【カオ転三次】騎手やってるってよ   作:FakePusai

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7~8月は暑くて仕事から帰ってきてもうだめぽで全然書けませんでしたね……

スズカ助けた打ち上げ会
飯描写とかが上手い人、まじ尊敬できる
上記の通りちょっとづつ書いたのでややチグハグな所あるかも

話を動かそうと思って本家見直してたら核降ってくるのが20XX……オワタ
もうちょっと競馬は続くんじゃよ


打ち上げするってよ

 お好み焼き丸丸、その店は茨城はつくばの外れにあった。

 住宅街、というより家がある程度固まっている集落染みた場所に、こじんまりと建っていた。

 掛かっている暖簾に書かれているのは〇に丸、店主の家紋かそれとも恰好つけか。

 

 赤ちょうちんを掲げたその引き戸口に張られているのは、真新しい紙に書かれた『XX月YY日貸し切り(ごめんなさい)』と、薄汚れつつある紙に書かれた『持ち帰りあり〼』。

 

 内部は、その店構えから想像できる通りにこじんまりとしたものであった。

 

 コンクリ敷きの中央通路を挟んで左右に座敷、6人程度座れる鉄板はめ込み式の机がそれぞれに2卓づつあった。

 

 そんな風景の中、片列2卓を専有した男女が10名ほど居た。彼等彼女等は、なんとも見事なまでに顔面偏差値に差が見て取れる。片卓に座り今まさに乾杯しようとする男女は、同じ卓を囲むようには見えない不思議な組み合わせに見えた。

 その見た目は、同程度の人はまま居ると誰もが思う程度の人達であった。

 それに比べもう一卓に座る5人は目も眩むほどの美男美女であり、そこらの芸能人では太刀打ち不可能なほど相貌の良さを誇った。

 

 彼等は何者か、それはガイア連合というオカルト系秘密組織の構成員とそのシキガミである。

 見た目一般人が黒札と呼ばれるガイア連合の中心物と目される階級に所属するもの達であり、逆に美男美女達はその黒札(主に組織トップのショタおじ)によって創造されしシキガミ達であった。

 

 彼らは液体が注がれたグラスを持ち、それを打ち鳴らした。

 

「ソンデカルメを助けたことにかんぱーい」

 

『かんぱーい』

 

 グラスが打ち鳴らさる音が響き、皆一様に口を付ける。

 ごくごくと擬音が、まるで本当に聞こえるようにグラス内の液体がそれぞれの喉を滑り落ちていく。

 

『麦茶だこれ!』

 

「それがやりたかっただけかーい」

 

 HAHAHAHAとでも形容できそうな笑い声とそれに対するツッコミが響きわたる。

 このような場で想像できるグラス内の中身はなにか、それは概ねビールであろう。

 

 アルコールを毒として分解してしまう覚醒者達にとって、ビールはただの苦い水である。

 ある人は、ノンアルコールビールみたいで微妙、と言っていたほどである。

 

「お酒飲んでもしゃーないんだからええやん」

 

「そうそう、早く私達も飲めるお酒が出回らないか、まってるんだけど」

 

「一応デビルサマナーだっけ?、に出た日本酒作ってんじゃなかったか?」

 

「かっぁー、俺達でも飲めるビールがでてくればよー、元ネタに則ってワンモア!って言えるにのによー」

 

 彼らがなんであるか言えば、有体に言うとバカである。いやバカ達、が正確な表現かもしれない。

 ガイア連合の黒札達の生態はこのようなもので、特に気の合う連中が集まると、IQが阿保大学の飲みサー程度まで低下する。

 

 もちろん表であればこのような醜態とはならない。それぞれが立派な表向きのペルソナを被り、それぞれの人生を生きている。

 

 「まあでも、助かったよ皆。サイレンススズカそのものじゃないとしても、助けたいなーってくらいの話に手伝ってもらってさ」

 

 まず阿里川勇樹。彼はJRA所属騎手として大を成し、東の天才として西のレジェンドと比較されうる存在である。

 騎手達によくある醜聞とも無縁で、騎乗依頼したい調教師やオーナーは多い。だが彼はガイアレーシングと契約している都合、いつどこの競馬場にいるのかが不透明である。

 

 ガイアレーシング所属馬次第でどこの競馬場に居るかが決まるが、逆に言えば主要馬場に居るとは言い切れない人間でもある。

 

 阿里川騎手が何処で走るか教えてほしい、と言う相談という名のクレームを受けたガイアレーシングは、早めに次走の予定を自社のホームページ上で公開するようになった。

 その予定表から騎乗依頼をも受け付けるのがITにも強いガイアグループの一部門らしさかもしれない。

 

「いやいや、足折る名馬が居るなら助けたいもんだよ。正直、早めに気づけたらライスシャワー相当もどっかにいたんじゃないかと思ってちょっと後悔しているんだ」

 

 次に四木谷。彼はガイアファームという新進気鋭の競走馬生産牧場、そしてそれを走らせる為の法人、ガイアレーシングの代表である。

 

 このご時世に博打染みた業態である競走馬生産牧場の立ち上げは、業界内からは”キ〇ガイ”か”金をどぶに捨てたい奴”どっちかだ、と言われた。

 

 だがその声も収まりつつある。彼が購入した(実態としては異なるが)5頭の競走馬が5頭とも勝ちあがったからである。

 

 同世代の競走馬は概ね8千から1万頭前後、その中で1勝以上勝てる確率は3~4割である。裏を返せば6、7割の競走馬は1勝もできないということである。

 勝てなかった馬の行先は様々であるが、地方で走るか、乗馬になるかそれとも用途変更(意味深)か。牝馬であれば繁殖牝馬という道もあるが、血統が良くなければそれもない。

 

