ワールドトリガー・Returner from another world   作:もりいぬ

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自分の文才のあまりの無さと、心理描写のあまりの下手さに辟易する今日この頃です。
今回もまた短めです。



ボーダーの異端児

 遊真と千佳が迅、修と合流し、遼河が立ち去った後。これから起こり得るボーダーからの襲撃に対して迅の出した「最もシンプルな解決策」は、遊真をボーダーに入れるというものだった。

 あまりに突飛な提案に、修は今日だけで何度目か分からない驚きの顔を見せる。

 

「空閑を、ボーダーに入れる!?」

「おっと、別に本部に連れてくわけじゃないぞ? ウチの支部に来ないか、って話だ。ウチの隊員は向こうの世界に行ったことある奴も多いから、おまえが向こう出身でも騒ぐ奴はいないよ。物は試しってことで、1度来てみたらどうだ?」

 

 その提案に対して遊真は暫く考えた後、1つの結論を出した。

 

「オサムとチカが一緒ならいいよ」

「よし、決まりだな。それじゃ行くぞ」 

 

 そうして迅に連れられしばらく歩いた修たちは、川のど真ん中にある建物にやってきた。どうやらそこは年季が入った建物のようで、ところどころ塗装が剥がれてレンガの壁が丸見えになっている。

 

「川の真ん中に立ってるんですか……!?」

「ああ。元々ここは川の何かを調査するための施設で、使われなくなったところを買い取って改装して基地にしたらしい。いいとこだろ?」

 

 迅はスマホを確認すると、今は隊員たちが誰もいないことに気づいた。

 

「ウチの隊員はみんな出払ってるっぽいけど……何人か基地にはいるかな?」

 

 この時、修はふと頭の中にある考えが浮かんだ。──迅の同僚というのだから、玉狛支部の隊員はみんなやり手なのだろうか──と。

 すると、我が家に帰ってくるような様子で迅がドアを開けた。

 

「ただいま~」

 

 そんな軽いノリでいいのか、と驚く3人を出迎えたのは──1人の子どもとカピバラだった。

 カピバラにお子様が乗っているという訳の分からない状況を前に呆然とする修たちをよそに、その子どもが口を開く。

 

「お? またしんいりか……おぶっ!」

「『新入りか』じゃなくてだな」

 

 上から目線を決め込むその子どもに対し、迅がヘルメットの上からチョップをかます。

 それからほどなくして、上の階からメガネをかけた女性が下りてきた。

 

「迅さん、おかえり~……あれ、え、なに!? もしかしてお客さん!? やばい、お菓子ないかも! 待って待って、ちょっと待ってぇ~!」

 

 修が呆気に取られているうちに、あれよあれよと3人は玉狛支部の中へと案内され、気付けばお茶とどら焼きを出されていた。メガネをかけたその女性はニコニコと笑いながら、3人にどら焼きを食べるよう促す。

 

「どら焼きしかなかったけど、このどら焼きいい奴だから。食べて食べて~」

「いただきます」

「あ……はい。いただきます」

「これはこれは、ずいぶんとりっぱなものを」

 

 遊真はメガネの女性に頭を下げた後、どら焼きに手を伸ばして頬張ろうとした。

 その時、横から伸びてきた小さい手が遊真のどら焼きを奪い取ろうとして──その前に誰かに担ぎ上げられた。

 

「こーら。陽太郎くんは自分の食べたでしょ?」

「あまいな、ひとつでまんぞくするおれではない!」

「それでも、人のもの勝手に取っちゃダメだよ?」

「むー……」

 

 小さい手の主こと陽太郎を担ぎ上げたのは、明るい茶髪のミディアムヘアーが特徴的な、愛嬌たっぷりの女の子だった。

 どうやら陽太郎は彼女に強く出られないようで、目の前のどら焼きを前に意気消沈してしまっている。

 

「あやめちゃん! ちょうどよかった、陽太郎のことお願いできる?」

「はーい! ほら行こ、陽太郎くん。わたしの分のおやつあげるから、ね?」

「おおー! さすがあやめちゃん! ほめてつかわすぞ」

 

 どら焼きが貰えると知った陽太郎は即座に復活する。そのまま陽太郎はあやめと呼ばれた女の子に担ぎ上げられ、2人揃ってどこかへと去っていった。

 

「あはは、ごめんね。陽太郎ったら、人のものを取る癖があるんだ」

「そ、そうなんですか……」

「あ、そうだ。アタシは宇佐美栞。よろしくね!」

 

 修は同じボーダーとは思えないほどとてつもなく緩い玉狛支部のペースに圧倒されながら、「宇佐美栞」と名乗ったメガネの女性と話し始めた。

 

「ここは、ずいぶんと……。本部とは雰囲気が違うんですね」

「そう? まあウチはスタッフ全員で11人しかいない、ちっちゃーな基地だからね。でも──ハッキリ言って、みんなすごく強いよ。うちの防衛隊員は迅さんも入れて5人だけだけど、()()()()()()()()のデキる人だよ。玉狛支部は少数精鋭の実力派集団なのだ!」

全員……A級……!?

