無限のフロンティアWink   作:舟太郎

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3話 夜と夕暮れ

 

◆◆◆◆

 

「エンドレスフロンティア・・・グラッパーがこちらの大陸に転移しているなんて、本当に不安定な世界ね・・・。」

 

長身の女性がトレイデルシュタットのビルディングのてっぺんに立ち、街を見下ろす。隣には蝙蝠のような羽を生やした少女が浮遊している。

 

「どうでもいいわ!グラッパーが居るんだったらさっさとGコンを破壊しましょ、それが巫女様たちの望みなんだから!」

 

羽を生やした少女が長身の女にそう告げる。

 

「落ち着きなさいラミカ、巫女様たちの望みはあくまでも[ドラグレイド]を生み出すGコンを手に入れる事よ。」

 

「ソレが見つからないから苦労してるんでしょ!?グラッパーの数が多過ぎるんだから、ハズレのGコンは壊してった方が分かりやすいじゃない!」

 

「やみくもに仕掛けてこのエンドレスフロンティアの住人を敵に回すのは得策じゃないわ。」

 

「ビビってるんだったらドーラは帰れば?」

 

ラミカと呼ばれた少女がそう言って一人、トレイデルシュタットの街へ降りていく。

 

「まったく、しょうがない娘ね・・・。」

 

ドーラもそう言って空間を歪め姿を消した。

 

◆◆◆◆

 

「おはようッス!Gコンは出来たっスか?鞠音さん!」

 

翌日、私とヒビトくんは預けていたGコンを回収するため、再び鞠音さんのラボを訪ねる。

 

「昨日の今日で出来るわけがないでしょう・・・。」

 

「同じものじゃなくても、似たようなパチモンでいいんすよ!Pコンという商品として売り出すんで!」

 

「貴方、前回のモノローグで知的財産がどうのとおっしゃってませんでしたか?」

 

鞠音さんは呆れた様子でこちらを見る。モノローグの事など覚えとらん!

 

「システム面でははそこまで複雑ではありませんけれど、機械的に緻密なつくりになっていまして、再現するのは不可能ですわ。」

 

「へへん、俺のGコンはじいちゃんが作った物なんだぜ。」

 

「おじいさんは科学者なんスか?」

 

「Gコン職人なんだ。若い頃はかなりの腕利きだったって話だぜ!」

 

なるほど、専門の職人による逸品であるなら、単なる科学者には畑違いだ。

 

「よし、ならそのヒビトくんのおじいさんに作ってもらうッス!」

 

「いやそれが出来ないから困ってんだけど・・・」

 

ヒビトくんには昨夜、平行世界や異世界について説明した。次元転移とは全く縁のなかった世界の人間には理解しづらい様子だったが、ここが知らない場所で、元居た場所に帰るのは容易ではないという事だけは伝わった。

 

「けれど、マター対策は考えています。解析したデータをドロシーさんに送っておきましたわ。」

 

「ドロシーさんに丸投げするんスか?」

 

私や鞠音さんと同じく妖精族の歩く火薬庫、ドロシー・ミストラル。盗賊で発明家でジョーン代表に惚れている・・・正直、設定が渋滞している。

 

「・・・あなたにそんな言われ方をされたくはありませんわね。・・・彼女が開発したアルギュロス、アントラクス、オズマゴスをご存じでして?」

 

「確かミトカイル鉱石を破壊する弾丸やグローブっすよね?」

 

アルギュロスなら青、アントラクスなら赤、オズマゴスなら黒、それぞれのミトカイル鉱石のエネルギーに反応して破壊できる道具である。

 

「けどそれがどうしたッスか?ミトカイル鉱石なんて今は関係ないじゃないッスか。」

 

「彼女の持つミトカイル鉱石を破壊する発明のノウハウをマターのエネルギーに反応するように応用できれば、バリアントを元の動物に戻せる道具が出来るはずです。」

 

同じ科学者と言っても、鞠音さんの分野ははどちらかと言えばロストテクノロジーの調査や修理、発明家のドロシーさんとは若干方向性が異なる。

であれば、鞠音さんがGコンの解析をし、ドロシーさんがそのデータを元にマターを破壊できるアイテムを作るのは最適解かもしれない。

 

「・・・自分も同じことを考えていたッス!」

 

「嘘おっしゃい。」

 

ばれたか・・・。

 

「何にせよ、彼女は今滅魏城にいらっしゃるようです。あなた、新フォルミッドヘイムに行くのでしたわよね?なら立ち寄りましょう。」

 

滅魏城、トレイデルシュタットがあるこのロストエレンシアから見て東のメギ・エルフェテイルにある式鬼たちの居城だ。

新大陸に行くにあたり、私とヒビトくんはアン・シレーナのサイレント・ウォークス号と合流しなければならない。彼女たちのような海の種族、ヴァルナカイの住人は主に新フォルミッドヘイムに移住している。

 

「私はツァイト・クロコディールの整備に取り掛かります。貴方も旅の準備をして合流なさい。」

 