 1頭勝ち上がるだけでも『なかなかやりますな』と言われるであろう中、5頭とも勝ちあがった(さらには将来的にG1をも取る)馬を選んだ四木谷の目利きは密かに注目されていた。

 

「あーライスシャワーちゃんかぁ。確かにね」

 

「惜しいけど気持ちを切り替えていけ。俺達はそこらの人より強いとはいえすべてを救えない」

 

「すべてを救えるなんて嘯けるのはどっかの4文字だけってそれ一番言われてるから」

 

『確かに!』

 

 そして二人の他、ある一頭の競走馬を救うために協力した3人、穂園(ほぞの)嶺岸(みねぎし)甘西(あまにし)もまたこの場に居た。

 表から見た場合、社会的な共通点が見えない面子である。

 

「まあでも上手くいって良かったよねー。私の洗脳が効くとは分かってたけど、思った通りに動いてくれるかドキドキだったんですけどー」

 

 穂園。彼女はとある地方では知らぬものが居ない商社、穂園商事の社長である。元々は彼女の父親が経営していた、こじんまりとした商社という名の何でも屋であった。

 

 ガイア連合の黒札は、両親と微妙な関係になる事が多かった。前世の記憶を持ち妙に大人びた子供の取り扱いに苦慮することが多いからだ。

 

 彼女の場合、母親とは微妙だが父親との間柄は悪く無かった。

 父親は仕事人間に近く、ほとんど家に居なかった。

 普通の子供なら父親が居ない事にいろいろな感情を抱えるだろうが、逆に『あの仕事じゃ平日も休日もないよねぇ、かわいそ』と、特に思う事はなかったし、夫が居ない事を詰る母を宥める娘という稀有な光景が広がっていた。

 

 彼女の転機は大学進学である。

 高校生でガイア連合に気づき、長期休暇を利用して山梨支部(本部)へ行ったものの、そこでは覚醒できなかった。

 しかし覚醒はしたかった彼女は東京の大学に進学し、そこから時間をちまちま作り1年ほどかけて覚醒した。(当然ショタおじ特製の地獄修行なんてしていない)

 

 その後卒業までいくらかレベルを上げ、また同類(同じ黒札)と異界攻略を偶にしながら卒業、シキガミを連れ地元へ凱旋した。

 娘が地元に帰ってきた時、両親は色めき立った。なにせ男の影が全くない娘が(シキガミ)を連れてきたからだ。

 

 彼女の(へき)が詰まったそのシキガミは、不思議な男であった。20代と言うには貫禄があり、40代とするには若々しく見えた。そんな男を表すのに、娘の言葉を借りるならイケオジと言うべき存在であった。

 

 パートナーとして紹介されたとき両親は混乱した。男性としての魅力に優れたその男が娘のパートナーと言うが、そのパートナーの意味は一体何か。彼氏?それともいつの間にか籍を入れた旦那?それともそれとも結婚詐欺師?……ひどい話である。

 

 その辺についてはひたすらごまかしつつ、彼女は父の会社に入社した。父からすれば子供のころから碌に相手してやれなかった娘であるし、腰掛的にちょっと仕事して、あの連れてきた人と結婚でもするのだろうと。だが娘からすれば、いっちょ親孝行してやりますか、と考えており、ひどいすれ違いがそこにあった。

 

 父に付いてのあいさつ回りでガイアグループにコネありますよと言えば、じゃあこんな事したいと相談され、父がハラハラする中、ぱぱっと案件をまとめ上げてみせた。

 

 彼女は何者かと言えば、ガイア連合の黒札だ。表のも裏のもコネを総動員し、普通はできないようなネゴを行い案件をまとめ上げるのである。

 

 そんな仕事ができるならと次々に舞い込む案件をこなすこと数年、急成長を遂げた商社は地元だけでなく、その周辺地域まで知らぬものが居ないほどの成長を遂げた。

 

 さらには地元の霊能団体すら傘下に収めた商社は、実態としては彼女の王国であった。金融機関までもが娘の方を向き始めた時、父は決断した。娘を社長にすると。

 

 社長最後の仕事として、昔から付き合いのある地元企業用の部署を作り、付いていけない古参社員を配置し自分は部長へ就任した。

 

 彼女としては『あれ~?思っていたのと違うぞ』となったが、まあいいかと気持ちを切り替えた。 

 

 飽きっぽいところのある黒札として自社の成長をそこそこの所で止め、今度は自分の趣味に邁進し始めた。

 

 前世でも競走馬のちょっとした追いかけをしていたこともあり、ガイアファーム設立を聞き、いっちょかみしはじめたのだった。

 

 競走馬への態度は、た〇う村長には負けないぜとばかりに自分の保有馬の血統をつなげる気である。(〇ろう村長、フラウンス村の村長にしてセイウンスカイ、ニシノフラワー生産者兼馬主だった西山牧場オーナーの娘)

 

 彼女が最初に買った馬は、今スターインパクトと名付けられている(名付けた谷津田さん、さーせん)

 買った理由は見た目100%であったし、芝馬かと思ったらダート馬だったことにはがっかりしたものの、子孫をつなげたいから勝ってくれよーと観戦する日々である。

 

 今回の企みに参加したのは、ソンデカルメという前世のサイレンススズカ相当の馬を助け、その産駒を残し、この子がいるのもワシが助けたからじゃ……と内心ニマニマしたかっただけである。

 

 

