無限のフロンティアWink   作:舟太郎

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2話 見習い戦士と従者

 

「グラップバトル?」

 

菓子店『ファッティ・ヘンゼル』での騒動の後、ヒビトくんにはジョーン・モーゼス代表の執務室に同行してもらった。

 

「ああ、俺も仕組みは詳しく知らねえけど、この[Gコン]で[マター]っていう大気中のエネルギーを集めて[グレイド]って武器を生成するんだけど・・・」

 

「ひょっとしてあのでっかい剣スか?」

 

「ああ、俺たちグラッパーはグレイドを使って攻撃することで対戦相手のマターを消滅させる勝負をするんだ。」

 

「それがグラップバトルなんスね。あのワンちゃんはなんなんスか?」

 

ファッティ・ヘンゼルに現れた怪物はヒビトくんの攻撃で普通の犬のようになった。一応、捕獲してケージに閉じ込めてあるけど、現状油断はできない。

 

「あれはただの犬だ、ただ野生の動物はマターの影響で狂暴化することがあるらしいんだ。その姿があのバリアントっていう怪物の正体さ。」

 

という事はあの犬が特別な存在と言うわけではないのか?

 

「つまり、キミの持つグレイドで攻撃することでバリアントの中のマターが消滅し、元の動物の姿に戻ったという事か・・・。」

 

ジョーン・モーゼスがコーヒーをすすりながら結論を出す。理解が速い。

 

「代表は理解が速いっスね。まあ自分もとっくに気付いてたっスけど!」

 

「ダウトだ、ウィンクくん。」

 

「ぐはっ!?」

 

速攻でウソがばれた。流石は元さすらいの賞金稼ぎ。

 

「しかしマターにバリアントか、これまでにない事例だな。またこの世界に妙なことが起こってる可能性がある。」

 

「ん?何言ってんだよ、バリアントなんて俺がガキの頃からしょっちゅう出てたぜ?」

 

「ヒビトくんは今も子供ッスよ。」

 

「ガキ扱いすんなよ!」

 

失言、怒らせるつもりは無いんすけどね。子ども扱いされて腹を立てるのは、年相応って感じだ。

 

「ヒビトくん、キミは何処から来たんだ?」

 

代表はヒビトくんに尋ねる。

 

「ああ、俺は[フモトナタウン]出身だ。」

 

「フモトナタウン、聞いたことない名前っスね。」

 

「ん?そうか、まあかなり田舎だし、ウィンクが知らないのも仕方ないかもな。」

 

呼び捨て!?これだから田舎のガキは・・・っと、いかんいかん。明らかに悪気はないのに腹を立てるのも大人げない。そもそもこの世界に礼儀正しい人間など存在しない。

それに田舎であることは関係ない。小さな世界が混ざり合ってできたばかりの今のエンドレスフロンティアに未確認の街などない。

 

「これは・・・どうやら新たなエトランゼの登場のようだな。」

 

「そうっスね・・・。」

 

異世界からの来訪者、このエンドレスフロンティアにはこれまで何人もの異世界人が迷い込んでいる。

 

「・・・なんだよ?」

 

ヒビトくんの方を見ると彼は彼で不思議そうに私と代表の様子をうかがっている。

 

「だいたいはハーケンが面倒を見てくれていたけど、ヤツは今不在。さて、どうしたものか・・・。」

 

代表が考え込む素振りをしながらチラリとこちらを見る。

 

「自分は無理っすよ!?・・・あ、そうだ仕事があるんだった!旅の準備をしなきゃッス!」

 

「なら丁度いいじゃないか、彼なら用心棒に最適だし、ひょっとすると例の新大陸が彼の出身地かもしれないだろ?」

 

どうやら代表は私に面倒ごとを押し付ける気だ。

 

「そんな顔をするな、ハーケンは不在だがリィにはツァイト・クロコディールを出すように俺から話を付けておこう。」

 

「おお?それは有難いっスね!アレで移動すれば陸路でも比較的楽ちんッス!」

 

「だがその前に、マターとバリアントへの対策は考えておかねばな・・・。ヒビトくん、悪いがキミのそのGコン、うちの科学者に調べさせてくれないか?」

 

◇◇

 

「騒ぎがあったのはこのお店のようですけど・・・。」

 

「うん、ここから不思議な気配を感じる。」

 

バリアントの襲来で入り口が壊れた菓子店『ファッティ・ヘンゼル』の店先で二人の若い男女が店内の様子をうかがっている。

 

「そんな事を言って、本当はお菓子の匂いに釣られただけじゃないですか?お嬢様。」

 

男が呆れた様子で少女に述べる。

 

「そんな事ないもん!・・・何か落ちてる。」

 

小女はむすっとした顔で男に言い返しながら、店に入り口に落ちていた薄いカードを拾い上げる。

 

