ワールドトリガー・Returner from another world   作:もりいぬ

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このたび、本作品に評価をしていただいた方の人数が40人を突破いたしました。
さらに嬉しいことに、ついに評価バーの色が赤色となりました。

応援および評価して頂いた読者の方々には頭が下がる思いです。
本作を手に取り、読んでくださった方々にこの場を借りて心からのお礼を申し上げます。

まだまだ足らない部分もあるかと思いますが、これからも本作をご愛読いただければ幸いです。




「星の杖」の使い手

 エスクードによって寸断された区画の中、迅の揺さぶりによってヒュースの表情が強張る。一方のヴィザは余裕そうな表情を崩さぬまま「星の杖(オルガノン)」を展開し、遊真によってつけられた鎖を瞬く間に断ち切った。

 それを見た迅と遊真は一旦間合いを取ると、即席の作戦会議を始める。

 

『レイジさんの情報によれば、この2人は組ませたらヤバい。角のついてる方が磁力のトリガーで相手を捕らえて、そこをあのお爺さんが特殊な斬撃のトリガーで確実に仕留めてくるって連携だ』

『んー、じゃあバラして戦えばいいわけだな。それにおれは迅さんの戦い方知らないし。連携勝負じゃ分が悪すぎる』

『やっぱ分断する方がやりやすいか』

『うん。おれたちが爺さんをやる。さっきつけた『印』がまだ残ってるし、なにより磁力とやらはようわからんからな』

『OK。それでいこう』

 

 遊真と迅は、2人を分断して1対1に持ち込む判断をした。向かってこない玄界の戦士たちの様子を、ヴィザはただ静観している。

 

『さて、どう仕掛けてきますかな? このまま2対2の勝負に持ち込むか、はたまた分断するか……』

『どちらでも問題はありません。すでに()()()()は打っていますので』

 

 ──両陣営が戦闘態勢に入るのは、ほぼ同時だった。

 だがあらかじめ作戦を決めていた遊真たちのほうが、一手速く動く。

 

「行くぞ、レプリカ!」

【心得た】

(『強』印(ブースト)二重(ダブル)!)

 

 印によって飛躍的に強化された遊真のトリオン体が、足踏み1つで大地を揺らす。地面に亀裂が走り、猛烈な土煙が巻き起こる。その土煙によって、ヴィザたちの視界はほぼなくなる。

 その煙が晴れるより早く、煙から飛び出てきた鎖がヴィザの持つ杖と遊真とを繋ぐ。

 

「っせー、のっ!!

 

 そして遊真はそのまま「強」印(ブースト)の勢いを乗せ、ヴィザを力の限り空高く、遠くへと投擲する。自らもすぐさま「弾」印(バウンド)を踏んで空高くへと跳躍し、ヴィザを追跡する。空中に投げ出されたヴィザは吹き飛ばされながらも、やはり余裕の表情を崩していない。

 

「力任せとはなんとも豪快な……。しかし空中であれば、こちらも気兼ねなく全力を振るえる。──『星の杖(オルガノン)』」

 

 ヴィザは即座に「星の杖(オルガノン)」を構え、追っ手の身体を両断しようと刃を()()する。

 が、異常はすぐさま表れた。

 

(……!?)

 

 あまりにも、展開した刃が重い。

 異変を察知したヴィザが周囲を見回すと、謎の重石が刃の1つ1つに付着し、刃の回転を阻害している。さっきまで不可視の速度だった刃が、今では目視で十分回避できるレベルにまで弱体化していた。

 それを見届けた遊真が、敵の持つトリガーの能力に当たりをつける。

 

【伸ばした円の軌道上を、刃が走るつくりのようだ。盾で防げないのも無理はない】

「レイジさんの予測で大体あってたな」

 

 ヴィザの「星の杖(オルガノン)」を封じたもの──それは、遊真の印である「錨」印(アンカー)だった。

 かつて遊真が三輪隊と交戦した際、三輪の鉛弾(レッドバレット)からコピーした重石のトリガー。接触した相手に対しトリオンの重石をつける効果がある。物理的な破壊力があるわけではないため、シールドを素通りできるおまけつきだ。

