世界の隙間を埋める1%の閃き ~あるいはTSして手当たり次第にバッドエンドフラグを叩き折る天使~   作:信頼できる語り手

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妾に謀略を仕掛けるなど百年早いわ、青二才が。


【青春】に関する閃き

 摂理。

 

 この世界の自己防衛機構。物理法則を逸脱した異能者を縛る、唯一絶対のルール。

 

 最も重要な例の一つを挙げるとすれば、恒常性の維持だろう。

 

 生物が体内の状態を一定に保とうとする働きを指す言葉だが、この世界にもその機能がある。

 

 絶大なマナとシグネットを誇る異能者が全力で暴れても、世界は壊れない。

 

 何故なら、異能者もマナもシグネットも、自然の摂理(システム)の一部として組み込まれているからだ。

 

 黙示録は摂理の外の存在らしいが、そういったものに対する免疫機能も当然あるので、平時ならば問題ない。

 

 未能者が外部環境に関わらず、体温を一定範囲に維持しているように、この世界も様々な外部要因から自己防衛している。

 

 そう、ある程度は。

 

 その許容値を超えたらどうなるのか。

 

 摂理という免疫が不全状態に陥った世界は、容易く病原体(あくま)に侵される。

 

 摂理の崩壊は、世界の終わりの始まり。

 

 僕は実体験として、それを知っている。

 

 この世界で、僕が。──僕だけが。

 

 

 

「ナーヌスさん、だったっけ。結構、急ぎの注文だったり?」

 

 サラサラと流れるような錆色の髪の男性が、自信なさげに口を開く。

 

 目の下に隈があり、虚弱もしくは病弱な雰囲気を漂わせる、幸薄そうな外見の男。

 

 実際、長年持病を患っていた者特有の、必要以上に体を庇うような動きが見られた。そういう癖は直らないものだ。

 

 だが、それが逆に恐ろしい。

 

「別に急ぎじゃない。僕は世界有数の礼装職人に礼装を作って貰いたいだけ。必要なだけ待つ」

 

「良い心掛けだね。君の事は名前しか知らなかったけど、少し好印象だったり」

 

 紅葉谷(モミジヤ)鹿苑(ロクオン)

 

 シグネットは繊維。細長い糸を束ねてあらゆる敵を縛り、動きを封じる超越者。

 

 後衛(エイド)に長けた断章取義に所属し、シグネットを生かして礼装の作成も請け負っている。

 

 つまり、この男は身体的なハンデを背負った上で、超越者にまで上り詰めたという事である。

 

「ただ、一つだけ。訂正してくれると嬉しいな、クールなお嬢さん」

 

 鹿苑は困ったように微笑む。が、その目には有無を言わさぬ迫力が宿っていた。

 

「世界有数じゃない。世界最高の礼装職人だよ、ボクは」

 

「……これは、失礼した」

 

 僕は素直に謝罪する。悪くない。正しいプライドを持った職人は信用できる。

 

 高性能な礼装を求めていたのは事実だが、優秀な職人との繋がりはもっと欲しい。

 

 僕も元は研究者だった。自分の同類、一つの分野に人生を捧げるプロフェッショナルを見る目はあるつもりだ。

 

「あと、少し驚いた。紳士的に女扱いされたのは久し振り。淫祠邪教(うち)の連中は品のないセクハラしかしてこないから」

 

「……衣類を扱う都合上、着用者に不快な思いをさせるのは職人失格だからね。それと、流石にそんな連中と比べて欲しくなかったり」

 

「それは本当にごめん」

 

 割りと本気で感動していたのだが、嫌そうな顔をされてしまった。

 

 治安が良いな、断章取義。

 

 

 

「閃いた」

 

「あっ、志鳳さん!今のは告白する場面よね!文化祭のクライマックス、ムードも完璧よ!」

 

「まだ好感度も低いし、勝算は薄いだろう。幾らなんでも性急過ぎだ。修学旅行を待つべきだぞ」

 

「はぁ?結果が分からないからスリルを味わえるんじゃないですかぁ」

 

「あはは、このままだと友達未満の関係で終わるかな」

 

 喫茶ウールーズにて。

 

 梧桐志鳳、信桜幕楽、アイン・ディアーブル、山藤杜鵑花、サラート・シャリーア。

 

 久し振りに予定が合った仲良し五人組は、何が楽しいのか、志鳳が遊ぶ学園青春恋愛ゲームに横から口を出して盛り上がっていた。

 

