ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話 作:さざみー
「わあああああっ!」
「きゃああああっ!」
合成ミラーモンスターの放った炎の吐息が周囲の建物を吹き散らし、構えた大盾や庇った仲間ごとライダーを弾き飛ばす。
二人のライダーは地面を転げ、それぞれが別の街路樹にぶつかり動きを止める。
二本の角を持つ重装系のライダーが槍を杖代わりに何とか立ち上がり、銃火器で身を固めたライダーが何とか膝立ちになり身を起こす。
「先生、大丈夫か?」
「ちょっとまずいかな……。そっちはどう?」
「俺は頑丈が取り柄だからもう少しいける……。最悪は君だけでも逃げろ」
「素直に逃がしてくれる相手じゃないでしょう」
肩で息をしながら会話をする二人の視界には、破壊された建物の向こうから悠々と歩いてくる紫色のライダー、仮面ライダー王蛇の姿が映る。
そのライダーは首に手を当て捻りながら、退屈そうな雰囲気を隠しもしない。
「まったく、急に出てきてなんなのよ、あいつ……」
先生と呼ばれたライダーが小声でぼやく。
二人はこの町で発生したライダーバトルの参加者であった。
無論、それぞれに願いがあり、オーディンに導かれるまま何も知らずに最悪の儀式に参加した事は他のミラーワールド系ライダーと変わりがない。
ただ少し違ったのは今回のライダーバトルはミラーモンスターを狩り続けなければ足切りにあう為に、ライダー同士の戦いが積極的に行われなかった。そして、力を増すミラーモンスターを狩る為にライダー同士が組む必要性があった事だろう。
この二人もそんな状況で手を組んだ二人であった。
そして、この二人が幸運だったのは、ミラーワールド内で起きていた異変にいち早く気が付けた点だ。
それを調べるためにモンスター狩りの頻度が落ちており、王蛇が二人を発見するのが遅れ最後まで生き延びる事が出来た。
「あー、逃げる相談なんか萎える事をするな。俺をもっと楽しませろよ」
「ふざけるな! このままじゃミラーモンスターが町にあふれ出すかもしれないんだぞ!」
ミラーモンスターを狩るライダーの数が急速に減少した結果、ミラーモンスターたちを止める手段が消えた。
用心深い個体が多いのかまだ被害は出ていないが、それも時間の問題だ。ライダーたちがいない事にどこかの個体が気が付いた瞬間、ミラーモンスターたちは雪崩を打ったかのように一斉に人間を襲いだすだろう。
今のうちに何とかしなければ手遅れになる。
そう訴える二人に対して、王蛇の回答はシンプルであった。
気だるそうに首を動かしながら、こう返した
「あー、それがなんだって?」
自身の衝動を満足させる事以外に興味はない。
それが王蛇の変身者、浅倉という男のシンプルな答えであった。
「くそ、倒すしかないのか!」
状況を話し説得するのは無駄だと、僅かな時間の邂逅ではあるがよくわかっている。
二本角のライダーはカードを取り出すと籠手の召喚機にカードを差し込む。
『FREEZE VENT』
地面に叩きつけた槍を起点に地面が急速に凍り付く。
白い射線は王蛇に向かい一直線に突き進む。
相方の動きを察した先生と呼ばれたライダーも、腰を深く落とすと銃にカードを差し込む。
『FINAL VENT』
二本角のライダーが相手を凍らせ、先生が間髪入れず必殺のファイナルベントを叩き込む。仮にそれを耐えても、二本角のライダーが追撃のファイナルベントを放つ。
この二人のライダーの必殺のコンビネーションであり、幾多の強大なミラーモンスターを葬ってきた自慢の技だ。
冷気の塊は王蛇にぶつかり、彼の手足を氷結させた。
あとはファイナルベントを放てば終わる。
そう、放てれば。
「見え見えだ」
銃を構え力を溜める先生と呼ばれたライダーの胸に、地中から突如生えた蛇腹鞭の切っ先が突き刺さった。
衝撃に吹き飛ばされ後方に転がり倒れる。
「凍らせるなら、熱すれば良いだけだ」
この言葉に、二本角のライダーは王蛇が何をやったのかにようやく気が付く。
いつの間に呼び出したのか、彼が持つ鞭の一端が、合成ミラーモンスターの口の中につながっていた。灼熱の炎を吐くモンスターの口内の熱を鞭を通じて自らに伝え、フリーズベントの氷結に対抗したのだ。
そう、大技を放つ際の隙を作る為に、あえてフリーズベントを受けたのだ。
