家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
クズ男のメールと昨夜の襲撃から一夜明けた昼下がりだ。
俺と志乃は志乃の友人の岬紀子のマンションを訪ねてた。
志乃は下宿屋住まいだが、その友人はマンションに住んでた。
賃貸らしいんだが、管理人付きオートロック付きの結構いいマンション。
「岬は実家が会社してて、そのせいでお金はあるって言ってたよ」
一人娘で、大事に育てられたらしい。
小遣いは普通の額だったそうだけど、こういう「娘の安全に直結すること」にはふんだんにお金を突っ込むそうで。
そのせいで、賃貸のマンション住まいなんだと。
ちなみに3LDKだとか。
……すげえな。
俺はワンルームなのに。
金持ち、パネェ。
本来は志乃の友達に会いに行くことに、俺が同行するのはおかしいんだけどさ。
今回は場合が場合だしな。
その志乃の友達が話す内容を、俺も聞いておく必要あるし。
マンションに到着して、志乃が部屋番号を入り口のパネルでプッシュすると。
『……はい、岬ですが?』
……パネルから女の声。
1回しか会ったこと無いけど、多分志乃の友達だ。
「突然ゴメンネ。メールでも連絡したけど、ちょっと訊きたいことあるから」
志乃がパネルのマイクに向かってそう話し掛ける。
それを聞いて向こうの志乃の友達が。
『いいよ。入って』
その言葉と同時に。
このマンション入り口のドアのロックが外れる音がした。
紀子の部屋は3階の隅の部屋。
部屋の前に到着し、インターホンを押すと。
しばらくした後。
志乃の友人・紀子がドアを開けた。
ウェーブがかった長い黒髪と、真っ直ぐな目を持つ女。
白色を基調としたシンプルなトップスに、すっきりとしたシルエットのロングスカートを身に着けている。
そして左手首にスカーフのようなものを巻いている。
これが、志乃の友人の岬紀子。
「いらっしゃい……まあ、入って」
なんか、血の気が無い顔色だった。
覇気がないというか……
やはり、恋人の裏切りを引き摺ってるんだろうか?
俺たちはリビングに通して貰った。
そこには丸いローテーブルがあり、座布団が2枚。
紀子はそのうち1枚を志乃に差し出し。
志乃がそれに座って、俺がその横に腰を下ろす。
紀子が自分の分を俺に渡そうとしたけど、それは固辞。
本来は俺がここに居るのは変なのだし。
「……で、何が訊きたいの?」
紀子の切り出しに、志乃は
「ちょっと昨日、変なことがあって」
困り風にそう返すと、紀子が首を傾げた。
「変なこと? 何、それ?」
その紀子の様子に
ん? と俺は思った。
声に軽い興味が混じってるが、なんか落ち着きすぎてる。
普通、友達が変なことがあって、って言ってきたらさ……
ストーカーだとか、泥棒の話だとか。
そういう話になるんじゃないの?
だって女は泥棒に入られたら8割詰むだろ?
犯罪上等の男の存在って、男が思うよりとてつもなく恐ろしいはずだ。
まぁ、俺の想像の中だけの話かもしれんけどさ。
こんな切り出し方なら犯罪被害の話かと思うんじゃないのかと思うんだけど……?
志乃は紀子を見つめて。
「うん、夜道で……ちょっと怖い目に遭ったんだよね。それでさ、紀子の元カレからまたメールが来たの。それがタイミングが変だなって」
志乃の言葉に紀子が一瞬、肩を震わせた。
「ごめんね……あんなのと関わらせて」
そして紀子は目を逸らす。
彼女の声が少し高くなった。
そこでまた引っ掛かる。
志乃は気付いてないみたいだったけど、クズ男の話を聞いて、彼女が目を逸らす瞬間が早過ぎる。
まるで想定していたみたいに。
「紀子、カレ今どうしてるか知らない? 直接やめて欲しいと言いに行きたいの」
志乃がなるべく自然にお願いする。
すると彼女は
「あの人なら……多分自宅じゃないかな? 全部バレたとき、電話の向こうで暴れてたから」
あの人、不機嫌になると家に引き篭もってやり過ごす癖があるのよ。
不機嫌な状態で外に出ると不味いからって。
俯いて、そんなことを。
……本当か?
何だか信用できない。
ああいうクズ男は、ストレス発散するために女遊びに発奮しそうな気がするんだけど……?
そんなことを考えていたら……少し催して来た。
ちょっと申し訳ないなと思いながら
「……ちょっとトイレ借りていい?」
俺がそう訊くと。紀子が「いいよ。廊下の奥」と教えてくれた。
リビングを出て、狭い廊下を進む。
確かに奥に「TOILET」の文字があった。
そして
「……ふぅ」
ジャーッと水を流しつつ、トイレを出る。
綺麗に使えたと思うんだけど……
洗面所が近くにあったので、そこで手を洗う。
手を洗って、手をハンカチで拭いていると
んん?
何だか、トイレの横にある部屋から、呻き声が聞こえて来た気がした。
本当に、そんな気がしたんだ。
……なんとなく気になった。
開けて中を確かめたかったけど
いきなりそれはできないので。
ドアに耳をつけて、中の音を聞く。
すると
「ああああ……」
小さいが、男の呻き声。
……気のせいじゃ無かった。
俺は蛇の剣を仕舞っていた風呂敷の包みを剥がした。
抜き身で持ち歩くのは銃刀法に引っ掛かるけど、だからと言って持ち歩かずに外に出るのは今はできない。
いつ、襲撃されて戦いになるか分からんわけだし。
不用心なんだよ、それは。
そっとその部屋のドアを開けた。
そして中を覗くと──そこにいたのは目を疑う光景だった。
そこには男がいた。
両手両足が不自然に折れ曲がり、床に転がってる。
口には猿轡が噛まされてて、泣いていた。
流石に分かる……こいつ、クズ男だろ!
「……お前、まさか紀子の元カレか?」
そう俺が呟いた瞬間、異様な雰囲気を感じた。……俺が覗いている部屋に出現する影。
破壊神アラストルだ……。
長い髭を生やした蝙蝠の羽根の人影が、覗いている部屋の中に出現する。
そして大声を張り上げた。
「見つかったぞ主よ!」
俺はその声を聞いた瞬間。
リビングに駆け込んだ。
ほぼ脊髄反射。
真相を反射的に理解して、俺は即行動に移した。
リビングに飛び込む。
するとそこには……
混乱している表情を浮かべている志乃と……
偽りをかなぐり捨て、呪いに満ちた目で俺たちを睨み据えている紀子が居たんだ。
偽りの友情……!
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