「こんな仕事してるとは言え、事前情報多かったから仕事楽で助かったぜ。

 今回は穂園がかました(洗脳)獣医さんとその関係者だけですんでよかったよな。一応抑えておいたとは言えオーナーと調教師までやったら結構誤魔化すのが大変だったんじゃね」

 

 嶺岸。彼の表の職業は探偵である。ガイア連合黒札達は中に、ある種の中二病を発症した男たちがいる。彼らは、客の来ない喫茶店や、何しているのか分からない探偵など非生産的な立場になりたがる。何故か?それは、かっこいいからだ。

 

 そして彼はそれを実現させた。

 

 嶺岸探偵事務所。駅近の雑居ビルに事務所を構え、言い訳みたいに事務員の女の子を雇い、ほどほどに仕事をしながら探偵ロールプレイをする心算であった。

 

 だが彼には一つ、とてつもない誤算があった。

 

『オカルト依頼承ります』

 

 覚醒者だし、ガチオカルトでもなんとかなるし、勘違いなどでもネタにはなるし、依頼者こねーだろとオカルト依頼を受け付けていた。オカルト系料金はだいぶ高めに出してはいたが、そんな看板を出した為か何故か程々に人気となってしまった。

 

 ゲートパワーが低い時は良かった。オカルト依頼があっても勘違い半分、人間の仕業半分であった。(人間の仕業はそれはそれで怖いのだが)

 勘違いでしたよと報告し、一応その対処方法を説明する程度で済んでいた。

 

 だがゲートパワー上昇に合わせ、それ相応に本物のオカルト依頼が混じるようになった。彼本人が軽く対処できる程度なら処置し、大事であればしかるべき(ガイア連合の支部等)を紹介した。

 

 もちろん嶺岸がガイア連合の人間だと知っている一部の人間から依頼は、それが異界攻略などのやや難易度の高いものも、相応の金額と引き換えとはいえ自らの手で処理した。

 

 本当の霊能力者としての評判を得て、思いがけず大金を得た嶺岸であったが、その生活は大して変わらなかった。

 衣食住に対してコストを掛けない生活のまま、仕事をそれなりにしつつ前世からの趣味である競馬は続けていた。だが前世よりも何故だか熱くなれずにいた。

 

 気づいたのは収入に対して賭けた割合が多くないと熱く成れない。そんなギャン中な自分を見つけてしまったが、大金を掛けるのは思いとどまった。

 

 別に賭けるのは構わなかった。だが勝った際の税金関連が面倒事であるし、金の出どころを探られるのはさらに面倒だった。

 

 それもあってガイアファームが設立するにあたり1もなく2もなく飛びついた。自分の馬を走らせる、これほど(本人にとって)金がかかり、ただ賭けるよりエキサイティングな事も無かった。

 本人としては、内心俺の馬が走るんだ見ろよ見ろよしながら、そしらぬ顔で賭ける腹積もりであった。

 

 セリ売りでは自分の納得する馬がでてこないと思い、繁殖牝馬を買ってもらい、自分で種を吟味した。生まれた馬は幸いにもちゃんと成長し、来年から走る。

 

 今回この企みに参加したのも、生きていれば俺も付けられるじゃん!というものであった。

 前世のサイレンススズカそのものでは無いにしろ、あの先が見れるとなれば嶺岸も夢は見たいのである。

 

 

「まあね、でも私は見てただけで、この場にいるのは悪い気がするんだけどね」

 

 最後の甘西。彼は他4人と比べ薄い。

 

 高校生時にガイア連合を知り、加入。彼は覚醒後、戦うのが楽しくなったタイプのバーサーカーである。

 

 休みを利用して山梨での修行や異界攻略を楽しく行うタイプだが、高校を卒業しておいた方が良いくらいは考える理性はあったタイプでもある。

 

 今生、戦う事を本職にしようと思い、高校卒業後(両親への言い訳用に)ガイア連合系企業に籍だけ置かせてもらい、デビルバスターとして活動していこうと思っていた。が、両親に泣かれた。

 

 覚醒、レベル上昇による頭の冴えにより、勉強時間は減ったのに成績は向上した。本人としては、赤点取ると行動制限されるし、これはラッキー程度の事であった。

 だが今生の両親はこれに喜び、息子に進学を強烈に進めた。

 

 いくら本人がガイア系に就職できると言ったところで信用できなかった。むしろ詐欺られているのではとも言った。表にガイア連合の一員と言えない立場では、筋の通った反論をすることは難しい。

 

 それに今生の両親が良い人であったことが飛び出ていくのを躊躇させた。他の黒札のように両親との間が微妙であれば、しらねとばかりに飛び出していっただろう。

 

 結局は折れた。長い人生4年程度回り道するのもいいだろうと。 

 

 大学に進学し、勉学片手に異界に潜る日々だった甘西が何故この場に居るかと言えば、彼もまたガイア連合の黒札に漏れず前世から緩いオタクであったからだ。

 

 ウ〇娘も遊ぶし競馬に数百円賭ける程度はしていた。

 もちろん他のゲームも始めたり止めたり、アニメ小説もたしなみ、偶に聖地巡礼とばかりに旅行する程度であった。

 

 そんな彼もまたガイアファームに繁殖牝馬を持ち、来年デビューの産駒を持っていた。

 彼自身戦うのが楽しいタイプである、その結果として結構な報酬を得、資産と言えるほどの金額を持っていた。

 

 金の使い道は装備かスキル(ガチャ)。だが世の中にそれなりに還流しないとなと思い、繁殖牝馬を購入した。  

 

 実際には彼も参加したガイア北米遠征時に大人買いした繁殖牝馬、その一頭を金を出して割り当ててもらったのが正確な所ではある。

 

