ショッカーライダーに転生して好き勝手に生きる(事など出来ない)お話   作:さざみー

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第97話 episode・RYUKI 幕間・破滅までのカウントダウン

「おい、いい加減に起きろ」

「むにゃむにゃ、あと5分寝かせて……」

「古典的なボケをしているな」

 

 長身の男、門矢士は道路の真ん中で大の字になって寝ていた城戸真司を呆れ半分で蹴り起こす。

 いや、最初は普通に声を掛けて起こそうとしたのだが、一向に起きる気配がないので実力行使に出たのだ。

 

「うおっ!? 一体何が……って、士!? 久しぶりだな! 元気してたか!」

 

 流石の城戸も頭を蹴り飛ばされれば目を覚ます。

 まずは目についた士に挨拶をすると、周囲が夜である事に気が付き、さらには屋外である事に首をひねる。

 少なくとも道路の真ん中で酔い潰れるほど飲んだ記憶はない。

 

 いや、確か蓮と会っていたらネオショッカーが出てきて……。

 

「ちょっとまて、俺は何だってこんなところに?」

 

 そう、ネオショッカーに襲われ、蜥蜴の怪人の鏡を見ていたら意識が遠のいて……。

 徐々に寝ぼけた頭がはっきりとしていき、直前までの記憶が鮮明になる。

 その様子を黙ってみていた士は、城戸がひとしきり騒ぐのを待って、無情にもこう告げた。

 

「とりあえず俺の話を聞け。このままじゃ、お前死ぬぞ」

 

  

※※※※※

 

 

「と、まぁ、こんな感じで士にウォッチを借りた訳だ」

 

 そう思い返し説明をする城戸真司だった存在の言葉を聞いていた秋山蓮や二人のライダーは、城戸真司だと思われるものからそっと視線を逸らす。

 ちなみに、ディケイドの姿に戻った士は若干不機嫌そうに壁に寄りかかり腕を組んでいる。

 

 まぁ、彼らの態度は無理もない。

 

 今の城戸の姿だが、若干くすんだ赤と金の中華風の鎧を身に纏い、顔面はなぜか歯がむき出し。片腕はドラゴンのようになっており、胸にはRYUKIと2021の文字。

 どう見てもライダーでは無く怪人そのものだ。

 そう、今の彼の姿はアナザー龍騎のものである。蓮や二人のライダーがいたたまれない表情なのもそれが原因だ。

 

 見た目が人類の敵とも言える化け物なのに、その醸し出す雰囲気がどう考えても気さくなあんちゃんなのだ。そりゃ見ている側としては認識がおかしくなる。

 

 別に察しが悪い訳でもない城戸は三人の視線に耐え兼ね、ついには士に話を振った。

 

「なあ、士。いい加減この姿何とかならない?」

「自業自得だ、しばらく我慢しろ」

 

 士はその言葉を一言でバッサリと斬る。

 

 城戸の状態を知った士は、急いでクジゴジ堂に出向き龍騎のライドウォッチを借りてきたのだ。その労力をあわや水の泡にされかけたのだから士が怒るのは無理もない。

 なお、その『借りてきた』の頭には『誰もいなかったので無断で』と付く。今頃ソウゴとゲイツがツクヨミに尻を蹴っ飛ばされながら家中をひっくり返して探している最中だろう。こういう時に限ってウォズは不在である。

 

「それよりもお前、自分の状態を理解しているのか? その様子だと全然理解していないだろう」

「え、えっと、変身を解いちゃいけなかったって奴?」

 

 やはり分かっていなかった。

 というか、もう一回話しても忘れるな、こいつ。

 そう判断した士は深いため息をつきつつ、一度は行った説明を城戸に話すように見せかけ蓮に伝えるために話す。多分これが一番効率が良い。

 

「今お前は急速にこの世界の異物になりつつある」

「異物?」

「そうだ」

 

 鏡像の城戸真司とカガミトカゲが行ったのは、これまで何度も行われていた『乗っ取り』では無く、カガミトカゲの本体とも言える呪いの鏡を利用した『すり替え』と言って良い呪術であった。

 結果肉体を奪った鏡像の城戸真司は世界に本物と認識され、魂だけとなった城戸真司は偽物とされてしまったのだ。

 

「それなら、連中は城戸をなぜ放置しておいた?」

「魂だけの状態なら時間経過で消えてしまう。それに、ライダーバトルが強制終了になりミラーワールド自体が消えるしな」

 

