ワールドトリガー・Returner from another world 作:もりいぬ
多くのキャラの描写を行う困難さを噛みしめながら小説を執筆する今日この頃です。
オリ主が地味にとんでもないことをやっていますが、目立った活躍はもう少し先となります。
「基地東部で風間隊と新型が戦闘を開始! 諏訪隊長が新型によって捕獲された模様! 南部では東隊の小荒井隊員が
「それはいかん! いかんぞ! 市民に被害が出ればボーダーの信用が……!」
司令室内は緊迫した雰囲気が漂っていた。ただでさえ過去に類を見ない圧倒的なトリオン兵の物量に加えて、「トリガー使いを捕らえる」という新型トリオン兵の登場によって、ボーダーの対応は後手後手に回らざるを得なかった。
沢村の言うとおり、すでに司令室のレーダーマップにはいくつかのトリオン兵の反応が警戒区域を超えようとしている様子がまざまざと映っている。根付メディア対策室長はこの緊急事態に顔色を青くしていた。
そんな根付をよそに、忍田本部長が報告を促す。
「捕獲された諏訪の状態はどうなっている?」
「
「よし、諏訪は風間隊が取り返す! その他の部隊は、可能な限り部隊単位で新型への対処に当たれ!」
「本部長!? それでは街に被害が……!」
「部隊の合流が先決だ! 戦力が劣った状態で当たれば、新型に喰われる! トリオン兵の群れを追った先で新型と遭遇する可能性がある以上、迂闊に動かすことはできない! 交戦中の部隊は、戦力の維持を最優先しろ!!」
「しかしこのままでは──!」
忍田本部長は根付対策室長の発言を一蹴し、「部隊の合流」を優先する方針を出す。
なおも根付対策室長は街の防衛を優先すべきと訴えたが、その言い争いを収めたのは、他でもないボーダーの最高責任者だった。
「……戦力をここで失えば、この先が苦しくなる。ボーダー本部司令として、私は本部長の判断を支持する」
「城戸司令……」
「だが……そのやり方では、新型に手古摺れば市街地が壊滅するぞ?」
「分かっている。待つのはA級の部隊が合流するまでだ。新型はA級部隊が止める。そしてA級が揃い次第、B級は全部隊合同で市街地の防衛に当たる」
「ぜ、全部隊……!?」
根付対策室長の驚愕はもっともだった。B級はボーダーの主力だ。それを一極集中するということは、どうやっても1方向しか防衛できない。つまり、他の方角に現れた敵への対処が不可能になることを意味する。
しかし、忍田本部長は冷静だった。
「半端に兵隊を分けるよりも、集中して1か所ずつ確実に敵を排除する。その間、他の地区への被害はある程度覚悟していただく」
「助けに行く地区の順番はどう決める? 後で文句が出るぞ」
「『最も避難が進んでいない地区』を基準とする。他に質問はあるか?」
「……では万が一、A級でも新型を止められなければどうする?」
城戸司令の質問は、文字通りの最悪の想定だった。忍田本部長もまた、しばし考え込むような様子を見せる。
「……有り得べからざることだが」
──隊員1人1人の実力はともかく、ボーダー全体の実力は疑うまでもない。現に忍田本部長は、今ある戦力を総結集すれば十分に三門市の防衛は可能だと判断している。しかし、A級でも新型を止められない可能性は確かにある。
だからこそ、忍田本部長の出した結論は1つだった。
「その場合は、
その時、南の警戒区域の外れで大きな動きがあった。
レーダー上にいたトリオン兵の反応が、一気に消滅したのだ。
「……!? 南部、敵のトリオン反応消失!」
「なに!?」
沢村の報告で上層部がモニターを見ると、警戒区域の南端を突破しようとしていたトリオン兵の反応が現在進行形で消えている。それも、恐ろしい速度で。根付対策室長と鬼怒田開発室長はその光景に目を見開いたが、忍田本部長だけはそれを誰がやったのか、よく理解していた。
──今のボーダーに、こんな大それたことができる部隊は存在しない。出来るのは部隊でも何でもない、たった1人。程なくして、その隊員から通信が入る。
『こちら月城、現着! 南部のトリオン兵を掃討する!』
「月城隊員!」
「遼河、他の部隊はそっちに回せないぞ。やれるか?」
とはいえ、忍田本部長はその質問に対し遼河がどう答えるかをすでに理解していた。そして遼河は、忍田本部長の思ったとおりの解答を返す。
『当然。──
「よし、その場のトリオン兵を掃討しろ! 警戒区域からトリオン兵を外へ出すな!!」
『了解──!』
まもなく通信を切った遼河は、眼前に迫る数十数百のトリオン兵と相対する。
襲い掛かってきたモールモッドを一刀のもとに切り伏せ、剣を構え、静かに宣言した。
「1体に3秒も使わない──まとめて斬り捨ててやる」
──────
その頃、基地南西部でトリオン兵の群れを退治していた修たちの方にも、ラービットの魔の手が迫っていた。
突如として崩壊した建物の中から急襲をかけてきたラービットの一撃を、修はどうにかレイガストでガードする。修のシールドは貧弱だが、レイガストは頑丈だ。シールドよりもレイガストを使った方が割られにくいのである。どうにかラービットののしかかりを凌いだが、次に振り下ろされる拳を凌げる保証はない。修が
「『
それよりもはるかに重たい一撃が、ラービットの腕を直撃した。「
修には何が起きたか分かった。遊真が、
「空閑!
