家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
「酒なんてあるわけないだろ……」
そう思い俺が困り果て、呻くように返すと、イチモクレンが口を開く。
「口噛み酒があるだろう。果物でも作れるぞ」
「口噛み酒……?」
……一応聞いたことはある。
噛み砕いたコメを発酵させて作る原初の酒だよね。
……確かに、デンプン質が唾液で糖に変わって発酵するなら、コメである必要はないんだよ。
だから果物でもいけるのか。
「……その発想は無かった。でも、それなら酒は作れるな」
そう納得しつつ、集落に戻って酒を分けてもらおうかと思った。
昨日の宴では出なかったけど、酒ぐらいは作ってるんじゃ無いだろうか……?
でも、今戻るのはマジで気まずい。
アヤとミナの顔がチラついて、足が重くなる。
「戻るの、ちょっと行きづらいな……」
思わず俺が呟くと、イチモクレンが山ブドウの茂みを爪で示し、笑いの混じった声で言う。
「……そこの娘の酒種でもいいぞ?」
「えっ!?」
志乃がビクッと震え、俺に目を向ける。
俺も一瞬固まった。
……口噛み酒の種って、つまり半分くらい唾液だろ?
それ渡すのって、なんか志乃に失礼なんじゃないのか?
だって唾液だろ……?
俺がいけるなら俺でも良いが、このイチモクレンの御所望は志乃の口噛み酒の酒種なんだよな……
行動不能に陥り、頭の中で葛藤が渦巻く。
そこで志乃がそっと俺に近づいて、小声で囁いた。
「秀司、私は良いよ」
えっと……
良いと言われても「はいそうですか」とも言いにくい。
どう答えて良いものか分からなくて、俺は固まる。
「……私に気を使ってるなら、気にしなくていいから。相手、悪魔じゃん。しかも人型ですらない」
……ちょっと情けなかった。
ここで決断できなかった自分に。
彼女がここまで言ってくれてるのにさ。
俺は
「……スマン。ありがとう」
「いえいえ」
明るい声で俺の言葉に返し。
イチモクレンに
「その山ブドウと、酒種入れる容器をください」
その2つを要求した。
志乃はイチモクレンが差し出した山ブドウを手に取り、口に含み噛み潰し。
ぶぇーっと、その噛み潰した山ブドウを唾液と一緒に小さな土器に吐き出した。
それを彼女は口を拭いながらイチモクレンに返す。
「これでいい?」
「十分だ」
イチモクレンは受け取った土器ごとその酒種を飲み込んでしまう。
腹の中に保存するのかね?
そう思っていると
「良かろう……では、こちらが約束を果たす番だ」
イチモクレンは地面に降り、俺たちが乗りやすい体勢をとってくれる。
許可が出た。
そう判断した俺たちは、彼の身体をよじ登る。
そして
「いくぞ」
次の瞬間、その巨体が浮かび上がり、飛び立つ。
そして
「少し急ぐ。しっかり掴まれ」
言われて、俺たちは彼の身体の背びれというか、
とにかく、モサモサした部分を掴んで、落ちないための努力をする。
龍神が空を舞い、風が耳元で唸る。
アツユの群れが下でギャアギャア喚いてるな。
気づいている奴もいるっぽいが、どうすることもできないようだ。
……俺たちは岩山の奥へと進んだ。
そこには大きな洞窟があり、その入り口に何やら呪術的な装飾品が並べてある。
……で。
何か、そこに絵みたいな、引っ掻いたような字が書かれてて。
えっと……
これ、甲骨文字じゃ無いの……?
果たして呪術師の正体は……?
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