家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
「楼里のやつ、どこ行ったんだよ……」
俺はアパートの階段下で、GUMPを触りながら呟いた。
志乃が隣で眉を寄せ、静かに首を振る。
「多分、居ないのは間違いないよ。どこに行ったんだろう……?」
楼里将児のアパートは静まり返っていて、さっきの隣人の中年男の証言以外、手がかりはゼロだ。
女の子の笑い声と格闘ゲームの音が響いていた部屋が、今はまるで誰もいないかのように沈黙している。
……いや、今志乃も言ったけど、多分ホントに居ないんだ。
胸にモヤモヤした焦りが広がる。
「……手詰まりだな」
俺はため息をつき、志乃と顔を見合わせる。
彼女も困ったような表情で、軽く唇を噛んだ。
「どうしよう……まずいよね」
彼女のその言葉に、焦りが募る。
楼里が連れている少女が悪魔である可能性を考えると、街に野生の熊が迷い出たようなもの。
単純に危険極まりない。
どうすればいいんだ……?
「ねぇ、あのさ」
そのとき。
志乃が俺に呼び掛けた。
俺が視線を向けると
「……メアリさんに連絡してみたらどうかな……?」
……そっか。
その手があった。
志乃の言葉で警察情報で有用なものがある可能性を考え、俺はメアリさんに電話した。
数コールで繋がる。
『もしもし?』
「メアリさん、皆本です。問題の人物の家に行きましたけど、もぬけの殻でした。……警察の情報を少し攫っていただけませんか?」
電話の向こうで、メアリさんのいつもの無機質な声が返ってくる。
『承知しました。警察の情報を確認します。しばらくお待ちください』
彼女の淡々とした口調に、なぜか少しホッとする。
メアリさんはいつもこうだ。
どんな状況でも動じず、必要なことを確実にやり遂げてくれる。
頼りにはなるけどさ、反面その無表情さが不気味に感じることもあるんだよな。
「……見てくれるってさ」
俺は電話を切った後、志乃にそう告げる。
多分何か出て来るだろう。
警察はそういうことの専門家なわけだし。
「出て来るかな……?」
「出て来るさ」
俺はそこに関して疑問は持っていなかった。
そこをやり過ごせる相手なら、そもそも身元を特定されていないと思うし。
数分後、メアリさんから折り返しの電話がかかってきた。俺は急いで通話ボタンを押す。
『皆本様、情報が入りました。木見北市の警察に、最近複数の通報が寄せられています。公園やゲームセンターで、整った容姿の金髪の白人少女、推定7~8歳が、同年代の子供に声をかける事例が報告されています』
「金髪の白人少女?」
俺と志乃が同時に顔を見合わせる。隣人の中年男の証言──「女の子の声」が頭をよぎる。
メアリさんが淡々と続ける。
『少女は他の子供と友達になろうとしているようですが、友情が成立しそうになると、肥満体の男性が少女の腕を無理やり引っ張り、会話を強制的に終了させています。このアンバランスな関係性に異様さを感じた市民が通報したようです。事件性があると判断され、警察が行方を追っています』
「肥満体の男性……楼里か?」
『その可能性が高いです。少女は「アリス」と名乗っているとの証言があります。現在の位置は、木見北神社付近と推定されます』
「木見北神社……分かった。すぐ向かいます。ありがとう、メアリさん」
電話を切り、俺は志乃に目を向ける。
「アリスって名前、なんか引っかかるな。悪魔っぽく無いけど……」
俺の言葉に志乃は頷き
「そうね。外国人の名前ってこの状況で場違いな気がする。……シドの指輪で召喚された悪魔かもしれない」
メアリさん新作に出て来ないかなぁ、と思う。
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