頭脳と異能に筋肉で勝利するデスゲーム   作:もちもち物質@布団

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終わった後:異能談義

「それでな、海斗が『リプレイ』してくれたから、俺のスマホ見つかってさあ!」

 その日。バカは食堂で元気に、親友の自慢をしていた。

 今日の食堂には、遊びに来ていた陽とたま、バイト上がりの海斗とバイト休憩中のミナ、そして仕事上がりのヒバナとビーナスが揃って、非常に賑やかである。友達がいっぱいなので、バカはとても嬉しい!

「海斗がいると、助かるんだぞ!すごいだろ!」

「そうだね。すごい」

「そうか、『リプレイ』って、そういう使い方もできるのか……。ちょっと便利だね」

 ……バカの自慢を聞きながら、たまと陽は神妙な顔で頷いている。

 そして、その横では……。

「ああ、所詮、僕の異能はその程度にしか使えないさ……」

 海斗が、拗ねているのであった!おお、海斗!ああ、海斗!

 

 

 

「その程度、ってことはないよぉ……海斗の異能、役に立つよぉ……」

「そうは言ってもな……。デスゲーム中も使いどころがよく分からなかったが、日常生活でも、今一つパッとしない異能だろ……」

 バカは一生懸命、海斗を励ましているのだが、海斗はすっかり拗ねてしまった!

「あー、分かるわ。私の異能も、正直、使いどころが無いもの」

 一方、その拗ねた海斗に寄り添えるのは、どうやら、ビーナスであるようだ。

「何よ、彫像を出す、って。……何に使うのよ、コレ」

 ビーナスはそんなことを言いつつ、どろん、と、自分の横に大理石の彫像を出した。ビーナスにちょっと似ている、美しい女性の彫像だ。彫像だが、動く。動くので、バカはこれを見る度に、『おおー』と、ちょっと感心してしまうのであった!

「いや、お嬢のソレ、なんだかんだ時々使ってんだろ」

 ……が、この彫像、使われているらしい。

「えっ、何に使うんですか……?漬物石とか……?」

「まあ、荷物運びとかには使えるわよ。簡単な命令なら聞くのよ、これ」

 ミナが『漬物石……?』とやっている横で、ビーナスは彫像に向かって、『醤油とってきて』と命令した。彫像は、テーブルの反対側にあった醤油を持って戻ってきた。……すごい!べんり!

「使いどころ、あるじゃないか……!」

「ああ、まあ、そうね……うーん、確かに、海斗のよりは、使い勝手いいわね……」

 海斗は益々落ち込んでしまったし、ビーナスは『ごめんってば』とちょっと申し訳なさそうにしている。バカは、『海斗が益々落ち込んじゃった!』と、泣きたくなってきた!

「とはいえ、これだって、ねえ……場所は選ぶわよ?人が居ない場所か、はたまた、彫像が動いてても驚かない人しかいない場所でしか使えないもの」

「あっ、だからこないだ、買い物の荷物持ちにヒバナ連れてったんだな!」

「そういうこと。次はバカ君でもいいけど?」

 バカは、『俺も役に立てるぞ!』と胸を張ったが、ヒバナに黙って後頭部を叩かれた。すぱしん、といい音がした。バカにはノーダメージだが!

 

 

 

「異能……というと、私の異能も使い勝手、悪いよ」

 さて。続いての異能の逆自慢は、たまである。

「コピーって、つまり、コピーする対象が居ないと使えないから」

「ああ……そ、そうか。確かに、その通りだな……」

 そう!たまの異能も、使い勝手が悪い!何故なら……使いたい時に使いたい異能の人が傍に居ないと、たま自身は異能を使えないからだ!

 また、その異能の持ち主がそこに居るなら、その人に異能を使ってもらえばいいから、たま自身が異能を使う必要は無いのだ!

「強いて言うなら、怪我人が大勢出た時にミナさんの異能をコピーすれば役に立てるね」

「あ、確かに以前、私の異能をコピーしていただいたこと、ありましたね……」

 とはいえ、たまはあちこちで役立っている。『ちょっとこっちに2人分同じ異能が欲しい!』となればたまが向かい、『3人分欲しい!』となれば、かにたまに乗ったたまが、かにかにと向かう。……かにたまもたまと同じ異能なので、この職場では現在、3人前の異能を同時に使うことが可能である!