 ちなみに、これは異能者専用のゲームではなく、異能に覚醒していない一般人──未能者の社会で販売されているものだ。

 

 故に、彼らの知らない異文化が次々に出てきて、無駄に難易度が高くなっていた。

 

「というか、なんで最初に攻略するのが先生なのよ!いや、攻略対象だけども!」

 

「多分あれだぞ。立ち絵の尻が大きかったからだ」

 

「志鳳さん、胸より尻派ですもんねぇ。私もよくチラ見されてますしぃ」

 

「あはは、長い付き合いだと趣味嗜好が丸分かりかな」

 

「志鳳さん!巨乳も良いわよ!色々と挟めて便利よね!」

 

「今、初めて友達との付き合い方を考えようと思った」

 

 志鳳は開き直って外野を無視した。

 

「というかぁ、全員と付き合えば良くないですかぁ?」 

 

「杜鵑花ちゃん、知らないのね!未能者の社会では結婚っていう契約を結ぶのよ?恋仲になれる相手は一人なのよ」

 

「あぁ、それがありましたねぇ。特定の相手に一生束縛されるとかぁ、一緒の家でずっと暮らすとかぁ?正直ゾッとしますけどぉ」

 

 異能者は自由を愛する傾向があり、自立心が非常に強い。

 

 恋人関係でも普通なら同居まではしない。子に対しても、親の因縁に巻き込まないように、成人前に厄除の儀を行って縁を切る。

 

 異能者にとっては、相手の自由を最大限尊重する事が愛なのだ。

 

 恋人のプライベートに踏み込むような真似はしない。自分の他に関係を持っている相手がいても、それは恋人の自由だと割り切る。

 

 その文化の根底には、祝福による長寿化があるとされている。

 

 生後百年がスタートラインの異能者にとって、生涯一人に操を捧げるという価値観は形成されにくかったのだ。

 

「仕方ない話だぞ。未能者には祝福もマナもない。避妊や性病を気にしないといけないんだ。特定のパートナーとしか関係を持たずにリスクを減らすのは、案外理に適ってるぞ」

 

「異能者ほど自由な恋愛はできないけど、代わりに一人だけに永遠の愛を捧げるのよ!たった数十年、だけど閃光のように!ロマンチックね!」

 

「永遠の愛なら契約を結ぶ必要がない気もしますけどぉ」

 

 異能者の間では度々、未能者の独特な文化が話題になる。

 

 自分達に理解できない異文化をユーモラスに感じるのだ。いわゆる鉄板ネタというヤツだ。

 

 志鳳はコントローラーを置いた。

 

 画面では女教師に刺された主人公が転がっており、ゲームオーバーの文字が出ている。

 

 未能者の作ったゲームは奥が深い、と志鳳は戦慄した。

 

「やっぱりゲームじゃ駄目。青春を体験したい」

 

「おっ、そうなん?タイミングばっちしでウケる。じゃあ、シホりん、手伝ってくんない?学園舞台の仮想空間のテスター欲しいんだわ」

 

 突然現れた声。一瞬だけ店内に緊張が走るが、その女性は志鳳達の知り合いだった。

 

「あはは、何処から入って来たのかな?」

 

「それ、喫茶店の店主が言う台詞じゃなくね?マジウケるわ」

 

 桃色の髪を高い位置でポニーテールにまとめた女性──幽鬼の梅園(ウメゾノ)紗鶯(サオウ)

 

 シグネットは電気。技術屋として様々なシステムの開発にも手を出している、断章取義の超越者。

 

 そして。

 

「妾の仕業、と言えば納得できるかの?」

 

 紗鶯の陰に隠れていた小柄な女性が現れると、断章取義に所属する杜鵑花と幕楽が先ほど以上の反応を見せる。

 

「うわぁ、最悪ですぅ」

 

「あはは、出口はあっちかな」

 

「酷い扱いよの。よよよ」

 

 クリーム色の髪をカチューシャで留めた小柄な女性が、わざとらしく泣き崩れる。が、断章取義の三人は無反応だ。

 

「冷たいの、お主ら。嫌がらせが趣味なだけの無害なババアに対して」

 

「有害じゃないですかぁ」

 

「あはは、この店を潰そうとした事は、今でも許してないかな」

 

「恨みを買う事ばっかりやってるから、そういうのを付けられる」

 

