家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第60話 後始末は

 崩れ落ちた洞窟の残骸を見下ろしながら、俺は大きく息を吐いた。

 岩の破片が陽の光に照らされ、終わったことを示していた。

 

 ディーグイはもういない。あの造魔とかいうのも、炎と岩の下に埋もれたはずだ。

 

「これで、縄文人たちの願いは叶えたってことだよな……」

 

 俺が呟くと、志乃が隣で小さく頷く。

 彼女の髪が風に揺れ、疲れた顔に安堵が滲む。

 

「うん。ディーグイを倒したんだから、あの集落の人たちも安心できるよね」

 

「だな。ここまでの流れ的に、これでここに呼ばれた理由を片付けたわけだ。現代に帰れるはずだろ」

 

 しかし……

 

 俺はパラソル型のCOMPを握り、軽く振ってみた。

 やっぱこれのせいなのか……?

 そう思っていると。

 

 志乃がふと俺の手に手を重ね、静かに言ったんだ。

 

「ねえ、秀司……」

 

 俺が視線を向けると

 

「逃げ出すとき、ちゃんと私の手を引っ張ってくれてありがとうね」

 

 その言葉に、俺は驚く。

 彼女の瞳に感謝の色が浮かんでいる。

 

「別に、礼を言わなくてもいいだろ。見捨てるなんてありえないし」

 

 俺が照れ隠しに肩をすくめると、志乃が小さく笑って首を振った。

 

「ううん、そういうとこがね。あなたの生き方が、なんか……綺麗だなって思うの。私、本当に好きだよ」

 

「……なんだよ急に!」

 

 俺はむず痒い感覚に襲われ、頬が熱くなる。

 嬉しいけど、こういうストレートな言葉は対応に困る。

 志乃がくすくす笑いながら俺の腕に寄り添うと、ちょうどそのタイミングでイチモクレンの低い声が響いた。

 

「……そろそろいいか?」

 

 俺たちを乗せたまま単眼の龍神が言った。

 龍神の緑の鱗がキラキラと光っている。

 俺は志乃から離れ、姿勢を正した。

 

「ああ、なんだ?」

 

 イチモクレンが尾を軽く振って、地上に降りながら静かに話し始めた。

 

「お前たちが倒したディーグイ、あやつは怨霊化する可能性が高い」

 

 ……えっ、と思った。

 俺だって日本人だ。

 怨霊ぐらい理解できる。

 

 その生まれ方も。

 

 イチモクレンは続ける。

 

「……あいつはものすごい妄執を抱えてこの国に来た男だ。その最後の希望でこれまで積み上げてきたものを、お前たちが壊したのだ」

 

 殷王朝の復活だったか。

 ……俺は自分の国が滅んだ経験はない。

 

 ……それを取り戻したいという願いの強さ。

 それがどれほどのものなのか……

 

 多分、本当には理解できない……

 

 イチモクレンはそこから導かれる結論を口にする。

 

「だからおそらく、このままでは怨霊となり、もっと厄介な存在になるだろう」

 

 俺は青褪めた。

 そんなことを言われても……!

 

 志乃が不安そうに俺の袖を掴む。

 

「じゃあ、どうすりゃいいんだよ……? 俺の対処能力越えてるんだが……!」

 

 俺の焦りと困惑、動揺を含んだ声に。

 イチモクレンが単眼を細め、落ち着いた声で返す。

 

「……安心しろ。我がヤツを抑える。我だけではない。この地にいる我が仲間の神にも呼びかけ、封印の役目を果たす」

 

「マジか! ありがとう!」

 

 俺がホッと胸を撫で下ろすと、イチモクレンが続けた。

 ただし……、と。

 

「……要求が一つある。我々を祀る者を用意しろ」

 

「祀る……?」

 

 つまり、イチモクレンたちを神として崇め、拝む存在を作れと言うことか。

 

 ……それは

 

「……縄文人の責任だよね」

 

 今、実際にこの時代を生きているのはあの集落の人々なのだから。

 彼ら、彼女らがするべきだろ。

 

 俺の言葉に志乃が頷き、俺に目を向ける。

 

「うん、アヤとミナに頼もう」

 

「……だな! よし、戻ろう」

 

 俺たちはイチモクレンの背から地上に降りつつ、この仕事の仕上げについて言葉を交わした。




無償ではしてくれないのだ。神様は。

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