ワールドトリガー・Returner from another world   作:もりいぬ

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かれこれ2か月近く更新が止まっていたことを最初にお詫びさせていただきます。

ワールドトリガーREBOOTプロジェクトが始動しましたね。1期リメイク確定ということで、深夜0時に歓喜の声をあげてしまった近所迷惑が私です。
現在はモチベーションに突き動かされつつ、自身の将来に不安を覚えながら執筆しております。

駄文化が進んでいる気がしますが、温かい目で見守ってくださればと思います。



戦況、二転三転

 訓練室の攻防、俺たちと人型近界民(ネイバー)の戦いはなおも泥沼化の一途をたどっていた。

 

 訓練室に入ってから恐らくもう数分は経っているが、戦況に変化はほぼない。

 あるとすれば、無敵状態を利用して敵の動きに対応しつつあるということだ。今の俺は人型近界民(ネイバー)の攻撃範囲、速度、その他諸々を余裕をもって観察できるようになったことで、その動きを最適化しつつある。

 最初の頃こそ相打ち上等みたいな感覚で攻撃を仕掛けていたが、もうそんな感覚はもっていない。攻撃の隙間を縫って接近しつつ、一太刀浴びせて離脱する。この動きの繰り返しになりつつある。菊地原の聴覚共有のおかげで、敵の攻撃を視覚だけでなく聴覚でも読めるようになったのが大きい。

 

 そして攻撃の隙間を縫うように放たれる諏訪さんのショットガンによって、敵の全身が蜂の巣にされる。しかし、弱点に直撃した気配はない。

 そもそも仮想戦闘モードなので弱点に命中してもダメージは0だが、今重要なのは弱点を壊すことではなく弱点を探すことだ。だが、それにしても不自然だ。もう俺は奴の全身を細切れにするレベルで切り刻んでいるはず。それなら、1発くらい弱点を掠めてもおかしくはないはずなのだ。さらに言えば、諏訪さんのショットガンがこれまでに何発も直撃しているはずなのだが、弱点に当たっている様子はない。

 ともすれば、考えられる可能性は限られてくる。その中でも最も現実的な考え方といえば──。

 

(……()()()()()()()()()()のか?)

 

 (ブラック)トリガーだってトリガーなのだ。トリオン体である以上、弱点がないなんてことはあり得ない。だとすれば、三態変化という敵のトリガーの性質を鑑みても、弱点が常に動いていると考えるしかない。さっさと気付くべきだった。

 弱点を動かせるのなら、少なくとも自分ならそうする。戦場においてもただ突っ立っているだけの人間より、ちょこまか動いている人間の方が(よほどのことがない限り)生存率が上がるのは言うまでもない。それと同じ理屈だ。弱点を動かせるのなら、止めておくよりも常にゆっくり動かして的を絞らせない方がいい。もしくは、とんでもなく分かりにくいところに弱点があるか。

 

 点と線の攻撃しかできない自分の攻撃で弱点を見つけるのが困難なことくらい、いくらでも理解している。だが、諏訪さんのショットガンは面の攻撃に適した強力な範囲攻撃型のトリガーだ。それでも見つからないということは、弱点が動いている可能性が高いと推測するには十分すぎる材料になる。

 

 戦況は停滞しているが、これはよろしくない展開だ。

 停滞しているから拮抗しているんじゃないのかと思うかもしれないが、敵は(ブラック)トリガーなのだ。いくら数の優位があっても、まともにぶつかれば勝負以前の問題となる。地の利がこちらにあるとはいえ、(ブラック)トリガーの前でそんなものはほぼ意味をなさない。

 今までの時点ですら生存最優先の戦法を取り続けることでどうにか生き残っていたのであって、正直まともに戦っているとは言い難い。笹森と2人でちょこまか動き回ることでどうにか注意力を削いでいるが、このままではこちらが弱点を見つけるより先に制御盤に気づかれて詰みかねない。

 そんな状況の中で、俺に通信が入った。

 

『遼河』

 

 その相手は、忍田さんだった。意外だな、風間さんから通信が来るのならわかるのだが。

 しかしこのタイミングでの通信……何かあるな。それはそれとして、今の状況報告だけはしておこう。

 

