ワールドトリガー・Returner from another world   作:もりいぬ

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ようやく原作主人公全員とオリ主がご対面です。
また、【】内の台詞はレプリカ先生の台詞となります。



動き出す運命

 市街地に立て続けにイレギュラー(ゲート)が開いた数日後。俺は、いつも通り玉狛支部で目を覚ます。

 結局三雲修という少年の一件で迅に会った日、迅が帰ってきたのは全員が夕飯を食べ終えた後だった。何をしていたのか聞いても、「実力派エリートは多忙だから、ちょっとね」としか教えてくれなかった。

 あの後、俺からイルガーの報告を聞いた近界民(ネイバー)特別対策室の人は顔を青くしていた。それもそうだろう。イルガーは生半可な攻撃しかできない隊員ではまず対処不可能で、一定以上の攻撃力がないとA級隊員ですら倒せないほどに強いのだ。そんな怪物がポンポン湧いて出てこられたらたまったものではない。何も打つ手がなかった木虎がいい例だろう。木虎は俺の言葉を受けて、ある程度反省すればいいのだが。

 そして迅曰く、俺の存在がボーダーの信用低下をある程度抑制したらしい。多分、あのイルガーの一件だろう。現にあのイルガーの爆撃により数十名の負傷者が出たそうだが、死者はほとんど出なかったという。それでもゼロではなかったのが、心残りだ。

 今、迅は玉狛にいない。またどこかで未来を変えるために暗躍しているのだろう。

 

(ったく……。相も変わらず、どこで何やってんだかわかったもんじゃないな)

 

 そんなことを考えていると、すでにご飯を作っていたらしいあやめからお呼び出しがかかる。俺はそれに返事をすると、朝食にありつくべく階段を下りていった。

 

 

 そしてその日の夕方、本部から指令が届いた。なんでも、イレギュラー(ゲート)の発生の原因を突き止めたらしい。どうやらラッドが原因とのことだった。

 ラッドというのは、隠密行動および偵察用の小型トリオン兵だ。大きさ的にはポメラニアンのような小型犬よりちょっと小さい程度。戦闘能力は一切ないが、他のトリオン兵の内部に潜伏し、倒したと思わせてゴ●ブリよろしく母体から出てきて偵察活動を行う。まあ見た目もほとんど虫だし、直接危害を与えることもないからゴキ●リといって差し支えないだろう。

 だが、自発的に(ゲート)を発生させられるラッドなど聞いたことがない。改造型だろうか。

 

(……いや、あまり小難しいことは考えるな。ラッドの掃討に集中しよう)

 

 トリガー片手に町へと飛び出す。レーダーを展開すると、街中にいくつものマーキングがあった。そのマーキングがすべてラッドらしい。

 

「10、20、30……。この区画だけで50以上か。これは骨が折れる」

 

 既に先にやってきていたらしいボーダー隊員たちがラッドの駆除を行っている。隊服が白いところから見るに、C級隊員がほとんどだ。

 ……実は今回の作戦は、街中に散らばっているラッドがあまりに多すぎるせいでC級隊員まで駆り出される羽目になっている。ラッドの戦闘能力は限りなく0に近いので、シールドも緊急脱出(ベイルアウト)機能もないうえに攻撃用のトリガーを1つしか持てないC級隊員でも問題なく倒せるわけだ。

 先に現場入りしていたB級隊員と連携し、処理していく。十数分もすれば、俺たちが担当する区画のラッドは一掃された。生ゴミの中に入り込んでいたラッドを取り出すのはトリオン体とはいえ一瞬躊躇したが。

 

「みんな、お疲れ様」

「「お疲れさまでした」」

 

 結局その日だけではすべてのラッドを討滅しきれなかったらしく、ラッド掃討作戦は明日までもつれ込むことになったらしい。その前に担当区域のラッドを一掃できたのはありがたい。C級隊員達に一声かけ、俺は玉狛へと帰る。

 今日も、玉狛支部に迅は帰ってきていなかった。

 

 

 次の日。俺は再び日課であるランニングをしに外へ出た。この間は違うルートを行っていたが、今日はいつも通り川岸のコースを走ることにする。

 すると、視界の端に珍しいものが見えた。白い髪の男の子が、自転車に乗ろうとして転びまくっているのだ。転ぶ度に、近くにいる小柄な女の子が駆け寄っている。どうやら小柄な女の子が白髪の男の子に自転車の乗り方を教えているらしい。