 

 ただし、その重さは鉛弾(レッドバレット)のそれとは比べ物にならない。遊真は先の不意打ちの際、ヴィザの持つ杖に「鎖」印(チェイン)のみならず「錨」印(アンカー)も同時に付与していた。その結果として「星の杖(オルガノン)」の展開する刃の1つ1つすべてに凄まじい重量の重石が付くこととなり、ブレードの圧倒的な攻撃速度を妨害していたのだ。

 レイジの予測というものは、「盾をすり抜けられるような軌道上にブレードを設置している」というもの。その予測は、当たらずとも遠からずだった。

 結局のところまともな防御手段がないという意味では、性質が割れたところでどうこうなる代物ではなかった。だが、少なくとも見えるようになれば対処はできる。遊真は付かず離れずの間合いのまま、攻撃態勢に入った。

 

「『錨』印(アンカー)+『射』印(ボルト)四重(クアドラ)!」

 

 追い討ちとばかりに重石の弾丸を射出し、黒い弾丸の嵐をヴィザにお見舞いする。空中という位置ゆえに防御がままならなかったヴィザは弾丸の直撃をいやというほど受けてしまい、上半身のほとんどから重石がせり出す形となった。

 それに乗ずるように、遊真がヴィザの脳天目掛けて蹴りを叩きこむ。蹴り自体は杖で防いだが、威力までは殺し切れずにヴィザは墜落し、ヒュースとははるかに分断された場所へと落ちた。

 

「うーむ……。鎖に加えて重石のトリガーとは……。玄界(ミデン)のトリガーというものは、なかなかに多彩ですな」

 

 そう呟いたヴィザは異常に重たくなった上半身をどうにか起こすと、降り立ってきた遊真と相対する。

 

「ひとつ、訊きたいんだけどさ」

「ほう?」

「なんでわざわざこっちの世界を狙うの? トリオン使える人間が欲しいんなら、よその国から攫って来ればいいんじゃない?」

 

 それは当然の疑問だった。どこの国も、いつの時代でも、侵略される側が「自分たちを巻き込むな」と思うのは世の常である。

 しかしヴィザからもたらされた回答は、遊真の想像の上を行くものだった。

 

「ええ。無論、そのようにしておりますとも。現在、()()()()()()()()我が国の精鋭が派兵されております。ここ玄界(ミデン)もまた、その1つというわけです」

 

 その時レプリカは、今しがたヴィザは零した発言の違和感に気が付いた。

 

(『近隣の国すべてに精鋭を派兵している』……? つまり、完全に本国を留守にしているということか?)

「……少し前まで玄界(ミデン)の民を捕らえるのは容易かった記憶があるのですが、近頃はそうもいかなくなりましてな。他の国を攻める時と同じように、準備と戦力を整える必要が出てきたわけです」

 

 ヴィザはそう言いながら、身を守っていたマントに付着していた重石を取り外す。あの時ヴィザはただ重石を無防備に受けるのではなく、上半身を覆うマントだけに重石が当たるよう空中で体勢をわずかに変えていた。つまり、ヴィザ自身に重石は一切ついていなかったのだ。

 遊真はしばし考えるように沈黙すると、再び質問をぶつける。

 

「……なんでそんなにあちこちから人を集めてんの? あんたたちの国で何か起こってるわけ?」

「それはお答えしても詮無きことというものでしょう。ではもし仮に事情をきちんと説明したとすれば、我々の『任務』を滞りなく遂行させていただけますかな?」

 

 とうとう完全に重石を取り外したヴィザは遊真の問いに対し、逆に質問を返す。それに対し、事情を話す気はないらしいと判断した遊真の答えは、僅か2つの単語で終わった。

 

「いや。全然」

 

 

 

 一方警戒区域の南西端、ヒュースと迅の攻防は泥沼化の一途をたどりつつあった。

 ヒュースは「蝶の楯(ランビリス)」の結晶を大量展開して猛攻を仕掛けているのだが、先ほどから攻撃をことごとく躱されてしまっている。まるでこちらの考えを読んでいるかのような動きをする相手を前に、ヒュースは攻撃を当てること自体がままならない。

