詞に覆われた少女のお話   作:テクトリカ

1 / 1


方弁なので初投稿です。




ここでは鹿児島の弁で話せ。

 

比企谷八幡の記憶は朧気である。

と言っても、印象に残っている事は頭では覚えているくせに特に興味が無いことや日常的なことを覚える気がない。

そんな自分が根強く覚えている事と言えば、中学一年生の時だけ一緒にいた、変な喋り方をする女の子。

中学の調子に乗っていた自分は、好きになった女子には普通に告白するくらいだった。場の空気で告白したことさえあるが、もはやそれは黒歴史だ。

思い出すだけで背筋がゾワゾワするしむず痒いし鳥肌さえ立つ。

しかし思えば……とある告白をYESかNOかで受け取られたか思い出せない。

そう、最初の例にあげた女子である。彼女にも一度告白をした、中学の頃の自分は本当に気がどうかしていたと反省している。

よく分からない言葉が帰ってきて、よくわかんないし適当に何かを言った記憶があるが……

その後の答えの真相は、彼女しか分からない。何せ、告白して数週間の後、彼女は引越しで別の県に行ってしまったのだから。

彼女の行方を聞くこともなく、俺は彼女との別れ際に「またいつか」と言った気が……して。

俺が思い出せる記録はここまでだった。

そんな事を思いふけっていた高校二年生の春。

俺はいつも通り、STと一限を眠って飛ばそうとしていたのだ。

 

「さて、君達に話しておくべきことがある。実は鹿児島にある有名な進学校から総武高校へ転入生がやってきた。入ってくれ」

 

は?転校生?

鹿児島県から転校生、と言われて随分遠いところからと感心する。顔は上げなかったが。

そうして扉が開かれて、中にその転校生が入ってくる。

短い黒髪に、俺から見て右にちょんと付いた小さめに髪が纏めあげられた……これなんて言うんだっけ。

短めの黒髪にアホ毛みたいに付いた小さな纏め髪が特徴的な女子、というのが見た目で判断した感想だった。

顔は一般的に可愛い、と言える感じなのがまた俺には程遠い女子だった。

「自己紹介を頼む」と平塚先生の助言によって、クラスの期待値が上がり彼女の自己紹介が始まった。

 

「こんちわ、清川 雨音(きよかわ あまね)って言います。

親の影響で方弁が出ちゃうけど気にせんでね!

こいかあよろしくお願いしもす!」

 

 

 

クラス全体、一瞬だけ脳内CPUがエラーを起こした。処理落ちというより、処理が一瞬遅れたという感じか。

だがすぐに、一斉に大興奮。特にクラスの男子からは歓喜の声が。方弁可愛いー、とか笑顔めちゃくちゃ可愛いー、とか。お前ら可愛い以外になにか言葉のレパートリーないのか?とか言っちゃいそうになった。

取り敢えず分かったのは、親の影響を受けて方弁を話す女子といういかにもラノベにありそうな女子だったという事だ。

自分から話す事も無いし、話しかけられたら「あっ、どうもっす……」くらいのノリで返しておけばセーフに違いない。

もちろん俺に話しかけてくるなんて事もなく、後ろの席に座って授業が始まると共に俺はSTで働かせてしまった脳を休ませる為、そのまま眠っていった。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

「さて比企谷、言い分を聞こうか」

「……はい」

 

悲報、俺やらかす。

と言っても自分から何かやらかしたという記憶を思い出せない。STや苦手な教科を寝て過ごしちゃったり学校の購買のトマトが付いた菓子パンをあからさまに避けたり調子が悪いと言って保健室で授業をサボったくらいである……うん、思い当たる節はないな。

目の前で俺を締め上げんと睨み付けている、国語教師の平塚先生は俺を上から下に視線で貫いてくる。痛いです先生。

だが、すぐにため息をついてタバコを片手に持って俺の言い分を待っている。

 

「えっと、先生。俺は何かやらかした記憶が無いというか」

「そうか。ならこれはなんだ?」

 

そう言って先生が俺の目の前に原稿用紙を見せてきた。

これは、俺の作文だ。確か平塚先生から出されていた“高校生活を振り返って”とやらの内容だった気がするが……

 

「もしかして、作文に文字とか表現の間違いが多すぎてここに連れてこられたんですか?」

「君はとことん自分の問題に向き合わないな」

「自分に問題があるんだったら、自分の事が好きになって養ってくれる彼女が出来たら解消できる気がします」

 