「……でも、色んな人の異能をコピーさせてもらって体験できるのは、ちょっと楽しいかな」

「つぐみ、最近は社員さん達の異能、片っ端からコピーして回ってるよね」

「『投げた石が全てミカンになり、投げたミカンが全て石になる異能』の人のやつ、面白かった」

「『空を飛ぶ異能』とかコピーできるのは羨ましいな。俺もちょっとやってみたい」

 ……また、たまはたまで、やっぱり異能を楽しんでいるようであった。

 色々なことに興味があるたまには、『コピー』の異能は丁度いいのかもしれない!

 

 

 

「俺の異能も、そんなに使い勝手がいいものじゃないけどね」

 たまの次は、陽である。彼の『無敵時間』は、確かに使い勝手が悪いと言えば悪いのだろうが……。

「何言ってんだ!陽の異能は役に立つぞ!木星さんバット増やせるもん!」

「ああ、まあ、そうなんだけど……あははは……」

 バカからしてみれば、立派な異能である。このキューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部においては、陽および天城の異能が欠かせない!何故なら、木星さんバットは、今や、とんでもなく大活躍するトップスター工具だから!

「……それ以外だと、どこで使うんだ?その、時間を飛ばすような使い方もできるだろう?」

「そうだね。つまらない講義を聞き流すために使ったことがあるよ。それから……あ、最近だと、5階から飛び降りる時に使った」

「えっ……」

 バカは、『あー、5階ぐらいだったら、飛び降りた方が速いもんなあ』と納得して頷いているのだが、他の皆は何とも言えない顔になってしまった。それはそうである。普通の人間は、5階から飛び降りない!

「……俺、樺島君に影響されすぎかな」

「……そうだと思う。その、僕が言えたことじゃないが、気を付けた方が、いいんじゃないか……?」

「うん、そうするよ……あははは……」

 ……バカは頭の上に『?』マークをいっぱい浮かべていたが、陽は乾いた笑い声を上げていたし、他の皆も、『そうした方がいい』と神妙な顔で頷いているのであった……。

 

 

 

「ヒバナは絶賛、異能活躍中だものねえ」

「……おう」

 続いて、ヒバナについては、もしかするとこの中で最も異能を役立てている者かもしれない。何せ……。

「そういえばヒバナさん、資格試験に合格されたんですよね!おめでとうございます!」

 そう!ヒバナは、『異能取扱い資格』を手に入れたのだ!なので、仕事でも異能をガンガン使えるのだ!

 今や、ヒバナは自力で熱気球を動かせるし、蒸気船の小さいのくらいならやっぱり動かせる。炎でできた盾みたいなので木材の焼き加工もできるし、溶接なんかも練習中なのだ!

「おめでとう!おめでとう!」

「おいバカテメエ、それ何回目だよ」

 バカはこのおめでたい話題に際して、お祝いする気持ちしかないため、これを聞く度に『おめでとう!』を繰り返してしまう。まるでバカの一つ覚えである。本当にバカなので仕方がないが。

 

 

 

「それから、ミナについても、本当に役に立ってるものねえ……」

「俺も、親方にぶん殴られた後のたんこぶ、治してもらった!ありがとう!」

 そしてミナについては……お役立ち異能ナンバーワンかもしれない。

 ミナは、食堂の素敵なお姉さん、兼、救護係なのである。……バカも時々お世話になるし、先輩達も時々お世話になる。最近では、ヒバナが自分の異能の使い方をちょっと間違って、火傷してしまったのをミナに見つかって治されていた!