 甘西は、自分は戦闘系であるし協力するにしても何するんだろうか、と思っていた。

 彼の戦闘スタイルは所謂侍。

 武器系シキガミを持ち、近接戦闘を行うが各種魔法も修めている為、前線で敵を受け止めると言うより耐えられる遊撃である。

 

 ただ今回の飲み会にいるシキガミは人型である。それは彼が武器シキガミに人化をいれているからである。

 

 そんな彼の役割は、回復魔法が使える為プランB要因として待機し、特に何もなく終わっていた。

 

 

 

 どうでもいい雑談をしていれば店の女将が注文していた品物を持ってくる。

 

「お待たせしました、ミックス5つに豚玉3つ、チーズ2つになります」

 

「おーきたきた」

 

 一番近くに座っていた阿里川が受け取り皆に配る。

 合わせて四木谷がお好み焼きの元を運んできた女将さんに声を掛ける。

 

「すいません、例の物をだしてくれませんか」

 

「あいよ、ちょっとまってね、そっちの卓に出したらもってくるからね」

 

「お願いします」

 

 卓の皆は自分の具をかき混ぜながら不思議そうに見ている。

 

「え、なに、サプライズケーキでも用意してんの?」

 

「四木谷さん、そういう事するキャラだったっけ?俺達(黒札)にそういうの似合わなくない?」

 

「いやまてまて、立場的にはいろいろ気を使ってるはずだぞ」

 

「ひどくない?、君たち」

 

 皆ひどい言い草である。

 

 一通りかき混ぜ終わったお好み焼きの具材を、各々油の引いた鉄板の上に広げる。

 じゅうという音と共に白い煙が上り、店内端に備え付けられている換気扇を通して外に逃げていく。

 

 ふと横を見やればシキガミ達も同じように焼き始めていた。

 何を話しているのかは分からないが、表面上は和やかに交流しているように見える。知らぬものが見れば目の保養とでも言いそうな景色である。

 

 焼き終わるまで黒札達の会話は続く。

 

「今回、医者、っていうか獣医?を洗脳してさ、治療後に走らせたら不味いからって、引退勧告させるようにしたけど、他のプランとかあったの?」

 

 穂園が質問する。

 

「一応複数のプランは検討してたね。まあ、まず、故障するしないがあって、その後に故障の程度で分岐かな」

 

 四木谷の回答は立場なりに段階を踏む。

 結果、競走馬が故障しなければそれはそれでよかった。この世界では大逃げをする名馬はそのまま最後まで走り抜ける……かもしれなったからだ。

 

「三段階くらいあるかとは思っていたよ。まず①が骨にひびが入る程度で競争中止パターン。これなら我々が手出ししなくても良いレベルだね。この場合でも穂園さんの能力で引退勧告があったと思う」

 

「けがの程度を確認する為にも、俺がレース後に確認する手はずだったから、あんな風によっていったというわけよ」

 

 四木谷の回答に阿里川が補足する。

 

「それで②は今回だね。故障はするけど直ちに死にはしない程度。この場合確認しに寄った阿里川君の回復効果で最低限回復させ、馬運車に運び入れる。その後は①と同じく勧告してもらう形」

 

 故障していた場合、阿里川の【生命の泉】効果で『このままだと死ぬ』から『治療すれば助かる』まで持っていく。

 その後は一般的な医療に任せる。逆に完全に回復させてしまっては要らぬ嫌疑がかかる。

 

「即死したらどーしたのよ」

 

「よほどじゃない限り、馬は即死しませんし、まずい時の為の甘西君ですよ」

 

「やばいと思ったら回復飛ばしてってそういうことだったのね」

 

 阿里川が寄る前に死にそうなら、待機していた甘西から回復魔法を飛ばす手はずとなっていた。唯その場合奇跡の復活、若しくは原因不明の競争中止となっていただろう。その場合、その先の流れがまったく読めない為、大規模な工作が必要な恐れがあった。

 

 四木谷としてもそこまでしなくても済んで、密かに胸を撫で下ろしていた。

 

 「そんなわけで、予測の範囲内で収まり、サイレンススズカもといソンデカルメが助かり、我々の馬じゃないにしろ阿里川君が天皇賞秋に勝って万々歳ってわけです」

 

 「そーいやそうでしたね、天皇賞秋勝ってこれで8大競走完全制覇。やはりどこぞの一般掲示板で言われた通りウ〇ポ騎手の生まれ変わりなのでは」

 

「前世のタッケよりはやいんだぜ、やべー騎手だよな」

 

「ククク、任せてくれたまえよ、皆の馬も勝たせてやるからよぉ」

 

「そーよ、うちのスターインパクトちゃんももっと勝たせてよね、地元で自慢するんだから」

 

 阿里川も黒札の前であるため、その回答は普段では見せないようなものになる。

 

 この時点でスターインパクトはダービーグランプリを制しており、JPN1とは言え三歳ダート勢の中でトップ層である。

 

「いいじゃん、東海ダービーも勝ってんだから、俺の馬も重賞勝ってほしいなぁ」

 

「そうですよ、あのオグリキャップが挑戦できなかった東海ダービー。そこに出場し尚且つ勝ってるんです、これ以上は贅沢じゃないですか」

 

 この時期、シン〇レラグ〇イで書かれていた『東海ダービー』は『名古屋優駿』という名称で開催され(副称に東海ダービー)交流重賞となっていたことから、阿里川が誘って出走し、そして勝ったのだった。

 

「はいよ、おまたせ」

 

