ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第95話 episode・RYUKI 幕間・13人目のライダー

 会話を続けながら建物から出た筑波と須藤が見たのは、帰ってきたらしき城戸が葵を慰めている場面であった。

 

 頼りになる奴を連れてくると言って外出したが、交渉が上手くいかなかったのか一人で帰ってきたようだ。

 帰りがけに葵に出会ったのだろう。城戸らしい行動と言えば行動だ。

 

 それなのに、彼から感じる違和感は何なのだろうか?

 歴戦の戦士としての勘が警鐘を鳴らす。

 

 一方、城戸は彼らが中から出てきたことに気が付いたのか、ちょっとだけばつが悪そうな愛想笑いを浮かべ片手を上げる。

 

「あ、筑波さん、ただいま。なんかあったんっすか?」

 

 パトカーが止まっている上に、泣いている葵、極めつけは争った形跡が残っている駐車場を見て、城戸が妙にのんきな事を口にする。

 城戸真司らしいどこか抜けた反応だ。

 考え過ぎか? どうしても警戒心が解けない中、隣にいた須藤が声を掛けて来た。

 

「お知り合いですか? 申し訳ございません、本官は連絡がありますのでこれで」

「あ、はい?」

 

 とぼけた顔をしてこちらに向かってくる城戸を前に、須藤は断りを入れてパトカーに向かおうとする。

 

 須藤の行動はおかしくはない。

 刑事である彼が本部と連絡を密にすることは職務の一環だ。また、同じミラーワールド系のライダーと言えども知り合いとは限らない。

 だが、それにしてもこちらがスカイライダーとわかっているのに、やり手に見える須藤刑事がその知人に興味を示さないという事はあるのか?

 

 自然ではあるが、あからさまな態度だ。

 

 須藤が離れていくのを横目に、城戸は葵を伴ってこちらにやってきた。

 葵はまだこちらを睨んではいるが、これは落ち着いたらちゃんと話すべきではある。だが、今はそれよりも城戸だ。

 筑波は味方である筈の城戸を相手だというのに、慎重に疑惑を表に出さないように注意しながら話しかける。

 

「お帰り、城戸さん。一人で帰ってきたのかい?」

「あ、いや、すんません。蓮の野郎……。あ、いや、あいつの事は横に置くとして筑波さん、さっきの刑事」

「須藤さんの事か?」

「ええ、筑波さん、あいつは……」

 

 須藤が警察な事はパトカーに向かった事を考えればわかるかもしれないが、何故刑事と知っている?

 いや、スーツを着ていたのでドラマ知識で短絡的に刑事と決めつけたのか?

 違和感と警戒感が増す中、城戸が小声になりつつ耳を貸すようにジェスチャーをする。

 

「私がどうかしましたか?」

 

 不意に、パトカーに向かったはずの須藤の声が響く。

 慌てて振り向いた先にいたのは、須藤ではない。いつの間に変身したのか、仮面ライダーシザースの姿がそこにはあった。

 

 シザースは鋏を模した籠手、シザースピンチを振りかぶり城戸に向かい叩き付ける。

 

 城戸は何とかその攻撃を横に転がり回避した。

 空を切った鋏はそのまま大地を叩き、周辺にアスファルトが砕ける轟音が響き渡る。

 

「須藤さん!?」

「えっ!? きゃああああ!」

 

 唐突な行動に筑波が驚きの声を、葵が悲鳴を上げる。

 だが、唐突な行動にもかかわらず、筑波は次のアクションを取れなかった。

 

 何故なら須藤は城戸が攻撃を回避したのを確認するや否や、召喚機を兼ねた鋏、シザースバイザーで葵を挟み込む。

 そのまま体を回転させると、彼女を筑波に向かい投げ飛ばし、自身は城戸と筑波の間に身を割り込ませた。

 