 志鳳の言葉を受けて、クリーム髪の女性は人の悪い笑みを浮かべた。

 

『阿呆が。泳がせておったのよ。失伝──凝り固まった流血(クロテッド・ゴア)

 

 福音の舞萩(マイハギ)猪尾(イオ)

 

 シグネットは血液。極めて小規模の発動だったが、全方位から血の壁に押し潰されたソレは見るも無残に砕かれていた。

 

「時限式の攻撃祭具。気付いておらんと思うてか。妾に謀略を仕掛けるなど百年早いわ、青二才が」

 

 超越者の恐ろしさは、術式の範囲や規模だけではない。

 

 都市を壊滅させられるだけの力を、個人で完璧にコントロールしている事。その気になれば、周囲に配慮しながらでも高度な術式を行使できる。

 

「そも、遠隔攻撃に祭具なんぞを使う時点で二流よの。クールタイム、効果時間の制限。そして奪われたら逆用も可。便利であっても道具は道具。使い手が近くにいなければ恐れるに足らんわ」

 

『あはは、失伝──無秩序な熱狂(ワイルド・オージィ)

 

 撃針の信桜幕楽。

 

 シグネットは炎。砕けた祭具の残骸を、幕楽の炎の鎌が蒸発させる。

 

「あはは、ゴミは片付けて欲しいかな」

 

「あちち!今の術式、避けねば妾も射程内に入っておらんかったか?……さてと、撃針が怖いから妾は帰るかの」

 

「おけおけ、イオるん、案内サンクス。じゃ、シホりんとサッちん、借りてくわ。あ、マクらんも来る?」

 

「あはは、当然かな」

 

 サラートが勢い良く立ち上がる。

 

「はい!私も行くわ!」

 

「開発段階の技術だから、断章取義以外の部外者を入れるのは、あたしの権限でも流石に無理し。めんご」

 

「仕方ないな。大人しく留守番しておくぞ」

 

「参加するのは僕達だけ?」

 

断章取義(うち)のボスも誘ったんだけど、断られたわ。マジウケる」

 

「きゃひひ、あの傲慢男が学園で青春とか笑えますねぇ!」

 

 杜鵑花は心底おかしそうに爆笑した。

 

 

 

「と言うわけで、来た。甘酸っぱい青春に定評のある仮想空間の学園」

 

『ウケる。なにそれ、いつもやってんの?』

 

 仮想空間の外から、紗鶯の閑話が送られてくる。

 

 閑話の術式は遠距離には届かないが、志鳳達の肉体は仮想空間の外にあるので、そこに閑話を繋げているのだ。

 

「あはは、認識失墜の祭具なしで人通りの多い場所を歩くのは久し振りかな」

 

「確かにそうですねぇ。どれだけ精巧でも作り物の世界ですからぁ」

 

 教師、学生、清掃員。

 

 学園内にはそれなりに人がいるが、超越者の人間離れした容姿と雰囲気に対して、何の反応も示さない。

 

「というか、精巧なのかよく分からない。未能者の学園なんて、桜国のアニメやコミックでしか見た事ないから。物知りなアインがいれば解説してくれるのに」

 

「あの人にしてはやけにあっさり諦めたのでぇ、草葉の陰にでも隠れてるかもしれませんよぉ?」

 

「あはは、それは適切な表現なのかな?」

 

 断章取義の三人は仮想空間の中で学生服を着ていた。この学園の制服という設定らしく、周囲のキャラクターも同じ服を着ている。

 

 超越者は若々しい容姿を保てるので、外見的には学生服にも違和感はない。

 

「あはは、こうして見ると本当に学生になったみたいだね。もし、私達五人がこういうところで出会ってたらどんな感じだったのかな?」

 

「なんとなく、僕と幕楽とアインは同級生な気がする。杜鵑花とサラートが後輩」

 

「まぁ、私もその認識で接してますけどぉ」

 

 異能者は実年齢よりも外見年齢に重きを置くので、実は五人組は誰が歳上で歳下なのか知らない。

 

「なんかぁ、五人で並んで叱られてる光景が思い浮かびましたぁ」

 

「あはは、実は私もかな」

 

「同じく」

 

 三人は談笑しながら、紗鶯の指示に従って広い校庭を軽く走ったり、校舎内を見学して感想を報告していく。

 

 仮想空間そのものは、既に確立された技術なので、何事もなくテストは進んだ。

 