 黒札達の会話を遮る声、女将が四木谷が言っていた何かを持ってきたのだった。

 何かの表面ラベルに書かれた【大吟醸九段仕込み】の文字。一升瓶に入った珍しい日本酒であり、追加で新しいグラスが運ばれてきた。

 

 同名の日本酒がデビルサマナーシリーズに登場しており、ゲーム上での効果は使用悪魔の性格を変化させるものであったが、この世界では異なる。

 

 マグネタイトで構成された悪魔達でも楽しめる、”酔う”という概念が封入された日本酒である。

 ”酔う”という概念は覚醒者達にも適用され、アルコールを毒として分解してしまい、酔う事が難しい覚醒者達でも楽しく酔う事が可能であり、(主に人側へ立つ)悪魔への贈答とガイア連合内での自家消費の為に生産が行われ始めていた。

 

「おおおお、ゲームのお酒が目の前にあるとか、コラボ商品みたいね」

 

「草」

 

「言いかたぁ」

 

「この世界がデビルサマナーだったらある程度平和だったんだけどね……そういや甘西君20になってたっけ?」

 

「数か月前になったんで大丈夫ですよ」

 

 武装して悪魔狩りを行い、何個もの法律をガン無視しているガイア連合も、こういう所は何故か律儀に守っていた。それは彼らなりの日常との折り合いなのだろう。

 

 瓶を受け取った四木谷が封を開ける。

 日本酒特有のほんのり甘い香りと20度近い酒精があたりに漂う。

 

「やっべ、前世でも感じたことないほどいい日本酒の香りだぞこれ」

 

「語彙が足りないけど、なんかすごいいい香り……なんだろう、ほんのり甘い?」

 

「はー、前世じゃ日本酒はあんまり飲まなかったけど、こいつはそそられるな」

 

「悪魔でも俺達(覚醒者)でも楽しめるお酒ってこんな感じなんすね」

 

 配られたグラスに酒が注がれてゆく。透明な液体、見る人が見れば含まれたマグネタイトがキラキラと光っているのが見えるかもしれない。

 

 四木谷は自分のシキガミに瓶を回し、そちらでも飲むよう指示しながら改めての乾杯の音頭を取る。

 

「じゃあ、改めてガイアレーシングに乾杯」

 

『乾杯~』

 

 皆口を付け、その味わいに驚嘆する。

 

「すごいなこれ」

 

「日本酒ってこんな感じなんだ」

 

「いや、これ悪魔がどうとかの前にめっちゃいい酒だと思うぞ。

 

 雑味が無い……っていうか口に含んだ時にアルコールを感じず、なんていうかふんわりとしたものが口に広がる」

 

「確かに居酒屋のやっすい日本酒だと、まずアルコールの味が主張しますもんね」

 

 初めて飲む日本酒、それも高級な代物に感動し呆けている中、阿里川が指摘する。

 

「みんな、自分のお好み焼き見ろ、焦げそうだぞ」

 

 やっべとばかりに自分の前で焼かれたお好み焼きをひっくり返したり、皿に取り上げる。

 

「ゲームと同じ名前とはいえ、こんだけいい酒ってことは他の作ってる酒も期待できるなぁ」

 

「ゲームだと日本酒だったけど、他にもビールとかウイスキーなんかも作ろうしてんだっけ?」

 

 ゲームでは日本酒しかなかったが、ここは彼等にとっての現実。ビールは飲みたいし、他の酒も飲みたい。海外からの亡命者も出てきているが、彼らが祖国の酒、それも悪魔用の酒を作り出せればガイアも彼等もWin=Winである。

 

「みんなも聞いてるとおもうけど、エジプトで多神連合が敗北した」

 

「あー聞いてる聞いてる。エジプト勢力が最後っ屁で来てた他の勢力をミイラにしたやつっしょ」

 

「一応生き残りの巫女…だっけ?が俺達(ガイア連合)にたすけて!してるのは聞いてるけど、なんかあったけ?」

 

「表向きだとカイロでの内乱って扱いでしたっけ?すごいよね」

 

 エジプトで行われた多神連合対メシアの決戦は結局メシアの勝利に終わっていた。

 その余波でメシア教の攻勢が勢いづきヨーロッパから中東方面の混乱が加速した。

 表向きはまだ平穏に見える部分もあるが、競馬関係は開催の縮小や関係者の行方不明などが起こっていた。

 

「ヨーロッパもテロ頻発扱いでゴタゴタしすぎて競馬の開催不安定でなー。

 タイキシャトルっぽいあの糞つよマイラーがジャックルマロワ賞行ける行けないで混乱し結局行けて無くて、馬の調整失敗してそうでカワイソ。

 ただそのせいでマイルCSワンチャンありそうやで」

 

「うちの馬で今の所いけそうなのおらんやんけ!」

 

 ガイア連合の現役馬達は今の所収得賞金が足りず、登録しても除外の可能性が濃厚である。

 G1出走の前にG2/G3で結果を出して収得賞金の積み増しが必要であった。*1

 

「トリプルジェットが菊花賞勝てたらいけるいける」

 

 酔ってきたのか阿里川の発言の適当っぷりが加速した。彼が言う菊花賞勝利発言に対し、さすがに無理やろとの声が上がる。

 牝馬で菊花賞を勝つのも歴史的快挙なら、三歳牝馬がマイルCSに挑戦し勝てるものなら歴史的快挙である。

 さすがの彼らもそれが成し遂げられるとは思えなかった。

 

「トリプルジェットが勝てたらうち(ガイアレーシング)としても嬉しいから頑張って……で、話を戻すけどエジプト残存勢力が日本に亡命してきたけど、うちら(ガイア連合)としても捨扶持を与えて飼っていいんだけど……」