 その様子がどこか微笑ましかったので少しばかり見守っていた、その時だった。

 

「あ、わぁぁぁぁぁーー!!」

「……おい!?」

 

 やっと乗れたかと思ったのも束の間、白い少年がかなりの勢いで自転車ごと川に落下したのだ。

 俺は慌ててその男の子のもとへ向かい、女の子と一緒に男の子を助け出す。トリオン体に換装しておいたので、人1人くらい持ち上げるのは容易い。

 

「大丈夫か? 少年」

「いやはや、助けてくれてアリガトウゴザイマス」

「あの、手伝ってくれてありがとうございました!」

「礼はいらない。人助けも立派なボーダーの役目だ」

「ボーダー? お兄さん、ボーダーの人なの?」

「まあ、一応な」

 

 その時、街中に警報が鳴り響いた。音を聞くに、どうやら今回はイレギュラーではないらしい。

 

「ボーダー出動のようだな。2人とも、念のため遠くに避難しておけよ」

 

 俺は2人を置いて、警戒区域へと駆けていく。

 今回現れたのは……バンダーのようだ。口からレーザービームを放ち、人間を捕食するかのように捕獲する捕獲用兼砲撃型トリオン兵。ただし、機能を詰め込み過ぎていろいろ中途半端。戦闘能力だけで言えばモールモッド以下だし、イルガーのような破壊力もない。正直、ただ大きいだけ。現に向こうでは捕獲用というより砲撃用の兵器として扱われている。

 

「さて……。どっちにせよさっさと仕留めるのが一番か」

 

 だが弧月を抜いた次の瞬間、バンダーが近くの建物に突撃し、建物を破壊した。まるで、そこに人間がいるかのように。

 そして今しがた破壊された建物の影から、2人分の小さな影が飛び出した。一瞬見えたが、さっき見かけた2人組だ。なぜ警戒区域に入ってきたのかは分からないが、うっかり入ってしまったのだろうか。

 

「──あの2人を攫うつもりか? そうはさせるか!」

 

 バンダーに接近し、間合いに入った瞬間首目掛けて弧月を一閃する。放たれた旋空弧月はバンダーの首を寸分違わず引き裂き、頭と胴体が分離したバンダーは一撃で沈黙した。

 さっき見た2人分の人影は、すでにどこかへと避難したらしい。ほっと一息ついたその時、どこからともなく青い服を着たメガネの隊員が現れた。

 

「あれ、終わってる……?」

「ん? ……この間のメガネの青年じゃないか。確か──三雲君」

「あ、はい……。お久しぶりです……?」

「おー、これはオサムがやったのか?」

 

 俺の記憶が正しければ、三雲はつい一昨日までC級だったはずだ。しかしもう服が白くないということは、少なくともB級への昇格が認められたらしい。どうやら、迅が上手くやったようだ。

 そこに、今しがたいなくなっていた2人の少年少女が戻ってきていた。改めてよく見てみると、少年の方はこの間三雲と一緒にいて、木虎と舌戦を繰り広げていたあの面白い白髪の少年だ。しかし、その隣の女の子には見覚えがない。

 

「千佳! なんでお前が警戒区域に入っているんだ! バカな真似はやめろ!」

「ごめん……。でも、街の方まで行ったらだめだと思って」

(……どうやら、ここから先は俺には関係ないらしいな)

 

 そう思った俺が立ち去ろうとしたその時だった。後ろから、三雲に声を掛けられた。

 

「あ、あの!」

「なんだ?」

「千佳と空閑を助けてくれて、ありがとうございました!」

「いいって。俺は当然の仕事をしただけだからな」

 

 すると三雲が何か考え込むような仕草をして、数秒後に口を開いた。

 

「その、もしよかったら──ぼくたちについてきてくれませんか?」

「なんでだ?」

「その、ここにいる雨取千佳という女の子は、近界民(ネイバー)を引き寄せる体質なんです」

「……なんだって?」

 

 近界民(ネイバー)を引き寄せる、と言われれば黙っていられない。俺は三雲たちについていくことに決めた。

 そして俺は三雲に連れられ、旧弓手町駅にやってきた。「旧」となったのは、4年前の大規模侵攻で警戒区域に指定されたからだそうだ。また1つ、俺の中の記憶と違う点ができた。くが、と呼ばれた白髪の少年は駅にそもそも来たことがないような態度を見せる。三雲がはぐらかしたので、結局その理由はうやむやにされてしまったが。

