【個性】が発達した超人社会が崩壊した未来ーーーーーー。
これは,全てを支配しようとする魔王とそれに抗うヒーロー達の物語。
プロローグ1
…どうして,どうしてこうなってしまったのだろう。
俺は師に手を引かれ走っている時にそう思った。
…どうせ死ぬなら,今までの事を振り返りながら死のう。
中国軽慶市から発信された「発光する赤児」が生まれたというニュース。以後各地で「超常」が発見され、原因も判然としないまま時は流れていく…
世界総人口の八割が何らかの特異体質である超人社会となった現在。生まれ持った超常的な力“個性”を悪用する犯罪者・敵(ヴィラン)が増加の一途をたどる中、同じく“個性”を持つ者たちが“ヒーロー”として敵や災害に立ち向かい、人々を救ける社会が確立されていた。
だが,その超人社会に抑圧され生き場所を失った敵連合が破壊活動を開始。
奴らは着々と軍を作り遂にヒーローとの全面戦争にまで到達した…
しかしリーダーである死柄木弔が超大物敵AFO(オール・フォー・ワン)と人格を融合し新たな人格へと成った事から一気に形勢が逆転。
ヒーロー側は劣勢に立たされ,窮地へと陥っていた…
そこでヒーローは,敵連合の主力メンバーを分断させ各自で確保・撃破する事を実行。
内2人,敵連合の荼毘と渡我被身子を確保・撃破させる事が出来たが,それでも…それでも,圧倒的な力を持つ魔王には敵わなかった。
その後,超人社会は崩壊し,魔王(AFO)が君臨する世界となってしまった。
だが,今尚その世界になるのを阻止する為に戦っているヒーローはいる。
でもずっと敗戦が続いてる状況だ…ほぼ諦めかけているヒーローも多い。
俺の親は…ヒーローに未来を託すよりも,AFOに支配される事を望み,俺を置いてどこかへ行ってしまった。
そんな時に俺を拾ったのが…元1-A組の皆さんだった。
何で俺を拾ったのか…未だに答えは聞けてないけど,俺は『皆余裕が無いから』と割り切る事にした。
俺の個性は『錬金術』。特定の言葉を唱えるだけで,基本的には何でも作れる。
だから俺は少しでも戦力を上げようと,『仮面ライダー』という名前の戦士に変身しようとした。
そしてソレを理論上実現可能にするのが,『ガッチャードライバー』という装着式の変身ベルト。俺が何年もの年月を掛けて作り上げた代物だ。…しかし,未だ解決できていないデメリットがあった。
ドライバーがアーマードを展開させ仮面ライダーにする為の莫大なエネルギー源。
上鳴さんの個性『帯電』でもそのエネルギーを賄う事ができなかった。
どうしたものか,と悩んでいるうちに,レジスタンスの敷地内にヴィランが現れた。…ソレらは,魔王の部下達だった。
「…いいな!一ノ瀬はレジスタンス内にいる避難民の誘導!何があってもコッチに来るなよ!」
「でも,それじゃあ瀬呂さん達が「分かったな!!!」
「…はい!」
その場にいるヒーロー達は侵入してきたヴィラン達に応戦した…が,どれも手練れで中々撤退させられない。
俺は瀬呂さんから言われた通り避難民の避難を誘導した。…その後,全員の避難が完了し後は俺が逃げるだけとなった時,最悪の光景が視界に入った。
全身から刃物を突出させている近接特化のヴィラン…そのヴィランに,瀬呂さんが刺された。
…怒りで頭がどうにかなりそうだった。目の前にいるヴィランが許せなかった。
あの時,自分でも想像出来ないくらいの大声が出て。思わず駆け寄って行ってしまった。
瀬呂さんの容態を見ると,腹部に大量の刃物が刺さっていて,尚且つ傷も深い。ドロドロと腹部から大量の血が溢れてきている。
俺はヴィランを睨み付け,ガッチャードライバーを腰部に装着した。
…だが,これは今はただの飾りに過ぎず,意味は無い。でも,今なら…出来る気がした。
「…に…逃げろ…!お前が逃げれば…」