「でも、このままじゃチカがヤバいだろ。それに、『ちょっとでもヤバいと思ったら使う』って決めてたからな」
「だからって──」
「この際だ。出し惜しみはしてられない。一気に行くぞ」
遊真がそう言ったのと、突如として飛んできた弾丸が遊真の身体を掠ったのは同時だった。
「命中した! ──やっぱコイツ、ボーダーの人間じゃねえ! 人型
「こちら茶野隊、人型
「そこのメガネは早く逃げろ!!」
「な、ちが……!」
駆けつけた茶野隊による、遊真への誤射だ。
無理もないだろう。今の遊真はボーダー規格のトリガーではなく、
だが、その横から遊真が仕留め損ねたラービットがゆらりと立ち上がり、茶野隊を捕らえた。
「新型──!? しまった……!」
そこへ、頼もしい助っ人が駆けつける。
降り注ぐアステロイドの雨が、すでに壊れかかっていたラービットの装甲を貫く。茶野隊を捕らえようとして両腕がふさがっていたラービットは防御ができず、ついに弾丸の1発が弱点である目に直撃し、ラービットは沈黙した。
「目標沈黙!」
「あ──嵐山さん!!」
「三雲くん、無事か!?」
警戒区域間際への防衛に駆け付けようとしていた嵐山隊が、修たちのピンチを聞き救援へと駆けつけたのだ。
なおも遊真のことを誤解する茶野隊を、嵐山が諫める。しかしそれと同時に、本部では異常事態が起こっていた。
「あれは……!」
「爆撃型トリオン兵、イルガー!?」
嵐山たちの視界の先、上空を飛んでいたのは、2体のイルガー。しかも、すでに自爆モードに入っている。どうにか1体は撃墜するも、もう1体は間に合わず、ボーダーの壁に激突し大爆発を起こす。ボーダー本部へのダメージを目的とした、文字通りの自爆特攻だ。
されどボーダー本部の外壁にはある程度黒焦げが生じた程度で、まだ破壊されてはいない。千佳の「アイビス外壁ぶち抜き事件」を機に外壁を強化していた、鬼怒田開発室長のファインプレーだった。
だがその安心も束の間、今度はさらに3体のイルガーが押し寄せてくる。基地の外壁はあと1発しかもたない。しかし、敵は3体。ボーダーの全砲門からの砲撃をもってしても、落とせるのはせいぜい1体だ。2体の攻撃は耐えられない。
しかし、ボーダー本部には「もう1人の切り札」がいる。だからこそ、忍田本部長は砲撃を一点集中することができた。
──十字の斬撃が、イルガーをいとも容易く引き裂く。
「太刀川!!」
ボーダー本部最強部隊の隊長にして「No.1
最後の1発を何とかしのぎ、鬼怒田開発室長は外壁の修復に集中し始めた。同時に忍田本部長が、太刀川に指示を出す。
「慶! お前の相手は新型だ! 好きにやって構わん、斬れるだけ斬ってこい!」
「はいはい。──さて、さっさと片付けて昼飯の続きだ」
それから時を置かずして、「太刀川がイルガーを撃墜した」という知らせを聞いた嵐山が、皆に報告する。
「基地は大丈夫だ! 太刀川さんが敵を墜とした!」
「タチカワさんって、確か迅さんのライバルだった人か。しかし普通のトリガーでイルガー真っ二つにしたのか、すごいな」
「そんなにすごいことなのか?」
「自爆モードのイルガーって、結構硬いからな。そういえばこないだ出てきたイルガーも空中で真っ二つにされてたけど、あれもそのタチカワって人がやったのか?」
その時木虎の脳裏によみがえったのは、あの日の苦い記憶だった。
『さっさと逃げろ。大爆発に巻き込まれたくなければな』
『無駄に高いプライドは、余計な犠牲を生むだけだ』
