ワールドトリガー・Returner from another world 作:もりいぬ
オリキャラ2人のプロフィール更新を行いました。
しれっと本編では出していない情報を小出ししてることもありますので、宜しければご覧ください。
それではお待たせしました。1週間ぶりの続編となります。
争奪戦を終えた次の日。いつも通り日課のジョギングから帰ってきた後、玉狛に新しく入ってきた3人に新しい動きがあった。
まず空閑は、メインウェポンをスコーピオンに決めたらしい。なるほど、確かに空閑の戦い方に合っているだろう。空閑の戦い方は、非常に洗練されている。それは俺の目から見ても明らかだ。加えて、小柄であることを活かした軽快な身のこなしだけでなく、応用力も高い。扱い方次第で自由に姿を変えるスコーピオンはまさに抜群の相性だ。
それに小南との模擬戦を見るに、空閑のスタイルは待ちというよりも高速機動からの一撃必殺を決めるというアサシンのような戦法を得意としているようだ。重さのある弧月やレイガストよりも、重さがなく高速機動の邪魔をしないスコーピオンとのシナジーは極めて高いように見える。まあ、小南はいつも通り「何を使ってもあたしには勝てないだろうけど」と強気だったが。
そんな空閑は今日も今日とて小南に挑戦しているが、最高戦績は7-3で、小南に負け越している状況が続いている。どうやら俺への挑戦権を得るのはもう少し先の話になりそうだ。
千佳は、レイジさん曰く「狙撃のセンスが際立って高いわけではない」らしい。しかし師匠のアドバイスをしっかり聞き入れる素直さと、一晩中弾を撃ち続けられるほどの無尽蔵なトリオン量に加え、そのトリオン量に物を言わせた豊富な練習量がそれをカバーしている。おかげで今年中には確実にB級に上がれる程度の腕前はついてきているという。そこで、入隊を前にしていきなり実戦的な狙撃手の動きを教えることにしたらしい。本来実戦的な狙撃手の動き方はB級になってから学ぶものなのだが、ここに関してはレイジさんが師匠なのが大きいだろう。
一方三雲と京介は悪戦苦闘しているようだ。
無理もない。三雲のトリオンは戦闘員としては前代未聞の「2」だ。言わずもがな、全戦闘員の中でぶっちぎりのビリである。トリオン量がトリガーの性能に直結する以上、武器の性能も貧弱というほかない。シールドを展開したところで簡単にかち割られてしまう。
だからこそ、三雲がメインにセットしているレイガストの防御性能が光る。レイガストは重さこそあるが、盾モードという機能を有する攻防一体のトリガーだ。特に盾モードのレイガストはかなり硬い。普通の手段で破壊することは困難だ。トリオン弱者でシールドが脆くとも、最低限の防御力は確実に得られる。というか、三雲に関してはシールドを張るよりもレイガストを使った方が突破されにくいらしい。……だとすれば、シールドを入れる意味はあるのだろうか。
だが問題はそこではない。そもそも三雲には戦闘センスがないのだ。おかげで京介は「どうやって三雲を戦闘で活かすか」でだいぶ悩んでいるらしい。そんな三雲はこの間、京介に「
というのも、本来
後輩の成長は一旦置いて、今の俺の状況を説明しよう。
俺は今、ボーダー本部にいる。というのも昨日、風間さんから風間隊の隊室に来い、とメールでの呼び出しを受けていたからだ。説教でもされるのかと思ったが、どうやらメールの内容を見る限り違うようだ。なにやら、俺に会わせたい人間がいるらしい。しかし、俺は風間隊の隊室がどこにあるのかちっともわからない。なので、風間さんに案内してもらうことにした。
……風間という名字を聞くと、旧ボーダー時代の仲間を思い出す。あの人は、林藤さんからよく可愛がられていたな。そんなあの人もまた、先の戦争で帰らぬ人になってしまった。そんな物思いにふけっているうちに、俺はいつの間にか風間さんとの待ち合わせ場所にたどり着いていた。
どうやら俺の方が早かったらしい。風間さんがやってきたのは、それから数分後の事だった。