 

「攻撃が当たらない……。なんだ、こいつは……?」

 

 そして攻撃を避け続ける迅もまた、内心穏やかではいられなかった。

 ただし、その騒めきはヒュースの攻撃の激しさから起因するものではない。というより迅からしてみれば、一連の攻撃は猛攻のうちにも入らない。

 迅の胸騒ぎの原因は、今この戦いとは直接関係しないまったく別の理由だった。

 

(なんでだ……? こいつらがメガネくんたちに合流できない未来は確定したってのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。てことは、まだなんかあるってことか……)

「──やれやれ、一筋縄じゃ行かなそうだな」

 

 迅はお得意の一撃離脱戦法を駆使しつつ、ヒュースをヴィザがいる方向とは反対方向へと引っ張っていく。

 そうして数分もしないうちに、迅はヒュースを完全に分断することに成功した。

 

「思ってたより、あっさり分断できたな。これでだいぶ楽になった」

 

 迅とヒュースは、光の射さない地下道で相対する。ヒュースは意図的に誘い込まれたことを察し、頭を働かせた。

 

(地下道……。狭さと暗さを両立した場所だ。だとすれば、こいつもなにか『仕掛け』を使ってくるタイプか……? それに、やつには何かしらの形で『攻撃を見切る能力』も備わっている。だが──暗い場所ならこちらの方が有利なことに変わりはない)

 

 今2人のいる地下道に、明かりといえる明かりはほぼない。だからこそ、「蝶の楯(ランビリス)」は暗所の攻防で圧倒的な破壊力を発揮する。「蝶の楯(ランビリス)」から放たれる結晶の色は黒色。

 ──つまり、暗所ではまず見えない。

 

「うおっ、弾が見えん!!」

 

 ヒュースが展開した結晶の弾幕を、迅は二刀のスコーピオンで防いでいく。

 この時迅の視界には、冗談でも何でもなく射出された結晶体はほぼ見えていない。迅の未来視は視界を通して発動する関係上、見えない攻撃を予知することは本来できない。

 ではどう防いでいるのかというと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。つまりこれは予知など無関係の、迅の地力による防御である。

 やがて迅とヒュースは、今までより僅かに広い空間へと抜ける。だが、視界がほぼ皆無に等しいことに変わりはない。ヒュースはそれを利用し、結晶を自分の体を覆うように展開して闇へと紛れた。

 

(暗さに溶け込んで……!?)

 

 迅が目を凝らしたその時、無数の黒い結晶の弾丸が四方八方から迅の身体に襲い掛かる。

 さしもの迅も光の届かない地下道ではヒュースを視界に捉えることも弾丸を見切ることもできず、ついに結晶体の1つが腕へと直撃してしまう。それと同時に、結晶体の保護色で暗闇に姿を隠していたヒュースが姿を現した。

 

(保護色に加えてこの手数……。こりゃなかなか厄介だな)

 

 そう思ったのも束の間、強烈な力で迅の身体が壁に引っ張られる。壁にくっつけられていたらしい結晶体が自分の腕についた結晶体と引き合ったのだと気づくのに、そう時間はかからなかった。

 ヒュースは分断されたことへの意趣返しと言わんばかりに迅を挑発する。

 

「思いのほか、楽に捕らえられたな。貴様の仲間は迷わず自分の腕を斬ったぞ」

「ふーむ……」

 

 が、迅の表情は崩れない。

 それどころか、突然会話をし始める余裕すら見せていた。

 

「『磁力』に『反射』……。結構凝ったトリガーだな。何をするにしても便利だし、使い手の腕もいい」

「……?」

「大事な戦力だろうになんで──」

 

 ヒュースは唐突に会話を始めた迅に困惑する。そして迅は、「とどめの一言」をヒュースにぶつけた。

 

「──なんでお前は、()()()()()()()()()()()?」

「何を──ッ!?」

 