 魂だけの存在を助けられる存在は数が限られている。さらにミラーワールドへの侵入可能な事や、城戸真司の存在を正確に発見できる事など条件を増やせば数はさらに減るだろう。

 さらに言えば、連中の計画自体が最終段階に入っており、ミラーワールド自体ももうすぐ消滅する。そうなれば、魂だけの城戸真司はミラーワールドから脱出できずに巻き込まれ消滅する。

 幽霊を閉じ込めておく手段そのものが少ない上に時間も無いため、ミラーワールドに放棄が一番効率が良い方法だった。

 

 実際、士にしても別件で注目していた少年がこの地にやって来ていなかったら、城戸真司の状態やこの地の危機的状況に気が付いていたかどうか怪しいところだ。

 

「今はライドウォッチの力でその馬鹿の魂を保護していたんだが、この馬鹿が自分からウォッチを外したおかげで消滅までの時間がだいぶ削れた。龍騎ではなくアナザー龍騎の姿なのも異物化が進んだのが原因だ。反省しろよ、この馬鹿」

「痛い痛い、痛いってば! 引っ張るなよ! 反省しているってば!」

 

 必要以上に馬鹿を強調して、士はアナザー龍騎の耳に当たる部分を捻り上げる。

 あんな怪物でも痛いんだ。

 魂とか呪いの鏡とか話の半分以上は理解できていない現地の二人のライダーではあったが、それでも聞き逃しの出来ない情報があった。

 

「ねえ、あなた。今ライダーバトルが終わると言ったよね。それにミラーワールドが消えるってどういう事なの?」

「そのままの意味だ。主催者が計画の繰り上げを始めた。もうすぐこのライダーバトルが終わりミラーワールドが崩壊する」

 

 恐らくはスカイライダーやナイトの介入があったため、ライダーバトルの計画を繰り上げたのだろう。抜け出した城戸の魂を放置していたのも、計画繰り上げで手が回らなかったのかもしれない。

 流石の士もそこまで相手の事情が分かる訳では無かった。

 ただ、ネオショッカー主催のライダーバトルで願いが叶う事は無い。それだけはまず間違いないだろう。

 

「ご愁傷さまだが、願いは諦めてくれ。主催者は元々賞品を持ち逃げする気で計画を練っていたというだけだ」

 

 中々悪辣ではあるが、デザイアグランプリならまだしもライダーバトルで願いがかなえられる可能性は少ない。そもそも、ライダーバトルオリジン自体が神崎士郎による詐欺のような物であった。

 まして現在の財団Xが復活させたライダーバトルは、あの頃以上の悪意が渦巻いている。

 城戸や蓮にとっては、珍しい話では無かった。

 

「いや、私は願いなんて無かったから良いんだけど……」

 

 もっとも、その話を聞いても先生と呼ばれたライダーの反応は淡泊であった。

 元々生徒がミラーモンスターに襲われ巻き込まれライダーにならざるを得なかった口だ。そこまで強い願いも無ければ、願いが叶うなどという胡散臭い話に大して期待はしていない。

 むしろミラーワールドが消えてくれるならモンスターと戦わなくて済むだけありがたいぐらいだ。

 

 だが、相方である二本角のライダーは叶えたい願いがあった。

 そう考え彼を見るが、案外堪えている様子はない。むしろ清々しい。

 

「まぁ、そんな気はしていたから仕方が無いよ。それよりも、あんた。えっと士さんだっけ? 聞きたい事があるんだ」

「聞きたい事?」

 

 二本角のライダーの問いかけを士は待つ。

 彼は自分が考えた最悪の想像を心でまとめつつ、落ち着いた口調でこう問いかけた。

 

「ミラーワールドが消えたら、あの怪物どもはどこに行くんだ?」

 

 思った以上に頭が回る奴だな。

 ディケイドの仮面の奥でニヤリと笑いつつ、彼の質問に的確かつ端的に答えた。

 

「一部の例外を除けば、ミラーワールドの崩壊に巻き込まれ消滅するか、ミラーワールドから逃げるかだ」

 

 ミラーワールドが消えると同時に、その崩壊に巻き込まれ消えてしまう。

 しかし、全てのミラーモンスターが大人しく消滅するとは限らない。別の世界に逃げ込む個体も少なくなかった。

 

「つまり町に……あふれ出す!?」

「ちょっとまって、あいつらが町にあふれ出したら大変な事に!」

 