 やがてひとしきり三雲たちが話を終えた後、自己紹介に移った。

 

「とりあえず、お互いを紹介しておこうか。こっちは雨取(あまとり)千佳(ちか)。うちの学校の2年生で、ぼくがお世話になった先輩の妹だ」

「よろしく」

「こいつは、空閑(くが)遊真(ゆうま)。最近うちの学校に転校してきた転校生なんだ。外国育ちで、まだ日本のことについてはよく知らない」

「どーもどーも」

 

 三雲の話を聞いた俺は一瞬目を疑った。

 この空閑という少年、中学生にしてはあまりにも身長が低い。小学生と比べても相当低い部類に入るのではなかろうか。だが俺はそれよりも、空閑が左人差し指につけている“黒い”リングが気になっていた。

 

「それで──えっと……? あれ? ぼく、あなたのお名前お聞きしましたっけ?」

「あー、言ってなかったな。月城遼河、ボーダー隊員だ。三雲から見れば、ボーダーの先輩にあたる。これでも多少近界民(ネイバー)のことについては詳しいから、そこの千佳って子がなんでトリオン兵に狙われるのか、分かるかもしれない」

「本当ですか?」

「それは心強いです。そうだ千佳、空閑も近界民(ネイバー)のことについて詳しいから、もしかしたらこの2人が答えを出してくれるかもしれないぞ?」

「でも近界民(ネイバー)に狙われる理由っていったら、トリオンくらいしか思い浮かばんなー……」

「……同感だ」

 

 どうやら、俺と空閑は共通の認識を持っていたらしい。

 事実、トリオン兵に狙われる理由といえば「トリオン能力が高い」くらいしか思いつかないのだ。俺と空閑の共通の認識に対して困惑する三雲と千佳に、俺と空閑は「そもそもなぜ近界民(ネイバー)がこっちの世界にやってくるのか」の理由を説明することにした。

 ……近界民(ネイバー)の目的はいろいろあるが、その大半はトリオン能力の高い人間の捕獲だ。トリオン兵を送り込んで、トリオン能力の高い人間を捕食する形で生け捕りにする。低い人間からはトリオン器官だけを器用に抜き取る。そうして手に入れたトリオン能力の高い人間やトリオン器官を軍事転用し、戦争に使うのだ。ちなみに先ほどトリオン能力の低い人間はトリオン機関だけ抜き取るといったが、あえて生け捕りにされて使い捨ての兵士(という名の肉壁扱い)にされるパターンもある。

 そこまで俺が言って、隣の空閑が付け加えた。「トリオン能力の高い人間を攫うにしろ、トリオン器官だけを抜き取るにしろ、その数は多い方がいい。さらに言ってしまえば、別の世界の人間から奪う方が気楽だから」と。

 ……あの舌戦の時から感じてはいたが、この空閑という少年は随分と近界民(ネイバー)の事情に詳しい。もしかすると、俺と同じで近界(ネイバーフッド)放浪の経験者なのだろうか。そして空閑が生々しい話に入りかけたところで、俺が話をまとめた。中学生相手に人の生死にかかわる話は刺激が強すぎると思ったからだ。

 

「まあかいつまんで言うと、そこの千佳って子が狙われ続けるのは、トリオン能力がものすごく高いからなんじゃないか、ってことだ」

「そーいうこと。そうだ、なんならためしに測ってみるか? な? レプリカ」

 

 すると、遊真の手にはめられていた指輪から変な液体のようなものがニュッと飛び出てきて、見る見るうちに炊飯器のような形をした何かになった。

 

【そうだな。そうすればはっきりする】

「うわぁ!?」

「これは……!?」

 

 黒い炊飯器のような形状をしたそれは、間違いなくトリオン兵だった。しかし、敵意は無いらしい。

 

【初めましてチカ。そしてリョーガ。私はレプリカ。ユーマのお目付け役だ】

「は、はじめまして……」

「よろしく……でいいのか?」

 

 そしてレプリカと名乗ったそのトリオン兵は、口らしき場所から何かのコードのようなものを取り出した。

 

【この測定索でトリオン能力が測れる】

「どうぞ、ご利用ください」

「う、うん……。でも、ちょっと怖いなぁ……」

 