「なんだろ、コレ?」

 

「ん?お客さん?入って入って!店内は荒れてるけど買い物なら出来るから!」

 

それを見かけたファッティ・ヘンゼル店長、クレオ・グレーテルが二人を店内に招き入れた。

 

◇◇

 

「なるほど、このベルトの部分を回転させることで大気中のマターを取り込み、グレイドを生成するのですね?」

 

私とヒビトくんはジョーン代表のかつての部下で、陸上戦艦ツァイト・クロコディールのクルーである澄井鞠音のラボを訪れている。

 

「ああ、そんでこの[DS(ドラゴンシーケンス)]に設定したビートスコアに合わせて攻撃を繰り出すことでビートコンボを決められるんだ。ビートスコアはメジャーグラッパーの曲をダウンロードしてもいいし、自分で作ったりもできるんだぜ!」

 

ヒビトくんはGコンとは別の手帳型の機械を見せてそう説明する。鞠音さんはGコンとDSの説明を夢中で聞いている。

 

「このスロットはなんですの?」

 

鞠音さんはDSに裏に何かの差し込み口を見つけて尋ねる。

 

「バレットの差込口さ。バレットってのはマターが結晶化した物で、それを差し込むことで特殊な技が出せるんだ。ショップで売り買いできるし、バリアントを倒したときに手に入ることもあるんだぜ。確認されてるだけでも100種類以上あるらしいぜ!」

 

ヒビトくんの世界ではグラッパーは特別な存在ではないらしい。若者が憧れる職業であり、それはつまり競技人口の多さを意味する。

夢破れてドロップアウトする者も多そうだけど、バリアントの存在を考慮すればハンターや用心棒としての需要もあるだろう。

そんな人たちが多種多様なバレットを売買すればその経済効果は計り知れない。

 

「・・・・・」

 

鞠音さんはヒビトくんの腕を取り、無言でGコンを見つめる。

 

「・・・分解しましょう。」

 

「ダメだよ!!?なんなんだこの人、どうかしてるぜ!?」

 

ヒビトくんは咄嗟に腕を振り払い、Gコンを守るように右腕を抱える。

 

「どうかしてるのは間違いないッス。」

 

「冗談はさておき、解析のために一晩預からせてもらえますかしら?」

 

「まるで折衷案のように言っているけと、異文化の未知のテクノロジーを無料で好きに調べるってかなり狡くないッスか?」

 

今後もしヒビトくんの世界と交流を持つことがあれば、Gコンの技術は間違いなく向こうのアドバンテージとなる。

それを今調べる事はその知的財産を奪う事と同義だ。ヒビトくんのような子供に判断させるのは胸が痛む。

 

「Gコンを調べるように言ったのは先代でしてよ?それにバリアントの危険性を考慮すれば致し方ない事でしょう?現状、またバリアントが出現するようならベースとなる動物ごと始末するしかありませんもの・・・。」

 

野生動物を人質に取っただと!!?

 

「仕方ねえか、分解すんなよ・・・?」

 

ヒビトくんは若干不安そうにGコンとDSを貸し渡す。

 

「それにしてもあなた本当に何処からいらしたのかしら?こんなシステム、初めて見ましてよ?」

 

「それは俺が聞きたいぜ。せっかくこんな大きい街にたどり着いたってのに俺以外誰もGコンを持ってないし、ひょっとしたら例の事件と関係あるのかと思ってたけどそもそもGステーションが無いし・・・これじゃメジャー審査が受けられない・・・。」

 

どうやらヒビトくんはここが異世界ではなく、単なる自分が知らない町として認識しているらしい。

 

「例の事件って何なんスか?」

 

こんな子供の口から事件なんて言葉が出るとなかなか不穏だ。

 

「ああ、なんか知らないけど前の街に寄ったときに聞いたんだ。他の街でグラッパーが襲われてGコンを壊されるって事件が多発してるってな。」

 

強奪ならまだわかるけど、壊すだけってなると目的が解らない。ライバルを減らすとか・・・あるいは腕試しの類かとも思ったけど、聞けば野良試合は禁止されてないらしいし襲う理由はない。

 

「ま、そんな奴は俺が見つけてこらしめてやるけどな!」

 

当事者であるヒビトくんは深く考えてないようだし、私が頭を悩ませる筋合いもないか・・・。

 

「ところで鞠音さん、グレイド無しでバリアントを撃退することは可能っなんスよね?」

 

「倒すだけなら通常兵器でも可能でしょう。けれど先ほども言った通り、その場合もとになった動物は助かりませんわ。」

 

「ん~、それは困ったっすね。」

 

バリアントがマターの影響で狂暴化したただの動物だというのなら出来れば傷つけたくはない。麻酔や罠で動きを封じてもマターを除去出来なければずっと捕獲しておくしか無いが、それはこちらの負担が大きすぎる。

