家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
「やあ」
俺が軽い感じで声をかけると、トロールが丸い目で俺の蛇の剣をじろりと睨みつけてきた。
その巨体が少し揺れ、赤い衣装の衣擦れの音が響く。
やがて、低くてドロッとした声が森の空気を震わせた。
「チミ、やっちゃう系だね。もっと大人にならないとダメだね。それとも、大人になるのイヤなのかな? 大人を、どう思ってるの、チミ?」
トロールの口角がクイッと上がって、からかうような笑みが浮かぶ。
やっちゃう系……?
やるときはやる、暴力を辞さない奴ってことか?
俺は剣を握る手に力を入れつつ、内心で少しムッとした。
確かに当たってる部分はあるかもしれないけど……大人ね……。
「一応、昔よりは大人だと自負しちゃいるがな」
俺は肩をすくめて軽く笑ってみせたが、トロールは首を振って、鼻からフンと大きな息を吐き出した。
その顔に浮かぶのは、まるで子供をたしなめるような呆れた表情だ。
「そんなことないね、実際。全然成長が無いのは、チミだよ。もっと、おりこうさんになりなよ」
その言葉に。
反応したのは俺ではなく……
「……適当なことを言わないでもらえますか?」
志乃だった。
彼女が一歩前に出てトロールをキッと睨みつける。
志乃の声は少し尖っていて、普段の穏やかさとは裏腹に冷たい響きがあった。
彼女は腕を組んでトロールを見上げ、唇を軽く引き結ぶ。
続けて、言葉に力を込めた。
「この人、私の彼氏なんですが。彼氏にそんなことを言われると、腹立つんですけど」
トロールが志乃に視線を移し、目を細めてニヤリと笑う。
その顔が妙に脂ぎった光沢を帯びて、口元から少し涎が垂れそうになった。
「オンナ。考えただけでドキドキだね、コレ。ドゥフフ、オンナ、話しようよ」
トロールの声が一段低くなり、気持ち悪いくらいにねっとりした。
志乃の眉がピクッと動き、明らかに不快そうに顔をしかめる。
彼女が一瞬唇を噛んで我慢した後、仕方なく応じようと口を開きかけたそのとき。
俺がガッと前に出てトロールの視線を遮った。
「おい、俺の彼女に絡むのはそこまでにしとけよ」
俺は剣を軽く持ち上げ、トロールの鼻先に突きつけるように構える。
目つきを鋭くして睨みつけると、トロールが「ふ~ん」と鼻を鳴らし、太い首を傾げて俺を見下ろしてきた。
「ふ~ん。カッコいいね」
その声に妙な感嘆が混じっていて、トロールの丸い顔にニヤけた笑みが広がる。
何だか気に入られたらしい。
俺は気まずそうに頭をかきつつ、剣を下ろして話を本題に切り替えた。
「なぁ、この森を抜ける方法を教えてくれないか?」
トロールが太い腕をドンと胸の前で組んで、のんびりした口調で答える。
「この森を抜けるには、土地神の協力が要るね。ただ、最近土地神の機嫌悪いから、自分で会話して。案内するから」
「土地神か……機嫌が悪いって、どういうことだ?」
俺が眉を上げて訊くと、トロールは肩をすくめてデカい手をひらひら振った。
「知らないね、チミ。木が切られたり、ゴミが捨てられたりで、ムカついてるんじゃない? チミたちが何とかするんだね」
その適当な態度に、俺の口元が少し引きつる。
志乃が俺の横で小さく呟いた。
「土地神を説得するなんて……簡単じゃないかもね」
彼女の声に不安が滲んでいて、俺をそっと見上げる。
俺は軽く息を吐いて、志乃に小さく笑いかけた。
「まぁ、やるしかないだろ。メアリさんが待ってるんだ」
俺はトロールに視線を戻し、まっすぐ頷く。
「分かった。案内してくれ」
トロールが「ドゥフフ、頑張れよ」と喉を鳴らして笑い、巨体をゆさっと揺らしながら先に立って歩き始めた。
俺と志乃は顔を見合わせ、志乃が小さく肩をすくめる。
俺は苦笑いを浮かべて気を取り直し、その後を追った。
土地神は何に怒っているのか?
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