 千佳は未知の体験を前にして少し怯えているようだった。

 ならば、歩きやすいよう先に道を作るのが年長者の役目だろう。

 

「なら、試しに俺が測ってみよう」

【承知した】

 

 俺は千佳の代わりに、レプリカに進言した。レプリカの指示通り測定索を握ると、しばらくレプリカから機械的な音が鳴る。

 程なくして「計測完了」と声が発せられると同時に、そこそこの大きさの白いキューブが出た。大体、人間の上半身より少し大きいくらいか。

 

【このキューブは、リョーガのトリオン能力を視覚化したものだ。キューブの大きさが、トリオン能力のレベルを表している】

「このサイズは、どれくらいなんだ?」

「ふーむ、結構あるな。これだけあれば、近界民(ネイバー)に狙われても不思議じゃない」

「確か俺のトリオン能力が7か8くらいだから、そんなもんだな」

 

 空閑が三の目と3の口をしながら言い放つ。

 ……その目と口はどうやっているんだろうという疑問を振り払いつつ、俺は千佳に声をかけた。

 

「千佳ちゃん。怖がらなくていい。何も痛みはないし、安全だ」

「大丈夫だ千佳。遼河さんが、安全って言ってくれてる」

「修くんが、そう言うなら……」

 

 そこまで言って、ようやく千佳は測定索を握った。

 

【少し、時間がかかりそうだ。楽にしていてくれ】

「よろしくお願いします」

 

 一応安全性は俺自身で証明済みだが、万一ということもあるかもしれない。俺は有事の際に備え、千佳の側にいることにした。

 それから2~3分後、無事にレプリカによる計測が完了する。そこで、俺たちは目を疑うものを見ることになった。

 

「「な……!」」

「これは……」

 

 俺も三雲も、空閑ですら驚きを隠せない。

 ……時間がかかるのも無理はないだろう。俺たちの目の前に浮かんでいたのは、人の身長を軽く上回る圧倒的大きさのキューブだったのだから。俺のキューブの数倍はある。数値化すればどれくらいになるのだろうか想像もつかないが、最低でも20はくだらないだろう。とんでもないトリオン能力だ。こんな反則級のトリオンの持ち主を見るのは、向こうで巻き込まれた戦争のとき以来だ。

 

【──尋常ではないな。これほどのトリオン能力はあまり記憶にない。素晴らしい素質だ】

「すげーな……。近界民(ネイバー)に狙われるわけだ」

「ああ……。これほどのトリオン能力、狙われるのも無理はない」

「空閑に遼河さんも、感心してる場合じゃないですよ! これで、千佳が狙われる理由は分かりました。あとは、それをどう解決するかです」

 

 近界民(ネイバー)から確実に身を守る方法は、俺の知る限り1つしかない。

 俺は迷わず、その方法を口にする。

 

「千佳、だったな。自衛手段の確保のためにも、ボーダーに入った方がいい。俺はそう思う」

【リョウガの言うとおりだ。ボーダーに入るとはいかなくとも、保護を求めるのが現実的だろう】

「でも、チカはそれ嫌なんだろ?」

「……うん。あんまりほかの人に面倒かけたくない。今までも1人で逃げてこられたから、これからも多分大丈夫だよ」

「そんなわけ──」

「──待った。そこにいるのは誰だ!」

 

 どうやら、千佳にはボーダーを頼りたくない理由があるらしい。

 それを聞こうとした矢先、突如として感じた殺気に、俺は振り返る。そこには、2人のボーダー隊員が立っていた。見覚えがある。あれは──

 

「動くな。ボーダーだ」

「三輪隊……?」

 

 隊服ではないが、三輪秀次と米屋陽介──三輪隊の2人がそこにいた。

 近付いてくるにつれ、僅かに聞こえてきた電話の内容から「ボーダー管理外のトリガー」やら「近界民(ネイバー)の処理」などといった言葉が聞こえてくる。

 

「「トリガー起動(オン)」」

 

 三輪隊の2人が換装体になる。

 ……理由はさっぱりだが、向こうは完全にやる気だ。殺気を隠すつもりすらないらしい。特に三輪からは、かつて俺が戦場で感じた「それ」に近いものを感じる。そして三輪はこちらに並々ならぬ敵意を向けながら、静かに言い放った。

 

「さて、近界民(ネイバー)はどいつだ?」

 

 





今回、オリ主は戦闘しません。
オリ主の戦闘パートはもう少し先になります。

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