「逃げれば何ですか?俺は…未だ恩を返せてない人に,ここで倒れて欲しく無い。無謀で,何も出来ない人間がただ出しゃばっただけですけど…それでも俺は,誰かを助けられるヒーローになりたい。」
だからこそ,ここを離れるわけには行かなかった。
目の前のヴィランが迫ってくる。でもどこかソレがスローモーションに見えた。
「俺は…俺は,『誰かのヒーローに成りたい。』」
そう心から願った時…俺の個性が発動した。
『スチームゥ!!!』『ホパ!ホッパー1!!』
目の前に機関車の様な生命体が『スチームゥ!!!』と声を上げヴィランに突撃して行った。更にそれと同時に変な鳴き声(?)を上げるゆるキャラの様なバッタが姿を現した。
「…マジか,一ノ瀬…」
「…これは…俺の中から生まれた全く未知の生命体…ケミー。」
そう名付ける事にした。決して錬金術繋がりで『化学反応』『化学現象』を表すケミストリーからとって名付けたとか別にそんなのでは無い。
ケミー達は一通り動き回ると,カード化して俺の手元まで戻って来た。そのカードの左上には数字が刻印されており,機関車のカードは9,バッタのカードは1が刻まれていた。
俺はソレを裏返し,ドライバーに挿入してみた。ドライバーには何故か左右にカードの様なモノが入る隙間があったし,こうなんじゃ無いかと思いやってみたら正解で正直ホッとした。
『ホッパー1!スチームライナー!』
ドライバーがカードを読み込みあのケミー達の名前を呼ぶ。すると俺の周りを巨大なフラスコが覆い,それを囲うかの様に2体のケミー達が宙を舞った。
俺は手を広げ腕を肩の高さまで伸ばす。その後両の手を重ね合わせ,裏返すと手で三角形を作り正面へと突き出した。
「変身!!!」
その言葉を叫ぶと,ガッチャードライバーのレバー部を引き入っていた裏面のカードがドライバー内で合体すると,一つの顔が浮かび上がった。
『ガッチャーンコ!!…スチーム!!ホッパー!!!』
ドライバーからその音声が流れると,変身シークエンスが始まり俺の体にアーマードが纏われていく。
…これが,これが…
「…仮面ライダー…ガッチャード…俺の字。」
「一ノ瀬,お前まさか…」
「どう出来たかは俺にもよく分からないですけど…取り敢えず,アイツらを倒します。」
「やめ,ろ…お前じゃ無理だ…」
「…ソレでもやらなきゃいけないんです。だって俺は…あの人達だけじゃなくて,貴方方も守りたいから。」
俺はスチームライナーに吹き飛ばされたヴィランの方を見る。ノックダウンしていたヴィランが,必死に身体を動かそうともがいていた。
「ウッソだろ…ブレードが…」
「アイツ何なんだよ!!」
周りのヴィランも次々とそう喚く。だがそんな事は気にも留めず,俺は転がっていた鉄パイプを刀に変換しようと個性の錬金術を使用した。
【…万物はこれなる一者(ひとつもの)の改造として生まれうく。】
俺の右手が光ると鉄パイプは自動的に変形を始め,刀へと変貌を遂げた。
「…行くぞ。」
「舐めんな!コッチはあの方の部下!対して戦闘経験の無いガキ一人!やっちまえぇぇぇぇ!!!」
雄叫びを上げそれぞれの個性を発動し俺に向かってくる。…確証は無いが,各々がヴィランの目や異常な息切れから察するに恐らく全員が個性ブースト薬を服用していると思われる。
ずっと裏でヒーローが戦っているのを見て来たんだ…コレぐらい嫌でも分かる。
俺は向かって来たヴィランの懐に滑り込んで潜り込むと刀を振るいヴィランを斬った。斬られたヴィランは腑を撒き散らし横へと倒れた。
…続いて,腕を大砲に変える個性を持つヴィランの腕を削ぎ落とし,その後身体を叩き切った。
まだだ。まだ終わるわけには行かない。
刀を槍投げの様に投げ丁度重なっていたヴィランを3名串刺しにして壁に突き刺した。
その後俺は残っていたヴィランに蹴りやパンチを腹に入れ突撃した。
回し蹴り。ジャブ。ジャブ。肘打ち,横蹴り。更にジャブを繰り返し裏拳。身体を旋回させ更にスピニングパットフィスト。