 二本角のライダーの質問の意味を理解した先生と呼ばれたライダーの声にも焦りが混じる。

 半年以上もミラーモンスターと戦い続けていただけあり、あの連中の力はよくわかっていた。あれらがあふれ出したら、住民が逃げる間もなく町は蹂躙される。

 警察は疎か、軍隊ですら歯が立つかどうか怪しい。

 

 現地のライダーにとって最悪の予測は、歴戦の戦士である城戸や蓮にとってはだいぶ甘いものであった。

 蓮は二人に対し、まるで見て来たかのように補足を入れる。

 

「いや、町では済まない。最悪は、世界が滅びる」

 

 声を荒げたわけでは無い。仮面越しに淡々と言っただけだ。

 それだけなのに、二人のライダーたちの目には人類が滅び無残にも崩れ去った街並みと、そこを闊歩するミラーモンスターの姿が見えた。

 あまりにも絶望的な想像に、二人のライダーが何も言えなくなる中、その沈黙を破ったのは当然城戸真司であった。

 

 アナザー龍騎の怪物フェイスのままに、極力陽気な声と仕草で士に問いかける。

 

「でもさ、お前が来たって事はまだ挽回できる目はあるんだろう、士」

「まあな」

 

 城戸の問いかけに、士はディケイドの緑の瞳を建築中の巨大施設に向けた。

 大型複合レジャー施設を謳うそれは、夜の闇に深く沈み不気味な様相を見せている。

 

「ああ、ギリギリな。連中はミラーモンスターを兵器として運用しようとしてる。ニューヨークでの事件はそのテストケースだ」

「本郷さんたちと、どっかの黒いライダーが解決したってアレか」

 

 新聞やテレビなどでも報じられたかなり大掛かりな事件だ。

 馬鹿っぽく見えるがそれでも一応は記者だ。当然だが城戸もそのニュースを心得ている。

 

 だが、無秩序に暴れるミラーモンスターを兵器として運用できる物だろうか?

 当然の疑問を浮かべる面々に、士はこう問いかける。

 

「そうだ。そして兵器として使用するなら必ず存在するものがある」

 

 その言葉をそれぞれが考える。

 餌を捕まえる為に無秩序に暴れるのがミラーモンスターだ。一部例外はあるが、あいつらに言う事を聞かせることなど不可能だろう。

 だが、一部例外はあるにはある。それが自分たちが使っているデッキであり、Vバックルだ。

 

 確かにニューヨークでの事件の映像には摩天楼を襲うレイドラグーンに混じって、契約したと思われる量産型ライダーの姿が映っていた。

 なるほど。通常ならどうやっても制御など出来るはずもないミラーモンスターを、ライダーとの契約という形で縛り兵器として運用していたのか。

 

 三人がそれぞれその結論に到達する横で、城戸が素っ頓狂な声を上げる。

 

「な、何があるっていうんだ、士」

「少しは自分の頭で考えろ! 制御装置だ、制御装置! ニューヨークの事件の残留物に、それらしき装置があったそうだ」

 

 ミラーモンスター達を操るための制御装置である量産型ライダー。そして、それらを制御するためのマスターシステムが本拠地のどこかにある可能性が高いという分析を出したのはショッカーの技術部だ。

 またショッカー技術部は軍勢として運用するために大量のモンスターを同じ場所に送り込むための転移装置がある可能性も示唆している。

 

 ほんとこの世界のショッカーはどうなっているんだ。

 

 別世界の悪辣極まりないショッカーを良く知る士はだいぶ困惑をしていた。

 

 もっとも、そんな内心は元より、今は自分がショッカーの指揮官だという事すらおくびにも出さずにこう締めくくる。

 

「ま、それを守っているのはこの馬鹿の身体を乗っ取ったリュウガ本体だろうがな」

 

 これから敵の本拠地に潜入し、そこを守っているだろう量産型ライダーやミラーモンスター、さらにはリュウガを倒しミラーモンスターの制御装置を奪取しなければならないのだ。

 中々タフなミッションが待っているが、いつもの事ではあった。

 




次回は現実世界サイトのお話。
龍騎編が過去最長になってしまった……。


Q.ウォッチを借りるのに、置手紙とかしなかったの?
A.門矢士だから(風評被害)。城戸の状態がかなりまずかったので、割と慌てていたのでそこまで気が回らなかった。
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