 

 四木谷は一旦話を区切る。皆が話を聞いているか確認する為だ。

 

 皆一応聞いている。

 焼いたお好み焼きにたっぷりとソースを塗り、青のりをふりかける奴。

 はふはふと食べながら顔だけは向けている奴。

 二つ目の具材をかき混ぜる奴。

 日本酒を勝手に注いでいる奴

 そんな風景が広がっていた。

 

 ある程度聞いているならヨシ、の心持で四木谷は続ける。

 

「一応働いて貰う事になってるんだけど、日本語出来ない、常識違う、戦力無し。これじゃねって事で一次産業(農業)中心に隔離状態で働くことになったんだけど、その一環でビール造りするという事になった」

 

 ビール造りに対し、ええやんとの声が上がる。

 

 古代エジプトではビールは彼等自身の消費財でもあり、神への捧げものでもあった。

 日本の御神酒と同じ立場であり、今回飲んでいる【大吟醸九段仕込み】と同様に加工方法などで悪魔や覚醒者も楽しめる酒になる可能性はある。

 

 だが一人が疑問を呈する。

 

「でもエジプトのビールって酵母とか適当で、パンを水にぶちこんで自然発酵じゃなかったか?俺達の知ってるビールになるの?」

 

「麦芽じゃなくてパン入れるんですか、すごいですねそれ」

 

「ガチの麦ジュースアルコール入りって感じじゃない?」

 

「どっちかっていうと日本酒よりだと思ったよ、もちろんパンを使うけど酵母はナツメヤシかブドウで麦汁と言うもろみも使う感じで」

 

 へーという反応。彼らは酒関係者では無い為反応は薄い。欲しいのは酔えるビールでありその製作工程では無いからだ。

 

 ただ現実には覚醒者向けのビール造りは上手くいかなかった。ビールは出来る、だが酔う事は出来なかった。

 これはエジプト神話における酒造りの神はハトホルであり、フェニックスくらいしか付いてきていない(残りは逃げた)状態のエジプト亡命者達ではどうにもならなかった。

 

 結局ガイア連合の暇人(技術班)の力を借りて、後にエジプトビールとして作られることとなる。

 

 だがこれを見、そして飲んだ黒札達の感想は一様に、ビールだけどビールじゃない、であった。

 

 日本人が飲んでいるビールはビール純粋令*2以降のものであり、所謂ラガーと呼ばれるものが大多数である。(ピルスナー等々もあるが一般的では無い)

 それに引き換えエジプトビールは茶がかった色味で且濁り気味のものであった。〇ロかミルク入りコーヒーかという感想もむべなるかな。

 

 ビール話にへーと相槌を打っていた一人が空いた皿を見る。

 足りなくなったようで追加注文をする。 

 

「あ、女将さん、モダン焼き追加で、後焼きそばを3人前!」

 

「俺もモダン焼き追加で」

 

「じゃ私は豚玉」

 

「チーズで」

 

「私は海鮮をお願いします」

 

 一人が追加すれば我も我もと追加を頼む。

 

「あいよ、モダンが2つに海鮮チーズ豚玉ね」

 

 お願いしますとの声を受け女将さんは裏手に引っ込む。

 それに合わせて甘西が口を開く。

 

「ほいで四木谷さん、今後どうするんすか」

 

「どうするって……曖昧というか、意味が広すぎないかい」

 

「あー……海外も表向きはまだ平穏ですけど、裏じゃメシアとガチバトル中なわけっすよね。

 そうすると海外遠征もだめですし、何より種牡馬なり繁殖牝馬の輸入が出来ないんで、国内でぐるぐる回す感じ?」

 

 そういうのはJRAが本来考える事なんだろうけどね、と前置きしそれに回答する。

 

「そうならざるを得ないと思ってるよ。いろいろ情報が入ってくるけどね、アメリカヨーロッパはもうだめだね。

 結局メシアも4文字系だから賭け事を残してくれそうにないし、うちらで血統を保護していくしかないんじゃないかな」

 

 四木谷の悲観的な回答にため息が漏れ、じゃあとばかりに穂園が質問をする。

 

「アメリカダメって事はこの時期の輸入馬とかもだめなの?」

 

「んー、この時期だとエルコンドルパサーとかグラスワンダーが居たはずだけどそれっぽい丸外(外国産持ち込み馬)見ないから、輸入できなかったか、生産できなかったかどっちかだと思う」

 

「まじかー……まじかぁー……」

 

 阿里川の答えに皆のテンションが下がる。ウ〇娘にすら出た名馬がこの世界じゃ名前違いとしてすら存在しない可能性を示唆されたのだ、そりゃテンションも下がる。

 

 嶺岸もそれを受け疑問を浮かべる。 

 

「ほかに影響ありそうな馬いたりする?」

 

 他にと聞かれ、少し考える阿里川。皿から最後のお好み焼きを口に放り込みつつ答えを見つける。

 

「影響でかそうな馬だと……直近だとアグネスデジタル、クロフネ、キングカメハメハかな。

 特にキングカメハメハはそこからロードカナロアやアーモンドアイに繋がるから影響大きいね。

 あとは……エンドスイープっていうアメリカ産種牡馬が居ないとスイープトウショウとラインクラフトがだめかなぁ。

 そういやドトウさんもアイルランド産だからやや怪しいかも」

 

「なんかそうそうたる面子じゃない?」

 

「そのクロフネって馬も、ウマ娘にでるような産駒いなかった?」

 

「ウマ娘だとカレンチャンかな?あと母父としてクロノジェネシス」

 

「まじかよ……」

 

 皆その外国産馬の影響力に絶句する。そして前世で見た、キャラとして好ましかった馬たちが存在しないことに瞑目する。

 

 さすがにネガティブな話ばかりだとと思い、阿里川は大丈夫そうな馬を上げる。

 

「逆にステゴの産駒の大多数は大丈夫だと思う……テイエムオペラオーは多分両親外国産だけど、ギリ日本に入って来てるかな」

 

「ディープインパクトとか大丈夫なの?一応父親のサンデーはそれっぽいのがいるんでしょ?

