【百合】放課後の呼び出しが男子からなんて、いつから錯覚してたの?   作:冷泉七都

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第一章『わたしの相手は……女子!?』
第3話


 時は放課後、所は校舎裏。

 一人の固まる少女――夏樹。

 その子に近づいていく少女――伊吹。

 

 夏樹は予想外の展開に、昨日散々したシュミレーションなんて忘れてしまっていた。

 

 待って、待って――!

 伊吹が女子なんて聞いてないんだけどっ!?

 

 彼……いや、彼女はショートヘアに真面目そうな雰囲気だけど、はにかむ笑顔がとても可愛くて、その一見相容れない二つが良いようにマリアージュして……。

 とにかく、普通の美人な女子高校生だったのだ。

 どこかで見たことある気がするが、具体的な女優名までは思い出せない。

 

 そんな夏樹のグルグル脳内なんて露も知らず、伊吹は真剣な眼差しで見つめて――。

 

「今日は伝えたいことがあって呼んだんだ」

 

 一方、言われた夏樹はもっと混乱して、首を縦に振り、相槌を打つだけで精一杯。

 

「回りくどいのは嫌だから、単刀直入に言う。私は、夏樹のことが――」

 

 夏樹の息継ぎが聞こえるほどに、周りは静かだった。

 いや、吹奏楽の音色や野球部の掛け声は確かにあった。

 でも、二人には関係ない。

 二人は、二人の世界へと誘われたのだ。

 

 覚悟を決めた伊吹は軽くブレスを吸い込み、世界で一番むずかしい言葉を言う。

 

「――好き」

 

 そして――。

 

「付き合ってください!」

 

 夏樹の耳には確かに聴こえた。

 無駄にリアルな夢なんかじゃない。

 伊吹の顔を見ると、状況を飲み込むことができなかったわたしなんて消えた。

 

 伊吹の本気は、夏樹を理解させた。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 伊吹は夏樹の返答を待つ。

 だがそれは、伊吹の想像とは180度ちがうものだった。

 

「……ごめんなさい」

「……っぇ――」

 

 伊吹は虚をつかれて、間抜けな声を漏らした。

 

「なんでっ!」

 

 考える前に言葉が出ていた。

 

 DM上では、あんなに仲良くしていたじゃないか――!

 

 夏樹から次に放たれた言葉もまた、伊吹は全く考えていなかったものだった。

 

「わたし、伊吹のこと、ずっと……男子だと勘違いしてたの――」

「私が……、男子……?」

「そう。だから……、恋人じゃなくて、友達になろう」

 

 夏樹は思い出した。

 伊吹が自分から『私は男子だ』なんて言ったこともないし、わたしが思う根拠もどこにもなかった。

 一人称が『私』だったり、乙女チックな話もあったりだの、伊吹が女子だと気づく場面は沢山あった。

 

 夏樹は気づいた。

 伊吹が男子だ――なんてわたしの思い込みだった。錯覚だったのだと。

 それは、わたしが男子と仲良くなれるって浮かれていたせいなのだと。

 そして、わたしが勘違いした挙げ句、伊吹はわたしに告白した。

 これを断るのは……――。

 

 短時間でもわたしはすごく悩んで答えを出した。

 

 なのだが――。

 

「……いやだ」

 

 伊吹の返答は、こうだった。

 伊吹自身でも、こんなわがままみたいな台詞。信じられなかった。

 でも、私の本心がそう言っているのだ。

 

 そして続けてこう言う。

 

「夏樹が私と付き合えないのは、私が女子だからだよね。外見だけだよね」

「……そう。合ってる」

 

 伊吹の本気さに、夏樹は取り繕わずに返した。

 

「私も夏樹を好きになるまでは、女子となんかは無いって思ってた。でも実際、好きになれた」

「……うん」

「もし、夏樹が私の内面は好きだって言ってくれるのなら、チャンスが欲しい」

「チャンス……?」

「そう。夏樹は普通に生活してくれるだけでいいから、『恋人になるか、友達になるか』の答えは後回しにして、私に恋人になるチャンスがあるって思わせてほしい」

「……」

「だって、性別が原因で初恋を諦めたくないから――」

 

 夏樹の答えはすぐに決まった。

 それは、伊吹への同情からではない。

 

 わたしは伊吹の内面が気に入ったんだ。

 まだ女子同士で付き合うなんて想像もつかない。

 でも、わたしも伊吹を本気で愛することができるかもしれない。

 伊吹がわたしを愛してくれたように。

 

「では、答えは保留で――」

 

 伊吹の顔は明るくなった。

 

「……ありがとう」

「ちゃんと、わたしを本気で好きにさせてね」

 

 一度好きになった人を好きじゃなくなるなんて、どんな理由でも嫌だから――。

 

「はい」

 

 伊吹は心に誓った。

 夏樹の言うとおり、本気で好きにさせる。と。

 

 

 夏樹にはこの後起こる、予想外な事態が一つあった。

 夏樹が思う以上に、伊吹は積極的過ぎた――。




◇あとがき◇
 本編に入りました!
 ここまで読んで頂きありがとうございます。
 まだまだ続けて参りますので是非、お気に入りや評価をお願いします。
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