「ずいぶん早いな」
「相手を待たせるのはよくないので」
「そうか。良い心がけだ。──ついてこい」
しばらく、風間さんの先導のもとボーダー本部を歩く。
……ボーダーに復帰して1か月が経つが、俺は未だにボーダー本部の内部を2割も覚えていない。せいぜい大会議室と本部長室への行き方がわかるくらいだ。俺の行動拠点が本部ではなく玉狛というのもあるんだろうが、だとしても隊室1つ分からないはさすがにどうかと自分でも思う。風間隊は数日前に遠征から帰ってきたばかりだから隊室がわからなくても仕方ないとして。
通路、曲がり角、エレベーター、また通路……。何度同じような風景を見たか分からなくなってきたころ、風間さんは1つの部屋で足を止めた。どうやら、ここが風間隊の隊室らしい。風間さんはトリガーホルダー認証にて扉を開けると、俺に「入れ」と促した。
「ここが……」
風間隊の隊室は、小綺麗な部屋だった。どうやら誰かが掃除しているらしく、とてもきれいに片付けられている。ここまで片付けられた部屋というのはそうお目にはかかれないと思うくらいには整理整頓が行き届いていた。ソファーに座ると、風間さんが牛乳をコップいっぱいに注いで持ってきてくれた。
──「なんで牛乳?」というツッコミを心の中にとどめつつ、俺は風間さんに話題を切り出す。
「ところで、俺に用があるっていうのは……?」
「用があるのは俺じゃない。うちのオペレーターだ」
「オペレーター?」
「お前のことを知っているみたいだったからな。お前と会わせようと思ったが──今は丁度いないらしい。少しここで待っていろ」
「あ、はい」
それだけ言い残すと、風間さんは隊室を出ていった。
(俺のことを知ってる……? 誰だ?)
……「風間隊のオペレーター」というのが誰かは分からないが、どうやら向こうは俺のことを知っているらしい。いったい誰だ。
このボーダー内で俺と面識のある人間はそう多くない。レイジさんからは「本部に旧ボーダー時代からの正隊員はオペレーターを含めても誰もいない」と聞いている。だから旧ボーダー時代からの顔見知り、という線はないだろう。風間さんの兄さんはすでに亡くなってると聞いたし、今生き残って本部にいる旧ボーダーの人たちは軒並み上層部か、重要な役職にいると聞いている。風間隊のオペレーターというわけではあるまい。
一瞬真都ちゃんという可能性も考えたが、真都ちゃんは林藤さんから「一般人に戻った」と聞かされているから、除外できる。
(いつか、真都ちゃんに会いに行こうか。仲は良かったし、『帰ってきたぞ』って直接言いたいからな)
牛乳を飲み終えて暇になったので、しばらく無人の隊室を自由に見て回ることにする。
見れば見るほど、整頓された部屋だ。散らかしようがない、と言ってもいい。……ところどころ宇佐美の部屋で見たような物があるのは気のせいではあるまい。宇佐美は元々風間隊のオペレーターだったらしいからな。
それからもう少し部屋を見て回っていた時……ある物の前で足が止まった。
「これ──」
俺が手に取ったもの。それは何の変哲もないブローチだった。
だが、これはただのブローチではない。今から10年近く前、幼馴染の誕生日にプレゼントとして渡したものだ。10年以上前のものであるにもかかわらず、未だに手入れされているのがよくわかる。同じブローチなんじゃないのかと言われればそれまでだが、このブローチには明らかに年季が入っている。
そこで思い出したのは、忘れるはずもない、ある女の子との記憶。今俺の手の中にあるブローチは、絶対に俺があの時「彼女」に渡したブローチだと言い切れた。そして、これが風間隊の隊室にある。
この事実から導き出される答えは、1つしかない。
(まさか……)
その時、扉が開く音がした。俺は目線をそっちに向ける。
そしてそこに立っていたのは……俺の予想通りの人物だった。
「あっ、お疲れ様で──!?」