「このまま留めておくのも、限界が来ます。訓練室から出てきたら、いよいよ手に負えなくなりますよ」

『状況はこちらでも把握している。──()()()()()

 

 忍田さんのその言葉を聞いたことで、俺は自らがなすべきことをすぐさま理解した。

 

「……どれくらい稼げばいいですか?」

──3分だ。3分以内にそちらに向かう

 

 3分か。だとしたら結構なスピードだ。司令室からここまでは、結構な距離があるはずだが。司令室の方では動揺が広がっているようで、「3分!?」だの「そんな無茶を……」だのいろいろな声が無線に交じって聞こえてくる。

 だがまあ、忍田さんだ。3分で来るというなら3分で来るに違いない。あの人は()()()()()が、()()()()()()()()()()()からな。

 

「了解。最低3分、奴をここに留めます」

『頼むぞ、遼河』

 

 そこまで言って、通信は途切れた。

 俺1人ならともかく、忍田さんとの連携なら(ブラック)トリガー相手でも倒せる可能性は少なからずある。望みはまだある。

 あとは、忍田さんが来るまでの時間を稼げるかどうかだ。

 

『諏訪さん!』

『どうした?』

『あと3分で助けが来ます。その間、俺が奴の注意を引きます。援護をお願いします』

『はいよ! 日佐人、あと3分で助けが来るってよ、気張れ!』

『了解!』

 

 ここから3分が勝負。

 3分の間に弱点を1つでも見つけられれば、仮想戦闘モードを突破されなければ、勝算はある。とはいえ、このままでは仮想戦闘モードの構造に気付かれるのも時間の問題だろう。

 諏訪さんが言っていた通り、制御盤に触られればどんなバカでも訓練室のドアを開けてしまう。そうなれば仮想戦闘モードは終了、たちどころに形勢が逆転してしまうのは目に見えている。

 

(……忍田さんが来るのが早いか、ここを突破されるのが早いか。瀬戸際だな)

 

 いずれにせよ、目の前のこいつを逃がす理由はない。俺は今一度意識を集中させ、弧月を握り締めた。

 

 

 ──────

 

 

「この道はダメだ! 迂回して別の道から基地に向かえ!!」

 

 一方警戒区域内の修・千佳・京介の3人は、次々に大挙して押し寄せてくるラービットの波によって少しずつ追い込まれつつあった。

 その数、なんと7体。これが遼河や太刀川のようなラービットを一撃破壊できるような実力者なら全員ぶった斬って終わりなのだが、京介にそんな大それたことはできない。出来るのはせいぜい、エスクードでラービット1体を圧殺するくらいだった。

 

(数が多すぎる……! 追いつかれたら終わりだ……!)

 

 修のその考えは、当然のものだった。

 今この場にいる隊員の大多数はC級であり、まともに戦えるのは修と京介くらいのものだ。だが修は対モールモッドならいざ知らず、対ラービットとなるとまず戦力にならない。一撃で吹き飛ばされておしまいだ。

 だがその時、ラービットと修たちを遮るように無数の弾丸が降り注ぐ。降り立ったのは、3人の頼もしい助っ人たちだった。

 

「うわ、硬っ。何コイツ?」

「噂の新型ってヤツだろ。しっかしまあウジャウジャいんなー」

「緑川! それに米屋先輩も!!」

「おいメガネ、おれのこと忘れんな」

 

 駆けつけたのは、アフトクラトルの兵士であるランバネインを撃破して修たちのサポートへと駆けつけた3人組、またの名をA級3バカ

 ボーダー随一の槍さばきとボーダー屈指の頭の悪さを両立する「槍バカ」こと米屋陽介。「千発百中」という絶妙に残念な座右の銘を持ちながらも、持ち前の天才肌で射手2位の称号を我が物としている「弾バカ」こと出水公平。そして自他ともに認める迅悠一ファンであり、隙さえあれば迅のことについて語りたがる小型犬、「迅バカ」こと緑川駿。