「うん。キミもうちに入る? メガネ人口増やそうぜ!」

 

 ──「全員がA級」

 その栞の発言に、修は息をのむ。その言葉が事実なら、少なくとも玉狛の隊員たちは全員が三輪隊と同等か、それ以上の強さを持つことになる。

 そこで、今まで少しおどおどしながら話を聞いていた千佳が栞に話しかけた。

 

「あの……。さっき迅さんが言ってたんですけど、宇佐美さんも、向こうの世界に行ったことがあるんですか?」

「うん、あるよ。1回だけだけど」

「じゃあ! その向こうの世界に行く人間って、どういう風に決めてるんですか?」

 

 珍しく自分からぐいぐい話しかける千佳に、修は少しばかり驚いた。修は今の今まで、これほどまでに積極性のある千佳の姿をほとんど見たことがなかった。

 

「うーんとね、A級隊員の中から選抜試験で選ぶんだよ。大体はチーム単位で選ばれるから、アタシも一緒についていけたんだけど……」

「A級隊員って、やっぱりすごいんですよね?」

「うん。400人以上のC級、100人のB級のさらに上だからね。そりゃあすごい人ぞろいだよ」

 

 その時部屋のドアが開かれ、迅が入ってきた。

 

「よう、3人とも。今日は親御さんに連絡して、うちに泊まってけ。ここなら、本部の人たちも追ってこない。宇佐美、面倒見てやって。あやめもいるから、2人でよろしくな」

「ラジャー!」

 

 こうして、3人は今日1日を玉狛支部で過ごすことが決まった。

 3人は適当な空き部屋を見つけると、自分の泊まる部屋を決める。その最中に遊真が雷神丸の部屋や迅の部屋を開けていた。雷神丸の部屋はともかく、迅の部屋にはぼんち揚の段ボールがこれでもかというレベルで積みあげられていた。

 迅は徐にぼんち揚を1つ取ると、遊真たちに差し出す。

 

「食う?」

「ご飯前なのに駄目ですよ! 遼河さんにも言われてるでしょ!?」

「うっ……。それを言われるとなぁ……」

(遼河さん……?)

 

 修は栞の言った「遼河さん」という発言が少しばかり気になったが、あまり気にすることでもないとしてこの時点ではスルーした。そして部屋も決まり、夕食時になったのだが……。

 午後5時半を回ったころ、台所にいたあやめが突如として悲鳴を上げた。

 

「ああーーっ!!」

「え、なになに!? どうしたのあやめちゃん!?」

「買い出しに行くの、忘れてた……。冷蔵庫、キャベツときゅうりしかない……!」

「「「え」」」

 

 栞、修、千佳の声が綺麗にハモる。慌てて栞が冷蔵庫を見てみると、まともに食べられそうなものは本当にキャベツときゅうりしかなかった。

 一応あやめが前日に作っていた残りのカレーがあるのだが、陽太郎と迅も含めた7人で食べるとなるとまず足りない。だからといってキャベツときゅうり、それに加え僅かに残っていたバターで何が作れるかと言えば──何も作りようがない。漬物を作ろうにもお酢がないし、そもそも即席で作れるものでもない。料理が得意で創作料理のレパートリーも数多いあやめですら、こればかりはお手上げだった。

 結局遊真と陽太郎がすぐそばの川で何かを釣ることになり、その間にあやめがあれやこれやと準備することになった。

 

「修くん……だっけ?」

「あ、はい。そうです」

「じゃあ修くんたちは、そこに座ってて! わたし、お料理得意なんだよ~?」

 

 修はあやめを手伝おうとしたが、結局あやめに促されるがまま、千佳と一緒に椅子に座って待つことになった。

 それから数時間が経過し、一応ご飯だけは炊けたものの、遊真と陽太郎の釣果は壊れたラッド一体だった。当然、食えたものではない。しかも6人がラッドに気を取られている間に雷神丸が鍋をあさってカレーを残らず食べてしまったので、いよいよもって白米以外に食べるものがなくなってしまった。

 料理が得意とは言ったが、作るための食材が無ければどうしようもない。その場の全員が途方に暮れていたその時、栞の持つ端末から警報音が鳴り響いた。

 