あの黒コートの弧月使い──月城遼河が駆けつけなければ、間違いなくあのイルガーは市街地に落ちていた。もしそうなれば、計り知れない被害が出ていたことだろう。
あれからというもの、木虎は僅かながら己を顧みた。「A級なのだから未知の敵でも倒せないわけがない」という深層下でのエリート意識が、被害を余計に拡大させてしまうところだったのだ。「隊律」と「市民の命」、失われたら戻らないのはどちらなのか、考えるまでもなかった。同時に、嫌でも理解させられた。あの時の自分は、A級隊員という自らの肩書きに自惚れていたのだと。
そんな考え事をしているうちに、本部からの通信が入る。
『嵐山隊。通信が乱れてすまなかった。新型を仕留めたのだな?』
「いえ、我々が到着した時点で、すでに玉狛の空閑隊員が大きなダメージを与えていました。うちの隊はトドメを刺しただけです」
『なるほど……。つまり、先ほどの報告にあった“人型
「そうです」
それを聞いた忍田本部長は納得と同時に、僅かに安堵する。まだ、先の会議で遼河の言っていた「人型
間を置かずして、修が本部へ要請を入れる。
「忍田本部長! 玉狛支部の三雲です! ぼくたちをC級隊員の援護に向かわせてください! ぼくたちのチームメイトが、その地区にいるんです!」
『そうか……。よしわかった、玉狛の2人は──』
『いや、それは許可できない』
修の要請を受け入れた忍田本部長が許可を出す寸前で、城戸司令が口を挟んだ。
『C級の援護へ向かうのは、三雲隊員だけとする』
「え……!?」
『──先ほど茶野隊が空閑隊員を人型
城戸司令のその命令に対し忍田本部長が意見を述べようとするも、城戸司令は「混乱を与える可能性を抜きにしても、
『
「じゃあ、
『──では、君は
「……そりゃ、無理だ」
『それが答えだ。──お前は父親に似ている。お前の父親も、同じように答えただろう』
遊真と城戸司令の会話は、やけにあっさりとしていた。
そんな中でも、状況は揺れ動く。南部の警戒区域の端にいたトリオン兵が
刻一刻と悪くなっていく状況の中、修の心の内でいくつもの葛藤が生まれる。その葛藤を打ち払ったのは、他でもない修の相棒だった。
「行け、オサム。『チカがやばくなったら助けに行く』って言ったんだ。頼んだ」
「……ああ!」
修がその言葉で決意を新たにした瞬間、横から木虎が思わぬことを口にした。
「嵐山先輩、私も三雲くんに同行します。──私にも、市民を守る責任がありますので」
「木虎……!」
木虎のその発言には以前のイルガー騒動の分のツケを払いたいという思惑もあったのだが、一番は木虎自身の成長でもあった。もし木虎があの時のままだったら、修からの救援要請があったとしても「自分で何とかしなさい」と突っぱねていたことだろう。
嵐山もまた、木虎の意思を尊重することを決めた。
「わかった! 俺たちの分まで街の人をしっかり守ってくれ! ──忍田本部長も、それでいいですよね?」
『構わん。現場の意思を尊重する。……よし、茶野隊はB級合同部隊に合流! 嵐山隊と遊真くんは、警戒区域内のトリオン兵の排除! 木虎と三雲くんは、C級隊員の援護に当たれ!』
『了解!!!』
それぞれの戦いが、もう一度始まる。
──その裏で暗躍する、冷徹な竜の邪悪な笑みに踊らされているとも気付かずに。
オリキャラたちのプロフィールを百科事典風のものに更新+表示を一新しました。良ければ、ご覧ください。
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