そうへらっと言うと、ヒュン!と俺の頬に風が触れる。

拳が、俺の横を突き抜けていた。それも割と強めに。

なんて威力の拳だ、あんなのが当たったら俺は今頃某グルメ漫画でいえばいただきますと言われて体格がデカイ男にガツガッツされていたに違いない。

だらんとしていた俺の体は直ぐにピン、と緊張が走って強ばる。

 

「全く、君は真面目に聞くことも難しいようだな」

「はぁ」

「つまるところ、君は問題児で間違いないな」

「や、先生、流石にそれは俺も失礼だと思いますよ!自分が問題児だったら世の中のぼっち全てが問題児とされてしまいます!」

「君はぼっちの代表者か何かかね……はぁ、そういう所が君の問題点だと言うのにな」

 

先生はまるで理解ある上司ムーブをかましているが、俺はこの人に理解されていたいと思ったことはあんまりない。授業中に節々と自分の独身エピソードを自虐の様に語っている姿を見た時は正直ドン引きした。正直、ドン引きした(大切な事なので2回言いました)

俺は頭を掻きながらこの状況を何とか乗り越えるためにどう言い訳をしたものかと考えていると、俺の少し後ろの扉から「失礼します」とノックが鳴り、扉から見覚えのある女子が入ってきた。

 

「平塚先生(せんせ)相談(そだん)したいこっがあいもす!

なんであたいに友達(どし)出来(でけ)んのか、です!」

「……あ、ああ。そうか。まぁ君からの相談という事は分かったが落ち着け」

「あ、こらいやったもし……つい癖で

……ちゅうかなとですかこん目の(けっさ)った納豆みたいな男。なんかあたいのクラスにいた気がするんじゃっどん……おはん誰だっけ?」

「なんて?」

 

唐突な認識できない言語が飛んできて俺の脳内CPUがエラーを起こした。このままでは死ぬ程熱くなって俺は臨界点を突破してしまう。

しかしだ、この女子に俺が尋ねられているのは間違いないので威嚇する様な犬のオーラを出しながら睨みつける。

 

「はぁ!?お前、鹿児島弁も分からなかと!?

方弁に対していささか無知すぎっと思もんじゃっどん、こい腹立っんじゃっどん!

先生(せんせ)、こげじゃって国語の勉強として方弁も教すっべきだと思います!」

「そ、そうか……まぁ確かに清川の言い分も分かるが、落ち着け。今はどうこう騒いでも難しいだろう、転校初日なのだからな」

 

納得のいかない様子で俺を睨みつける転校生を見ながら俺は改めてこいつの言葉を思い出す。

うん、ダメだこいつ。全く分かんねぇというか、言いたいことは分かるが脳がこれ以上の理解を拒ませてくる。お前のせいで俺の脳が壊されたんだが。

 

「だが、清川。君も流石に自分の言葉がみんなに伝わるとは思わない方がいい。君の言葉を理解がある人に囲まれていたとはいえ、ここはそうではないのだから」

「っ……」

「取り敢えず比企谷、清川。共に来い」

「え、いや俺は行く意味ないんじゃ……」

「君は君で問題児としての側面が問題だ。反省したまえ」

「っす……」

 

やはり変な女に巻き込まれるとこうなる運命は避けられないのか、と思いながら渋々と先生の背を追うようについて行く。隣には、意味のわからない言語を話す女子と。正直困る、だってどう返していいか分からないのだから。

要するに会話のキャッチボールをしたいのに相手がボールに回転をつけたり変化球ばっか投げてくる、そのボールを取り慣れていないキャッチャーがそんな変化球をすぐに受け止められる訳が無い。

故に彼女の問題点は、まともな会話のキャッチボールを出来るようにする事だろうが俺は何も問題が無いはずだ。

顔はイケメン(目が腐ってるから無駄になってるけど)、成績優秀(数学とか終わってるけど)、そして将来の夢は専業主夫!(養ってくれる人いないけど)

うん、なんという素晴らしいレパートリーだ。きっといつか本になるくらいのレパートリーの多さだ。

 

「……何じゃっとな?こっち見てるだけで(ない)か喋ったらどげんな」

「なんて言ってるか分からん」

「こいでもだいぶ分かりやすく話しちょっんじゃっどん?こいでも分からんとか理解力ないんじゃねんじゃっとな?」

「俺でも分かるもんと分からんものはあるぞ」

「……じゃあ、これでどう?私あんま得意じゃないんだけど」

 