その女の子は俺に挨拶をしようとしたが──俺の姿を見て、固まった。同時に、手に持っていた書類が床に散らばる。かなりの量だ。慌てて書類を拾う彼女を手伝う。数分もしないうちに、全ての書類を拾い終えた。そこで俺たちはようやく、お互いの顔をはっきりと見合った。
……何も、変わっていない。俺の記憶の中の彼女と、今の彼女は、何も変わっていない。記憶よりもだいぶ成長して、大人びてはいるが、それだけだ。俺には、わかる。笑顔が眩しくて、誰にでも優しくて、俺のことを本当の兄と思って慕ってくれていた彼女に、声をかける。
「──歌歩」
「……
目に大粒の涙を浮かべる歌歩を受け止める。
……歌歩と俺の関係を語るには、少し昔の話をしなければならない。まあ、昔俺が両親を亡くした時、身寄りのない俺を三上家が引き取ってくれたってだけの話だが。だから俺にとって「三上歌歩」という女の子は、1人の幼馴染である以前に──大事な家族でもあった。歌歩が俺を「お兄ちゃん」と呼んだことで、俺は昔に戻ったような感覚になった。
……俺がボーダーに入ってからというもの、俺と歌歩──というより、三上家との付き合いは一気に減った。月に一度くらい顔を見せに行くことはあったけど、それだけだった。それでも、彼女は俺のことをしっかりと覚えていてくれた。大事にされていたブローチが、その証拠だ。
数分くらい経って、ようやく歌歩は落ち着いた。歌歩が、ぽつぽつと口を開く。
「……わたしね、お兄ちゃんを探すためにボーダーに入ったんだ」
「……!」
「ボーダーに入って、絶対に見つけるんだって。──でも、わたしには戦う力がなかったの」
……「戦う力がなかった」。それはつまり、トリオン能力の不足を意味するのだろう。
ボーダーにおける防衛隊員になるための試験では、一応ペーパーテストみたいなものがあるという。だが、忍田さん曰く形式的なものらしい。実際は基本的に「トリオン能力」または「犯罪歴」以外で落とされることはほぼないと聞いた。要は頭が悪くても戦闘員にはなれる。明らかにバカっぽい米屋がその好例だろう。
が、当然その逆もある。どんなに頭が良くても、
「だから、オペレーターになったの。でも遠征に行きたいなら、A級部隊のオペレーターにならなくちゃいけなくて」
「……風間隊のオペレーターになったのは、それが理由なんだな」
「うん。栞ちゃんのおかげ」
「栞って、宇佐美の?」
「栞ちゃんが、次の風間隊のオペレーターにはわたしを推薦するよ、って言ってくれたんだ。だから、引き受けたの」
歌歩にとって、宇佐美の推薦は願ってもないことだっただろう。
今の風間隊はA級3位、遠征に行くには申し分ない実力を持っている。もっとも俺は偶然開いていた
向こうに行きたい歌歩にとって、宇佐美の推薦はとても魅力的だったに違いない。しかし……。
「……歌歩が遠征に行っていた時期に、俺はこっちに帰ってきた」
「入れ違い、になってたんだね」
そう。レイジさんあたりから聞いて知ったことだが、俺があやめを連れてこっちに帰ってきたのと近いタイミングで、ボーダートップチームが遠征に出ていたのだ。正確な時期はよく分からないが、少なくとも俺がボーダーに復帰を果たした頃には、すでにボーダートップチームは遠征へと赴いていた。つまり完全な入れ違いだ。
だが歌歩がボーダーに入っていたことで、またこうして出会うことができた。歌歩がボーダーに入ったのは決して無駄じゃなかったってわけだ。
「本当に、待たせちゃったな」
「待ったよ……。ずっと、待ってたよ……!」
きっと、歌歩も俺を探すために行動し続けていたんだろう。5年間俺が歌歩のことを忘れなかったように、歌歩も、5年間俺のことを忘れてなんていなかったんだ。
お互い、いろいろ言いたいことはあるかもしれない。
──だが、今はお互いに一言だけ言えば十分だ。
「……ただいま、歌歩」
「──おかえりなさい!」
その言葉と一緒に、確かな温もりを受け止めた。
実は原作において歌歩の一人称は未だに不明です。そのためここでは作者の独断と偏見で平仮名表記の「わたし」にしています。
アンケートがございますので、是非とも気軽にお答えください。