 ヒュースは今しがた迅が吐き捨てた「見捨てられる」という言葉に困惑を深めるも、次の瞬間にはその困惑の全てが粉々に吹き飛ばされた。

 というのも、ヒュースの頭の中にはある心当たりが1つあったのだ。しかも、それは自分自身も心のどこかで「もしかしたら」と思っていた可能性。

 だからこそ、何も知らないはずの目の前の男にその可能性を示唆されたヒュースは酷く動揺する。

 

「き、貴様……! ふざけたことを──!!」

 

 ヒュースは動揺のあまり、結晶体を展開するのも忘れて迅を目掛けて一直線に突撃してしまう。

 そしてこの瞬間──。

 

 

「はい、予測確定」

 

 

 ──ヒュースの次の未来が、完全に確定した。

 ただの壁しかなかったはずの場所からせり出してきたエスクードによって、ヒュースは文字通りサンドイッチにされてしまう。エスクード同士の隙間に上半身だけ挟まれてしまい、ヒュースは進むことも戻ることもかなわなくなってしまった。

 

(これは、さっきの壁トリガー……!?)

 

 あの時迅の話に耳を傾けてしまった時点で、ヒュースは迅の術中に完全に嵌まってしまっていた。ヒュースがそれに気づいた頃には、もう手遅れだった。

 迅は飄々とした様子を崩さぬまま、決まりの一言を言い放つ。

 

「ふざけてなんかないよ。──おれには、おまえの未来が見えるんだ

「未来、だと……!?」

 

 迅の口から行われた衝撃の暴露に、ヒュースは暫くその場から動くことができなかった。

 

 

 

 そして地上、ボーダー本部。ここでもまた、戦いは続いていた。

 

「おおおっ! 諏訪隊と月城くんが近界民(ネイバー)を閉じ込めましたよ!!」

「訓練室とは考えたな!」

 

 本部に侵入してきた近界民(ネイバー)──エネドラを訓練室に閉じ込めることに成功したことで、司令室には一抹の安心感が広がっていた。

 

「しかし、侵入された時にはどうなることかと……」

「まったくじゃ。月城が先回りしておらんかったら、死人が出とったかもしれんわい」

 

 遼河の時間稼ぎは功を奏していた。

 遼河がエネドラ相手に大立ち回りをしている間に、通信室にいたオペレーターおよび研究室にいた技術者(エンジニア)たちはその全員が避難を完了させていた。さらに、諏訪をキューブから復活させる余裕まで確保できていたのだ。

 

 一連の攻防で通信室そのものやいくつかの研究室が破壊されてしまったが、人の命と比べればなんということはない。設備はまた取り寄せて揃えればいいが、人命は失われれば戻らないのだから。しかしその弊害で、基地に繋がる連絡通路が開かなくなるというアクシデントが発生していた。修たちが連絡通路を使えなくなっていたのは、これが原因だったのだ。

 だが、このままでは終わらないということは司令室の誰もが理解していた。

 

 

 そして訓練室。堤の機転で仮想戦闘モードが起動したことにより、エネドラVS遼河・諏訪・笹森3名の戦いは完全に膠着状態となっていた。

 仮想戦闘モードである以上、今この訓練室の中にいる者は誰であろうと死なない。ゆえにエネドラは、先ほどから捨て身の特攻を仕掛けてくる遼河を一向に仕留められずにいる。遼河が近づいてくるたびにエネドラはその体を何度も何度も切り裂き、引き裂き、貫いているのだが、そのたびに与えたダメージが無効化されてしまっている。

 そして遼河もまた、点か線の攻撃しかできないがためにエネドラに決定打を与えられない。事実上の無敵状態になったことで遼河はあらゆるダメージを一切気にすることなく全開戦闘ができるようになっていたが、全身を切り刻む勢いで猛攻を仕掛けてもなおエネドラの急所を発見するには至っていない。

 エネドラは「泥の王(ボルボロス)」で遼河の頭を消し飛ばし、再び殺す。しかし、やはり殺せない。足を吹き飛ばそうが、胸を貫こうが、頭を消し飛ばそうが関係なく即座に修復されてしまう。10回を超えたあたりから、エネドラは遼河に何度致命傷を与えたか数えることを放棄していた。

 