遂にまともな言葉が聞こえてきてホッとする。まるで外国人とカタコトの日本語VS標準の日本語でぶつけあってるみたいな感じだった。

それにしてもまともに喋れるのならそれを努力すればいいのに、と思う。

 

「めっちゃ分かりやすくなったじゃねぇか、もっとそれ話せよ」

「やだ。私が何話そうと私の自由」

「ガキかよ……」

「はぁ!?ガキって何よ、私の事子供だと()ごあっの!?」

「そこまで言ってねぇ」

 

そう言って喧騒が廊下に響かせながら、良くも悪くも会話のキャッチボールが通用しない俺達は平塚先生の足が止まるまでこの調子だった。

そして、遂に目的地に到着したのか足が止まり俺達も立ち止まる。

到着したのは、ただの空き教室のようだった。しかしこの中に誰かがいるのか、鍵穴の方を見ると確かに開いている。

 

「入るぞ」

 

そう言って扉を開ける平塚先生と共に、俺と転校生がチラッと顔を覗かせる。タイミング合わせんな怖いわ。

空き教室にいたのは、絵として額縁に入れてもおかしくはないほどの背景に溶け込んだ少女だった。

あれを見た瞬間に脳が記憶の引き出しを開けて情報を引き出す。あれは確か、雪ノ下雪乃。

国際教養科に入っている、文武両道とか聞いたことはある。

まぁ文武両道の武の方はあまり聞いたことがない、文の方は大抵成績優秀者、首席としてチラチラ見るほどに有名なのだから今更な感じはする。

 

「先生、ノックをしてくださいと何度言えば分かるのでしょうか」

「すまんすまん、しかし君は返事をしてくれないじゃないか」

「返事をする前に開けるからですよ…それで、そこのぬぼーっとした人はともかく…あなたは転校生の清川雨音さんですね」

「私(あたい)の事知(し)っちょっとですか!?」

「ええ。話題になっているもの、鹿児島の方からやったきたのでしょう?方弁は喋ってくれて構わないわ」

「……!あいがと雪ノ下さん!おはんは私の理解者です!」

 

ドタドタと入って雪ノ下の手を取って強そうな力で握手する転校生を片目に、俺もそそくさと入っていく。後ろから圧力を感じるので入らざるを得ないし、逃げられないという事だ。

それにしても、雪ノ下はあいつの言葉を理解できるらしい。

鹿児島って何が有名だっけと脳内で思考を張り巡らせるが、千葉県を愛している俺からすれば他県などどうでも良かった。

こほん、という先生の空気の切り替えから説明が始まった。

 

「2人は入部希望者だ。名前は分かっているだろうが、比企谷八幡と清川雨音だ」

「あの、俺入部なんて聞いてないんですけど」

「比企谷は問題解決としてここに入部して更生してもらう。もちろんだが問題点が解決されない限り君の退部は異論反論抗議質問口答えとして一切を通さないつもりだ」

「最悪だ……俺の2年生の人生が今日で終わるなんて」

「ああ、それと清川に関してはちゃんと標準語で喋れるようにしてくれたまえ。外国人の学生でも日本語を喋れるように努力している者がいるのだから、同じ日本人として普通に喋れるようになってくれたまえ……部活の参加については自己判断に任せる」

「先生、差異を感じるんですけど」

「比企谷の質問に関しては答えを聞くまでもないが、雪ノ下はどうするかね?」

 

雪ノ下は顎に手を当てて、すぐに答えを出した。

 

「お断りします……と、言いたいところですが転校生の清川さんの為にそこの下卑た目線を送る男も必要に感じました。いいでしょう、入部を認めます」

「おい!勝手に決められたんだが!」

「ばーか、理解力がないからそなっとよ」

「こいつ……」

「では、頼んだぞ」

 

そう言って平塚先生はカツカツと靴の音を廊下に響かせながら去っていった。去り際だけはやけに美しく感じるあたり、残念美人……と言いたいんですが殺意が飛んできたのでやめておきます。

 

「では、比企谷君の更生を誠に遺憾だけれど先に終わらせましょうか」

「誠に遺憾ってなんだよ、そんなに嫌なら放っておいてくれ。つーか更生する気ないしな」

「なとですかおはんは。そげな態度、女性に失礼だと思わんの?」

「なんて?」

「“なんですかあなたは。そんな態度、女性に失礼だと思わないの?”……でしょう。国語3位という名誉が不名誉に変わった瞬間ね」

「お前俺の事本当は知ってただろ、ぬぼーっとした男とか言ってたのに」

「あら、そんな事はないわよ。転校生の清川さんについては私も話題として聞いたけれどあなたはないもの。小耳に挟んだことすらないわ」

「雪ノ下さん…!」

 

