家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話   作:XX(旧山川海のすけ)

7 / 106
次回から深夜1時に1話ずつ更新します。


第7話 気が変わったよ

『あいつはシド。俺が身体を捨てざるを得なくなったのは、アイツのせいだ。油断するな』

 

 キョウジの声には緊張感があって。

 俺はそれの意味するところを想像し、戦慄する。

 

 ……昨日の晩、ピシャーチャを一瞬で焼き払った男にそこまで言わせる相手……

 

 実際、見た目だけでも強さは伝わって来る。

 

 僧帽筋が重装鎧みたいだし。

 大胸筋はパツパツだ。

 

 スゲエ身体……

 

「運が悪かったのだ。来世を期待して……諦めるのだな」

 

 そしてシドと呼ばれたダークサマナーは。

 取引なんて持ち掛けて来なかった。

 

 いきなり、皆殺しを宣言したんだ。

 

「誰か―ッ!」

 

 志乃が叫んだ。

 それをシドは嘲り嗤う。

 

「……無駄だよ。人払いの術を掛け、この近辺にお前たちを助けに来る者は居ないようにしてある」

 

 逃げ場無し……か。

 

 俺は……

 

 シドに

 

「うおおおおおお!!」

 

 雄叫びと共に突進した。

 シドは侮蔑の笑みを浮かべ

 

 俺を裏拳で一蹴した。

 ぶっ飛ばされて、横倒しになる俺。

 

「秀司!」

 

「お兄ちゃん!」

 

 2人の悲鳴。

 

 俺は

 

「お前ら逃げろッ!」

 

 馬鹿の一つ覚えかもしれないけど。

 それ以外言えなかった。

 

 無駄に終わりそうだけど、助かって欲しい。

 だから言ったんだ。

 

 ……けれども

 

 シドは

 

 俺を憎々し気に見ていたんだ。

 

 えっ……?

 

 こんな状況なのに、シドが俺に憎悪を向けるのが分からなくて。

 裏拳のダメージを忘れるほど、動揺した。

 

「……お前ら、兄妹だったのか。男が女2人を侍らせてるだけなら、普通に殺してやったのに……」

 

 言って、シドは

 

「来い! 堕天使ネビロス!」

 

 手にしていた聖書を広げ、声高く言い放ち。

 

 同時に足元の白い道路に魔法陣が浮かび。

 そこにガリガリに痩せた、ローブを着た人影が出現する。

 

「シドよ……何用か?」

 

 その悪魔は、蹲った姿勢から立ち上がりつつそう召喚主に問いかけて。

 召喚主たるシドは

 

「そこの眼鏡のメスガキの魂を奪え! ネビロス!」

 

「……承知した」

 

 何が起きたのか理解できなかった。

 

 ネビロスと呼ばれた悪魔の肩から黒い手が出現し。

 晶目掛けて伸びて行き……

 

 妹を掴んだ

 

 そして

 

「えっ」

 

 それが、晶の最後の言葉になった。

 ずるっと、晶の身体からもう1人の晶が引っ張り出されて。

 

 そのまま、ネビロスの方に引き寄せられ。

 

 そのもう1人の晶は、その過程で光の球になったんだ。

 

 そして晶は……その場に倒れ伏して動かなくなった。

 

「晶ちゃん!? 晶ちゃん!?」

 

 志乃が晶を必死で揺すった。

 だけど晶は何も応えない……

 

 さすがに、理解をした。

 晶は魂を抜かれたんだ……!

 

 そんな……!

 

「主よ、やったぞ」

 

 絶望する俺たちを他所に。

 ネビロスはそう言いつつ、光の球をシドに差し出す。

 シドは酷く残酷な笑みを浮かべてそれを受け取り

 

「……俺は政治家の一族の生まれでね。兄が1人居たんだが、俺はそいつのスペアの扱いを受けて来たんだ」

 

 その一言で、俺は大体分かってしまった。

 

 こいつ……

 俺が晶と良い関係を築いているのが不愉快なのか。

 

 自分が自分の兄とまともな関係を築いてこれなかったから……

 

「ふざけんなッ! 妹は関係無いだろ!」

 

 倒れたまま俺は叫ぶ。

 シドはそんな俺を見つめて

 

「……察しが良くて助かるよ。気が変わった。命を預けておいてやる。俺を倒せたら、妹の魂は返してやろう……ただし」

 

 人間の身体が魂の無い状態で現状維持が出来るのは、1週間が限度。

 それを過ぎると、一生植物状態は免れん。

 

 それまでに俺を倒すんだな。

 

 ……出来るものならな!

 

 愉悦と加虐の悦びに満ちた声で、一方的に喋り切るシド。

 その顔はサディズムに満ちた表情で歪んでいた。

 

 そんな……

 1週間だなんて……!

 

「まあ必死で考えるんだな。そして自分の妹が植物人間になるのをどうすることもできずに見守るがいい!!」

 

 目の前が真っ暗になり、硬直する俺たちに

 

 シドはそう追撃の言葉を放ち

 

「来い! 邪神サマエル!」

 

 さらにもう1体の悪魔……蝙蝠の翼を3対生やした赤紫色の大蛇……サマエルを呼び出して。

 その背に乗って、高笑いと共に飛び去って行った。

 

 

 ……期限内にダークサマナー・シドを倒さなければ、俺の妹の命は無い……

 どうして……どうして……

 

「どうしてこうなったんだッ!」

 

 俺は裏拳で負った傷の痛みを忘れて。

 声の限りに叫んでいた。




これにて第1章は終了。
次回から第2章です。

本作を読んでいただき感謝です。
続きが気になる、面白かった。
その場合は評価、お気に入り、コメント等を頂けますと嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。