「ふぅ…はぁ,はぁ…」
「な,何なんだよ…何なんだよお前ぇ!!!」
取り零したヴィランがそう悲鳴を上げるかの様にそう聞いた。俺は壁に突き刺さっているヴィランの方まで行くと,胸に刺さっている刀を引き抜き,刀を軽く振るった。
「一ノ瀬…お前…!」
「ああ見えて急所は外してるんで安心して下さい。」
「そうじゃなくて!どうして,お前…」
「…貴方方の目を盗んで必死にやってたんですよ。個性訓練に格闘技。
…まぁ,かなり怪我をしましたけど。」
誰かの力になりたくて。そう思い始めた格闘技と個性訓練。体が悲鳴を上げても続けたのは我ながら凄いとは思った。
「…というか,テープで止血してるなら言って下さいよ。心配したじゃ無いですか。」
「へへっ…ま,流石に動けそうには無いけど,な…」
「ハハッ。さて,と…」
俺はゆっくりとヴィランの方を向き刀の切先を向けた。
「どうする?ココで死ぬか…黙って逃げるか。」
「ヒッ…ヒィ!!!ウワアアアアアアア!!!!」
そう聞くとヴィランは悲鳴を上げ出口へと走って逃げ込んだ。俺はドライバーを傾け,変身を解除する。
ドライバーから飛び出て来たカード…いや,ケミー達は鳴き声の様なものを上げている。
正直,未だに言語はよく分からないけど…コイツらに助けて貰ったのは確かだ。
「ハハッ…ありがとう。…立てますか?」
「オオ…サンキュー。」
俺はケミー達に感謝を告げると,瀬呂さんの腕を自身の方に回し取り敢えず安静に出来る場所へと横に倒した。
「今の設備でどうこうできるかは分かんないですが…やれるだけやって見ます。」
「…まさか,あの時助けた子供に今度は自分が助けられるとはねぇ。」
「…まだ,恩返せたって思って無いですから。」
「返す恩なんて無いでしょ。そういうつもりで助けたわけじゃ無いんだし…」
「…助かりました。貴方方のおかげで今の俺がいる。」
「…そういうのは,耳郎に言ってよ。」
「耳郎さん?何故…」
「まぁ何れ分かるって。ま,取り敢えず応急処置頼むわ。」
俺は言われた通り傷口を応急処置で出来るだけ塞いでいった。
…この時の俺は,予想だにしなかっただろう。いつの間にか世界の命運が自身に託されるだなんて…
一ノ瀬倫太郎 個性…錬金術
錬金術…特定の言葉の詠唱と作りたいものに十分な素材があれば基本的に何でも作る事が可能。ただ錬金術を使い過ぎると肉体が『個性』自体に耐えられなる。
ケミー…倫太郎の思いが個性,錬金術に呼応し生まれた一種の生命体。
これからどんどん増える。
ガッチャードライバー…一ノ瀬が何年も掛けて作り上げた錬金術でケミーの持つエネルギーを多重に錬成させることの出来る存在。その可能性は無限大で,強化ユニットを接続させる事も可能。(その様な意図を持って作られた。)
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「…ハァ,ハァ…」
倫太郎の慢心によりヴィランのアジトへと逃げ込んだ一人のヴィランが魔王の居る間へと足を運んでいた。
その部屋はまさに王宮の様で,何処か貴族の様な雰囲気を漂わせていた。
「どうだい?奴等は潰せたかな?」
「い,いいや…マダだ…あ,あんなのが居るなんて聞いていない!あの青銅の鎧を纏ったヒーロー…『仮面ライダー』?とか言ってたな!どういう事だ!あの場には雑魚ヒーローとセロファンしか居ないと言われていた筈なのに!!」
「へぇ…仮面ライダー,ね…僕の居ないところでそんなモノが…」
「な,なぁ!…脳無を貸してくれないか!!…それも,最上位(ハイエンド)を!」
「…勿論さ。だって僕は。」
魔王はヴィランの報告を書き終えると座っていた玉座から立ちそのヴィランに手を差し伸べた。その姿は,特徴的な緑がかった癖毛のある髪やそばかす,特徴的な大きく丸い目…
その風貌はまるで…
「僕は,君の友達なのだから。」
緑谷出久その人の様だった。