キラキラとした瞳で理解者が出来て嬉しいのか、熱心に雪ノ下を見つめるそいつを横目に俺は鞄から本を取り出す。

それにしても翻訳者がいてくれて助かった。俺はもうあいつの言葉を脳内に記憶したくない、言葉がごちゃごちゃになって混乱してくる。誰かが方弁を話す女子は可愛いと言うが、それはただ誰かにしか分からない言葉で愛や気持ちを話す女子が好きなだけであって分からない言葉に関しての関心ではない。要するに、実際方弁を話す人物と会えば誰もが話したがらない。だって会話が成立しない事だってあるのだから。

もちろんその為に標準的な日本語を喋れるようにしておいた方がいいのは間違いないだろう。

 

「んじゃ俺の更生はもう諦めてもらってそこの熱心な転校生に標準的な日本語教えてやったらどうだ?」

「何?そげん私が普通に喋っていて欲しの?」

「なんて?」

「あなた、今のは分かるでしょう……そんなに普通に喋って欲しいのかと聞いているのよ」

「いやまぁ、脳がバグるから普通に喋れるに越したことはないだろ。てかバイトとかどうする気なんだよそれ」

「そこずいお前に心配(せわ)されたくないんじゃっどん!」

「比企谷君の様な下卑た視線でジロジロ見てくる男なんかに心配されたくはないと言っているわね」

「翻訳が嘘言ってどうするんだよ!」

 

言葉を教える側が誤った翻訳すれば迷惑がかかるだろ、と口ずさむ。

その後は、淡々と話が進んだ。懲りずに雪ノ下が俺と談論しながら上手く標準語を話せるように転校生に対して教える、という形を繰り返した。

もう8回目くらいのかのやり取りに飽きを感じていた俺は、つい質問にして口に出す。

 

「なぁ、お前がそこまで方弁にこだわる理由ってなんだ?普通に標準語話せるように転向することが決まった時に練習しなかったのかよ」

「そや……なんでお前に話(かた)らんといかんの?そげな事どうだっていいでしょ」

「それは、なんで比企谷君にわざわざ教えないといけないのかしら、そんな事どうでもいいじゃないの……との事よ」

「相変わらず本当か分からん翻訳だな……そんなに大切なら、もういっその事理解されないのを加味しても貫けよ」

「……なんで?」

「うわぁ急に素に戻るなよ」

 

唐突に疑問を投げかけてきた転校生に対して、俺は読んでいた本を閉じて語った。

 

「俺も昔、お前みたいな意味わからん言葉を話す奴がいた事を覚えてる。そいつが厨二病だったのか、はたまた外国からやって来たなんて知る由もないが……記憶通りなら確かいじめられてたんだと思うんだよな」

「……いじめられていた、ね。比企谷君はどうしてそう思ったのかしら?」

「簡単だろ。人間は言葉を通じない相手を嫌がるからだ。奴らは自分の話を聞いて欲しい星人だったり自分の話題で誰かを楽しめたい星人だったりする。特に話題に欠けない小学生とか中学生とかは特にそうだ。なんだ、“だっせぇ言葉!”とか“お前の日本語へったくそー”とか言われていた感じはしたな」

「比企谷君の生まれた時ぐらい酷いわね」

「お前俺の比較すると酷いぞ、俺の血と涙しか流れてこないからな」

 

そう言ってへらっと笑う。しかし転校生は俺に視線を向けている。流石におちゃらけた風に言い過ぎたが、と思い流石に真剣に話す形となった。

 

「それで、そいつがどうなっかって言えばまぁわかるだろ。いじめられて孤立したんだよ、話が通じないやつに構う暇なし、だったからな」

「……そういうものね。理解できないものを嫌うあれらはほうするしかないもの」

「で、肝心の俺は別に気にしてなかった。そんな事より中学に上がってウッキウキで女子とかに話してたしメアド交換とかも頼んでた……今ではメッセージ返ってこない事の真実や告白が罰ゲームだったとかいう真実に気付いて虚しくなっているがな」

「あなたの話はどうでもいいわね。それで、何が言いたいのかしら?」

「これは続きになるんだが、そいつって中学一年生くらいまでの知り合いみたいなもんだった。顔合わせたらおはようとか適当に意味わからん言葉の会話をそうかーとかああーとか返してた」