 

「そんじゃ鞠音さん、Gコン作ってくださいッス!」

 

「先代ばりの無茶ぶりですわね・・・」

 

 

 

 

「とりあえずヒビトくんには今日はこのホテルに泊まってもらうッス!」

 

鞠音さんのラボを後にし、私はヒビトくんをトレイデルシュタットの宿泊施設、ホテル[エリタージュ]に案内する。

 

「俺は野宿でいいよ、こんな立派なホテルに泊まる金なんて持ってないぜ?」

 

「気にしなくていいっスよ、どうせ代金は代表持ちっスから!」

 

「うわ!?」

 

ヒビトくんの背中を押してホテルに入ろうとすると、入り口で大量の買い物袋を抱えた若い男とぶつかり、辺りには男の手荷物が散乱する。

 

「あ~・・・済まないっス、怪我はないっスか?」

 

「あ、お気遣いなく、こちらこそすいません!」

 

若い男はそう言って散乱した荷物を集める。そのほとんどがファッティ・ヘンゼルで売られている商品である。

 

「お菓子好きなんスね?明らかに多すぎるっスけど・・・」

 

私は見知らぬ旅行客が地元のお菓子を大量に買い込んでいるのを見て少し嬉しくなる。

 

「ジャン~、何してるのもう!」

 

男の連れと思しき少女が現れ、男をせかす。目立つピンク色の髪にやたらフリフリした意匠の衣装を身につけている。

 

「お嬢様も手伝ってくださいよ~。」

 

男は情けない声で少女にせがむ。少女も散乱したお菓子を拾い始める。

 

「自分はこの街の役所で働いてるウィンクって者っス。お二人はご旅行っすか?」

 

お菓子を拾うのを手伝いながら少女に尋ねる。

 

「私はキュート、戦士見習いで修行の旅の途中なんです。いずれは4年に一度開催される女王を決める闘技大会に参加したいと思ってるんです!」

 

「いやいや、急な思い付きで旅に出ただけで、お嬢様は戦士でもなんでもないじゃないですか!」

 

「思い付きじゃないんだもん!私はちゃんと戦士になるんだから!」

 

なるほど、二人の様子を見れば大体の事情は把握できる。どうやらこっちのピンク頭の女の子は良いとこのお嬢様で、この地味なのがその世話係ってところだろう。しかし・・・。

 

「女王を決める闘技大会・・・ひょっとして修羅の人ッスか?」

 

そんなふうには見えないけど、たしか修羅の人達も戦いで王を決めるらしいし、普段は修行しかしてないらしい。

 

「え?修羅って何ですか?」

 

違ったか・・・だとすると、ひょっとしてこの子たちもまた異世界の住人だろうか?

 

「だったら俺と同じだな!」

 

様子を見ていたヒビトが少女に話しかける。まさか自分の置かれてる状況を察した上で、彼女達も自分と同じく異世界に飛ばされたと推測を・・・?

 

「俺はヒビト!俺もメジャーグラッパー目指して旅の途中なんだ!そんでいずれはG1メジャーグランプリに出場して優勝して見せるぜ!」

 

全然違った。

ヒビトくんが誰に聞かれても無いのに夢を熱く語る。何と言うか・・・あらゆる意味で暑苦しい子だな。

 

「うん、よろしくねヒビト!」

 

ヒビトとキュートが握手を交わす。次の瞬間キュートが虚ろな表情を浮かべ、ピンク色の髪が緑色に変化する。

 

「・・・・あなたは・・・。」

 

キュートは何かを言いかけたところで元のピンク色の髪に戻る。

 

「俺がどうかしたのか?」

 

「え?・・・ん~、よくわかんない。」

 

「何だそりゃ?・・・まあいいや。とにかくよろしくな、キュート!」

 

「ちなみに僕はジャンと言います〜。」

 

地味な従者も続けて地味に自己紹介した。

 





【キャラクター出典紹介】

ジャン (CV:神谷浩史) [クイーンズブレイド スパイラルカオス(PSP)]
キュート(CV:斎藤桃子) [クイーンズブレイド スパイラルカオス(PSP)]

【挿絵表示】


【ゲーム紹介】

[クイーンズブレイド スパイラルカオス(PSP)]

2009年に発売されたSRPGでゲームシステムはほぼスパロボなゲーム。

レベルアップ時に手に入るボーナスポイントをひたすら回避と命中に費やせば割と楽にクリアできるのですが、主人公であるキュートとジャン意外のキャラクターはラストステージで味方時のステータスのまま敵になるため、好きな原作キャラなどを育て過ぎると詰みます。

【ちょっと語らせて】

ムゲフロベースでドラグレイドとクイーンズブレイドを参加させようと思った際に、タイトルを[無限のフロンティア ダブルレイド]とかにしようかと思ったけど止めました。


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