「何度殺そうが結果は同じだぞ?」

「猿が一丁前に喚きやがって……!」

 

 いつまで経っても目の前をうろちょろし続ける雑魚相手にフラストレーションの蓄積が止まらないエネドラは、「どうやってこの雑魚を殺すか」ということだけを考えてしまっており、「なぜ目の前の雑魚が死なないのか」を考えることを思い立つのにかなりの時間を要した。

 しかしながら考えてみれば、その疑問の答えはすぐに出た。

 

(不死身? 幻覚? いや、あり得ねぇ。んな馬鹿げた性能のトリガーをこんな雑魚どもが使うはずがねえ。つまり──)

「──仕掛けがあんのは、この部屋か!!」

 

 火山爆発の如く凄まじい威力で放たれたエネドラの攻撃が、訓練室全体を攻撃する。エネドラの予想は見事的中し、攻撃は壁に吸収されるようにして消滅。部屋のどこにも損傷を与えることはできなかった。

 

(やっぱりそういうことか。攻撃が通りやがらねぇ……!)

「気付くのにずいぶん時間がかかったようだな?」

「ま、そういうこった。それに分かったとこで、てめーにはどうしようもできねーよ。大人しく俺たちの前でプルプルしてろ、スライム野郎が」

 

 この時、遼河と諏訪の浮かべた表情は不敵な笑みという意味で驚くほどに一致していた。

 その表情を見たエネドラははらわたが煮えくり返る思いだった。自分こそが強者──すなわち上であり、相手が絶対的に下である。そのはずなのに、その下の存在に嘲られている。その事実が、エネドラの苛立ちをさらに加速させた。

 その一方で、遼河たちはこれからの立ち回りについて密かに相談をしていた。

 

『でも、これからどうするんです? このままじゃオレたちもあいつを倒せませんよ?』

『いや、それでいい。むしろ倒せない方が好都合だ』

『ああ。訓練室なら、こいつのトリガーを分析できっからな。倒すのはこいつの能力を丸裸にしてからだ』

『それにまだ奴の弱点を見つけられてない以上、こっちには決定打がない。せめて、弱点だけは見つけないと』

『要は俺らは、あのスライム野郎の弱点をしらみつぶしに探してきゃいいわけだ』

 

 諏訪はそう言うと、目線の先をエネドラの向こう──訓練室の操作盤にやる。

 

『操作盤だけには気付かれんなよ。あれに触りゃ、バカでもドアを開けちまうからな』

『はい!』

『やることは今までと変わりなしだ。俺が切り込んであいつの注意を引く。その間に諏訪さんが攻撃して、奴の弱点を探す。笹森は諏訪さんのサポートを頼む』

『はいよ』

『了解です!』

 

 3人は再びエネドラと向き合い、臨戦態勢へと入った。

 

「よし、弱点探しゲームの再開といこうぜ」

 

 

 

 本部での戦いが停滞する一方、動きがあったのは遊真とヴィザだ。

 遊真が身構えると同時に、ヴィザが立ち上がる。同時に未だ重石の残る「星の杖(オルガノン)」を展開すると、円の直径を縮めることで刃同士が重なるようにし、刃につけられた重石を器用に切断していく。

 数秒もしないうちに、ヴィザはブレードについていたほとんどの重石を削ぎ落としてしまった。

 

「ふむ……。未だ重たいですが、あのままより多少はましでしょう」

 

 実際まだ目視可能とはいえ、円の上を疾駆する刃の速度は明らかに上がっていた。

 すべてを切り刻む刃が、遊真に襲い掛かる。急に速度が上がったその刃を、遊真は一歩下がることでかろうじて避けた。

 

【重石はほとんど削ぎ落とされたようだ】

「大丈夫だ、まだ刃の動きはギリギリ見える」

【『錨』印(アンカー)はトリオンの消費が大きい。防がれるようなら乱発はできないぞ】

「分かってる。『弾』印(バウンド)!」

 

 近くにあった人間大の大きさの瓦礫をヴィザに向けて射出する。それ自体は刃によって豆腐を切るかの如く切断されてしまったが、それも遊真は計算に入れていた。

 

