家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
洞窟の空気が一瞬で張り詰めた。
「行け! ケイテンよ!」
呪術師の男の叫びが岩壁に反響し、邪鬼ケイテンが盾を構えて突進してくる。
首のない胴体に開く口が牙を剥き、巨大な目がギョロリと俺を睨む。
俺は蛇の剣を握り直し、仲魔たちに叫んだ。
「マナナンガル、ザンマだ! 動きを止めろ!」
鬼女マナナンガルが髪を振り乱し、その手から波動を放つ。
直撃したケイテンが一瞬よろめく。
しかしすぐに片手斧を振り上げ、俺と妖鬼オニに襲いかかってきた。
オニが棍棒で斧を受け止め、火花が散る。
「へっ、ツエーな!」
オニがニヤリと笑い、ケイテンを押し返す。
俺も剣を振り、盾に弾かれながら隙を窺う。
だが、ケイテンは予想以上にタフだ。
確か伝承では、あまりにも好戦的なので首を刎ねたが、それでも戦い続けるために根性で胴体に目と口を作ったとか。
そういう伝承を持つ邪鬼なんだ。
俺たちの攻撃を盾で防ぎ、ごつい片手斧で反撃してくる。
とても重い一撃を。
俺とオニの連携でも、なかなか決定打を与えられない。
そこでカマプアアが吠えた。
その吠え声に応え、ケイテンに黒い靄が掛かる。
……防御力低下魔法のラクンダだ!
「今だ!」
「オウヨ!」
俺とオニが突っ込み、ケイテンに斬りかかる。
ケイテンは応戦しようとするけど
ケイテンの動きが鈍っており、さっきと逆転する。
俺たちが押している……!
ケイテンは立て直すために大きく後ろに跳んで距離を離した。
そのときを俺は見逃さず
「シーサー、放電しろ!」
俺の言葉に聖獣シーサーが咆哮し、青白い稲妻がケイテンを直撃。
胴体の目がビクッと震え、行動不能に陥る。
俺はすかさず叫んだ。
「志乃、マナナンガル、ザンマを浴びせろ!」
「はい!」
志乃が踏み込みザンマを放ち、マナナンガルも追撃する。
蹲ったまま、中級衝撃魔法ザンマの波動を連打で浴びるケイテン。
そこで
そのときイチモクレンが単眼を光らせ、吠えて竜巻を巻き起こした。
……ダメ押しだ!
グギャアアアアア!!
竜巻に巻き込まれ、疾風の刃に切り刻まれるケイテン。
断末魔の叫びをあげ、マグネタイトに分解して消えていく……!
「やった!」
「やったわ!」
俺と志乃が息を吐くが
「お、おのれ! 倭人の分際で!」
呪術師が怒り狂っていた。
あっという間に、自分の手持ちの仲魔を倒されたからか。
「倭人じゃない! 日本人だ!」
……本来、倭人という呼び方はあまり良い意味じゃない。
諸説あるけど、この呪術師は絶対に侮蔑を込めてそう言ってるのを感じ取ったので俺はそう言い返した。
すると呪術師は激昂した。
わけわからんことを言って来たのが気に障ったんだろうか。
こんなことを言って来た。
「ニホンジンだと!? 意味不明だ倭人め! 名を名乗れ!」
……呪術師相手に名前なんて危なくて言えるか!
キョウジの話を聞いていたから俺は
「黙れディーグイ!」
確信が無かったわけじゃないが、動揺させるために言い切った。
お前の名前はディーグイだろうと。
すると呪術師の顔が強張った。
……図星か。
俺が剣を構え直すと、呪術師ディーグイは怒りの表情のまま。
「……我が名を知っているならば生かしてはおけぬ。……我はディーグイ、殷王朝の生き残りの司祭よ」
やっぱり……。
意外でも何でもなかった。
ディーグイは続ける
「……お前たち愚かな倭人に言っても理解できないだろうが教えてやる……愚かな紂王が生贄の儀式を禁じたせいで、殷の魔術的戦力が著しく低下し、ついに周に滅ぼされたのだ。我はそれが口惜しい……」
その表情は俺たちを見ておらず、遥か昔を見ていた。
失った自分の祖国を見ているのか……
「……だから殷を復活させるため、この倭国に渡ったのだ。周を滅ぼせる魔術的戦力を得るために……!」
魔術的戦力……!
なんとなく、理解は出来た。
悪魔召喚で最適なのは人の生贄。
それを大陸で行うと、中華の国による妨害が入る。
なので海を渡り、国家でも易々とは手出しできないこの土地で、思う存分人の生贄を狩り、悪魔の軍隊を形成する……!
理にはかなった方法だな……。
狩場にされるこっちは迷惑千万という点を除けばな……!
「迷惑だから故郷でやれ負け犬!」
俺がそう言い放つと、ディーグイは
「まだ負けてはおらん!」
そして病的に肌が白い少女を指差した。
指差して、凄まじい笑みを浮かべて叫ぶ
「この造魔さえ完成すれば、我が祖国は復活する……! その邪魔は決してさせん!!」
……造魔?
聞いたことが無かった。
俺の知らないタイプの悪魔……!
動揺する俺に、ディーグイは
「焼け死ね!……アギダイン!」
その叫び声と共に、その手からアギダインを放ってきた。
上級火炎魔法の炎の奔流。
灼熱の火炎が洞窟を赤く染め、熱波が俺たちを襲う。
俺は咄嗟に跳び、志乃を庇った。
他の仲間も、アギダインを回避するために陣形を乱す。
その瞬間だった。
「お前たちは絶対に殺す! いかなる犠牲を払おうとも!」
その叫びには強い決意と覚悟の色があり。
その重さが想像できて
それは……
「タルカジャダイン!」
その叫びの直後。
ディーグイの身体が膨張し、筋肉が異様に膨れ上がる。
……まるで筋肉の化け物。
そんな姿に、成ったんだ。
ドーピングコンソメスープ。
本作を読んでいただき感謝です。
続きが気になる、面白かった。
その場合は評価、お気に入り、コメント等を頂けますと嬉しいです。