「先生!」
「大丈夫、鎧で止まった。突き刺さってはいない……」
短く受け答えをし、無事だけは確認する。
とはいえ、ファイナルベント直前の無防備なところに受けた打撃だ。すぐには元のように動けないだろう。
ミラーモンスターの動向を気にしながらとはいえ、2対1だというのに圧倒されっぱなしだ。あの紫のライダーはどれだけの修羅場をくぐり、どれだけの血を啜ってきたのだろう。
「そうか。後ろで休んでいてくれ」
「ごめん、お願いするわ」
二人のライダーが意思を確認した。
それが合図だった。
王蛇の姿が霞のように掻き消える。少なくとも、二本角のライダーにはそう見えた。
「そうか。じゃ、そろそろ死ねよ」
王蛇による本気の突撃。目で追う事すら困難な加速。
それでもガードが間に合ったのは、短い期間とはいえ、彼らもまた町を守るために戦い続けた経験の賜物だろう。
王蛇の一撃に弾き飛ばされたとはいえ、それが無ければベノサーベルの一撃で貫かれ死んでいたはずだ。
「ぐわぁっ!?」
二本角のライダーの巨体が弾き飛ばされる。
盾はいずこかに吹き飛び、その身は建物の壁に強かに打ち付けられ崩れ落ちた。
もはや二人は抵抗する事すらできないだろう。それを確認した王蛇は召喚機を手元に呼び寄せる。
「終わりか? ならとどめだ」
このまま王蛇がファイナルベントのカードを呼び込ませれば、彼らも他の10人のライダーと同じ運命を辿っていただろう。
だが、生憎その夜はミラーワールドに立ち入る別の侵入者が一人いた。
「いい加減にしろ、浅倉!」
円を描く月を背に、黒い翼が少しづつ大きくなっていく。
それが蝙蝠の翼を背に纏ったライダーだと気が付いた瞬間、二人のライダーは王蛇の興味から消える。
天空から舞い降りる怒声の主を、狂った歓喜の声が迎え入れる。
「秋山! お前もいたのか!」
ライダーバトルオリジンに於いて幾度となく刃を交えた敵、仮面ライダーナイト。
浅倉にとっては最上の獲物の一人であり、自らの得体の知れぬ衝動を満足させる数少ない相手の一人だ。
ナイトが突き出すウイングランサーと王蛇が握るベノサーベルが闇の中で激突する。周囲に火花が飛び散り、その明かりが二人のライダーのマスクを照らし出す。
押し切る事は出来ない。
そう悟った二人のライダーは示し合わせたかのように互いに後ろに飛び間合いを取る。
ナイトは倒れた二人のライダーをかばう様に、王蛇は複合モンスターの傍に降り立ち次の一手を仕掛ける為に。
「お前たち、大丈夫か?」
「味方……なのか?」
元々仮面ライダーナイトがミラーワールドに突入したのは、城戸真司を救出するためだ。
敵の本拠地があると思しき施設に向かう途中、何者かが争っている爆発音を耳にした。
余人が介入する余地のないミラーワールドだ。そしてこの状況で争う者など、十中八九奴だろう。そう考えたナイトは予定を変更し、そちらに向かった。
そして、仮面ライダー王蛇を見つけたのだ。
さて、どうしたものか。
接近しながら彼らの会話が聞こえていた。浅倉が相変わらずなのはいつもの事だが、残った二人のライダーが比較的マシそうなのは思わぬ幸運だ。
無論ライダーバトルに参加している以上は願いがあるので油断はできないが、それでも町にミラーモンスターがあふれ出す事を危惧している点では味方につける事は出来そうではある。
表で陽動をしているアインロールドと最優先はライダーバトルの完遂の阻止であるという点で意思の統一はなされている。
城戸とアインロールドには申し訳ないが、救出が少々遅れても問題は無いだろう。
「少なくとも、この事態を打破する気があるなら今は敵ではない」
結局、ナイトの口から洩れたのは少々ひねた答えだった。
基本的にライダーバトルに参加するライダーは全て敵だ。ルールの関係上一時的に手を組んではいるが、二本角と先生も最終的には雌雄を決する必要がある。
まして紫のライダー同様、唐突に現れた知らないライダーを信用していいかどうか。
一瞬だけ躊躇する二本角のライダーであったが、先生と呼ばれたライダーはダメージで動けない状況だとあっさりと割り切る。
「あなた、今の事態をどこまで理解している?」
「ミラーモンスターが溢れかえりそうな事と、ネオショッカーが関わっていることぐらいか」
