家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
その日の午後、俺たちは業魔殿のロビーで一息ついていた。
アリスはソファに寝そべって、昔のゲーム機の互換機のコントローラーをカチャカチャやってる。
画面では複数のキャラクターたちが運動会の競争してて。
水泳しながら、ライバルを殴り倒して溺死させていた。
「アリス、対人でそれをやりすぎると友達なくすぞ」
俺が軽く注意すると、アリスがムッと唇を尖らせる。
「お兄ちゃん、うるさい! 溺死させられるのは、水泳エリアに入る前に凶器を拾わないから悪いんだよ!」
「はいはい、分かったよ……」
俺が苦笑いしてると、志乃がコーヒーを持って戻ってくる。
「アリスちゃん、楽しそうね。秀司も一緒にやったら?」
「遠慮しとく。覚悟が要るから」
そんな他愛ない会話をしていると、ロビーに人が現れた。
本来は見慣れたシルエット──俺の妹の身体に魂を入れ込んでいるデビルサマナー……葛葉キョウジだ。
女性用の黒いパンツスーツで身を包み、眼鏡越しに冷たい目を俺たちに向けて
「やあ、兄くん。魔人アリスを仲魔にしたそうだな」
そう言った。
そのキョウジの声に、アリスがゲームをピタッと止める。
そして金色の瞳でジロリとキョウジを睨み、首を傾げる。
「おじさん、誰?」
……えっ。
分かるのか?
中に入ってる魂が、肉体とは別物だって
アリスは続ける
「見た目はお姉ちゃんだけど、中身はそうじゃないよね? 魂とカラダが一緒じゃないなんて……変な人!」
アリスの物言いに、俺と志乃は驚いてしまった。
キョウジは肩をすくめ、アリスの瞳をまじまじと見つめる。
「なるほど……死に大きく関わる魔人なだけに、ヒトの魂を視認できるんだな。流石と言おうか……」
そこでキョウジは俺に目を向け
「兄くん、それは高位の魔王に匹敵する大悪魔だ。制御できるなら心強い戦力になる」
……うん。
それは分かってる。
だからこうして、関係構築強化のために頑張ってるわけだし。
「……ただ、仲魔の暴走は契約主の責任だ。そこは忘れるなよ」
えっと
「えっ、キョウジさんがそれを言うんですか?」
……志乃が真顔でキレていた。
そもそも論として、アンタが俺のアパートの部屋にGUMPを置かなきゃこんなことになってないんだよな……!
俺もそれは思ったけど、今は彼の協力が要るわけだし
「志乃、別にいいから」
そう言って、抑えてくれと伝える。
彼女は俺の言葉と視線を受けて、それ以上は喋らなかった。
キョウジは
「まぁ、油断はするなよ」
……全く気にせず、その話を終わらせた。
「分かってるよ。で……」
俺は迷った。
言っても仕方のないことだから控えていたけど。
さすがにもう、時間が少なくなってきたから
「……シドの行方は分かったのか?」
俺の問いに、キョウジの目が一瞬鋭くなる。
だが、すぐにいつもの調子に戻る。
「急かすな兄くん。俺も遊んでいたわけじゃない。……どうも行方が分からないんだ。恐らく何かしらの悪魔の権能を使用していると踏んでいるんだがな……」
その言葉には多少、済まなさが混じってるような気がした。
……あくまで気がしただけだけど。
だからまぁ、俺は
「……頼むぞ、キョウジ」
これ以外言えないんだよな。
で、俺は
「用件はそれだけか? アリスについて警告をしに来ただけ?」
……少し嫌味が混じってるかもしれないなと思いつつ訊く。
するとキョウジは
「無論そんなわけはない。仕事だ」
なんでも。
暴力団の運営資金を入れていた秘密の銀行口座の残高が、ゼロになった。
そしてそれは、おそらく「犯人は悪魔使いだ」と予想された。
何でかというと……
「カードも通帳も盗まれていないのに、銀行口座の数字だけゼロになったんだ」
カードも通帳も無いのに残高だけ……?
「そして引き落としの記録が銀行に残ってた」
スマホに送られてくるアレを思い出す。
あれって引き落とし先の情報書かれてたよな……?
で
「……誰が引き落としたんだ?」
そう、訊ねたら
「それが分からないんだ」
……なるほど。
そりゃおかしいわ。
だから悪魔の仕業って判断されたのね。
しかし悪魔使いか……。
俺の頭に、アリスのゾンビ軍団が浮かぶ。
あの力を試すチャンスかもしれないな……。
……これはちょっとアレなんだが。
ちょっと、胸がワクワクしてしまった。
暴力団の秘密口座だと分かったのは、その異常な引き落としが切っ掛けです。
本作を読んでいただき感謝です。
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