「『鎖』印(チェイン)

 

 そのままあらかじめ瓦礫に仕込んでいた「鎖」印(チェイン)とのコンボが炸裂する。先ほどバラバラにされた瓦礫から飛び出してきた鎖がヴィザの杖を中心につながったことで、瓦礫がヴィザの身動きを封じる。

 

「『射』印(ボルト)+『強』印(ブースト)!」

 

 腕の動きを止めた遊真は、がら空きになったヴィザ目掛けて射撃の構えを取る。しかし、ヴィザはそれでは終わらなかった。

 

「ふむ……」

 

 一連の攻防を経て、気づきがあったらしいヴィザが杖の中から「何か」を引き抜く。

 ──杖の中から現れたのは、淡い白の光を放つ刃。「星の杖(オルガノン)」の本体たる杖刀が、ついにその本体を現した。

 

(杖じゃなくて、鞘……!?)

 

 遊真は一瞬面喰らう。

 その間にヴィザは自身に引き寄せられていた瓦礫の檻から抜け出すと、老人とは思えないほど軽い身のこなしで、ブレードを展開しながら遊真との間合いを詰めてくる。そして、杖刀の一振りで遊真の左腕を斬り飛ばした。

 

「──どうやら、その左腕が悪さをしているらしい」

 

 そのあまりの疾さに、遊真は自分が「斬られた」と察するのに幾許かの時間を要した。反応すら許されないほどの神速。レイジの最期の一撃で左足を削られてもなお、その踏み込みの速度は異常という他なかった。

 切断されたことでトリオンの供給が絶たれた左腕から、レプリカの本体が分離する。

 

(レイジさんがこいつの脚を削ってなかったら、腕だけじゃ済まなかったな)

【早いな。さすが国宝の使い手というわけか】

「こりゃ、余計にオサムのとこには行かせらんないな」

 

 一方で姿を現したレプリカを見たヴィザは、意外そうな反応を見せる。

 

「これは珍しい。トロポイの自律トリオン兵とは……。道理で多彩かつ複雑な攻撃ができると思いました。それに、使い手の腕も立つ。若さに似合わぬ周到な戦いぶり……。本来であれば後学のためにもじっくりお手合わせ願いたいところですが──もたもたしていては、雛鳥に逃げられてしまう

(……!?)

 

 その時、遊真の視界に映るヴィザの口元が一瞬だけ()()()()()。黒い煙を見た遊真は、即座にレプリカに指示を出す。

 

「レプリカ。オサムとチカのところに行ってくれ。──()()()()()()

【……! 心得た】

 

 レプリカはその場に子機であるちびレプリカを残すと、最大全速で修たちの下へと向かっていく。その様子を見たヴィザは、急な方針転換に違和感を抱いた。

 

「おや、二手に分かれてよろしいのですかな?」

「──さっき、『もたもたしてたら逃げられる』って言ってたよね」

「ふむ……。確かに申しましたな。それが何か?」

 

 そう語るヴィザは表情も声色も崩れない。だからこそ、遊真は確信を得た。

 

「おまえ……つまんないウソつくね」

 

 その言葉通り、C級を連れて基地へ急ぐ修たちの前にはこれまでにない脅威が迫っていた。

 ──ワープホールから降り立ったのは、7体ものラービットの軍勢。

 

「新型だ。凌ぐぞ、修!」

「はい!!」

 

 アフトクラトルによる大規模侵攻。

 その戦局は、新たな段階へと進もうとしていた。

 

 

 





先のアンケートで”オリキャラたちの元ネタが分かったか?”というアンケートを取った結果、「両方分かった」と答えた方が3名、「片方分かった」という方が7名いらっしゃいました。
また、10月中に外伝の方で「メタ発言集・③」を公開予定ですが、そこで月城あやめの元ネタを公開することをこの場を借りて予告いたします。

作者的には、あやめはともかく遼河の元ネタ当ては相当難しいと思うのですが……分かった方は活動報告、またはメッセージボックスの方に是非とも一報お願いします。間違っていたとしてもヒントは提供できますので!
(ここだけの話、非常に楽しみにしているのです……)

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