「折角なら僕も、ミナさんのような異能がよかった……」

「えっ、わ、私の、ですか?」

 ミナの異能は文句なしにお役立ち異能であるため、海斗としてはものすごく、ミナのことが羨ましいようである。

 バカとしては、『海斗の異能だって、かっこいいけどなあ……』と思うのだが……。

 

 

 

「えーと、じゃあ、海斗の異能の使い道、考えてみようか。『リプレイ』って、案外、何かの役に立つんじゃないかと思うけど」

 あまりに海斗がうじうじうにうにしているので、陽がそう、提案してくれた。陽はやっぱり、いい奴である。

「まずは……現状だと、どういう使い方してる?」

「そうだな……精々、樺島の失くしものを探すだとか、樺島がさっきまで何をしていたか忘れた時に思い出させるだとか、そういう使い方しかできない……。他には、親方の動きをリプレイして樺島の学習に使うとか、ヒヤリハットの確認とか……」

「案外活用してるんだね……」

 ……海斗は拗ねながら指折り数えているが……そうなのだ。案外、役に立っているのだ。

 なんだかんだ、海斗の異能は、キューティーラブリーエンジェル建設フローラルムキムキ支部で大層重宝されているのである。皆がこぞって、『俺も失くしものした……』とか、『土嚢運び選手権に出場するんだが、フォームの確認をしたい!俺のリプレイを頼む!』とかやっているので、順番待ちが発生することだってあるのだ!

「寝るまでに異能を使わなかった日は、家までの帰り道で『江戸時代の人の様子』とかを再生して遊んでいるが……」

「えっ何それ楽しそう……」

 ……本当に、海斗は案外、異能を使い倒しているのである。バカも『江戸時代の人の様子』とかを見せてもらっては楽しんでいるので、バカは海斗の異能が大好き!

「……考古学とかには使えるんじゃないかな。使い方によっては、邪馬台国の場所とか、分かるんじゃない?」

「僕もそれは考えたが……異能を考古学の証拠として扱うことには賛同しかねる」

「それもそっか。楽しむくらいが丁度いいね」

 たまの提案は何やらすごそうだったが、海斗はちょっと複雑そうな顔で首を横に振った。バカにはよく分からない内容だが……多分、海斗が真面目だからだろう、とバカは思う。海斗は真面目で、いい奴なのだ。

 

「後は……アレだろ。風呂で使うとかだろ」

「僕は断じて、そんな不埒な使い方はしないが!?」

「一回くらいやってんだろ、どうせ」

「遺憾だ!」

 ……続いてヒバナが『リプレイ』の活用方法についてとんでもないことを言い出したが!これにはバカも、『あわわわわわわわ』と大慌て!

「あー、えーと、それはちょっと置いておくとして……俺、気になったことがあるんだけど」

 そうして海斗が怒り、バカが大慌てしている横で、『まあまあ』と陽が手を挙げた。

「さっき、言ってたけど……寝るまでに異能を使わなかった日は、っていうのは……ええと、どういうことかな」

 陽がそう尋ねると、海斗は、『そんなことか?』と首を傾げた。

「……異能を再度使えるようになるのが、寝て起きてからだから、ということだが」

「えっ」

 ……が、そこで声を上げたのはミナである。

 声が上がっちゃった以上は、皆でミナを見つめてしまうが……。

「あ、あの、私は1日1回じゃなくて、ご飯で切り替わる、みたいで……その、朝ごはんを食べたら異能が一回使えるようになって、お昼ご飯を食べたらまたリセットされて、夜ご飯を食べたらまたリセット……っていうかんじなんです」

 ……なんと!

『デスゲーム中、鐘が鳴る度に使用回数が戻る』異能について……デスゲームの外だと、それぞれに使用できる間隔が異なるらしい!

 

 

 

「じゃあ、ミナさんは1日に3回使えるんだ」

「……おやつをいっぱい食べちゃうと、4回使えちゃうこともあります!」

 海斗が愕然とする一方、ミナはちょっと恥ずかしそうに『1日最大、5回だったこともあります……!』と、告白していた。多分、お夜食も食べちゃったのであろう!

「私は1日1回なのよね……。まあ、日常生活ではそんなに破損することとかないから、1日使いっぱなせるし、不便は特に無いわ」

 ビーナスは、海斗と同じく1日1回らしい。とはいえ、ビーナスの異能はそれで困らないのであろうが……。

「私は90分に1回」

「は、早い……!」

「デスゲーム中のルールと同じってことだと思う」

 また、たまはとんでもなく早い!90分に1回使えるということは、1日に……いっぱい使えるということである!

