家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
怪しい中学生男子は固まっていた。
俺たちは距離を詰めながら
「お前さん、ここで何をしてたんだ?」
「あなた、取り返しのつかないことになるかもしれないよ?」
……なるべく、穏やかな、寄り添った言葉を口にした。
別に俺は、この中学生をぶちのめしてやろうとは思ってない。
無論動物虐待は犯罪だけどさ、それを裁くのは俺の役目じゃ無いし。
ただ単に、キョウジの代わりに日々の雑務をこなすだけ……
俺たちに出会ってしまった中学生男子は凍り付いていたが
回れ右をして
その瞬間
「顔はもう覚えたわよ」
すかさず。
志乃がそう言ったんだ。
……優しいってことは。
他人の気持ちが分かるってことだから……
言われたら逃げづらくなる言葉。
それも分かるんだな。
男子中学生の足が止まった。
俺は一歩進み出て
「……話を聞かせろ。ここの犬猫を殺したのはお前だろ?」
そう言うと、男子中学生の肩がビクンと震える。
……分かりやすいな。
で、ダンマリ。
俺は
「……自分より弱い者にしか暴力性を発揮できないんだな。そういうのをな」
クズって言うんだよ。
知ってたか?
感情を押さえて、淡々と口にする。
すると
「何がクズだ!」
……いきなり大声。
目を見開き、興奮して捲し立てる。
「僕だってカーストの頂点に立ちたい! 誰もが一目置いてくれる存在になりたいと思って何が悪いんだよ!」
そして男子中学生はいかに自分が不遇かを並べ立てる。
やれ、成績でマウントを取れない。
運動も得意じゃない。
特技も無い。
女の子に告白されたことも無い。
不遇だ、不遇だ、不遇だ……
知るかボケ。
大体、それの何が辛いんだ。
そういうのが気になるのはな、お前の幸せの基準が他人との比較だからだ。
俺は中学生でそれに気づいたから別にどーってことなかった。
ガチ陰キャで誰にも注目されてなかったけどな。
……志乃は俺のことを知ってたみたいだったけど。
カースト上位勢でも無いのに、妙に態度デカいから覚えてたらしい。
まぁ、今はそんなことはどうでもいいか。
「あのな」
喚き散らす男子中学生を前にして俺は
努めて穏やかに
「それで悪魔召喚ってのはさ、選択としては馬鹿過ぎるぞ」
悪魔召喚という言葉が出た瞬間、男子中学生の顔色が真っ青になる。
「例えるなら、漫画本を手に入れるために強盗を企てるようなもんだ」
いや、もっと酷いけどな。
心で付け加えながら。
強盗なら刑務所に送られるだけで話は終わるが、悪魔召喚は失敗すると比喩でなく人生が終わる。
他人を沢山巻き込んで。
俺はそういう事例を山ほど読んだ。
貰った資料で。
悪魔に契約の穴を突かれて、憑依されて家族を強姦した挙句皆殺しにした男も居たし。
発狂して、公共交通機関で全裸になって自殺した女性も居た。
そういう、悲惨極まりないことになるんだよ。
するとだ。
中学生男子はブルブル震えて……
俺たちを睨み
こう、言って来た。
「お前らが悪いんだからな……? 僕を追い詰めるから……!」
……どうやら、悪い方に覚悟を決めたらしい。
男子中学生は、ズボンのポケットから指輪を取り出して、それを左手の人差し指に嵌め
「来い! 堕天使シトリー!」
その手を掲げて、声を張り上げる。
同時に地面に浮かび上がる魔法陣。
「……呼んだか? 主よ……?」
そしてその魔法陣から、数メートルある巨大な豹が現れる。
ただし背中に、鷲のような力強い大きな翼を備えた、飛行能力を持つ豹だ。
堕天使シトリー……
ソロモン72柱に数えられる、わりと有名な悪魔。
火炎魔法に長け、他に職能として強制発情の魔力を持つ。
男女を惚れさせたり、服を脱がせたりできるらしい。
……言っちゃなんだが、男子中学生の呼びそうな悪魔だよ。
志乃に注意を入れておかないと。
そう思いつつ俺は
鞄の中に仕舞っていたGUMPを取り出した。
堕天使シトリーは、真1で初遭遇したときに全滅させられた悪魔です。
オザーさんにボコられた後に襲われたのよ。
本作を読んでいただき感謝です。
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