家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話 作:XX(旧山川海のすけ)
「名前なんて教えられるわけがねえだろ!」
名前は魔術的に大きな意味がある。
軽々しく教えられるものではない。
常識だ。
俺の言葉に幾月は薄く笑い
「そうか。残念だな」
そう呟く。
するとロベスピエールの刃が動き出した。
まずい。
このまま戦闘になだれ込むのは……!
時間がもう少し欲しい。
今は何も対策が浮かんで無い。
だから俺は
「神社を壊すのが使命なのに、警察署に一体何の用なんだ!?」
質問を飛ばした。
俺の質問に、幾月が一瞬キョトンとし。
笑顔になった。
そしてこう言った。
「……武器が欲しかったんだよね。暴力団から押収した銃火器あるかな、って。最悪、拳銃は取れるわけだし」
拳銃!?
俺の背筋が凍る。
見ると、幾月の右手には拳銃が握られていた。
銃器には詳しく無いけど、多分警官が持つ標準装備だろう。
ロベスピエールのギロチンだけでもヤバいのに、銃まで持つだと……?
おそらくこの男、銃器の取り扱い方法は知ってるはずだ。
テロリストだしな。
脳内で仲魔を選定する。
弾避けを用意しなければだめだ。
とすれば……
物理攻撃に強い、オニが最適なのか……?
もう少し時間が欲しい……
「その銃で人を一方的に、罪のない人を殺すんだな……?」
だから俺は思ったままの言葉を口にする。
すると幾月が嘲るように笑い、拳銃を軽く振った。
「罪ね……本当に馬鹿だね、君は」
そして溜息をつき、こう続ける。
「そんなものは神とやらが勝手に決めたことだ。神の存在が、どれだけ人を歪め、苦しめ、憎しみ合わせたか……君は考えたことはないのかい?」
そんな幾月の言葉に、俺は言葉を失う。
コイツ、何を言ってんだ……?
志乃が「何をわけのわからないことを言ってるの!?」と声を上げた。
幾月がそれを目にして首を左右に振る。
そして続けた。
「この世界に存在する国家は、神の意志で建国に至った国がほとんどだ。あのアメリカですら、大統領になる際に聖書を持ち出す。僕はね、そういうものを一切合切、やめるべきだと思ったんだよね」
俺は息を呑む。
幾月の思想が、徐々に明らかになる。
宗教の否定……?
……いや、それ以上の何かだ。
幾月は語り出す。
「宗教の違いにより、殺し合いが起き、いがみ合いも起きる。そして人は自分に正直に生きられない。だから無くしてしまおうと思ったんだ。……まず神が上にあること。それを異常だと君たちは思ってはいないんだね? 嘆かわしいことだ」
幾月の声が、静かに熱を帯びる。
「だから僕がこの国の大統領になって、まずこの国から変えようとしたのに。僕に賛同してくれる賢い人間は一握り。……全く救えないね」
呆れ果てたように言う幾月に、俺は戦慄する。
こいつが事件を起こしたとき、俺はこいつの言葉なんて気にしていなくて、まともに考えてこなかった。
けど、幾月の思想はそういうものだったのか。
神の否定──いや、神の存在そのものを根底から壊すこと。
「神を否定するって……メチャクチャだ」
俺は呟く。
神を否定したら、法律の根拠がなくなる。
人を殺してはいけない、傷つけてはいけない、盗んではいけない──その「してはいけない」の根拠は、全部神の言葉だ。
十戒とか、国津罪……そういう「神の定めた禁止事項」なんだ。
それは人の言葉じゃダメなんだ。
何故なら、人の言葉なら「そんな会ったこともない人間に従う義理は無いね」で否定できるからだ。
人より上の存在である「神の言葉」だからこそ、否定できなくなる。
幾月の思想は、その全てをひっくり返すこと。
じゃあ、何が待ってる?
俺の頭に、恐ろしい言葉が浮かぶ。
「アンタ、人治国家を作るつもりか……?」
幾月が微笑んだ。
「ああ、そうなるね。僕が絶対の指導者として君臨する、美しい世界を創りたいんだよね」
その瞬間、幾月の顔に爽やかな笑顔が広がる。
まるで純粋な夢を語る子供のようだ。
……だが、その笑顔があまりにも不気味で、背筋がゾクリと震えた。
原始人の社会以下だねぇ。
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