 3バカと呼ばれるだけあり作戦=“突撃”しか頭にない脳筋トリオではあるが、揃ってA級隊員なだけありその実力は疑う余地もない。その証明に、的確かつ無駄のない連携で敵の精鋭1人を退けているのだから。

 バカはバカでも、強くて頼れるバカ。それが米屋・出水・緑川という3人組なのだ。

 

「出水先輩」

「よー京介。先輩が助太刀してやるぜ。泣いて感謝しろよ?」

「泣きはしませんけど、感謝はしますよ」

 

 出水の軽口を、京介はさらりと流す。出水とは旧知の仲である京介は、これが出水のいつものノリであることをよく知っていた。

 

「C級を基地まで逃がせというのが、迅さんの指示です。敵を引き付けてください」

「迅さんの!? よっしゃー、やる気出てきた!!」

「了解。んじゃ、さっさとやりますか」

 

 迅の名前が出てきたことでやる気が上がった緑川をよそに、出水がトリオンキューブを展開する。その大きさは、修の出すトリオンキューブとは比べ物にならない。そのタイミングで修は、今助けに来た出水という射手がA級1位部隊、すなわちボーダー本部最強の部隊の一員であることに気が付いた。そのまま出水はラービットの群れ目掛けて無数のアステロイドを撃ち放ち、その注意を引き付ける。同時に米屋と緑川もまた、臨戦態勢に入った。

 だが気を抜くことは許されない。確かに味方の人員が増えたとはいえ、3人で7体は対処しきれないのだから。

 

「エスクード!」

 

 ラービットの群れのうち、2体が出水たち3人の連携を突破してくる。

 そのうち1体は京介が展開したエスクードで打ち上げられる形で足止めされたが、残り1体は的確にC級を付け狙っている。C級の狙撃手(スナイパー)である夏目出穂がアイビスをぶっ放したが、弾速が遅すぎて当たる気配がない。

 その跳躍の姿勢のまま、ラービットは胸から黒い何かを発射する。修がレイガストでどうにかその弾を防ぎ切った、次の瞬間。

 

「な……!?」

 

 突如として修の身体が、地面へと強烈に打ち付けられる。見ると、地面に刺さっていたのは修の腕に刺さっているのと同じ結晶体だった。

 地面に刺さった結晶体と修の腕の結晶体の間に生じた強烈な磁場によって修の身体は地面へと固定されてしまい、まともに動けなくなってしまう。ならばと修はラービットの目を目掛けてアステロイドを放つも、少し頭を下げるだけで簡単に弾かれる。それはまるで、「お前の攻撃など避けるまでもない」と言わんばかりの様相だった。

 瞬く間に窮地に陥る修。しかしそんな修を救うかのごとく、千佳と出穂の2人が修の隣に立つ。

 

「修くん。わたしのトリオンを使って! 修くんならきっと、わたしの力をもっとうまく使えるから!」

「でもどうするんすか!? うちらの攻撃、あいつに当たんないっすよ!」

 

 千佳が修の手を握ると同時に、トリオン体の機能の1つである「トリガー臨時接続機能」が起動する。これにより、修の武器の威力は今までに比べ物にならないレベルで高まった。だが出穂の言うとおり、先ほどからこちら側の攻撃が全く当たっていないのもまた事実。

 

(……さっき攻撃が当たったのは、向こうがぼくを下に見ていたからだ。でも今は違う。警戒している相手にどう攻撃を当てる……!?)

 

 その時修が思い出したのは、師匠である京介から聞いた「射撃武器の強み」だった。

 

 ──射手の強みは、大きく分けて3つある。

 1つ目は、「腕を失っても攻撃できる」射手(シューター)とはトリオンキューブを直接分割して弾として撃ちだすポジションであるため、他のポジションとは違い、腕が無くても弾さえ出せれば攻撃ができる。しかし、これは今重要ではない。

 

 2つ目に、「相手より遠い間合いから攻撃できる」。これは射手(シューター)に限らず銃手(ガンナー)狙撃手(スナイパー)のような「射程のあるポジション」すべてに言えることだが、射程というのはそれだけで絶大なアドバンテージとなる。よほどのことがない限り、剣を持つ人間と銃を持つ人間では銃を持つ人間の方が絶対的かつ圧倒的に有利だ。