本当はもう少し推測は出来ているのだが、あえてその推測は口にしない。
自分より詳しそうな現地ライダーがいるのだ。聞く方が早い。
興味はさほどないのだろうが、王蛇はまだ斬りかかってこない。
多少は話させる気なのだろう。
「OK。貴方が言うネオショッカーなんだろうけど、湖畔の施設に荷物を運びこんでいる。それ以来ミラーモンスターがどんどん強くなっていて湖を通って表に出ようとしている。私たちはそれを調べようとしたことでそいつに……」
「襲われたのだろう。そちらは知っている」
アインロールドの推測ではバトルによる選別と強個体の進化だったが、それにプラスして品種改良にも手を出していたのか。
事態の進み具合に頭を痛めながらも、ナイトは王蛇を油断なく睨む。
「話は終わったか?」
「いや、終わってない。彼らに確認したい事は多いからな」
「つれない事を言うなよ。お前の先約は……俺だろう!」
聞くのに飽きたのか、気まぐれなのか、王蛇は唐突にベノサーベルを振りかぶり斬りかかってくる。
王蛇の唐突な行動には慣れっこだ。ナイトも構えたままのウイングランサーで攻撃を受けながす。
夜の街に再び火花が飛び散る。
「相変わらずだな、浅倉!」
「お前もな、秋山!」
どれだけ付き合いが長く成ろうとも、決して相容れぬ関係だ。
剣と槍が舞い、激しい衝撃音があたりに響く。
「はぁっ!」
「はぁぁぁぁ!」
その動きは、多くのミラーモンスターを吸収し、力を増している筈の二人のライダーの目をもってしても追いきれぬ洗練された力強い動きだ。
幾多のライダーバトルを潜り抜けた二人は、もはや最上級の戦士だった。
その素早く精密な動きは、目で追うのがやっとだ。援護などをすればむしろ邪魔になってしまう。
いや、そもそも変身こそ解けていないが王蛇の攻撃で受けたダメージは予想外に大きく、まだ満足に動けそうにない。
援護するしない以前の状況であった。
闇の中で二人のライダーが激しく激突を繰り返す。
そして、ナイトと王蛇の戦いの喧騒は、更なる招かざる客を招く事となる。
そいつらは、闇夜に紛れ忍び寄ってきた。
「きゃあっ!?」
狙ったのは、当然ダメージを受けてろくに動けない二人のライダーだ。
特に先生と呼ばれたライダーのダメージは予想以上に大きく、突如空から襲来した蜻蛉によく似た頭部を持つミラーモンスターの不意打ちに反応できない。
「先生!」
まだダメージの軽い二本角のライダーが、槍を振り回し先生とよばれたライダーを庇う。
だが、蜻蛉の頭部を持つミラーモンスターは1体では無かった。
「なんだ、この数は!?」
見る見る間に二人の姿は蜻蛉型のミラーモンスターの群れの中に消えて行く。
「しまった!」
油断していた訳ではない。
だが、あまりにも唐突かつ多数のミラーモンスターの襲撃を前に、ナイトは動きを一瞬だけ硬直させる。
その隙に、蜻蛉型のミラーモンスター、レイドラグーンはナイトにも襲い掛かってきた。
「くそっ! こいつらも沸き始めたか!?」
悪態をつきながらウイングランサーを真横に振るう。
その軌道に飛び込んで来たレイドラグーンが数匹まとめて切り裂かれ、爆散する。
一方、レイドラグーンが襲い掛かってきたのは二人のライダーやナイトにだけではない。
当然、ナイトと戦っていた王蛇にもレイドラグーンの群れが襲い掛かる。
「邪魔だ!」
宿敵との心躍る戦いを野生動物に等しいモンスターに邪魔をされた王蛇は、その不快さを隠す事無く力任せにベノサーベルを振るう。
一回振るう度にレイドラグーンは叩き落され爆散を繰り返すが、とにかく数が多い。召喚したままの合成ミラーモンスターにも駆除をさせるが、その数は一向に減りそうになかった。
王蛇がレイドラグーンを前に動きを止めたのはナイトにとって幸運だった。
とはいえ、自身も複数のレイドラグーンに襲われている状況だ。
二人の生き残りライダーの動きは鈍い。まだ何とか抵抗していて無事だが、それとて時間の問題だろう。
だが、助けに行くにしてもレイドラグーンの群れが邪魔で向かう事も困難だ。
どうするべきか。焦るナイトの耳に、また新たな声が届く。
「やれやれだ。まったくあの坊主、なんだって自分から騒動が起きている場所に向かうんだか」
その声と共に、生き残りライダーを襲っていたレイドラグーン数匹が炎に飲まれまとめて燃え尽き消えて行く。
何事だ!?