「うぃ~ッス。」

 

 

▽▽

 

 

「ここは?」

 

「この街のアイテムショップ、回復アイテムや装備品なんかを購入できる店ッス。」

 

「へ~!やっぱり都会はスゲエな!」

 

私とヒビトくんはトレイデルシュタットのアイテムショップ[レガシー]を訪れる。ヒビトくんは物珍しそうに店内を見て回る。

 

「だから、回復薬やハーブは置いてないんですか!?」

 

「・・・〇×△□」

 

昨日知り合った男女、キュートちゃんとジャンさんが防衛装置Δを調整した店員ロボと揉めている。

 

「チョロ松とハタ坊じゃないッスか、どうしたんスか?」

 

「チョロ松とハタ坊!?」

 

「失礼、やり直すッス。・・・ジャンさんとキュートちゃんじゃないッスか、どうしたんスか?」

 

「・・・はい、回復アイテムや装備品を揃えようと思ったんですけど、見た事ない品物ばかりで・・・でもこの店員さんまともに喋ってくれないし、何を買ったらいいのか・・・。」

 

ジャンがぐちぐちと言葉を連ねる。

なるほど、確かに私たちが当たり前の様に使ってる物も彼らにとっては未知のアイテムなのか・・・。

 

「なんだそんな事か、心配すんなよ!俺も似たような感じだぜ!俺のいたところにはバレットショップしかなかったからな!」

 

ヒビトくん、その発言に安心できる材料は無いよ。

 

「ヒビトくん、その発言に安心できる材料は無いよ・・・。」

 

キュートちゃんと意見が被った。

 

「・・・お二人さえよければヒビトくんと同じようにこちらでいろいろサポートはさせてもらうッスけど・・・?」

 

私はキュートちゃんとジャンさんに今の状況を説明し、こちらの保護下に入るように勧める。

 

「よろしくお願いします。」

 

「もちろんっス。」

 

 

▽▽

 

 

私たちはレガシーでの買い物を終え、トレイデルシュタット郊外に泊まっているツァイト・クロコディールに向かっている。キュートちゃんとジャンさんも一緒だ。

 

「ヒールカプセルは回復薬、パワードリンクがハーブ、マインドカプセルがケーキの役割ってことですね。」

 

ジャンがレガシーで購入したアイテムを、自分の世界の回復アイテムと照らし合わせて確認する。

 

「・・・絶対そっちの方が分かりにくいっス。」

 

ケーキでSP回復って・・・。

 

「神楽天原ではおはぎと玄米茶だし、そこまで変じゃないか・・・。」

 

それにファッティ・ヘンゼルの商品だって特殊な効果のある物ばかりだ。

しばらく歩いていると、岩陰からぷよぷよしたゼリー状の生き物が大量に現れた。

 

「なんスかねコレ。」

 

「ウィンクさん、危ない!」

 

私が不用意にそのゼリーに近づくと、ゼリーは突然形状を変え私を覆うように広がる。

 

「ぎゃあ!?」

 

私はびっくりして腰を抜かす。

 

「ええーい!」

 

キュートちゃんが私とゼリーとの間に割って入り、双剣でゼリーを攻撃する。

 

「大丈夫ですか、ウィンクさん!」

 

「助かったっス!・・・何なんスかねこのぷよぷよ・・・見たこと無いっス。」

 

「こいつ等はゲル、私たちの世界の魔物だよ。数は多いけどそんなに強くないから落ち着いて対処すれば・・・」

 

キュートがそう説明するが、私は腰が抜けて動けない。

その間にゲルはどんどん発生し、私たちを取り囲む。

 

「どうしたら・・・」

 

そこへヒビトくんがゲルの集団を飛び越えて現れる。

 

「熱いグラップを見せてやるぜ!」

 

ヒビトはGコンのベルトを回転させた。

 

 

「やるぞ、キュート!」

 

「うん!」

 

ヒビトとキュートは次々とゲルを攻撃していく。しかしゲルの数は一向に減らない。

 

「み~つけた!」

 

突如、上空から一人の少女が現れ、黒い剣でヒビトに襲い掛かる。ヒビトは咄嗟にそれを受け止めた。

 

「へぇ、今まで見たことが無いタイプのグレイドね。ひょっとしてそれがドラグレイドなのかしら?」

 

現れた少女、ラミカがヒビトに尋ねる。

黒い剣が羽にに形状を変え背中にくっつく。

 

「なんだお前は!?ドラグレイドって何のことだよ!?」

 

「な~んだ、またハズレか。・・・じゃあ要らない!」

 

ラミカは再び黒い羽、マルチプルウィングを切り離し、ブーメランのように投擲する。

飛び道具を持たないヒビトはただそれをガードするが、その後ろからゲルが迫る。

 

「くそっ!?」

 

「このー!・・・きゃ!?」

 

キュートがヒビトを援護するように背後のゲルを撃退する。その勢いでずっこけ、懐から赤いカードを落とす。

 

