き上がる事すら困難だ。
リュウガの腕に黒い炎が宿る。
あの炎で、俺を焼き尽くす気か……。
漆黒の炎がついには解き放たれる。炎は一直線に俺に向かい……。
「させるかっ!」
「畜生! なんでこんな奴を!」
不意に響く声。
何処からともなくやって来た機械仕掛けの戦士が放った砲弾が火炎を噴き散らし、天空より俺を庇うように降り立った誰かが振るう拳が、残りの炎を砕きかき消す。
かすむ視界に見える大きな背中。
その背中を見て、俺は尊敬する人の名前を無意識に口にする。
「本郷……さん?」
いや、違う。
あの人は巌のような、動かぬ山のような、そんな背中だ。
似ているけど、受ける印象が違う。
「ははは、あの人に間違われるのは光栄だけど、残念ながら違うよ」
どこか静かに響く本郷さんとは違う声。だけど本郷さんと同じで人を安心させる、爽やかな響きを持つ声。
夏に吹く涼しく優しい風を思わせるその声の持ち主の名前を、俺は知っている。
「いや、筑波さん? スカイライダー」
「悪い、遅くなった誠太郎君」
そう、この場に現れたのは伝説の10人のライダーの一人。
天空の勇者スカイライダー、筑波洋であった。
ライダーマッハキックの特訓協力者→二代目ツバサ大僧正