誰もが唐突な介入に驚く中、その男は戦場に踊り出て手に持った剣でレイドラグーンたちを次々と切り捨てていく。
それは赤いライダーであった。
ミラーワールド系ライダーの特徴的な格子の面当が付いたマスクに、頭部に輝くドラゴンの紋章。
龍騎、そう呼ばれるライダーの姿がそこにあった。
「城戸!?」
捕らえられている筈のライダーの変身者の名をナイトは思わず叫ぶ。
だが、そのライダーから響いて来た声は城戸真司の物ではない。
手に持つ武器も違う。龍騎が使うドラグセイバーでは無く、奴が手に持っているのはライドブッカーという、別のライダーの専門武器だ。
そして何よりベルトが違っていた。
あの龍騎が腰に巻くのはVバックルではない。白いケース上のボディに中央にはめ込まれた発光体。それを囲うライダーたちを象徴する幾何学的な紋章。
その名はディケイドライバー、次元を渡る世界の破壊者たる印の装備。
「まさか、ディケイドか!?」
そう、そこに現れたのは龍騎ではない。仮面ライダーディケイド。
通りすがりの仮面ライダーを名乗る男が、唐突にミラーワールドに現れたのだ。
「ま、見ているのも寝覚めが悪いんでな。手助けしてやる」
そう言いながら、次々にレイドラグーンを狩る様は、本家の龍騎に勝るとも劣らない実力だ。
新たなるライダーの出現に、レイドラグーンは叩き落され数を減らしていく。
「なんだ、城戸じゃないのか。まっ、祭りはまだ続くようだがな」
破壊者の出現に、王蛇の仮面の下で浅倉が狂気の笑みを浮かべた。
ディケイドほどの実力者なら、自身の衝動を満足させるのに十分な力がある。
そんな浅倉の歓喜の声を耳にしたディケイドは、心底うんざりとした声でこう返した。
「お前の祭とやらに付き合う気は無い。悪いが俺も先約があるからな」
「なにっ!?」
ディケイドのつれない返事に王蛇が眉を上げ反応する。
そんな相手の反応を知ってか知らずか、ディケイドはこう切って捨てる。
「だから、お前は今回はもう退場だ」
その言葉が合図であった。
最後の乱入者がその姿を現す。
『FINAL VENT』
「っしゃああああああ! はああああああああああっ!!」
勢いのある気合の叫びと共に、その男は飛ぶ。
深紅の龍を伴い、天高く宙に飛び上がる。舞い上がる炎柱のように力強く、軽やかに、どこまでも天を駆けあがっていく。
そして男の姿が頂点に達した時、深紅の龍は身を翻す男の身を包み込むかのように旋回する。
やがて、龍の背より主が姿を現す。
足を突き出し、必殺の蹴りの姿勢を形作り、その背に向かい灼熱の吐息を吹きかける。
赤く燃え盛る炎に押され、仮面ライダーは一直線に王蛇に向かい突き進む。
男の名は仮面ライダー龍騎。
ライダーバトルオリジンにおいて、ただ一人だけ人々を救う為に戦った仮面ライダー。
「くっ!? まさか、城戸!」
王蛇の叫びは歓喜か、驚きか。
咄嗟に襲い掛かってきたレイドラグーンを捕まえ盾にする。
だが、王蛇の出来た抵抗もそこまでだった。
必殺のドラゴンライダーキックがレイドラグーンの肉体を貫く。
レイドラグーンは単体で見ればそこまで強力なミラーモンスターではない。
平均的なライダーに比べれば防御力に劣るそれは、ライダーキックの一撃で砕け爆散する。
だが、王蛇の目論見通りキックの威力を落とす事だけは成功した。
構えたベノサーベルでキックを受け止め直撃を避ける。だが、威力は落とせても勢いまでは完全には殺せない。アスファルトの大地を溶かしながら両足の跡を残し押されるまま後退し、その背が何かに当たる。