 それはトリガーという武器であろうと例外ではない。現実の武器とは違いシールドという防衛手段こそあれど、自分の攻撃が届かないところから一方的に攻撃してくる相手というのはそれだけで面倒極まりない相手となる。しかし今回求められる解は、最後の1つにある。

 

 それこそが、「近接武器と比べて火力を集中させやすい」ことだ。接近戦だけで集中攻撃を叩きこもうとする場合、その難易度は極めて高くなる。

 それを裏付けるかのように、ボーダー内で近接戦闘特化の部隊はボーダーの精鋭たるA級、その中でも屈指の実力を誇る「A級3位」の風間隊ただ1つだ。戦闘員が実質1人だけの部隊や全員が同じポジションの部隊は確かに存在する。だが、「近接攻撃・近接連携特化」という個性を持った部隊は風間隊以外に存在しないのだ。

 しかし射程のある武器があれば、相手との距離に関係なく攻撃に参加できる。相手の死角を取ることだってやりやすくなるし、連携のバリエーションも多くなる。総攻撃で相手を落とせる機会も増やせるだろう。無論、味方の攻撃にタイミングを合わせることだって容易だ。

 だからこそ、京介は修にこう説いた。

 

「チームで戦う時は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それをできるのが射程武器の強みだ」

 

 修が下した判断は、「敵の数を減らすこと」。そう考えた時狙うべきは──。

 

(他の人と、戦ってるやつだ!)

「アステロイド!!」

 

 修が叫ぶと同時に、超巨大なトリオンキューブが修の頭上に顕現する。

 千佳とのトリガー臨時接続によって、今の修のアステロイドには千佳が持つ測定不能レベルの膨大なトリオンが上乗せされている状態だ。結果として、修のアステロイドは未だかつて誰も見たことがないレベルの絶大な威力を生じる。

 

 その威力、通常の修のアステロイドの実に十 数 倍

 

 (ブラック)トリガーにも匹敵する、圧倒的なトリオンの暴力がそこにはあった。

 射撃というのも生温い超火力の嵐が、ラービットの体躯を粉々に破壊する。ラービットを構成する部位で最も硬いとされる腕すらひとひねりにし、結果として残ったのは、出水と交戦していたラービットの下半身のみ。上半身は、跡形もなく消滅していた。

 自身の何倍もの威力の弾丸が新型を跡形もなく破砕したという事実に、その場の誰もが驚愕を隠せない。

 

「うお!? なんだありゃあ!?」

「新型が吹っ飛んだぞ!? 何があったんだ!?」

「今の、三雲先輩の……!?」

(千佳か……!? いや、今のはアステロイドだったはずだ。誰だ……!?)

 

 

 

 ──そして、そんな一連の動きを密かに見ていた者たちがいた。

 

「ラービット全壊……!? 隊長、計測機器がエラーを起こしました!」

 

 画面越しにトリオン反応を分析していた紫髪の女が、ラービットの全壊と測定機器のエラーを報告する。それを受け、「隊長」と呼ばれた青髪の男が静かに呟く。

 

「……想像以上だったな。ラービットを一撃で破壊するとは」

 

 男は徐に、静かに立ち上がると、紫髪の女──ミラに指示を出した。

 

()を開けてくれ、ミラ。出るつもりはなかったが……。事情が変わった。──『金の雛鳥』は俺が捕らえよう

 

 ──その男の名は、アフトクラトル遠征部隊隊長・ハイレイン

 アフトクラトルから訪れた最大の恐怖が、ついに動き出そうとしていた。

 

 

 





これまでのいくつかの話に修正・加筆を加えました。
また、これまでの話において林藤支部長が出てくるほとんどの場面で「藤」を「道」と誤植していたことが読者の方の誤字報告にて発覚いたしました(私自身まったく気づいていませんでした)。
したがって修正を加えさせていただきましたが、もしかしたら漏れがあるかもしれません。その場合は遠慮なく一報を頂ければと思います。
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