 異能社会における仮想空間の構築は、基本的にキノスと呼ばれる装置を使用する。

 

 精神系の異能者を結集させて開発した技術であり、空間系の集大成である開廊と対をなす、異能社会の根幹技術。

 

 志鳳達の精神は仮想空間の内部を体感しているが、普通に現実の肉体を起こそうと思えば起きられる。安全性は問題ない。

 

 ……はずだった。

 

 

 

『ちょっ、シホりん!サッちん!マクらん!聞こえてないん!?応答よろ!ああもう、意識飛んでっし!!』

 

 紗鶯は唐突に意識を失った三人を前にして焦っていた。

 

 超越者が完全に意識を失うなどただ事ではない。それも、三人同時に。

 

 そして、キノスの状態を確認して驚愕した。

 

『精神系による干渉!?キノスの根幹システムを力業で書き換えてるとか、マ!?そんなん、第0位階の大赦か思姦くらいしかできなくね!?』

 

 紗鶯は決断した。

 

 仮に第0位階の犯行だったとしても、下手人は近くにいると思われる。それをどうにかするのが先決だ。

 

『あたしを舐めんなし!口伝──痺れさせる電場(モア・ジュース)!』

 

 紗鶯のシグネットが生み出した電気が、志鳳達だけを避けて建物の隅々まで満たす。

 

 しかし。

 

『はあ!?手応えゼロ!?ふざけんなし!一体何処に隠れてん……』

 

『ここかえ。桃色の。失伝──深き眠りの果て(ディープ・スリープ)

 

『ッ!なんっ……!?』

 

 背後から現れた金髪の青年。彼の術式を受けて、紗鶯の意識が急速に混濁していく。

 

『経験が浅いかえ、桃色の。ふむ、長く眠っていたが、精神系の超越者は今の時代にも少ないと見える。さて、本命が目覚める前に終わらせてしまおうかえ』

 

 金髪の青年は意識を失わせた四人に対して、更なる術式を行使し……。

 

『ッ!これは!?』

 

 術式が不発に終わり、目を見開いた。

 

 

  

『どうやら不味い状況のようだ。保険を掛けておいて正解だったぞ』

 

『まさか、アインさん……!』

 

 アインは事前に術式を行使していた。

 

『失伝──悪戯な玩具箱(ジョーク・ボックス)

 

 幻像のアイン・ディアーブル。

 

『模型──身代わりのピンバッジ』

 

 シグネットは道具の具現。

 

『ああ、護身用の祭具を全員に三個ずつ付けておいたぞ。何かあっても、三度までなら身代わりになってくれる』

 

 アインはサラートに説明する。

 

『私のシグネットで具現した道具だから、祭具にありがちなクールタイムや効果時間の制限もない。敵に奪われる心配もないぞ』

 

『でかしたわ!でも、それって……』

 

『ああ、気付いたか。失伝の常時発動は流石に負担がキツいな。第0位階でもない私には結構ギリギリだぞ』

 

 アインは気丈な笑みを浮かべているが、普段よりも顔色が悪い。

 

『じゃあ、その負担は私がどうにかするわ。口伝──積み立てた徳点(セーブ・ポイント)

 

 サラートがアインの体にマナを注ぐ。アインの顔色が回復した。

 

『マナによる治癒と苦痛の抑制?しかし、この出力は第1位階の域を超えてるぞ?』

 

『予め自分が精製したマナを貯めておく事で、誰でも使える共有術式を高出力で発動できるのよ。裏技みたいなものね。……内緒よ?』

 

 聖傅のサラート・シャリーア。

 

 シグネットは事象の蓄積。

 

『君は本当に良い女だぞ』

 

『当然よね!』

 

 

 

 身代わりの祭具が稼いだ僅かな猶予で、梧桐志鳳は意識を取り戻した。

 

『失伝──針の上で天使は何人踊れるか(シースレス・エンジェル)

 

 志鳳の髪に光の糸が絡み付く。

 

 壟断の梧桐志鳳。

 

 シグネットは光と過去の知覚。 

 

『アインの仕業か。ありがとう。失伝──この世は舞台(エンドレス・ステージ)

 

『目覚めおったかえ!?くっ……!』

 

 金髪の青年の姿が薄れる。いや、おそらくは志鳳の意識の方が対象を捉えられなくなっている。精神系の真骨頂。

 

『でも残念。僕との相性は最悪』

 

