家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第44話 ガインくんとの対話

「やあ」

 

 俺が軽い感じで声をかけると、トロールが丸い目で俺の蛇の剣をじろりと睨みつけてきた。

 その巨体が少し揺れ、赤い衣装の衣擦れの音が響く。

 やがて、低くてドロッとした声が森の空気を震わせた。

 

「チミ、やっちゃう系だね。もっと大人にならないとダメだね。それとも、大人になるのイヤなのかな? 大人を、どう思ってるの、チミ?」

 

 トロールの口角がクイッと上がって、からかうような笑みが浮かぶ。

 やっちゃう系……?

 やるときはやる、暴力を辞さない奴ってことか?

 

 俺は剣を握る手に力を入れつつ、内心で少しムッとした。

 確かに当たってる部分はあるかもしれないけど……大人ね……。

 

「一応、昔よりは大人だと自負しちゃいるがな」

 

 俺は肩をすくめて軽く笑ってみせたが、トロールは首を振って、鼻からフンと大きな息を吐き出した。

 その顔に浮かぶのは、まるで子供をたしなめるような呆れた表情だ。

 

「そんなことないね、実際。全然成長が無いのは、チミだよ。もっと、おりこうさんになりなよ」

 

 その言葉に。

 反応したのは俺ではなく……

 

「……適当なことを言わないでもらえますか?」

 

 志乃だった。

 彼女が一歩前に出てトロールをキッと睨みつける。

 

 志乃の声は少し尖っていて、普段の穏やかさとは裏腹に冷たい響きがあった。

 彼女は腕を組んでトロールを見上げ、唇を軽く引き結ぶ。

 続けて、言葉に力を込めた。

 

「この人、私の彼氏なんですが。彼氏にそんなことを言われると、腹立つんですけど」

 

 トロールが志乃に視線を移し、目を細めてニヤリと笑う。

 その顔が妙に脂ぎった光沢を帯びて、口元から少し涎が垂れそうになった。

 

「オンナ。考えただけでドキドキだね、コレ。ドゥフフ、オンナ、話しようよ」

 

 トロールの声が一段低くなり、気持ち悪いくらいにねっとりした。

 

 志乃の眉がピクッと動き、明らかに不快そうに顔をしかめる。

 彼女が一瞬唇を噛んで我慢した後、仕方なく応じようと口を開きかけたそのとき。

 俺がガッと前に出てトロールの視線を遮った。

 

「おい、俺の彼女に絡むのはそこまでにしとけよ」

 

 俺は剣を軽く持ち上げ、トロールの鼻先に突きつけるように構える。

 目つきを鋭くして睨みつけると、トロールが「ふ~ん」と鼻を鳴らし、太い首を傾げて俺を見下ろしてきた。

 

「ふ~ん。カッコいいね」

 

 その声に妙な感嘆が混じっていて、トロールの丸い顔にニヤけた笑みが広がる。

 何だか気に入られたらしい。

 

 俺は気まずそうに頭をかきつつ、剣を下ろして話を本題に切り替えた。

 

「なぁ、この森を抜ける方法を教えてくれないか?」

 

 トロールが太い腕をドンと胸の前で組んで、のんびりした口調で答える。

 

「この森を抜けるには、土地神の協力が要るね。ただ、最近土地神の機嫌悪いから、自分で会話して。案内するから」

 

「土地神か……機嫌が悪いって、どういうことだ?」

 

 俺が眉を上げて訊くと、トロールは肩をすくめてデカい手をひらひら振った。

 

「知らないね、チミ。木が切られたり、ゴミが捨てられたりで、ムカついてるんじゃない? チミたちが何とかするんだね」

 

 その適当な態度に、俺の口元が少し引きつる。

 志乃が俺の横で小さく呟いた。

 

「土地神を説得するなんて……簡単じゃないかもね」

 

 彼女の声に不安が滲んでいて、俺をそっと見上げる。

 俺は軽く息を吐いて、志乃に小さく笑いかけた。

 

「まぁ、やるしかないだろ。メアリさんが待ってるんだ」

 

 俺はトロールに視線を戻し、まっすぐ頷く。

 

「分かった。案内してくれ」

 

 トロールが「ドゥフフ、頑張れよ」と喉を鳴らして笑い、巨体をゆさっと揺らしながら先に立って歩き始めた。

 俺と志乃は顔を見合わせ、志乃が小さく肩をすくめる。

 

 俺は苦笑いを浮かべて気を取り直し、その後を追った。




土地神は何に怒っているのか?

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