「バレット・・・キュート、これをどこで!?」

 

「えっと、お菓子屋さんの前で・・・」

 

「お菓子屋さん・・・ってことは、あの時のバリアントか!キュート、これ借りるぜ!」

 

「え?欲しいんならあげるよ。」

 

「サンキュー!」

 

ヒビトはDSのスロットにバレットを差し込む。

 

「くらえ、メゾファイア!」

 

ヒビトはラミカに向けて火の玉を発射する。

 

「大した威力じゃないわね・・・この程度の炎で・・・っ!?」

 

「メゾファイア!メゾファイア!メゾファイア!」

 

ヒビトはラミカの反応を無視してメゾファイアを連発する。

 

「アクションゲームならではの攻撃っスね・・・」

 

腰を抜かしたまま動けないウィンクがその様子を見てそんな感想を抱く。

 

「きゃあ!?」

 

メゾファイアを受け続け、なぜかラミカの胸元の服だけが破れる。

 

「・・・え?」

 

ソレを見てヒビトが唖然とする。

 

「ヒビトくん・・・えっちッス。」

 

「ちげぇし!つか・・・何で服だけ壊れんだよ!?」

 

ヒビトはいきなり発生した謎の現象に戸惑う。

 

「動揺しちゃダメっスよ、ジャンさんを見習うッス。」

 

ジャンはニヤけながらラミカを見ている。

 

「なんだこの人・・・。」

 

「分かりやすいスケべっスね。こんな事で存在感を出してくるとは意外っス。」

 

「見るなぁっ!」

 

「ぎゃあ!?」

 

ラミカが怒り、ニヤけていたジャンに黒いブーメランを投げつける。

 

「うぅ、僕じゃないのに・・・!?」

 

「よくもやったわね!?」

 

苛立つラミカの前で地面が盛り上がり、壁を作っていく。

 

「今度はなんスか!?」

 

盛り上がった地面は人型に形成され、巨大な岩の怪物へと変化する。

 

「でかっ!なんだよコイツ!?」

 

「さあゴーレム、やっちゃいなさい!」

 

ゴーレムがヒビトに遅い動きで襲い掛かる。

 

「遅いと思って様子を見に来てみれば・・・なにやら随分と盛り上がっているようですわね?」

 

ツァイト・クロコディールのある方角から澄井鞠音が現れる。

 

「鞠音さん!?非戦闘員がこんな所に来たら危ないっスよ!」

 

「誰よアンタ、引っ込んでなさい!オバサン!」

 

ラミカが鞠音にゴーレムを差し向ける。

 

「・・・・・。」

 

鞠音は顎に手を当て考え込む。

 

「なるほど・・・状況は理解しました。では助っ人を呼ばせていただきましょう。」

 

鞠音がそう言うと彼女が現れた方角から青と白の3M級の2体の巨人が高速で近づいてくる。

青い巨人は接近と同時に、その釘打ち機のような右腕でゴーレムを撃ち貫き、その後肩のパーツを開きベアリング弾をばらまく。

白い巨人は空中で巨大な長銃を構えると、そのバレルが開き高出力のビーム砲で辺りのゲルを一掃した。

 

「・・・・・は?」

 

ラミカは突然現れた2体の巨人、アルトアイゼン・ナハトとヴァイスリッター・アーベントに唖然とする。

 

「なっ・・・何なのよこいつ等!?」

 

「ナハトとアーベント、自分たちの心強い味方っスよ!」

 

何故か何もしていないウィンクがドヤ顔をかます。

 

「どうやら後はお前だけみたいだな?」

 

ヒビトとキュート、ついでにジャンがラミカを取り囲む。

 

「こ・・・これで勝ったと思わない事ね、次はこうはいかないんだから・・・痛っ!」

 

ラミカは捨て台詞を吐きながら飛翔すると、後頭部に何やら硬い物体にぶつかる。

 

「今この場で空を飛べるのはあなただけではありませんわよ?」

 

鞠音がため息をつきながらラミカに告げる。

空を舞う白騎士、アーベントが至近距離でラミカにパルチザンランチャーの銃口を向け、引き金を引いた。

 

「覚えてなさいよおおぉぉぉ・・・!!」

 

ラミカは吹き飛ばされ、空のかなたに飛んでいった。

 





【キャラクター出典紹介】

ラミカ (CV:矢作紗友里) [クイーンズブレイド スパイラルカオス(PSP)]
ドーラ (CV:日笠陽子) [クイーンズブレイド スパイラルカオス(PSP)]


【ちょっと語らせて】

そのままだと書きづらかったので戦闘シーンはウィンクの一人称を止めて三人称にしました。◇が切り替えのマークになります。
戦闘描写に関しては痛々しい表現は避けることにしました。生身でステークやクレイモアを喰らったりしたら大変なことになるので。
よって銃で撃たれても死んだりしません。ダメージを受けても服が破れるだけです!
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