 明らかに城戸を敵と認識し、葵を救出するための行動だ。

 少なくとも城戸の姿をした存在も須藤は自分が知らない何かを知っている。その事実に、筑波は葵を受け止めるとそのまま背に庇う。

 

「何しやがる、須藤! 今度は何を企んでいる!」

 

 抗議の声を上げていた城戸の声を聞き流し、シザースは左右の鋏を駆使し城戸に向かい攻撃を続ける。

 挟み込むことによる斬撃では無く、叩き潰す事を目的とした重い打撃が振るわれるが、城戸は這う這うの体で逃げると距離を取った。

 

 仕留められなかったことは残念だが、背後とは距離が取れた。

 それを確認したシザースは城戸の抗議の声にこう返す。

 

「別に何も。今の私は善良で真面目な刑事なのでね。市民を守っただけですよ」

 

 自身でも白々しい呆れかえるような事を口にする。

 それは城戸の姿をした存在も同じであったようで、演技ではない呆れ声を上げた。

 

「お前が善良で真面目だと? 何の冗談だ!?」

 

 当然の反応だろうな。須藤も仮面の下で苦笑いを浮かべる。

 少なくとも自身の認識において、消えた世界での悪徳警官だった自分と今の捜査一課で活躍する自分に大差は無い。

 

 もし、前の自分と今の自分の違いがあるとすれば……。

 

「別に冗談でも何でもありませんよ。今の境遇は割と気に入っているので、真面目な刑事を辞める気は無いというだけです」

 

 そう、違いは今の境遇をどう考えているかだ。

 捜査一課での未知との戦いや、どこぞのクソガキに押し付けられる面倒な事案など退屈している暇など無い日々を須藤はいたく気に入っていた。

 今のスリルある日常に比べれば、悪徳警官の日々などなんと退屈な事か。

 

「な、なんだこれって? 刑事さんと……城戸さん?」 

 

 再び始まった戦いの喧騒に、周囲も騒めき立つ。

 それは家の中で寝かされていた集夢も同じだった。慌てて飛び出してきた彼が見たのは、刑事が変身したライダーが知人を襲う姿であった。

 さらに彼を混乱させるのは、刑事を止める力を持っている筑波が静観している点だ。

 

「筑波さん、これって一体?」

「わからない。でも、あれは城戸さんじゃなさそうだな」

 

 集夢の疑問に答えながら、筑波は先ほどから感じていた違和感に気が付く。

 

 城戸真司は頭が悪い訳ではないが、直情的で妙なところで不器用な男だ。

 無論城戸とて馬鹿ではない……と、筑波は思う事にしている。その気になれば相手の出方を見るために、とぼけて見せる事も出来るだろう……たぶん。

 だが、何も知らない状態で知っている顔と出会った場合、城戸が声を掛けずにいられるだろうか。

 

 そう、あの城戸真司の行動が“らしく”無いのだ。

 

 それは須藤から見ても同じだったのだろう。

 

「それとね、そのつまらない猿芝居をやめてくれませんか? 本物なら私を見たら大騒ぎをしますよ」

 

 須藤は目の前にいる城戸真司を偽物と断じる。

 城戸真司本人と認識していた訳でも、当てずっぽうに行動をしたわけでもない。

 明確に相手を城戸真司の偽物と認識しての行動だと宣言したのだ。

 

「ひっ!?」

 

 須藤の言葉に城戸の雰囲気が変わり、その空気に飲まれた葵が小さく悲鳴を上げる。

 姿形が変わった訳ではない。

 ただ、それまで城戸真司が浮かべていた人懐っこい柔和な表情がすっと消えて、代わりに冷酷な目で周囲を見回しただけだ。

 それだけなのに、夏の空気が冷たく成ったかのような錯覚を覚える。

 

「貴様、最初から俺の事を知っていたのか? 面識はなかったはずだが……」

「さてね、手札を明かすほど馬鹿では無いですよ」

 

