家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第17話 傷痕

「何でそんなに嫌そうにスマホ弄ってんの?」

 

 俺が彼女と付き合う切っ掛けになったのは、そのときの一言が切っ掛けだ。

 

 塾の授業が夜9時で終わり、塾の入り口のベンチスペースで夜9時から10時の間に迎えに来る親を待つ間。

 

 なんとはなしに会話が生まれて、互いの趣味の話をする程度には打ち解けた後。

 

 あるとき、訊いたんだよ。

 前から疑問だったから

 

 すると志乃は

 

「えっ」

 

 いきなりそんなことを訊かれるとは思ってなかったのか。

 少しポカンとした感じでそう返してきて。

 

 俺は

 

「言いたくないなら別に良いけどさ」

 

 飛鳥馬さん、すごく嫌そうにスマホをよく弄ってるから、前から気になってたんだ。

 俺のそんな問いに。

 

 彼女は沈黙する。

 答えは返ってこない。

 

 俺は言いたく無いんだなと判断し、英単語の暗記を再開しようとした。

 

 そのとき

 

「……中学時代の友達がうざったいのよ」

 

 ボソリ、と。

 彼女はそんなことを言ったんだ。

 

 

 彼女は中学時代はその美貌でスクールカースト上位勢に君臨してて。

 俺としては、ガタイはいいが正真正銘の陰キャである自分とは別世界の人間だよなぁ、と。

 関心を向けない相手だった。

 

 彼や彼女らは、俺とは違う人生を送る存在で、日々をゴージャスに生きてるんだろうなと。

 

 思い込んでいた。

 

 別に羨ましいとか、憧れるとかは無かったけど。

 

 ……彼ら彼女らが、悩んでいるなんて思ったことは無かったんだ。

 馬鹿丸出しな考え方だと思うけどな。

 

 ……悩みの無い世界なんてあるはずないのにさ。

 

 彼女の場合は、男を引き寄せる餌の役割を、他の女生徒に頼まれることが多かったらしい。

 そして嫉妬を受けることも多かった。

 

 そういう奴らとの付き合いで、振り回されていたみたい。

 

 あと、彼女は勉強もできる方だったから

 

 外見ばかり気にして、全く勉強していない頭空っぽの女友達に、勉強の相談を受けることが多く。

 そのせいで、自分のための勉強時間が思うように取れないことが多かったらしい。

 

「明らかに自分では少しも考えていない子も多くてさ」

 

 やる気ないのに私の時間を奪うのは平気なんだ。

 そう思うとイラっとくるけど。

 

 ハッキリ気持ちを言ってもどうせ被害者ヅラをして私の悪評を触れ回るんだろうなと思ったら

 

 まぁいいか、と思って黙って対処してるのよ。

 

 そう、自虐的に笑いながら語って来たから

 

 俺は

 

「やめれば?」

 

 そう一言言ったんだ。

 

 

 彼女は俺にそんなことを言われるとは思って無くて。

 かなり驚いていた。

 

 でも、気を取り直して

 そんなことをしたら報復があるかも、と否定して来たんだけど

 

「どうせもうすぐ受験じゃん。俺も飛鳥馬さんも首都圏近い木見北大を受けるんだし。どうせそいつらはついては来れないでしょ」

 

 機嫌を損ねても、将来的にそいつらがついてこれない場所に行くんだし。

 嫌な思いしかしない価値のない関係性は、切ってしまうちょうどいい機会なんじゃないかと。

 

 そう言ったんだ。

 

 すると彼女は

 

 なんか、覚醒した顔をしていたな。

 

 

 

 そこから何だか関係性が変わって来て。

 大学受験に臨んで。

 

 2人とも合格したと分かったとき。

 俺から告白して

 

 志乃との恋人関係になったんだ。

 

 

 

 ……目が覚めた。

 

 起きてすぐ、自分が何をされたのかを理解して。

 

 志乃の姿を探した。

 すると……

 

「あ、起きた」

 

 ……ホテル業魔殿の地下エントランスのソファに俺は寝かされていたんだけど。

 

 すぐ傍のソファに彼女は居て。

 

 俺は

 

「志乃! 無事か!?」

 

 志乃はコーヒーを飲んでいた。

 服装は……

 

 変わっていない。

 

 白いシャツと、ジーンズだ。

 

 自殺の方法は自分で自分の首を儀式ナイフで切ることだと聞いている。

 じゃあ、結局取り止めたのか……?

 

 そう思ったけど

 

 彼女の首にうっすらと。

 センが見えたんだ。

 

 セン……傷痕が。

 

 俺は……

 

 彼女の無事を喜ぶとともに。

 彼女にそんな選択をさせてしまった自分が情けなくなって

 

 彼女に近づいて、抱き締めたんだ。

 

 彼女は

 

「……首に傷痕が残ったけど、時間が経てば目立たなくなるそうだから」

 

 安心して。

 

 優しい声でそんなことを言ってくる。

 

 そうじゃない……そうじゃないんだ。

 

 ありがとう……すまない……




まあ、これで戦力は上がったわけではあるし。

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