【百合】放課後の呼び出しが男子からなんて、いつから錯覚してたの?   作:冷泉七都

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第15話

 カフェでの食事も終えて、夏樹と伊吹はエオンモールをうろつく。

 気になる店舗があれば随時入ってみようという魂胆だ。

 

 そして、十分ほどが経過したとき――。

 

「あれ、夏樹じゃーんっ!」

 

 前方から、周囲にハートをばら撒いていそうな、腕を絡ませ合うイチャラブカップルがやってきた。

 ちなみに、このカップルは二人とも女子だ。

 その内の一人――抱かれている側に声をかけられて、夏樹が記憶を呼び起こすと、すぐに思い出した。

 

天音(あまね)――?」

 

 夏樹がそう聞くと、首を縦に激しく振って肯定する。

 

「そうだよ! 久しぶり!」

「久しぶりっ」

「一年も会ってないから、会いたかった!」

「うん、わたしも」

 

 言葉の全てに感嘆符がついていそうな天音は、夏樹の小学校と中学校時代の友達だ。

 でも天音は夏樹と違う高校に入学して、そこからは特に縁もなく、会う機会もなく過ごしてきた。

 

 その二人が今、再会した――。

 

「ねぇ天音、この子友達?」

 

 天音の隣の女子が、ほぼ無表情で質問する。

 

「そうっ、夏樹って言うの!」

「ふーん。……なんか、やけに親しくない?」

「ただの中学の時の友達だから、普通だよ!」

「ほんとう?」

 

 その姿は重い彼女そのものだった。

 夏樹も伊吹も、思わずじっと見入ってしまった。

 圧倒されつつも、妙な興味が湧いてくる。

 

「本当――! でも、不安にさせちゃったのならごめん……!」

「不安とか、そういうんじゃ……」

「わたしが好きなのは(ゆう)ちゃんだけだからっ!」

 

 そう言って天音は優にハグをした。

 優もそれに応えるように、腕全体を使って抱き返す。

 

「天音、もういいよ。私が重い女なせいだから――」

()()とか言わないの! わたしは優ちゃんが重くて嬉しいよっ!」

 

 二人は見つめ合う。

 そして、だんだんと唇同士を近づけていき……。

 

 ちゅ――。

 

 エオンモールの真ん中で、軽くリップ音を鳴らしながらキスをした。

 

 へへっ、と微笑む優。

 その優の頭を撫でる天音。

 

 夏樹と伊吹は思った。

 これが俗に言うバカップルか――と。

 

「すごいな……」

「こんな人達、初めて見た――」

「中学の天音はもうちょっとだけ静かだった気がするけどな……」

「ぇぇ」

 

 伊吹は若干引きつつも、少しばかりだけ感心した。

 

「二人は付き合ってるんだね」

 

 そして夏樹は天音に聞く。

 聞く必要もないだろうけど、一応聞いておこう。

 

「うんっ、去年から付き合ってるんだよっ!」

「運命的に出会ったんだよね」

「そう! わたしがテニスボールを変に飛ばしちゃったときに、優ちゃんにちょうど当たっちゃって、それから……ってかんじ!」

「うんうん」

「わたし、女子校に入って恋人できないなー残念って思ってたけど、全然そんなことなかった! 可愛い子がいたからっ!」

「へへへっ」

 

 夏樹は優の軽快な反応を見て楽しんでいると、天音に「夏樹は――」と言われてビクッとした。

 

「夏樹は――、隣の子が彼女っ?」

「「ぇっ……!」」

 

 夏樹も伊吹も目を丸くさせた。

 

 友達――? 恋人――?

 じゃあ、保留……いや、未定――、なのか?

 

 どれでもない自分たちを、なんて説明しようかと悩む。

 

「私が告白して、返事待ちの段階かな……」

 

 伊吹はできるだけ簡潔にまとめて言った。

 

「珍しいねっ、付き合ったら良いのに! 夏樹もまんざらでもなさそうだしっ!」

「うん、私たちには分かる」

 

 伊吹が夏樹の方を向くと、夏樹は「それは……」とたじろっていた。

 誤魔化しとしか思えない夏樹を、伊吹は微笑んで見る。

 

 伊吹は天音の近くに行き、優に睨まれながらも耳打ちした。

 

「夏樹をオトす方法を教えて欲しい。二人みたいにイチャイチャしてみたいの」

「いいよっ! じゃあ伊吹、ラウィン交換しよっか」

 

 二人はスマホを取り出して、それぞれ繋がった。

 

「わたし、二人のこと応援してるからねっ!」

 

 伊吹に頼もしい助っ人ができて、夏樹と付き合う未来も近いのかな――と思ってしまう。

 それに、身近なところに女子同士のカップルがいると知ったことで、女の子同士っていうのも少しだけ自然に思えてきた。

 夏樹の考えにも、変化の兆しがやってきたのだ。

 

「天音、時間になっちゃうよ」

「あ、ほんとだっ! もう行かないと!」

 

 優がスマホのロック画面を見せる。

 現在時刻とともに、天音と優の自撮り写真が伊吹の目に入った。

 

 いいなぁ――。

 伊吹のそんな呟きは、夏樹たちには聞こえない。

 

「夏樹、伊吹、またいつかねっ!」

 

 そう言って二人は、腕を組んで歩き始めた。

 

 後ろ姿だけでも、天音は幸せなんだな――と、夏樹に伝わった。

 

 

 衝撃的なバカップルも見えなくなり、夏樹と伊吹は再びエオンモールの中をうろつきだす。

 

 一階のイベントスペースにやってきた二人は、あるものを見つけた。

 

 沢山の水槽に沢山の金魚――。

 金魚すくいを開催しているらしい。

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