家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
春の日曜の午後のことだ。
俺の10畳のアパートで。
締め切った部屋で、アリスが正座してディーグイとテレビゲームをやってる。
窓を開けたいが、ゲームの音が洩れるのが嫌なので締め切っていた。
夏だったらエアコン必須の状況。
春でも少しキツイところがある。
俺は座布団に腰を下ろして、ディーグイを見ていた。
ディーグイは志乃に髪を結ってもらっている。
服としては白いワンピースを身に着けていた。
志乃の手は器用に、ディーグイの長めの髪を丁寧に編み込み、ハーフアップに仕上げていく。
「なぁ、前から訊こうと思ってたんだけどさ」
俺はディーグイに話を切り出した。
「何だ? マスターよ?」
ディーグイはアリスのゲームに付き合いつつそう返す。
「何でマスターだよ。契約主とか召喚主とか、色々あるだろ」
俺は苦笑した。
「今の時代はこれが流行りと聞いたぞ? ネットでな」
ディーグイは得意げに胸を張り、そう返し。
そのときゲームで何かしたのか、アリスが「やー!」と小さく叫んで抗議する声が、部屋に小さく響く。
……こいつ超古代の人間なのに、ネット文化にどっぷりハマってんだなぁ……。
そんなことを頭の片隅で考えつつ、俺はディーグイに本題を切り出した。
「何で女の身体なの? いや、造魔がそうだったのは分かるんだが……」
そもそも造魔を女の姿で作った理由が分からないんだ。
この身体、殷王朝復活戦争の戦力として作られたんだよな?
戦士なら、もっと筋骨隆々な男の姿でも良かったはずだ。
見た目が綺麗な女の方が目の保養になる、なんて理由で作ったとは思えない。
ディーグイは、そんな軽薄な男じゃなかったはずだ。
ディーグイはコントローラーを持ったまま、ふっと目を細めて答える。
「……女の方が魔道に向いておるのだよ。男の魔法使いで強力な者は、伝説にもそう多くはおらんだろ?」
「……あー、確かに」
俺は頷く。
マーリンやソロモン王の名はあるけど、魔女や巫女の方が数多いし有名だわな。
魔女って言葉は普通にある言葉だけど、魔男なんて言葉は聞いたことない。
歴史的に女性が抑圧されてきたから、魔女の物語が目立つのかと思ってたけど、実は特性の問題だったのか。
「なるほどねぇ」
俺は呟きながら、志乃に目を向けた。
楽しそうにディーグイの髪を編み込んでいる。
志乃としては妹が増えた感覚らしい。
……俺は今、大学3年生。
コース選択では中国史のコースを選択しようかと考えてる。
だって、目の前に殷時代の生き証人がいるんだ。
こんなチャンス、滅多にないだろ。
ディーグイがたまに話す、教科書には載らない殷王朝の話は、妙に生々しくて面白い。
これが就職に有利かどうかは、正直わからん。
でも、今の俺にはそんなことどうでもいいんだよな。
ふと、志乃のことを考える。
彼女は看護学部で、看護師の国家試験を受けるつもりなんだろうか?
……志乃はどうするんだろうか。
志乃の手がディーグイの髪を結い上げ、満足げに「できた!」と声を上げた。
志乃は世話焼きな性格だからこういうこと好きなんだよな。
ディーグイ、ホントは嫌だったりしないだろうか?
そこが少し、気がかりだ。
今度こっそり、訊いてみるか……
そう思ったとき。
床に置いていた俺のスマホが激しく振動し、着信を告げたんだ。
魔男のイチを揶揄するつもりはありません。
次回、最終回。
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