家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
みすぼらしいアパートの1階、錆びたドアの前で、俺たちは息を潜めていた。
キクリヒメの縁結びの力で、暴力団の秘密預金を奪った人間がこの部屋に潜伏していることが分かったわけだ。
ATMから現金をごっそり盗み出した大胆な手口──間違いなく、ただの人間じゃない。
「秀司、どうやって突入する? いきなりドア蹴破る?」
志乃がやる気を整え、囁くように言う。
アリスも楽しそうに言う。
「ねえ、お兄ちゃん! アリスがお友達でガーッてやっちゃおうか?」
「待て、アリス。ゾンビを出す前に、まずおびき出すんだ」
俺はキクリヒメに目を向けた。
「キクリヒメ、婦警に化けられるか? 女刑事でもいい」
すると
キクリヒメが微笑み、頷く。
「刑事の方が楽ですので、女刑事に」
その言葉と同時に、キクリヒメの服装が赤いワンピースから黒の女性用スーツ姿に。
「……これでどうでしょうか?」
そしてキクリヒメはポケットから「菊里姫子」という名前が書かれた警察手帳を出して見せる。
……完璧じゃないか。
「よし、じゃあキクリヒメ、頼む。俺たちは少し離れて待機してるから。アリスは……大人しくしてろよ」
「わかった!」
アリスの返事と共に
キクリヒメがドアに近づき、インターホンを押し大声で言った。
「すみません警察です! ちょっとお話を伺いたいのですが!」
返事は無いようだ。
「大間さん! いるんでしょ! 大間さん!」
キクリヒメはどんどんとドアを叩き続けながら叫ぶ。
オオマ……?
犯人の名前が何故特定できたんだ?
さっきそんな話をしなかった気がしたんだけど……?
そう思い、訝しむけど。
すぐ気づいた。
「うっせえなぁ!」
ガチャッと。
中から男が顔を出した。
「俺は鈴木だ! 大間じゃねえよ!」
あまり清潔感は無い男で、少し腹が出ていた。
……彼の心理を考えると理解はできる。
違う名前を呼んで外からガンガン叩く奴がいる。
てっきり自分を捕まえに来たと思っていたのに。
……ちっ、人違いかよ。
ビビらせやがって。
しかも女。
これはもう、一喝してやろう。
ビビらされたから、余計腹立つんだろうな。
だからこうなった。
……ようは、罠なんだよ。
あえて思いついた適当な名前で呼びかけるのは。
すぐさまキクリヒメはそいつの腕をひっつかみ。
引きずり出して、ブン投げた。
……彼女は地母神、つまり女性悪魔ではあるけれど。
腕力はその辺の男よりは強い。
人間じゃ無いからね。
「ぐあっ!」
コンクリの地面に投げ出されて、受け身も取れずに這いつくばる。
キクリヒメは男の背中を踏みつけて
「確保しました!」
そう叫ぶ。
よっしゃ!
「畜生騙しやがったな!」
キクリヒメに踏まれている男が悔しそうに叫ぶ。
あとはこの男が悪魔召喚する前に取り押さえて、指輪を取り上げれば終わり……
俺は普通に、そう思っていた。
GUMPを取り出し、俺たちも突っ込む……
だけど
カアアア!!
させぬ!
……部屋の中から。
鴉の鳴き声と、力強い男の声がして。
次の瞬間、アパートの壁を一部ぶち破りながら。
赤い甲冑で身を包んだ槍の騎士と。鴉の顔と翼を持ち、大剣で武装した鳥人が現れたんだ。
犯人は1人では無かった!
本作を読んでいただき感謝です。
続きが気になる、面白かった。
その場合は評価、お気に入り、コメント等を頂けますと嬉しいです。