 何故なら、自身に関わる過去の全てを知覚すれば、違和感から逆算して敵の居場所が予測できるからだ。更に。

 

『再演──厄災を示す地図(ハザード・マップ)

 

 志鳳の脳内に危険予測図が描かれる。

 

『そこか。再演──凝り固まった流血(クロテッド・ゴア)

 

 金髪の青年を押し潰すように、全方位から光の壁が出現する。

 

 紙一重で回避に成功したが、状況は逆転した。

 

『もう一度眠らせるかえ!失伝──深き眠りの(ディープ)……』

 

『全て、私に跪け。失伝──至上なる命令(オーバー・ルール)

 

 擅権のベート・バトゥル。

 

 シグネットは万物に対する絶対命令。その場にある全てが金髪の青年に牙を剥く。

 

『なっ、まさか……古の女王かえ!?討伐されたと聞いたが、この時代にまで生きておったとは!!』

 

『表の私が完全に意識を失い、封印が弱まったか。褒めてやる、金髪の男。喜んで、私に──跪け』

 

 金髪の青年が地に伏す。ベートの命令に従おうとする肉体に、どうにか精神で抗って立ち上がるが。

 

『これぇ、死ぬほど疲れるから使いたくないんですけどぉ!失伝──引き寄せる深淵(プリング・アビス)!』

 

 泡沫の山藤杜鵑花。

 

 シグネットは引力の操作。アイン達のように自由自在とはいかないが、燃費を気にしなければ失伝を使うだけの技量はある。

 

 彼女の前に泡のようなマナの塊が浮かび、強大な引力を発生させた。

 

 そして、引き寄せられる金髪の青年を。

 

『再演──凝り固まった流血(クロテッド・ゴア)

 

 志鳳の操る光の壁が押し潰した。

 

 

 

 志鳳達は辛うじて意識だけ保っている金髪の青年を囲んで、尋問しようとする。

 

 断章取義の抱える研究施設に忍び込んだ方法。これは精神系のシグネットの応用だろうが、問題は目的だ。

 

「でぇ、何が目的だったんですかぁ?」

 

 杜鵑花が無理をした反動で顔を顰めながら、端的に質問する。

 

 失伝を使って平然としている第0位階は、やはり頭がおかしい。不完全とはいえ、他人の失伝をパクれる志鳳はもっとおかしい。

 

 明日は絶対に働かないと決めた。

 

 そんな杜鵑花に向けて、金髪の青年は降参するように手を上げる。

 

「試して悪かったかえ、若人達。余の敗北を認めよう。そして、青色の。その実力。女王を従える人望。正しく我が後継者に相応しい」

 

 金色のショートヘア。落ち着いた雰囲気を纏う青年は厳かに宣言した。

 

「余の真名はプレイスホルダー。無涯のプレイスホルダー。見ての通りの亡霊、いや黙示録を抑えきれなかった敗残兵の末路よ」

 

 自虐的に微笑む。その視線は志鳳だけを捉えていた。

 

「共に世界を──摂理を護ろうではないかえ、青き同志よ」

 

 

 

『天使に触発されて、厄介なものが目覚めたな』

 

 悪魔が珍しく警戒心を剥き出しにしていた。

 

「あの金髪。黙示録を知ってる?どころか……」

 

 可能性としては考えていた。黙示録が古くから存在するとしたら、何故。

 

 ──何故、世界は今まで無事だったのか。

 

『摂理の守護者。紛れもなく救世の英雄だよ、君達が我々に関わる以前のね』

 

 僕達のように黙示録を認識し、悪魔共から摂理を守っている存在がいた。そう考えた方が納得できる。

 

『黙示録との戦いに敗れて存在を抹消されたはずだったが、しぶとく生き残っていたらしい。まったく、我輩の同族も雑な仕事をするな!』

 

 これは僕にとっては朗報だ。

 

 黙示録と契約している僕は、動ける範囲に限界がある。悪魔に肉体を乗っ取られない事を最優先にして、慎重に行動しているからだ。

 

 だが、あの青年──プレイスホルダーなら。

 

『希望が見えたかね、孤高の青?』

 

「……僕は僕にできる事をやるだけ」

 

 天使を導けるかもしれない。




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第1回ヒロイン人気投票

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  • 緑:アイン・ディアーブル
  • 紫:山藤杜鵑花
  • 橙:サラート・シャリーア
  • 青:ナーヌス・バレンシア(梧桐詩凰)
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