 

 

 

「つくづく、僕の異能の使い勝手の悪さが目立つな……」

 ……そうして、皆で異能談義をしていたら、海斗がますますいじけてしまったのであった。バカは、『海斗はいい奴だよお!』と励ますが、海斗はしょんぼりしている……。

 こういう時、バカはどうしていいのやら分からない。どうにかして、海斗を励ましてやりたいのだが……。

「ところで樺島君の異能って、どうなってるの?」

「へ?」

 ……そこで、バカにボールが飛んできた。

 

 

 

「え、俺、異能、使ってない……」

 バカは、『だって、そうだよなあ』と、首を傾げる。

 バカの異能は、『デスゲーム中に時間を戻す』やつだ。デスゲームの始まりに戻す異能なのだから、デスゲームに居ないと意味が無い異能なのだ。

「あの、バカ君のそれって、自分で自由に時間を戻せる、とかじゃ、ないわけ?」

「え、わかんねえよお、俺、バカだもん……」

 ビーナスは、『一番便利そうなのにねえ』と、ちょっと呆れ顔である!バカは、『だって俺、バカだもん!』と、再度主張した!

「あー……樺島君の異能って、樺島君自身もよく分かってないんだったね」

「それで、分かってないから上手くいってるんだっけ。面白いよね」

「うん。そうなんだよぉ。よく分かんねえけど、『分かんねえモン使っていいのは非常時だけだ!』って親方にも言われてっからさあ……俺、デスゲームじゃないと異能、使えないんだあ……」

 ということで、バカは、しゅん、とした。

 ……よくよく考えてみたら、バカも皆が羨ましい。バカもヒバナみたいにカッコよく炎のあれこれを出してみたいし、ミナみたいに皆の怪我を治してみたいし……一番かっこいいのは、土屋の盾であろうか。アレはかっこいい!本当にカッコいいから、是非、真似してみたかったのに!

 

「そ、そうか……そういえば、そうだったな……」

 バカがちょっとしょんぼりしていたところ、海斗はそんなバカを見て、何やら思い直した様子であった。『日常生活において、とは限られるが、一応、下には下が居たか……』ということであるらしい。

「俺、海斗のみたいに皆の役に立てたらよかったのになあ……」

「……まあ、その、僕の異能も、そんなに役に立つものじゃ、ないだろうが……うん」

 結局、海斗は自分よりもしょんぼりしているバカが横に居ると、あんまりしょんぼりできなくなってしまうらしい。ぽふ、とバカの肩を叩いて、ちょっと複雑そうな顔で励ましてくれた。

「その……今晩、また、見るか?江戸時代のリプレイ……」

「いいのぉ!?やったー!」

 ……そうして、バカが海斗を元気づけようと思っていたのはいつのまにやらひっくり返って、海斗がバカを元気づけることになってしまったのであった。

 とはいえ、バカは海斗よりもとんでもなく励まされやすい性質であるので……これでよいのだろう。きっと。

 

 

 

 ……その後、食事を終えた一同は、海斗の『リプレイ』鑑賞会を楽しむのだった。

 海斗はやっぱり、ちょっぴり複雑な気持ちらしいが……あんまりにも皆が楽しむものだから、ちょっぴり、元気が出たらしい。

『それじゃあおやすみ!』と皆が解散する頃には、海斗もちょっと晴れやかな顔をしていたので、バカはにこにこ笑顔である!親友が元気だと、バカは嬉しいのだ!

 

 

 

 ……と、そんな海斗の異能は、また別のデスゲームで役立ったり、うっかり土砂崩れに飲み込まれてしまった木星さんバットを捜索するのに役立ったり、はたまた、かにたまにコピーされて天城の入浴シーンがリプレイされたり……と色々あったが、それはまた別の話である。

 おお、キューティーラブリーエンジェル建設、ああ、キューティーラブリーエンジェル建設……。




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