「最低ね……話を聞いてない人間は1番嫌われるわよ、今の比企谷くんのようにね」

「うっせ。それでまぁなんかそいつが変われたのかちゃんと喋るようになってさ、なんかそいつからボディタッチ多くなったし俺はこいつ俺の事好きなんじゃね?とか思ってたわけ、それでなんか、告白みたいなこれされてたらしいけど俺適当にああ、そうかーみたいなノリで返事してたら、そいつは数週間後に別の件に引っ越してった。まぁ要するに、意味がわかんなくても、通じなくても、それでも理解して一歩近付いてくれるやつを信じてればいいんじゃねぇの?」

 

そう言って本を開いて文字の羅列を見ていく俺は、席のガタッという音で視線を向ける。

 

「ごめん。流石に……色々言いすぎた。一応お前に相談しちょった訳じゃねけど、あいがと。

じゃあもうもどっね」

 

そう言って、転校生は空き教室である奉仕部から出ていった。

やべぇ怒らせたかもしれない、と頭を抱えそうになった時に丁度チャイムが鳴り響く。とっとと帰れの合図である。

 

「そろそろ帰りましょうか」

「うっす……」

「それと、比企谷君」

「あ?」

 

唐突に名前を呼ばれたので精一杯のぼっちの威嚇をしながら顔を振り向かせる。

 

「あなたの言葉、国語3位くらいには良かったわ」

「……そうかよ」

「けど女心は分からないという事が致命的なところね。あなたに結婚する女性が出来たら結婚詐欺として調べてあげるけど」

「うっせ、じゃあもう帰るわ」

 

そう言って、俺の長い学校生活の一日は終わった。

まぁどうせまた顔を合わせることになる転校生に関しては、雪ノ下に会いに行くだろう。

俺もその度に顔を合わせることだってあるだろうが、相容れない。俺はぼっちで彼女はぼっちになりたくないのだから。

青天の霹靂くらいの高い壁の差、まぁ俺はなるべくしてぼっちになったエリート。負けることだけは俺が最強。

そう思いながら、疲れで重い足を動かして行ったのだった。

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

学校からの帰り道。

少し前に通っていたことがある帰り道を通りながら思い耽る。

全く変わっていなかったあの男をもう一度思い浮かべる。

あの時とはテンションや瞳、色々が違うがやはりあいつだろう。

 

「ないががぼっちだよ。ひといが好きって言ちょった癖に、しちゃくゎちゃ喋くいじゃん。

冗舌家な所、変わってなかった。あたいの事(きゃあす)れちょっ癖に、記憶では誰(かの様に話しちょっし……掴めんやつ」

 

一人愚痴をこぼす様に歩いていく私は、ふと幻影のようにあの頃の姿が幻影に見える。

中一の頃、引越しと共にあいつを呼んで約束した光景。あいつはなんて事ない普通の話だと思っていただろうが……

いや、いいや。いいタイミングで思い出させて悶々させてやろう。黒歴史を掘り起こさせた罪は大きいのだから。

 

「本当て変わってないんじゃっで、世話が焼くっわ。明日会たや文句言てやろう」

 

明日のやるべきことは決まった。

あいつが思い出すまで死ぬ程擦り続けてやろう。

そう思い当たった時に体は駆け出して、明日の学校の準備に取り掛かる為気分よく帰ったのは、内緒である。

 

 




清川 雨音(きよかわ あまね)

短めの黒髪にワンサイドアップ、方言女子という可愛い要素を盛り込んだ女子高生。千葉にいたが、両親達の家庭的な問題で一度鹿児島に引っ越した経緯がある。
自分の鹿児島の方弁は可愛いし受けると思って喋っている為、分からなくても可愛い!と思われていればそれでいい。だが話が通じるとやっぱり嬉しいものがある。
実は、比企谷八幡と過去に交流があるようだが……?
ちょっとガキっぽい。

比企谷八幡

中学時代はかなり調子に乗っていた節を更に調子に乗らせた世界線の比企谷八幡。
陽キャに憧れたが陽キャにはならず、無駄に変な経験を積んだまま原作の姿となった。全く成長していない……

雪ノ下雪乃

ユキペディアさん。由比ヶ浜より先に新しいお友達を手に入れた形となる。
例え方言だろうが翻訳してくれる人間の鏡。性格が残念な事と口が悪いのを除けば美少女である。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。