家に帰ったら部屋にGUMPがあったせいでデビルサマナーになってしまった大学生男子の話   作:XX(旧山川海のすけ)

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第94話 私たちにとっては良いことだった

「お兄ちゃんこっちだよ!」

 

 泥喰山に入り道なき道を進む。

 なるべく急いでいるけど、本来は人が歩く道じゃ無いから。

 足場が悪く、めちゃくちゃ歩きにくい。

 

 疲れも知らず、ぴょんぴょん跳ねるように、無秩序に生えまくっている木々の間を……山道を進んでいくアリスについていくのでやっとだった。

 

 でも「待ってくれ」「休憩しよう」とは言えない。

 シドがここに居るということは、ディーグイを復活させようとしているってことだ。

 

 ……時間の猶予なんて無い!

 

「うおおおおお」

 

 奮い立たせるために俺は吠える。

 だけど

 

「ちょっと待って秀司」

 

 そこで志乃が

 

「アリスもストップ。10分だけ休憩よ」

 

 ……俺たちを止めたんだ。

 

 

 

「秀司、焦る気持ちは分かる。でも、疲弊しきった状態でシドに出くわしても、勝てるわけないでしょ」

 

 休憩を拒否しようとする俺に、志乃は諭すように言った。

 そんなこと分かってるよ。

 

 ……でも

 

 なおも休憩を拒否したがる俺。

 

 だけど

 

「私は絶対に勝ちたいの。だからお願い、休憩をして」

 

 俺に真剣に頼むように言ってくる志乃に

 

 俺は嫌だとは言えなかった。

 

 

 

 

 俺たちはその場で腰を下ろして一息つく。

 

 そこで

 

「ハイ」

 

 ……志乃が背負っていたリュックから、500ミリのペットボトル……スポーツドリンクを出して来た。

 えっと。

 

「いつ買ったの?」

 

「山に入る前に、直前の自販機で」

 

 ……どうも、こういう事態を予想してたみたいだ。

 俺、頭に血が上ってて、そこまで考えて無かったよ。

 

「……ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 ……ホント、頼りになるカノジョだよ。

 俺がそう思い、ペットボトルの蓋を開け

 

 口をつけると

 

「半分飲んだらちょうだいね。全部飲んで戦闘中にトイレ行きたくなったら困るでしょ」

 

 ……そんな冗談なのか本気なのか分からないことを言ってくる。

 まぁ、俺も別に全部飲みたいほど渇いてるわけでもないし。

 

 特に抵抗もなく、半分残ったペットボトルを志乃に返す。

 

 志乃はそれを全く普通に飲み干して。

 空のペットボトルをリュックに仕舞う。

 

 そして

 

「……秀司、あなたって本当に辛いことは全部自分で背負おうとしてたわよね」

 

 突然、そんなことを言い出したんだ。

 

 

 

 戸惑う俺に、志乃は続ける。

 

「バイト先で嫌なことがあっても、黙っていたし」

 

 鴨志田のことか……

 でもそれは言ってもどうしようもないことだったし。

 そう返そうとしたら

 

「……私が友達だと思ってた子に、恨み言を言われそうになったら」

 

 シドの指輪で人間を辞め、悪魔になって消滅した元友人の話をした。

 あのとき俺は……

 

「恨みの矛先を自分に変えた」

 

 そうだったな。

 でも、俺は志乃の苦しみを放置したくなかったんだよ。

 

 そう思っていたら

 

「私さ、そういう『して貰うだけ』ってのすごく嫌なんだ」

 

 ……そんなことを言われた。

 

 えっ

 

 少し血の気が引く。

 

 志乃と恋人関係になってから。

 聞きたくないなと思っていたこと。

 

 その先に待つ言葉に俺は恐怖した。

 

 だけど

 

「……でも。怒らないでね? ……この出来事が起きたせいで、私はあなたの支えになれてるって実感がさ、すごーくあったんだよね」

 

 だから……

 

「このまま、晶ちゃんを取り戻せれば、私にとってこのことは良い結果に終わった困難になるのよ」

 

 その声は明るくて

 

 彼女は俺の目を見ながら

 

「……絶対に勝ちましょう。そしてこのことを私たちにとっては良いことだった、ということにしようよ」

 

 ……ああ。

 勿論だ。

 

 何が何でも、勝つぞ。

 

 ……よし。

 

「……行こう。十分休んだ」

 

 俺は立ち上がった。

 強い闘志を昂らせて。




決戦が迫る……!

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