  分かってるなら競り落としたいなぁとか思ってるんだけど」

 

「母馬が日本にくるか怪しいかな。アイルランド生まれでイギリスで走ったけど、91年生まれで99か00年に日本に売却されたはず。

 だけど今イギリス・アイルランドあたりはあれなわけで……」

 

 あーという声が響く。エジプトでの戦い後、ヨーロッパでは政府をも巻き込んだ霊的組織とメシア教との水面下での戦いが激化している。

 

「阿里川君のコネがある英国系牧場が開かれたから、そこにいる可能性はあるけどね」

 

 助け船と言うべきか、慰めのような話を四木谷はする。

 話を振られた阿里川は答える。

 

「実家の近くで開業したみたいね。で、別口でイギリス貴族様からも手紙来てたよ。

 内容は、”貴国に脱出した仲間を出来れば助けてやってほしい”、”ダービーでの騎乗は叶えられそうもない、すまない”、”我々は最後まで戦う”って感じだったね」

 

 実際の手紙は、とてもとても遠回しな文章となっており、何言ってるかわからねえよ!となった阿里川は知り合いの六道(0能力ニキ)に頼んで”解読”してもらっていた。

 

 例えば、『ガリポリの精肉店主の演説の様に』と書かれていれば、チャーチルのNever Surrender演説を意味し、『海岸で~』(On the Beach)が小説【渚にて】のように一部を除いた世界が滅んだ様も表していた。

 

 さらにアーサー王伝説を引用しており、グィネヴィアとランスロットの一節は、ランスロット=フランス人=外国人&異教を表し、高い身分の身内から裏切り者がでないかどうかの心配であった。

 

 手紙の存在とクソみたいな内容をとくとくと説明していれば女将さんが注文を持ってくる。

 

「はいよおまたせ、モダン2つに海鮮チーズ豚玉、あと焼きそば3人前ね」

 

 あっどうも、阿里川は受け取るが他の面子は呆けていた。

 いつのまにか辛気臭くなっている雰囲気に怪訝な顔をしながら女将は奥へ戻っていく。

 

 手紙の内容は置いておいて、名馬達が居ないこの世界の事を考え皆沈痛な面持ちとなった。

 しかし体は動くもの、新しく来たお好み焼きを混ぜる。

 

 一人がつぶやくよう言葉を紡ぐ。

 

「じゃあ、あれか、もう俺達の知っている馬はでてこないのかなぁ」

 

「さっき言った通りステゴはもういるっぽいし、その産駒達の母馬は国内だからゴルシとかは出てくる可能性はあると思うよ」

 

 とは言え、と続け。

 

「人間、同じ両親から生まれた兄弟ですら同じにならないじゃん。

 俺達がやった影響がどこまで波及するかわからから、もうでてこないと思ってやってくしかないと思うぞ」

 

「〇イポの史実期間終わった後みたいなもんか」

 

 そうそうと稔崎の呟きに阿里川は答える。

 

「そういえば今日はスズカの救助祝勝会だったわね……史実でも産駒残ったらとか考えたけれど、

 実際に産駒出来て強かったら誰かを押しのけちゃう……か」

 

「逆に俺達の馬が居なくなった部分を埋める……そのくらい活躍してもらうってことで。

 じゃあパパやきそば焼いちゃうぞー」

 

 穂園の言葉に甘西が努めて明るく答えると、皆のお好み焼きを押しのけ、焼きそばの具材を焼き始めた。

 空元気だがどうしようもない事はどうしようもない。それはこのメガテン世界に転生する羽目になった事から皆、理解させられていた。

 

「ばっか俺のに野菜まじるだろ、肉だけよこせ」

 

「覚醒者とは言え野菜は食べないといけないとおもいまーす」

 

「君たちよく食べるねぇ、お好み焼き三人前食べてまだはいるのかい」

 

 四木谷だって3人前食べてるじゃんの声に、燃費悪いから大丈夫だけどこれ以上はちょっとねと言い訳する。

 じゃあ皆で異界攻略ダイエットしよーぜと笑い声が上がる。

 

 田舎のお好み焼き屋に響く笑い声は、吐き出される煙とともに消えていった。

 

 

 

 タクシー数台が店前に付けられる。

 皆が帰るために呼ばれたものだ。

 

 分乗して土浦の駅まで移動し、まだ帰れる人は電車に乗車し、遠方からの人はホテルに泊まる。

 ガイアファーム筑波には簡易宿泊施設しか無く、また田舎の宿泊施設は大き目な駅までいかないと無い。

 

 オカルトを知っている地元名家であれば泊まる事をねじ込めるかもしれないが、そんなところでコネを使いたくないし、陰キャなガイア連合黒札はねじ込むなんてできなかった。(必要であればやれはする)

 

 皆がタクシーに乗り込む前、やや厚めの封筒を女将に渡している四木谷に阿里川が声を掛ける。

 

「今日はありがとな四木谷さん……なんか、助かって良かったよな……」

 

 何がとは言わない。

 この場で意味するところは、この世界ではソンデカルメと名付けられた馬の事だとお互い理解している。

 