 確かに、失われた世界で鏡像の城戸真司と須藤の面識は覚えている範囲ではない。

 実際、須藤が目の前の男の事を知ったのはつい最近の話である。最近配属された新入りが鏡像の城戸真司と遭遇したという。

 怪しいと思い殴りかかってみたが、正解だったというのが真相だ。

 

「早期退場者だと思って、正直見くびっていたよ」

「見くびりついでに倒されてくれませんか? 私も忙しい身なので」

「断る」 

 

 不意打ちで倒せなかった事を後悔するべきか、スカイライダーという頼もしい存在がいる時の遭遇を感謝するべきか。

 未だ変身をしない鏡像の城戸真司を前に、シザースは緊張の面持ちを隠す事が出来ない。

 

「須藤さん、あいつの事を知っているのか?」

「ええ、鏡の世界の城戸真司、またの名をリュウガ。強力な力を持った危険なネガライダーの一人ですよ」

 

 かつて新入りが戦った時は、現実世界の破滅を願っていたという。

 その時は囚われの身から脱出した龍騎に倒され消滅したと聞き及んでいる。

 どうやって復活したのかは知らないが、この業界では死んだはずの人間が生きている事は珍しい話ではない。

 

「協力をお願いします。一気に取り押さえましょう」

「わかった。集夢君、君は葵ちゃんと下がっているんだ」

 

 スカイライダーへと姿を変えながら、集夢と葵に下がるよう指示を出す。

 2対1だ。このまま取り押さえたい。

 だが、当然だがのほほんと一人で来たわけではなかった。

 

「悪いが、今は貴様らと遊ぶ気は無い」

 

 そう言い放ち手を無造作に上げる。

 それを合図に駐車場のアスファルトがめくりあがり、破裂し破片が吹きあがる。

 それと同時に全身黒タイツに小さな触角の付いた戦闘員たちが飛び出してきた。

 

「アリコマンド!? ネオショッカーか?」

「ネオショッカーと手を組んでいたか」

 

 数の有利は覆った。

 アリコマンドたちはスカイライダーとシザースを足止めするよう包囲をする。

 1体1体の力は大したことが無くとも、数が揃えば複数攻撃手段に乏しいスカイライダーやシザースは包囲の突破が難しい。

 

 まして、飛び出してきたのはアリコマンドだけではなかった。

 アリコマンドに交じり、地底に通じる穴より黒いネガライダーがその姿を現す。

 

「なっ!? 分身だと!?」

「偽ライダーか!? また古い手を!」

 

 ただでさえ複数攻撃手段に乏しいスカイライダーやシザースだというのに、分身リュウガまでいるのだから包囲の突破は難しい。

 戦いの喧騒が鳴り響く中、鏡像の城戸真司はリュウガは悠々と後方にいた葵と集夢の元に向かう。

 

「止まれ! 止まらないと撃つぞ!」

 

 集夢が葵を背に庇い、デッキガンの銃口を向ける。

 だが、鏡像の城戸真司は集夢の事など眼中にないとばかりに進む。

 その悪意のオーラは、かつて兄を殺めた漆黒のショッカーライダーに勝るとも劣らない。

 

「く、くそっ!」

 

 撃たなければならない。そうしなければ良くない事が起きる。

 そうわかっていながら、知っている顔を前に引き金を引く事が出来ない。震える手で、デッキガンの銃口を向ける事しかできない。

 そんな集夢の感情を知ってか知らずか、鏡像の城戸真司は笑みを浮かべたまま銃口など気にせず歩みを進める。

 

 やがて、鏡像の城戸真司はついに二人の前に到達した。

 

「邪魔だ、集夢」

 

 暴力を振るったわけではない。

 ただ、彼の肩に手をのせ押しのけただけだ。

 それだけで、集夢は横に排除される。

 

「集夢!」

「おっと、葵ちゃん。君に用があってきたんだよ」

 