それは物理的な強度を持つわけでは無い。
だが、そこに何かがあるという確かな違和感だけは感じる。
その銀色の存在の正体を、王蛇は、浅倉は知っていた。
「これは!? オーロラカーテン!? 貴様!」
怒声と共に憎しみの籠った視線がディケイドに向けられる。
気の弱い人間ならそれだけで意識を奪われそうな殺意を向けられながらも、当のディケイドはいけしゃあしゃあとこう返す。
「言ったろ、お前は退場だって。悪いが今回はあんたと遊んでいる暇は無いんでな」
「殺す……」
それが最後の言葉であった。
王蛇の姿はオーロラカーテンの彼方に消えていき、残ったレイドラグーンの群れは3騎のライダーを前に不利を悟ったのか何処かへと撤退していった。
ひとまずの静寂があたりを支配する中、龍騎が腰のバックルからデッキを取り外す。
戦装束が虚空に消えていき、鋼の仮面の下から見慣れた人懐っこい男の顔が姿を現す。
「わりぃ、蓮。心配かけたみたいで」
「無事だったのか、城戸……?」
その浮かべた笑みを見て蓮がいつものように言葉を交わそうとするものの、その言葉が途中で途切れた。
ナイトの仮面の奥で目をぱちくりと何度も瞬きをすると、一瞬だけ視線を天に向け、再度城戸の姿を見る。
だが、変わらない。城戸真司だ。そこにいるのは城戸真司に間違いはない。
何度も城戸の姿を見ては妙なポーズで間を取るナイトの姿は、何ともシュールである。
「おい、蓮、どうしたんだ?」
「いや、お前……」
どう伝えるべきか。そう悩むナイトの言葉を引き継いだのは先ほどまで倒れていたライダーの一人であった。
彼女は城戸真司をじっと見ると、見たままの姿を口にする。
「えっと、貴方透けているけど……?」
「えっ?」
そう、彼女の言葉の通り、城戸真司の姿は透けていた。
城戸の背後にある建物がぼんやりと見える。
そう言われ城戸は自分の両手を見る。
確かに透けている。地面が見える。
「……」
「……」
「……」
「……」
妙な沈黙が支配する中、唐突に騒ぎ出したのは当然城戸真司であった。
「おわあああああっ、おい、なんか透けているよ、俺。透明だよ、俺。俺、透明だよ! なんだこりゃー!?」
全身を弄り、どこもかしこも透明な事に今更ながら気が付いた城戸の声があたり一帯に響く。
その声に、呆れかえって固まっていたディケイド……いや、門矢士も再起動し叫び声を上げる。
「なんだじゃない、この馬鹿野郎! 変身は解くなとあれほど言っただろう! なんで変身を解いているんだ、この馬鹿!」
「いや、普段の手癖でつい……。そうじゃなくて、馬鹿って言った、馬鹿って2度言った!? あ、やべ、なんか成仏しそう」
「成仏するんじゃない! 渡したウォッチをよこせ! 急いで埋め込みなおすぞ!」
士の言葉に慌てて服のポケットを漁るが、焦っているからか当然すぐには出てこない。
なんか成仏しそうな雰囲気に慌て、城戸は悲鳴を上げた。
「あっ、えっと、俺ウォッチをどこにしまったっけ!?」
「大馬鹿野郎! お前、本当に成仏したいのか!」
門矢士を巻き込み大騒ぎを始める城戸真司の姿を見て、いまだナイトの変身を解いていない蓮はこう思った。
ああ、この馬鹿は間違いなく城戸真司だ……と。
現地で手に入れたミラモンをまぜまぜしているので、今回のジェノサイダーはタイプ:炎な模様。
門矢士はシリアスとギャグのどっちもできる貴重なお方‥…