 阿里川としては、ある種の運命により死ぬべきものは死ぬのではないかと思っていた。

 

 だがそれは今更な事でもある。

 前世で勝った馬に勝ち、居なかったり、負けた馬を勝たせてきた。

 

 だがそれでも非覚醒存在の生き死にという、生物の根幹を弄るのにまだ抵抗感があった。

 

 そんな問いに四木谷の声はシンプルだ。

 

「我々はガイア連合だよ。自らの信念に基づき、力及ぶ限りやりたいことをやった。

 結果としてなにが起こった?、馬は生き残り関係者はほっと胸をなでおろした。

 誰も不幸になっていないんだ、胸を張りなよ」

 

「まあ、そうだよな。すまんね呼び留めちゃって」

 

 いいって事よと言い、四木谷が乗り込んだタクシーは出発した。

 阿里川はそれを見えなくなるまで見守っていた。

 

「じゃあ帰ろうか」

「はい!」

 

 阿里川が自分のシキガミに声を掛ける。

 

 他の皆と異なり、阿里川の自宅はここからそう遠くない所にあり、少々時間は掛かるが歩いて帰る事にした。

 10月初旬夜の涼し気な空気の中、二人は歩き始めた。

 

 刈り取りの終わった田んぼ道、二人は会話を交わす。

 

「他のシキガミとの話は大丈夫だった?」

「はい、大変有意義な交流でした。他の方々からの見識で私はさらに強くなれます」

「おー、デュラは偉いね」

「ンフー」

 

 阿里川が自分のシキガミを褒める。ウマ娘デュランダルを模しているとは言え、別にそう成長させようとしたわけでは無いが、前世のゲームに大分似てきているような気がする。(黒札達の集合的無意識の結果)

 褒めて褒めてしてくる好ましい異性は、たとえそれがシキガミだとしても望みを叶えたくなる。

 阿里川も大概シキガミに甘い男である。

 

「我が君はこれで益々我が聖剣()を手放せなくなりますね」

「我が君は止めようね……外でそれ言われたらいい訳不能なんだからね。

 それに別にデュラが弱くても手放す気は無いよ。調教にしろ、戦闘にしろ助かっているからね」

「ンーッ。ずるいです、そんなに褒められたらもっとがんばりたくなるじゃないですか」

 

 頭をぐりぐりと押し付けてくるシキガミ。その頭をなでながら阿里川は思う。

 元ネタのように大型犬っぽいんだよなぁ、と。

 そして、ならばと更に褒める。

 

「おお、我が臣下の不断の努力は我が喜びとするところよ」

「なればご照覧あれ、我が切っ先の天地を割くほどの鋭さを」

 

 阿里川は努めて大仰に、まるで王の役を演じているかのように褒め、それに対しシキガミは騎士のように答える。

 そんな二人の他愛無い会話は家に着くまで尽きることは無く、月明かりだけがそれを見ていた。

 

*1
ネタバレ?菊花賞→マイルCSやる馬がでます

*2
1516年布告、バイエルン公ヴィルヘルム4世




やはり掲示板では無く小説にすると時間かかりますね
ネタとしては次も小説よりになるので時間……どうかなぁ?


どうでも良い今回でたキャラの設定

阿里川 勇樹(ありがわ ゆうき)
表向き職業:騎手
シキガミ:ウ〇娘のデュ〇ンダル風シキガミ。近接戦闘系。騎乗スキルを入れ調教を手伝ってもらっている。カッコいい剣と鎧を装備させたく貯蓄中。
今回の役割は、騎手としてレース後に状況確認と微回復担当。故障したとしても致命傷にならないようにする。

四木谷 和也(しきたに かずや)
表向き職業:企業経営者
シキガミ:秘書風シキガミ。黒目黒髪、髪型はセミロングで、眼鏡をしている(度無し、マジックアイテム)
今回の役割は、目標設定、段取りと関係者のピックアップ。

穂園 玲奈(ほぞの れいな)
表向き職業:企業経営者
シキガミ:濃いブラウンの髪と目色、整えられた髭を蓄えているイケオジ。対外的には秘書であるが、実質は護衛。
一般人からはその立ち位置が愛人なのか旦那なのか困惑されている。
戦闘能力は近接戦闘系だがどちらかという防御より。鎧+盾+片手剣スタイルで主を守る。
今回の役割は、本人の能力が状態異常系な為洗脳を担当。担当獣医から故障の可能性を示唆させ、引退を勧告させる

嶺岸 隆(みねぎし たかし)
表向き職業:探偵
シキガミ:黒目黒髪で髪型はショートカット。明智と名付けられたやや小柄で快活な娘、見た目女子高生くらいな格闘系戦闘シキガミ。
最近飲食可能とした。Lv上昇に合わせて会話能力が向上し饒舌になっている。
今回の役割は、探偵として阿里川/四木谷が調べた情報から獣医、調教師、オーナー、ついでに厩務員の情報を調べあげた。

甘西 成正(あまにし なりまさ)
表向き職業:大学生
シキガミ :日本刀型シキガミ。持ち運びに不便な為人化スキルを挿入。人化時は黒目黒髪の切れ長目和風美人(20前後)長めの髪毛を後ろで括っている。
甘西は人化によって剣豪風の男になると思っていたが、美人系女性でやや困惑していた。
ガイア連合の公認?化によって武装の持ち運びが楽になり早まったと思っている。
飲食可能としたが会話能力のほうは高くない、が人化時はそれがミステリアスに見える。
当日故障すると思われる第4コーナー付近に待機し、阿里川が駆け付ける前に死亡しそうな場合、回復魔法を飛ばす役割を与えられた。
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