「どうしたんですか!?」

「基地の警備システムと連動してるの。基地内に侵入者が入り込んだみたい!」

「ええっ!?」

 

 その侵入者は、6人のいるリビングに向かっているようだった。宇佐美が迅に連絡を取ろうとしていたが、繋がらない。

 打つ手がないまま、侵入者によってドアが開かれる。が、その正体はその場の全員が全く想像していない相手だった。

 

「デリバリーサービスでーす、ピザの配達に参りましたー」

「え?」

「ああ、すんませーん! チャイム鳴らしても出なかったもんで……」

 

 まさかの侵入者の正体に拍子抜けする6人。しかし、この場の誰も誰がいつそんなものを注文したのか分からない。

 

「だ、誰が注文を……?」

「ああ、おれだ。今日の夕飯にアクシデントが起こるって、おれのサイドエフェクトがそう言ってたからな」

 

 ひょっこり現れた迅の発言に対する6人の今の心情は、あやめが直後に発した「先に言ってよぉ……」という言葉が全てだった。

 結局迅を交えた7人は宅配されてきたピザを食べながら、談笑の時間をしばし楽しむのだった。

 

 

 やがて、皆が夕食を食べ終わってしばらくして。

 迅が「もうすぐボスが帰ってくるから、遊真とメガネくんは会う準備をしておいてくれ」と言いだした。それに従った修と遊真は迅に連れられ、支部長室へと招かれる。迅が扉を開けた先には、これまたメガネをかけた温和そうな男性が座っていた。

 

「失礼します。2人を連れてきましたー」

「おっ、来たか。……おまえが空閑さんの息子か。はじめまして」

「どうもどうも」

 

 玉狛支部の支部長の席に座るその男性は、メガネに煙草が似合うどこかダンディな出で立ちだった。

 

「俺は林藤匠。おまえのことは迅と三雲くんから聞いてるよ。玉狛(うち)にお前を捕まえる気はないから、安心してくれ。──ただひとつだけ、教えてくれ。おまえは親父さんの知り合いに会いに来たんだろ? その相手の名前って、分かるか?」

()()()()()()()。親父の言ってた知り合いの名前は、『モガミソウイチ』だよ」

 

 遊真が「モガミソウイチ」という名前を言ったとたん、迅と林藤支部長の纏う雰囲気が変わったのが修には分かった。

 

「──そうか。やっぱり、最上さんか……」

 

 林藤支部長は煙草を灰皿へ落とすと、ぽつぽつと話し始めた。

 

「最上さんはボーダー創設メンバーの1人で、お前の親父さんのライバルだった。そして、迅の師匠()()()

(だった……?)

 

 師匠「だった」。その言葉回しに修は違和感を覚える。

 すると、迅が腰に番えていた長く黒い棒状のものを大事そうに林藤支部長のデスクに置いた。

 

「……迅の持ってるこの(ブラック)トリガーが、最上さんだ」

「じゃあ、その最上さんは……」

 

 林藤支部長は「ああ」と頷くと、再びぽつぽつと語り出す。

 

「……最上さんは、5年前に(ブラック)トリガーを遺して死んだ」

「そうか。このトリガーが……」

 

 遊真は迅の(ブラック)トリガーにふれると、どこか悲しげな表情を見せる。遊真のそんな表情を見たのは、ここ数日一緒にいた修も初めてのことだった。

 そして林藤支部長は、話の本題を切り出す。

 

「最上さんが生きてれば、きっと本部からおまえを庇っただろう。俺は新人の頃、空閑さんに世話になった恩がある。その恩を返したい。もしおまえがうちに入ってくれれば、俺も大っぴらにおまえを庇える。本部と正面切ってやりあえる。……どうだ? 玉狛支部に入ってくれないか?」

 

 遊真はしばらく林藤支部長を真っすぐ見つめた後、その提案を断った。それを聞いた林藤支部長は「そうか」と残念そうに頷いたのち、「気が変わったら言ってくれ。俺は急がないよ」とだけ言い、話を終えた。

 そして林藤支部長との話を終えた遊真と迅は、屋上に向かう。空閑はなんとなく、夜風に当たりたい気分だった。

 

「わるいね、迅さん。せっかく誘ってくれたのに、断っちゃって」

「別にいいさ。決めるのは本人だ。おまえが後悔しないようにやればいい。それよりも、お前の話を聞かせてくれよ。今までの、おまえと親父さんの話をさ」

 

 そして遊真は、なぜ自分がこの世界に来たのかを話し始めた。

 

 

 





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