 城戸真司と同じ声、同じ姿、優しげで柔和な笑み。子供の頃から知っている、面白くて変なお兄さんだ。

 年上なのに子供っぽいところがあり、広夢とウマが合うのか個人的に連絡先を交換していた。

 

「ずっと気にしていたんだよ、あいつも俺も。広夢の事をさ」

 

 嘘ではない。

 城戸真司は広夢の死を気に病んでいた。

 嘘ではない。

 鏡像の城戸真司は広夢の死を利用できないかと鏡の奥から覗き込んでいた。

 

「生き返らせる事が出来るんだ。その準備はできた」

 

 嘘ではない。

 幾多のミラーモンスターのエネルギーと、九人のライダーの命を捧げ器は出来た。

 あと二人残っているが、時間の問題だ。

 

「そ、そんな事をできるわけが…」

「出来るさ。集夢、広夢の手記を見た君なら知っているだろう。どんな願いでも叶う、ライダーバトルの事をさ」

「そ、それは……」

 

 嘘ではない。

 集夢は兄の残した資料を読み込むことによりライダーバトルの事を知っていた。

 この町でライダーバトルが発生したのは彼とは関係ない話ではあったが、バトルの成果をかすめ取る事を考えていた。

 

「集夢!?」

「準備は整った。夢の中で君に預けた物を引き取りに来たよ、葵ちゃん」

 

 そう、後は彼女を連れて行くだけなのだ。

 そうすれば、彼女の願いは、恋人の復活は叶う。

 

「さあ、行こう。広夢のいる世界にさ」

 

 そう、彼女を最終勝利者とする。それが鏡像の城戸真司の目的だ

 分木広夢の蘇生。ショッカーの暴虐により失われた葵が恋人と再会する瞬間こそが、このライダーバトルの結末であり、完全無欠のハッピーエンドで物語は終わる。

 

 鏡像の城戸真司が、その手を葵に差し伸べる。

 

「ためらう事なんて無いさ」

 

 恐怖と親愛で限界を迎えた葵は、無意識の内に伸ばされた手を掴む。

 その瞬間、彼女の腰にどこからともなくVバックルが出現する。

 

「さあ、目覚めるんだ。オーディン。愛する者の為に、この呪われた物語を終わらせよう」

 

 そう、終わるのだ。

 

 そして物語が終わった舞台は破棄される。

 それだけだ。

 

 その結果、あふれ出す存在がいる。

 それだけだった。

 

 不死鳥の紋章が刻まれたデッキケースが何処からともなく出現し、Vバックルにゆっくりと一体化していく。

 それと同時に、葵の周囲に金色の羽根が降り注ぎ、その身を隠していく。

 鏡像の影法師が女性の身と置き換わり、新たなるライダーへとその身を変えた。

 

「葵ちゃん!」

「彼女がオーディンだと……!?」

 

 素体が女性ゆえに本来のオーディンよりは若干細身だろう。

 だが、不死鳥を模した金色のマスクと、羽根を模した金色の肩当、金と赤茶色の胸鎧は幾多のオーディンと同じ姿だ。

 

 ライダーバトルの最後の戦士。このライダーバトルの仮面ライダーオーディンが、葵の身を核についに降臨した。

 

 オーディンは周囲を一瞥すると、右手をすっと前に上げる。

 

「いけない!」

「くそっ! 間に合え!」

 

 その動作の意味に気が付いたのは、スカイライダーでありシザースであった。

 一人は何とかその動きを止めようと分身リュウガやアリコマンドからの攻撃を受けながら強引に包囲網を突破し、もう一人はライダーたちの中でも最高硬度を誇る盾を呼び出し身を構える。

 そして、緑のライダーが包囲を超え彼女に届きそうになったその瞬間、あたり一帯に金色の羽根が舞い落ち巨大な爆発を引き起こした。

 




蟹、何で活躍しているんだよ、蟹!
蟹のくせに生意気だぞ!

次回、ピーチ姫側になるといいな……。
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