家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
崩れ落ちた洞窟の残骸を見下ろしながら、俺は大きく息を吐いた。
岩の破片が陽の光に照らされ、終わったことを示していた。
ディーグイはもういない。あの造魔とかいうのも、炎と岩の下に埋もれたはずだ。
「これで、縄文人たちの願いは叶えたってことだよな……」
俺が呟くと、志乃が隣で小さく頷く。
彼女の髪が風に揺れ、疲れた顔に安堵が滲む。
「うん。ディーグイを倒したんだから、あの集落の人たちも安心できるよね」
「だな。ここまでの流れ的に、これでここに呼ばれた理由を片付けたわけだ。現代に帰れるはずだろ」
しかし……
俺はパラソル型のCOMPを握り、軽く振ってみた。
やっぱこれのせいなのか……?
そう思っていると。
志乃がふと俺の手に手を重ね、静かに言ったんだ。
「ねえ、秀司……」
俺が視線を向けると
「逃げ出すとき、ちゃんと私の手を引っ張ってくれてありがとうね」
その言葉に、俺は驚く。
彼女の瞳に感謝の色が浮かんでいる。
「別に、礼を言わなくてもいいだろ。見捨てるなんてありえないし」
俺が照れ隠しに肩をすくめると、志乃が小さく笑って首を振った。
「ううん、そういうとこがね。あなたの生き方が、なんか……綺麗だなって思うの。私、本当に好きだよ」
「……なんだよ急に!」
俺はむず痒い感覚に襲われ、頬が熱くなる。
嬉しいけど、こういうストレートな言葉は対応に困る。
志乃がくすくす笑いながら俺の腕に寄り添うと、ちょうどそのタイミングでイチモクレンの低い声が響いた。
「……そろそろいいか?」
俺たちを乗せたまま単眼の龍神が言った。
龍神の緑の鱗がキラキラと光っている。
俺は志乃から離れ、姿勢を正した。
「ああ、なんだ?」
イチモクレンが尾を軽く振って、地上に降りながら静かに話し始めた。
「お前たちが倒したディーグイ、あやつは怨霊化する可能性が高い」
……えっ、と思った。
俺だって日本人だ。
怨霊ぐらい理解できる。
その生まれ方も。
イチモクレンは続ける。
「……あいつはものすごい妄執を抱えてこの国に来た男だ。その最後の希望でこれまで積み上げてきたものを、お前たちが壊したのだ」
殷王朝の復活だったか。
……俺は自分の国が滅んだ経験はない。
……それを取り戻したいという願いの強さ。
それがどれほどのものなのか……
多分、本当には理解できない……
イチモクレンはそこから導かれる結論を口にする。
「だからおそらく、このままでは怨霊となり、もっと厄介な存在になるだろう」
俺は青褪めた。
そんなことを言われても……!
志乃が不安そうに俺の袖を掴む。
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ……? 俺の対処能力越えてるんだが……!」
俺の焦りと困惑、動揺を含んだ声に。
イチモクレンが単眼を細め、落ち着いた声で返す。
「……安心しろ。我がヤツを抑える。我だけではない。この地にいる我が仲間の神にも呼びかけ、封印の役目を果たす」
「マジか! ありがとう!」
俺がホッと胸を撫で下ろすと、イチモクレンが続けた。
ただし……、と。
「……要求が一つある。我々を祀る者を用意しろ」
「祀る……?」
つまり、イチモクレンたちを神として崇め、拝む存在を作れと言うことか。
……それは
「……縄文人の責任だよね」
今、実際にこの時代を生きているのはあの集落の人々なのだから。
彼ら、彼女らがするべきだろ。
俺の言葉に志乃が頷き、俺に目を向ける。
「うん、アヤとミナに頼もう」
「……だな! よし、戻ろう」
俺たちはイチモクレンの背から地上に降りつつ、この仕事の仕上げについて言葉を交わした。
無償ではしてくれないのだ。神様は。
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